充実していながらもどこか日常に物足りなさを感じていた少年。
そんなとき、ふと消えかかっている刀。
「この世界は、犯されている。頼む、力を貸してくれ。」
なんやかんやあって了承し、その刀を握るとフリフリでスリットの入った魔法少女服を纏うことに...

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俺は女装を強いられているんだ!!

高校一年の夏。

俺にとっては高校生として過ごす始めての夏だ。

中学生時代であれば、友達と海に行ったりとかどっか遠くの渓流に遊びに行ったり、果てには肝試しや夏祭りに浮足立った男女のラブロマンスなどと期待していた物である。

俺はこれでもミーハーなのだ。

 

しかし、そんな波乱とも言えるようなイベントはどうやら俺とは無縁らしい。

友達が居ないというわけではないが、態々放課後などに遊ぶほどは仲良くなく、それでいて日常という物は何も変わらず過ぎ去るからこそ日常というのを日々痛感させられていた。

 

割と充実しているからこそ、日々過ごす時間に閉塞感にも似た感覚を覚える。

要するに俺は退屈していたのだ。

子供らしい無邪気さから求めていた非日常、それと現実とのギャップを未だ受け止めきれていないのだ。

どこか物足りない。

 

例えば空から女の子が降ってくれば喜び勇んで受け止めに行っていただろうし、異能力に目覚めたらその力を振るっていただろうし、父親の作ったロボを見つけたなら取り敢えず乗っていただろう。

そのくらい非日常に飢えていたのだ。

心霊特番に釘付けになったりなどどこかガキ臭いと自分では思うが、それでも非日常に対する憧憬は止まない。

どんな物でも構わないから目の当たりにしたいと強く思っていた。

だけど.....。

 

「この世界は、犯されている。頼む、力を貸してくれ。」

 

目の前の道路に突き刺さり、刻一刻と風化している刀。

その刀剣からは苦悶に満ちながらも、なんとか言葉を紡ごうとする男の声。

それは目の前の道路に突き刺さった刀から発されていた。

 

....いや確かに非日常を求めていては居たけど、いくら何でも意味不明過ぎない?

 

 

 

 

 

 

平凡な日常というのは最も尊く、そして至上の物だ。

あまり変わり映えのしない毎日を過ごし、いつものルーティーンのようにやるべきことをこなしていく。

結構なことじゃないか。

ことあまり物を考えたり、神経を使う必要もないのだから。

 

あれほどまでに手を伸ばした非日常。

しかし、それを手に入れて初めて日常の得難さに気づいたのである。

失って初めて気づくとはこのことか。

 

今は授業中。

教壇では毛髪が少し怪しい感じの年配の教師が教鞭を振るい、それを生徒たちはノートに残している。

それこそ平凡な日常という奴だ。

しかし、俺の気はまったくと言っていいほどに休まらなかった。

それもそのはず、この日常はいともたやすく崩れ去る物だと俺は知っているからである。

 

『タケル、イマジネーターだ。イマジネーターが出た。今すぐに私を連れて変身してくれ。』

 

ほらな?

頭の中を響く若い男の声。

それは無遠慮にも俺に変身を急かしていた。

 

『あのなぁ....、お前今授業中なんだけど。俺、学生なんですけど?勉強が本分なんですけど!!』

 

そう、俺は学生。

それに高校1年生だぞ。

学生生活はこれからと言った者。

それこそ授業中に抜け出すような真似はしたくない。

不良というレッテル貼られそうだからな。

 

『そんなことを言っていられる状況ではないんだ。世界あっての本分、分かってくれ。私には君が必要だ。この世界は犯されている。力を貸してくれ。』

 

しかし奴も譲るつもりはないらしい。

まぁ刀に人間様の事情が分かるとは思っちゃいなかったが、ここまで来るとどうにもじれったい物である。

無理な物は無理なのだ。

それとも何か?お前がサボった分の学費でも払ってくれるというのだろうか?

