今回はヒナちゃん視点からお届けします!
わたしたちが在学している亜麻百合高等学校では、定期テストが終わってしばらくすると、学年フロアの廊下に成績優秀者が張り出されるならわしになっています。
休み時間に張り出しが始まると、クラスはもちろん、フロアじゅうがてんやわんやの大騒ぎ。ちょっとしたお祭りみたいになるんです。
「まったく。よくその程度のことで大騒ぎできるわよね」
ウメちゃんはわたしの席のすぐそばで、そんなことを言いました。廊下の方をじぃーっと見つめています。
「あはは……ウメちゃんは結果、気にならないの?」
「当たり前じゃない。この天才美少女ロッカーにはね、新曲を上げる使命があるのよ。テスト勉強なんて二の次どころか三の次よ」
「でも、あんまり点数が悪いと補充になっちゃうんじゃ……」
わたしが心配になって言うと、ウメちゃんの肩がちょっとだけぴくりと跳ね上がりました。
「な、なにを言うのよヒナは! このあたしに限って、そんなヘマやらかすワケないじゃないの! ああでも、頭でっかちのエモコなら可能性あるわね!」
「エモちゃん、この間のテストでも5位だったし、それはないんじゃないかなぁ……あ、エモちゃん!」
窓をへだてた向こう側の廊下に、わたしたちが見慣れたうしろ姿が見えました。どうやらエモちゃんも、結果が気になっているみたいです!
「ウメちゃん! ほら、エモちゃんだよ!」
「ちょ、ちょっとヒナ待ちなさい! 別にエモコなんていつでも会えるんだし今行かなくたって――もうっ!」
わたしはウメちゃんの手を引っ張って、エモちゃんの下へと向かいます。
「エモちゃん! 結果どうだった?」
その背中に声を掛けると、エモちゃんはすぐに振り返ってくれました。その動作一つとっても悠々としていて、周りと比べても少し大人っぽい。そんなエモちゃんです。
「あら、ヒナですか。……おや、何やら付属品がついていますね。どこの雑誌の景品ですか?」
「誰が雑誌の景品よ! あんたの目はどーなってるわけ⁉」
「やけに豪華な景品と思ったら、ウメでしたか。今日もキャンキャンとやかましいですね」
「やかましくさせてんのはアンタでしょうがバカエモコ!」
「バカ……? 聞き捨てならないことを言いますね、この――」
エモちゃんがゆっくりと、掲示のほうへ目を向けました。わたしもウメちゃんも、それにつられるように、その名前を探しました。
そして、思っていたよりずっと早く――
「わぁ、エモちゃん2位だ!」
頂点から二番目に、堂々と輝いている「鰐淵エモコ」の文字。
惜しくも数点差で一位を逃していますが、三位以下とは大差を付けた結果でした。
「すごいねぇ、エモちゃん!」
「まぁ、当然の結果です。練習を控えればもっと高得点を望めましたが、勉強に対してそこまでしてやる義理がありません」
おすまし顔のエモちゃん。でも、ほんとはすっごく嬉しいんだろうなぁ。
わたし、ちゃんと知ってるんです。
エモちゃんが練習の合間、しっかりと勉強していたことを。
わたしとウメちゃんの邪魔にならないように、こっそりとです。もちろんエモちゃんは、そんなことはおくびにも出さず、いつも通りに振る舞っていました。
「ぐっ……アンタの要領の良さには、関心を通り越して虫唾が走るわね……!」
「それで? わたしのことを『バカ』呼ばわりしたウメは、一体どのあたりをさまよっているんですかね? ぱっと見る限り、ここには載っていないようですが」
「このへんの! ちょうど見切れたすぐのところよ! ……まったく、二十人じゃなくて三十人まで載せればいいのに、まったくなってないわね! この天才、九条ウメの名前が奇しくも掲載されなかったことに遺憾の意を表明するわ!」
「不出来を自ら露呈していく小気味のよいコメントですね。学力補充、せいぜい頑張ってください」
「ま、まだ分かんないわよっ! あれだけ答案用紙を埋めたんだもの、塵も積もればなんとやらって言うじゃないの!」
「ペケが積み重なったところで点数は増えませんよ? そろそろ算数ぐらいは習得した方が身のためだと思いますが」
「く……い、言わせておけばホントーによく回る舌ね! だいたいねぇ、アンタ――」
こんな感じのやり取りも、もはや日常茶飯事です。
わたしはニコニコしながら、仲良くけんかする二人の仲介役をします。
まぁまぁ、と取りなしてみたり。
一緒になって笑い合ったり。
たまにはずばっと、自分の意見を言ったりすることもあるんですよ!
4Uとしてバントを始めて、いろいろなことがありました。何かが起こるたびに、わたしたちは少しずつ、だけど気づかないままに変わってきてるんだなぁ……なんて、ふと思います。特にナナスタやKARAKURIの二人との出会いは、わたしたちにとって大きな変化でした。
でも、ずっと変わらないのは――ウメちゃんもエモちゃんも、そしてわたしも、「大の仲良し」ってことです。
いつまでもいつまでも、こんな日常が続けばいいなぁって。
このお話も、そんな日常の一コマなのでした。