佐藤くんの大嫌い家族   作:痲歌論

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__そりゃ驚くわよ。普通この世に言語を話す猫とか悪魔とか天使とかいるわけないでしょう?


ネコのおぎゅう

春が終わり、梅雨の時期に入ったある日。住宅街の道、茶色の毛をした猫がダンボールの中に入っていた。

まるでその雨を降らしたかのように大きく鳴いている。

学校の下校中に私__佐藤伊織(さとういおり)はその猫を見つけた。

「ニャーニャー!」

「あら、可哀想…一体誰が捨てたのかな。」

持っていた傘の中に猫を入れ、共に雨をやり過ごす。

「裕樹君の家って、ペット大丈夫なのかしら。」

「ニャー?」

「そんな愛くるしい顔で訴えられちゃ…連れていくしかないじゃない。」

私はダンボールごと猫を運び、家に帰った。

 

☆ ☆ ☆

 

「ただいま、裕樹君少しいいかしら。」

「おぉ、なんだ。改まって。」

「単刀直入に言うわ、ここってペットは大丈夫なの?」

ポカンとする裕樹君…案外可愛いじゃない。

「あ、あぁ。母さんに聞いてみる。」

台所に向かった裕樹君を見送り、靴箱に靴を入れて猫を自室に連れていく。

ニャーと可愛らしく鳴く猫を見ていると心が癒される…。

しばらく猫とじゃれていると、ドアがノックされた。ガチャと音を立てる。開けてきたのは裕樹君だった。

「おーい、伊織。ペットは大丈夫らしい。それと、今日の夕飯は牛丼だ。」

裕樹君の“牛丼”ということに反応したかのように猫はいきなり走り出し、裕樹君の足の間を颯爽とくぐり抜けてリビングに向かった。

私と裕樹君は猫を追い、リビングで見た姿に驚いた。

猫が人のように椅子に座り、牛丼を食べていた。

「は…?なに、伊織なにした?トラックに轢かれそうなところを助けたのか?」

「いや別にそんなことはしてないわよ。ただ道に置いてあったから、連れてきただけよ。」

裕樹君と共に困惑をしていると、家では聞いた事のない声が響いた。

「この度はありがとうございましたにゃ……少しわがままなのですが…お風呂に入ってもいいかにゃ?」

「は?(え?)」

「「ええぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」

状況が理解できないわ…。猫が人みたいに食べてて、人の言語を話す…。どういうこと、最近の猫は最新技術で話せるようになってるのかしら。

「どうやら……驚いてるみたいね…。」

「そりゃ驚くわよ。普通この世に言語を話す猫とか悪魔とか天使とかいるわけないでしょう?」

「あんた天使だろ。」

「へぇ…あなた天使だったんだ……。私は…化け猫(ばけねこ)。妖怪。」

化け猫…聞いたことしかないわ。日本のものに関しては無知だからどう対処すればいいのか…。

再び化け猫は牛丼の食事を始める。

1口食べるごとに化け猫の体から煙が立ち込み、徐々に姿が変わっていく。

そして、変わったあとの姿は私たちと同じような人間の姿。

「ほう…これが人の姿。……悪くは無い。」

グレーの長い髪の毛で、身長は中学生くらいの姿。肌は白く、顔は人形のように綺麗に整っていた。そして、裸。

「って服を着てください!!」

「そうか…人となると服を着なければいけないのか。……そこの男。」

「え、お、俺…?」

化け猫が1歩1歩と裕樹君に近づき、なにをするのかと考える。

服を貸すとの要求?一緒にお風呂?昼寝?なにをするの…?

化け猫は裕樹君のシャツを掴むと、そのシャツの中に入り込み、裕樹君との密着度MAXの状態になった。

その時、いきなりリビングのドアが開く。

リビングに入ってきたのは私の妹の砂亜菜(さあな)だった。

「ただいま〜……ってえぇぇぇぇぇえ!?ちょ、お兄ちゃんなにやって…この変態!!」

「待てこれは誤解だ砂亜菜ぁぁぁぁぁ!!!!!」

「うるさい…耳を閉じなきゃいけないじゃないか…。」

「あぁ…わりぃ。」

猫耳をペコペコ動かす化け猫。ちゃんと可愛いじゃない…。

色々あってみんなで牛丼を食べて、裕樹君の部屋で裕樹君、私、砂亜菜、そして化け猫の4人で会議をすることになった。

 

「それでお兄ちゃん、さっきのことは__」

「だからあれはこの化け猫の野郎が入ってきたからだ!」

化け猫が手を挙げ、ひとつの提案をした。

自分の名前の提案だ。

「私は……化け猫という名じゃない…。だけど、私にはちゃんとした名前はない…。だから、お前らが付けて…。」

私たち3人はしばらく悩んだ。雨が降っている中見つけたから【アメ】

牛丼を食べていたから【おぎゅう】

化け猫だから【ばけにゃ】

いくつかの提案をした結果この3つに絞れた。

「ちなみにアタシはおぎゅうにするつもりよ。」

砂亜菜は大きく宣言をした。

「俺はばけにゃだな。さすがは俺のネーミングセンス。」

「あんたのネーミングセンスは最悪よ。」

この2人は仲良くなったのね。良かった。

「私はアメね。」

「全部1票ずつ…どうするの……。」

ここでまた悩む。

「やっぱりここは化け猫のあんた自身に決めてもらうしかないんじゃないかしら。」

砂亜菜の発言を聞いて、しばらく悩む化け猫。

数分経ち、閉じていた瞼を開く。

「そう…なら、おぎゅうで…。」

「やったー!情報提供ありがとね、お兄ちゃん♡」

「くっ…教えるんじゃなかった……。俺の失態。」

「やっぱり、2人とも仲良いじゃん。」

「「仲良くない!!!」」

ふふ、と微笑むおぎゅうの笑顔を私は見逃さなかった。

今すぐにも…私はこのおぎゅうをなでなでしたいぃ。

裕樹君と砂亜菜は2人で楽しんでるし、今のうちに…。

「そこの女……名は?」

「伊織よ。」

「伊織…覚えた……。ここは温かいな。」

「そうね、とても温かい所よ。きっとおぎゅうも好きになってくれると思う。」

「あぁ、そうだな。」

「それと、おぎゅう。」

「なんだ?」

「なでなでさせてぇ〜!!」

「んにゃ!?にゃぁぁぁぁぁー!!!!」

裕樹君の部屋におぎゅうの悲鳴がこだましたとさ。

 

 

 

 




ご読了ありがとうございます。
作者の塩ボウズです。
言い忘れてましたが、この作品は1話完結物となっております。
この回から登場した「おぎゅう」は妖怪の化け猫。
天使との関係はあるのか…。

そして、未だに裕樹は伊織と砂亜菜のことを嫌ってます。
前回の嫌いなワケで裕樹の冷たい態度により、砂亜菜も裕樹のことをあまりよく思っていません。なんとか仲良くなるかな…?
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