てか事あるごとにそのフレーズ使うの辞めろや。

この世界は犯されているBotかよお前はよぉ。

 

『そもそも...お前、家にあるじゃないか。どうやって変身しろっていうんだよ。』

 

現在あの刀は玄関の傘立てに立てかけてある。

そりゃ見た目まんまヤクザの頭とかが持ってそうなポン刀だし、あんなものを学校に持ち歩けるわけがない。

休日とかは持ち歩くためになんか剣道の竹刀入れる袋とかに入れては居るが、俺は剣道部ではない。

だからこそ、学校にどうやっても持ってこれないのだ。

 

俺が問いかけると、刀は何を言っているのだろうと至極不思議そうな声色で言葉を紡ぐ。

 

『どうやってって....君が今から急いで家に帰って私を掴み、そのまま変身する以外ないのだが....。』

 

『無茶言うなよ。今から家に帰るだと??』

 

確かに俺の家は学校から近い。

しかし、授業もあるのにサボるだけに飽き足らず家に帰るなどと最早それは完全な不良じゃないか。

それ以外何か見出してくれよ手段を。

俺に凄い負担かかるじゃないか。

 

『しかしそれならばやはり私の提案通り、私を携帯するというのが正しいと思うが....。』

 

『だからぁ...日本社会には銃刀法違反って物があるの。だからお前を持ち歩くことは無理なんだよ!....てかお前の方こそなんとかしろよ。なんかこっちに飛んできたりとか、なんか別の物に変わるとか。』

 

俺が言うと、少しの間を置いて奴が答える。

 

『...うむ、無理だな。やはり私が力を行使するには君の存在が不可欠だ。それに、私はXキャリバークサナギ。一振りの刀でしかない。』

 

一振りの刀は喋らねぇだろ....。

Xキャリバークサナギ...略してキャリバーは真面目な調子を崩さずにそう続ける。

普通意思があるタイプの武器ってもっとこうさ....融通が利くものじゃん。

なんか名前呼んだら飛んできたりとか、持ち運びしやすいように小さくなったりとか。

今のお前ただのおしゃべりポン刀だぞ。

 

『とにかく、授業が終わるまで待ってくれ....。行くとしてもそれからだ。』

 

『....君がそういうのであれば仕方ないか...。』

 

そういって黒板に目を戻す。

やれやれ....わかってくれたならいいんだが。

板書を引き続き始めると、また頭の中で声が響きだす。

 

『今、この瞬間も...もしかしたら、イマジネーターが誰かを襲っているかもしれない....』

 

思いつめたかのようにつぶやくキャリバー。

...板書板書。

 

『私が自由に動ければ.....!一振りの刀でなければ.....!!』

 

聞こえない聞こえない。

はえ~ここはこの数字を当てはめればいいだけなのか....。

 

『私は....なんて無力なんだ...っ!』

 

『...めちゃくちゃアピールしてくるじゃんお前。』

 

再度声が響いた瞬間、思わず話しかけてしまった。

だってほら、なんかすごい俺が悪いことしてるみたいじゃん。

なんだろう、真綿で首を絞められているような感覚だわ。

もっと言いたいことがあるならはっきり言ってほしい。

全然集中できないわ。

 

『なにが....そういうことか。いや、私はそんなつもりはないとも。君にはなによりも優先するべきことがある。それも尊重されるべきだ。これは時節が悪かった。仕方ない。たとえ犠牲が出たとしても、気に病まないでくれ。』

 

どうやらキャリバー自身もアピールしているつもりはなかったようだ。

余計に質が悪いわ。

 

『そんなこと言われたら逆に気になるわ。あぁ~、もう分かったよ!行けばいいんだろ?今から!!』

 

こんな風に言われたら行かないといけない気になるじゃないか。

すると、キャリバーは申し訳なさそうに声を発する。

 

『いいのか....?』

 

『...なんかこれで誰か被害が出てたりしたら俺がすごい外道みたいな感じがして嫌だし....。』

 

まぁ正直被害が出てるかどうかなんてわかったものではないが、それでもそんな風に罪悪感を煽るような感じで言われたら行かざるを得ないだろう。

一振りの刀とか自分の事言っておきながら卑怯な手を使うものである。

 

『ありがとう、タケル。これで私は自分の使命を果たすことが出来る。』

 

どうやらキャリバーはご満悦の様子。

まったく勝手な奴である。

しかし、それならばどうやって授業を途中で抜け出すかだが....。

 

「伊勢野....おい伊勢野!!」

 

「はい!!」

 

語気強く呼ばれて咄嗟に立ち上がる。

周りを見ると、クラスの視線が俺に一心に突き刺さる。

前の教師は、俺をただ粛々と見ていた。

 

「当てているというのに上の空で、そんなに私の授業は退屈か?」

 

「あっ...いや.....そういうわけでは......。」

 

周りの生徒...というか昼休みとかでもそこそこ喋る相手である中村がにやにやとこちらを見て笑っていた。

あの野郎....他人事だからってぇ....!

