婚約…か。姉妹という存在が嫌いな俺にとって、この2人を姉妹として、恋人として見なければならなくなってしまった。
意識してしまうと、つい2人の顔から目線を逸らしてしまう。
だが、いきなりそんなこと言われても、俺も…
2人は元々そのこと知っていた上で俺と話していたとしても、結局は苦難の道。俺がまだ姉妹とすら認めていないからな。
「あ、あのさ…」
沈黙の中、最初に口を開けたのは砂亜菜だった。
「その…アタシたちはゆっくりいこうと思ってるから、お兄ちゃんも、ゆっくり慣れていって…ね?」
もじもじしながら言う砂亜菜はまるで
恥ずかしかったのか、すぐぷいっと目線を逸らしてしまった。
伊織はずっと黙ったままだ。
この重い空気を閉ざすかのように昼休み終了のチャイムが鳴った。
砂亜菜は走って中学の方に戻り、俺と伊織は教室に戻っていった。
午後の授業の内容はなにも入ってこなかった。
昼休みのことでいっぱいになっていた。
誰と婚約するか、なぜこんなことになっているのか、うちの母親はこのことを知っているのか、これからの生活はどうなるのか。すべてそんなことで頭の中が埋め尽くされていた。
ノートはあとで家に帰って伊織に見せてもらうか…。
そう思った時、肩をつつかれた。つつかれた方を見ると
「裕樹さ、昼休みからずっと考えてるけどどうかした?性欲ごとその悩み吸ってあげようか?」
「実はさ__」
今日の昼休みに起こったことを1からすべて愛に話した。
愛はしばらく考え、一言放った。
「まずは姉妹として認めたら?」
「それが出来たら良かったんだがな…」
「裕樹は昔からなにかを引きずりすぎなんだよ。昔にあったとこと、今の裕樹の姉妹は違うでしょ?伊織ちゃんや、裕樹の妹ちゃんは、裕樹のトラウマと同じじゃない。もう乗り越えていいんだよ、2人は裕樹を認めてくれる。絶対に。」
昔からそうだった。いつも何事も愛に背中を押される。運動だって、勉強だって、何かが引っかかってることを愛は理解している。俺のすべてを見透かしているように。
「ありがとう、愛。俺、なんか
「幼馴染に任せればどうってことないよ!」
ニカッと笑う愛に感謝をする。
この恩は忘れない、必ず返す。
そう決心し、教室を飛び出た。
「はぁ…いつも私は裕樹を助けちゃう。私だって、裕樹に認めてもらいたいのにな…。私も…裕樹好きなのにな…。」
☆ ☆ ☆
荒々しく玄関のドアを開け、リビングに向かう。
「あら、裕樹。そんな焦ってどうしたの?」
「母さん!伊織と砂亜菜は!どこにいるの!!」
「え、2人はここにいるけど…」
母親が指差す方向を見ると、心配そうな顔をした伊織と砂亜菜2人がいた。
「ど、どうしたのお兄ちゃん、そんな焦って。」
「なにか相談事ならお姉ちゃんに頼んでもいいのよ。」
「えっと…その、ここじゃあれだ!俺の部屋にしよう!」
俺は2人の手を掴み、自分の部屋へ連れていく。
2人をベットに座らせ、土下座をする。
「本当に今までごめん!今まで、俺は2人に良い態度をしてこなかった。良い弟として、良い兄として、過ごしてこなかった!だけど、そんなことは昔に引きずられてた弱っちぃ俺だった。昔のことなんて、抱えてきたトラウマなんて2人には関係ないのにそれを2人に写して見ていた俺が馬鹿だった!俺はずっと…2人に悪いことをした……。本当に…ごめん…。」
俺は震えた。俺は泣いた。俺は怖かった。俺はここまで自分が正直だと思わなかった。
だけど、俺は今までにない程に震えている。
悲しさか、嬉しさか俺にはわからない。
そして、今俺は2人の顔を見ることを出来ない。
「お兄ちゃん…もう顔上げていいよ。」
そう言われるも、俺は上げなかった。俺には今2人に合わす顔がないから。
「裕樹、気持ちは伝わったよ。私たちにそんなことを思っていたなんて初めて知った。私からも謝らせて、この前強引みたいに話させようとして。」
「アタシも…“最初は話してくれた”なんて傷つけてかもしれないのにね。アタシたち天使なのに、傷つけてたんだもん。言葉は怖いよ。お兄ちゃんも今思ってる通りアタシも怖い。だけど、アタシたちは天使。」
俺の背中に暖かい手が乗る。2人の優しさに包まれた手が。
「「だから、
俺の体全身が、包まれていく。あの時と同じ、砂亜菜に蹴られた時と同じ緑色のオーラのようなものが。
心が軽くなる。俺の不安がなくなっていく。
俺のトラウマが、2人に重ねていたトラウマがなくなっていく。
ありがとう、
「ありがとう…2人とも。」
俺は顔をあげ、2人に抱きつく。
「これで私たちも天使として……姉妹として認めてくれたかしら。」
ホッしたかのように伊織が言う。
「あぁ、認めたさ。2人は俺にはとって大事な家族で、姉妹だ。」
この時、俺は胸が高鳴っていた。
この日の夜。裕樹の部屋にて。
「お兄ちゃん〜!姉妹として認めてくれたんだからさ、今日くらい一緒に寝ない?」
「…………は?」
「えっ、ちょ、なに怖いんだけど。」
「砂亜菜…順序ってもんを考えろ!!やっぱお前ら姉妹嫌いだ!俺は姉妹と一緒に寝たくねぇ!高校生になって姉や妹と一緒に寝るか!この姉妹は、この2人はやはり嫌いだ!!俺の大嫌いな家族だ!!」
「あれ、順序ってことは、段階踏めば一緒に寝ていいってこと?」
ギクッ。やべ、俺は間違えて順序って言ってしまった…。今から訂正するのもあれだしな…。
「勝手にしろ。お前ら姉妹がどうしようがお前らの勝手だ!ただし、拒否するがな。」
「はぁぁー!?やっぱアタシもお兄ちゃん嫌い!」
そんな会話をドア越しに聞くお姉ちゃんの伊織であった。
ご読了ありがとうございます。
作者の塩ボウズです。
今回で裕樹は伊織と砂亜菜のことを姉妹として認めた?のかな。
まぁ本人もおそらく段階を踏めばよいのではと思います。
だけど、未だに嫌いという感情は残っている。それを好きにする2人の治療を見届けてください!