佐藤くんの大嫌い家族   作:痲歌論

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__お金、貸してあげる。


ひとつ目の借り

おぎゅうが戻ってきて、学校でも家でも今まで通りの雰囲気だった。

(ぬし)、ノート貸して。」

「はぁ...。この前に課題ちゃんと終わらせとけって言ったろ?」

「だって、めんどくさかったから...。」

俺はしぶしぶながらもおぎゅうにノートを渡した。

「ありがと...主。」

おぎゅうが自分の席へと戻っていくと、肩をポンと叩かれ、そちらの方へと顔を向ける。

「やっぱり優しいな~私の幼馴染(おさななじみ)は。」

俺の幼馴染__佐々木愛(ささきあい)だ。

「うるせ。俺のことを襲おうとした奴が何言ってんだ。」

「うっ...。そ、それはまた別の話じゃない?」

「なにが別の話だ、まぁ現状もうしてこないからいいんだが。」

朝のHRのチャイムがなり、(あい)は席へと戻り今日の高校が始まった。

 

☆ ☆ ☆

 

「あ...。弁当忘れた...。」

ポケットの中から財布を取り出し、小銭を確認する。

65円...。うまぁ棒5本しか買えねぇじゃねぇか。

困ったなぁ...。さすがに伊織(いおり)とかに言うのもなぁ...。なんか変な感じになりそうだからやめとこ。

おぎゅうは妖力(ようりょく)でお金を生成して違法とかになりそうだし、砂亜菜(さあな)は絶対貸してくんないからな~。

そうなると...。

俺は教室の隅で集まってる女子グループの方を見る。

愛か...。くっ、行くしかねぇ。

俺はなるべく不自然にならないようにそこへと向かった。

大丈夫だ、俺なら大丈夫だ。だって謎に姉妹ができ、猫が人になり、家にJKが3人いるわけだ。

俺なら大丈夫だ。

そう心の中で唱え、いざ決心して話しかける。

「愛、弁当忘れたから__」

「うっさい黙って、たらし。」

愛の友達からそう言われて本気でへこんでしまった。

はぁ...。確かにそうか。周りから見たらそうだもんな。

教室から出て、一人でとぼとぼと歩く。

数歩歩くと、朝の時と同じように肩を再び叩かれる。

「またか...。愛だろ。」

「にしし、あたり。」

「ここじゃあれだから、屋上で話さない?」

俺は愛の提案に乗り、屋上で話すことにした。

屋上には誰もおらず、ただ風だけがここにいた。

ていうか、屋上には天文部(てんもんぶ)以外入れないはずだが。

「なぁ、愛。なんで屋上に行けたんだ?お前が鍵持ってたし...。」

「うーん、秘密。」

「...んで、話って?」

愛は屋上のフェンスに近づき、手をかける。

今...愛は何を考えてるのだろうか。

俺はつばを飲んだ。風と謎の緊張を感じる。

愛は俺の方へと振り返る。

「お金、貸してあげる。」

「...は?」

「いや、は?じゃなくて、言葉の通り。」

「いや、別にここで言わなくてもいいだろ!!」

俺が少し声を荒げると、愛は一歩引く。

「なによ、せっかく私が優しい気持ちで言ってあげたっていうのに。」

「まぁ、その言葉に甘えるがなぁ...。」

「よし、じゃあこれで貸し1ね!!」

「うん、ありがと。」

愛と共に屋上から離れ、食堂へと向かった。

俺らがそこに着いたときにはあまり人はいなかった。

恐らく食べるのが遅い人や、ずっと話してる陽キャならいた。

「んで、裕樹(ひろき)はなににする?」

「うーん...。」

上に貼られたメニューを眺める。

カレーうどん、焼肉弁当、そば、天ぷら...。

これは奢り...。自分の好きなものを食べてもいいはず。

愛の方へ視線を向ける。

「ん?」

うーむ、どうしよう。なんか罪悪感(ざいあくかん)が...。このメニューの中でまぁまぁ高価の方に属しているカレーうどんを頼むのは少し気まずいぞ...。

「もー、裕樹遅い~。遠慮しないでいいから~。」

くっ、そういうならやってやる...!

「なら、カレーうどんで。」

「はーい。」

愛はお代を出す。

愛は「席に座ってていいよ」といい、俺は言われたとおりに近くの席に座って愛を待った。

しばらくすると、愛がカレーうどんを持ってきてくれた。

「はい、お待ち。食堂特製のカレーうどんで~す。」

「ありがとう。」

箸を割り、いたたぎますをしてうどんを口に運ぶ。

自分がすする音と話し声が俺には聞こえていた。

「どう?美味しい?」

「あぁ、うまい。食堂のカレーうどんの味だ。」

「なに当たり前のこと言ってんのよ。」

愛から飯へと視線を戻す。

麺にはカレーの風味が染み込んでおり、ルーの濃い匂いが鼻から内部に進んでいく。

全身に染み渡る香り。

幼馴染からの奢りという罪悪感。

このふたつを噛みしめながら今日の昼食を食べる。

そう思いつつ、気づいたらもう完食していた。

「ふぅ、ご馳走様。」

箸を置き、カレーうどんの入っていた容器と共に指定の返納の場所に返す。

「幼馴染に払ってもらった罪悪感を感じつつ、食べきれてえらいえらい。」

そう言って愛は俺の頭の方に手を伸ばし、なでようとする。

「今度返す。必ず。」

俺は愛の手を振り払いつつ、そう言った。

食堂から出て、教室に向かう。

次の授業は数学だったっけ...。

「数学だよ。」

俺の思っていたことが分かっていたかのように愛は答える。

「そうか...。ありがと。ていうか、なんでお前俺の考えてることわかったんだ?」

愛と二人で並んで歩いていたが、この質問と同時に俺は動くのを止める。

愛は少し前に行き、止まった。

そして、こちらに振り向く。

「ふふ、秘密。強いて言うならサキュバスだから?」

愛は唇に指を当てながら言う。

愛はそう言うと、早足で教室へと向かっていった。

俺はその後ろ姿を今日の感謝と共に眺めていた。




ご読了ありがとうございます。
作者の塩ボウズです。
今回は愛回でした。
幼馴染としての優しさがサキュバスではなく、裕樹と同じ人としての優しさだったと思います。
では、また次回もお楽しみに~!
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