しかし、まさかキャリバーに気を取られたばかりにこんなヘマをやらかすなんて....。

だが、これはもしかしたらこの場から良い感じに離脱できるかもしれない。

取るべき手段としてはただ一つ...!

 

「すいません....、ちょっと頭痛が酷くて頭がふらついて.....。」

 

「そ、そうか。大丈夫か?貧血か??」

 

女の子かよ。

しかし、相手から切り出してくれるならこれほど楽なことはない。

これに乗らない手はない!

 

「分からないです。ただ...その、気持ち悪いのでトイレに行ってもいいですか?」

 

「あぁ。...それでもきつかったら遠慮せず保健室に行っていいぞ。」

 

俺は教師に一礼して、教室を出る。

なんか最後まで心配してもらっていた分、なんか罪悪感が湧いてきた。

トイレから曲がって階段を下りる。

そして、1階にまで降りると下駄箱へと足を向けた。

 

『出来れば早く来れるように努めてもらえると助かる。』

 

『お前、人のこと授業中に駆り立てといて図々しいなオイ。』

 

靴を履き替えながらもキャリバーに突っ込む。

そもそもお前のせいであんな風に恥かいた感じになってるんだよなぁ。

トイレで抜けて授業終わりまで戻ってこなかったら怪しまれそうだなぁ....。

嫌だなあ...叱られたくないなぁ、しかも俺がやりたいことやった結果で叱られるわけでもないしなぁ。

 

そして、下駄箱から全速力で駆け出す。

門を抜けると、坂道が俺の足を苦しめる。

しかし、ある程度のピークを越えると、下り坂になる。

そしてその中の住宅街の一つ。

その一角に俺の家である一軒家が経っている。

 

まぁ両親は海外出張で、妹は中学生の女子を置いておくわけにもいかずに一緒に海外で居る。

俺しかこの家には居ないのである。

だからこそ、あんな銃刀法違反に中指立てているようなポン刀を家に置けるのだが。

 

正直ここまですんなり来れたのが奇跡だと思う。

他の教師に見られていたら、説明に困っただろうからな。

 

切れる息をなんとか落ち着かせながらも、顔を上げて玄関の扉のノブを掴む。

そして捻ると、扉を開いた。

傘立てに似合わず立てかけられたポン刀。

 

「よく来てくれた。さぁ、私を掴んで行くといい。場所は私が案内する。」

 

「はいはい.....。」

 

溜息を吐きながらも、刀を握る。

そして玄関付近の戸棚に入れている刀を隠すための袋に入れて、駆け出す。

すると、キャリバーが声を響かせる。

 

「そこから曲がってアーケード街、さらに進んで左に曲がってくれ。」

 

「案外近くじゃねえか.....!」

 

ぼやきながらもまた全速力で走り続ける。

人通りの多い路地を抜けていき、アーケード街の奥地へ。

活気がなくて店は閉まったものしかなく、人気はない。

ただどこかべたりと張り付くような嫌な感覚。

 

「イマジネーターはそこの路地裏だ。」

 

「そんな化け物がいるようには思えない....が。」

 

「以前の奴と同じく、パーソナルスペースを形成している。そこ一帯は簡易的な異界と化していると見て間違いないだろう。」

 

「そのタイプか....、それなら俺としては助かるけど....!」

 

俺は口元に笑みを浮かべる。

であれば誰かに見られる恐れはないというわけだ。

それならただ叩きのめせば良いだけだから楽だし、それになによりも俺の精神衛生上この上なく良い。

 

一歩足を踏み入れる。

そして数歩足を進めると、何かが張り付くような感覚と共に周囲の風景が変わる。

紫の光も届かない暗がり。

白い糸が路地裏をまるで装飾していると言わんばかりに垂れ下がっている。

そこにそれは居た。

 

下半身が大きな蜘蛛のようになっている女。

顔は黒いベールで隠していて見えない。

割とデカいな....。

 

そう思いながら、キャリバーを袋から取り出す。

すると、蜘蛛の向こう側。

そこに何かが糸に引っかかっているのを発見する。

 

「あ、あれって....なんでこんなところに俺のところの生徒が居るんだよ!!」

 

「なに!?タケル、君の学友か!?」

 

キャリバーが声を上げる。

糸に引っかかっているのは俺の学校の制服を身にまとった栗色ウェーブの少女。

表情を引きつらせながらも、恐怖に顔を歪めていた。

蜘蛛から発せられる紫の煙が顔にかかり、体をびくりと揺らしていた。

 

「今は...学校がある時間だろうが.....、そんなところに居やがって....。」

 

「タケル!何はともあれ変身だ!!」

 

「分かってるって!!」

 

歯噛みする。

後顧の憂いはないとしても同じ学校の、異性の前で変身するなんて滅茶苦茶気が進まない。

そもそも変身すること自体、出来るだけ避けたいのに最早忌避感はひとしおだった。

 

「...すぅ~、行くぞ。キャリバー。」

 

「了解。」

 

キャリバーの鞘を引き抜いて、刀身をその場にあらわにする。

すると、何かを感じ取ったのか蜘蛛女はバッとこちらを振り返る。

 

手に持つ刀を、地面に突き刺す。

そして、口を開いた。

変身するための、詠唱をするために。

 

「ピュエラマギキリーキリー....マイハァァァァト!!!!」

 

「OK. Puella Magi Killy Killy My heart」

 

そう言うと、機械的に変わったキャリバーの声と共に足元にピンク色の魔法陣が広がっていく。

そしてその瞬間、ピンクの光に照らされると同時に自分の服が消失したのを感じる。

光の粒子は俺にまとわりつくと、新たに衣装を形成し始める。

胸元に大きなリボンにハートがついたピンクと白のフリフリドレス。

薄ピンクの手袋に、ガータベルト、女性用下着。

 

あぁ、フリルのスカートになった瞬間すごい股辺りに風を感じる。

すごくスースーする...。

世の女性はこんなものを身にまとっているのか....下の防御力が酷いじゃないか正気か?

正気じゃないのは俺の恰好の方か。

仕上げとばかりに、ピンクのヒールブーツに頭にはハートとリボンがベレー帽のようなものを被る。

それは典型的なピンク系魔法少女の服だった。

それを身にまとっているのは恰幅も普通にあるくらいの男子高校生の俺。

もうね、自分の事は自分では見れないが酷い絵面であることはわかる。

 

「マホウ....ショウジョ....ショウジョ?....マホウ...ヘンタイ....?」

 

「変態....?」

 

「うぐぅ....!?」

 

イマジネーターに疑問符付けられるのは慣れてはいるが、普通の女の子に言われるとなかなかきつい。

精神的に打ちのめされそうだった。

ていうか、拘束されてるんだったらなんもしゃべるんなよぉ!!

 

「どうした!?大丈夫かタケル!!?何か相手の能力か!!?」

 

「うっさいから...さっさと終わらせるんだろぉ!!」

 

そんなことにはまったく気づいていないキャリバーに怒鳴りながらも、ドスを構える。

すると、蜘蛛女はこちらにしっかりと体の向きまで向ける。

どうやら俺の方に意識を完全に向けることにしたようだ。

まぁ、コイツらにとっては天敵である魔法少女だからな、俺は。

....魔法少女なのか?俺は。

いや、違うよなぁ.....。

 

すると、蜘蛛女は手を広げる。

すると、その指先がきらりと輝いているのが見えた。

なにか...来るっ!

 

それを感知して、跳び上がる。

すると、指先から白い何かが飛んでいく。

 

「...これは、糸か。マジで蜘蛛じゃねぇか!」

 

「面妖な.....。」

 

空を蹴る。

そして、刀を振りかざして奴に突っ込もうとする。

さっさと勝負決めて、さっさとやることやろう。

少しでもこの格好で人の目に映っているのが嫌だった。

 

すると、周りの巣から糸が飛んでくる。

これは...こういう罠だったのか。

 

「どうすればいい、このままじゃ絡めとられて....。」

 

「私が魔力を放出する。回ればなんとかなる!!」

 

「特撮じゃねぇか!!」

 

キャリバーの言葉に反芻するも、奴が言うようにする以外ない。

だからこそ、俺は回り始める。

糸が足に絡むも、魔力によるものか弾かれる。

次々と糸を弾いていくが、それと同時に高速回転したことによって胃の腑がかき乱されて吐き気が湧いてくる。

 

そして、回転するままに刀を奴にかざす。

 

「ソンナ...イトガ.....。」

 

「こういう結界的なの貼ってる奴は弱いんだよぉぉぉぉ!!!」

 

叫び名がらも勢いのままに刀身を振り下ろす。

脳天からざっくりと奴の頭に刀を差し込む。

すると、体がびくびくと激しく痙攣する。

そして、力なくへたり込むと光の粒子となって空へと霧散していく。

 

「うぇぇ...気持ち悪い....。」

 

吐きそうになりながらも、彼女に向って歩みを進める。

彼女はこちらに怪訝な視線を向けている。

そりゃ突然目の前に変態が現れて、その変態が高速回転しながら目の前の怪物をドスでぶち殺してたのだからそうなるわ。

 

糸を引きちぎると、彼女に声をかける。

 

「え、えーと...大丈夫か?」

 

「は...はぁ....、ありがとうございます。」

 

変態相手にどこか警戒しながらもお礼を言ってくる彼女。

やっぱ傷つくなこの対応。

結界はどうもゆらゆらと歪んでいる。

どうやら蜘蛛女が居なくなったことで結界自体も崩れていっているのだろう。

 

「...やらないのか?タケル。」

 

「やるよ、やるに決まってんだろ!!はぁ~~~。」

 

「???」

 

彼女はどうにも理解していない様子。

だが、俺としてはこれからやることはとても重要なことなのだ。

手でハートを作る。

そして、なんとか笑顔を浮かべると生理的拒否感から湧いてくる声の震えを抑えつつ、言葉を発した。

 

「わ、...忘れろ❤忘れろ❤わすれろ..び、ビィィィム❤❤❤」

 

俺、なんでこんなことしてるんだろ。

アレかな?前世で悪いことでもしたのだろうか?

男子高校生がやるにはあまりに気持ち悪すぎるかわい子ぶりっ子なしぐさ。

しかし、ただとち狂ったわけではない。

 

俺がそういった瞬間、刀がピンク色に光りだす。

情報抹消魔法。

これで俺が魔法少女になったという情報は残らず、人はその記憶を失いしばらく気絶する。

俺がこんな変態じみた格好をしても自殺をしない最大の理由がそれだった。

 

よしっ、これで俺の痴態は残らない....。

 

「...なにしてるの?」

 

光が収まると、彼女はまるで意味の分からないものを見るような目線で俺を見ていた。

...あれ、気絶していない。

 

「おい、気絶してないぞ。」

 

「おかしいな。もう一度やってみてくれ。」

 

キャリバーがもう一度やるように言ってくる。

マジで言ってんのか?

いや、頭おかしいでしょサイコパスから教育受けたのかよ。

しかし、やる以外に道はない。

なぜなら、出なければこの少女は俺のあんな姿を覚えてしまうから。

 

「忘れろ!!忘れろ!!!忘れろビーム!!!!」

 

自然と力が入る。

するとキャリバー側にも思うところがあったのか、いつもより少し長めに光る。

しかし、光が収まると彼女は更に首をひねった。

 

「...あなた、本当何やってるの?」

 

膝から力が抜けていく。

これは...まさか、通じていない?

 

「どういう....ことだ....。」

 

理解ができない。

すると、キャリバーはゆっくりと口を開いた。

 

「通じない...つまりは、これは....驚かしいことではあるが....。」

 

「...もったいぶらなくていいからさっさと教えろよ。これ、なんとかできるのか?お前側の落ち度じゃないのか!?」

 

刀にキレ散らかす女装男子高校生とかいう珍妙な光景。

すると、ゆっくりとキャリバーは言葉をつづけた。

 

「...彼女に魔法少女の素質があるからとしか思えない。」

 

「え、じゃあどうしようもないってことか!?」

 

「本当に申し訳ない....。」

 

ということは、目の前のコイツは俺のあの姿や痴態を覚えているってことか。

うん、そうなったらもう俺が取るべき行動は一つだな。

キャリバーを手に取ると、ゆっくりと刀を腹に翳す。

 

「...死のう。」

 

「待てっ!早まるなタケル!?どうしたんだタケル!!」

 

どうにもキャリバーは俺がなぜこうしているのか理解できないもの。

やっぱ刀はだめだな。

人の気持ちとか分からないもの。

すると、目の前の彼女もゆっくりと立ち上がるとどこか状況は理解してないくせに優しい表情を浮かべる。

 

「早まらないで!!大丈夫、私黙ってるから。人の趣味を笑うなんてことしない....。」

 

「趣味じゃねぇよ!!俺はやりたくてやってるんじゃないんだよぉ!!!」

 

結界が解かれる。

人気のない路地裏に俺の声が響き渡っていた。


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