TS転生した機械義肢の女冒険者が冒険者仲間と駄弁ったり冒険するだけの話

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第1話

なあ。突然で悪いんだが、ちょっと話を聞いてくれないか。

 

俺、いや・・・・・・今となっては『私』だな。私は転生者だ。今世での名前は『マキナ』。

 

それもただの転生じゃない。性転換・・・・・・所謂『TS転生』ってやつだ。私は元々男だったんだよ。

 

え?口調がいつもと違うって?これが素なんだよ。修道院は堅苦しいからな。普通に喋ってたらシスター長にボコボコにされちまう。あの人滅茶苦茶強いからな・・・・・・

 

で、なんだっけ?・・・・・・ああ、そうだ。私が転生者だってことはさっき言ったな。疑わしいって?気持ちは分かるぜ。同じ立場なら私だって疑うだろう。でも本当の話なんだよ。まあ物的証拠があるわけじゃないけど。

 

最初はかなり混乱したよ。なにせ交通事故で死んだと思ったらいきなり赤ん坊になっちまってるんだからな。誰だって驚くだろう。異世界転生モノのマンガや小説がありふれた時代を生きていたが、それらはあくまでフィクションだ。まさか自分が当事者になるなんて普通は思わない。いや、妄想くらいならするかもしれないが。

 

だが、驚いたのはTS転生したからってだけじゃなかった。なんと、私には生まれつき四肢がなかったんだ。それはお前にも話したことがある・・・・・・というか、修道院に来る奴らは全員知ってるよな。なにせこんな見た目だ。分かりやすいだろ?

 

それで、だ。私はこの世に生を受けた直後、母親に捨てられた。まあ、仕方なかったと思うぜ。私の母親は身寄りのない場末の娼婦だったからな。父親が誰か分からない上に四肢の欠損だ。育てていく自信がなかったんだろうよ。自分がその日を生きるだけで精一杯だったろう。・・・・・・いや、恨んではいないよ。私を産んでくれた。それだけでもありがたい話だ。

 

そんなわけで捨てられた私は、この街の外れにある修道院に拾われて育てて貰ったんだ。シスター長に拾って貰った時の私は、きっと世界で一番幸運だっただろうな。勿論今も充実してるけど。

 

不安はなかったのかって?全くなかった・・・・・・と言えば嘘になるが。それでも話を聞いた時は年甲斐もなくはしゃいだもんさ。なにせ、修道院が信仰しているのは『機械の神』だ。何を隠そう、前世の私は機械技師でね。機械いじりが大好きだったのさ。

 

え?そもそも『機械』が良く分からない?・・・・・・まあ、そうだな。この世界、前世で言うところの中世ヨーロッパに酷似してるし。機械じゃなくて魔法が発達した文明だし。

 

だから『機械の神』の名前が失われたんだろうなぁ・・・・・・信仰しているって公言してるのも、私の知る限りじゃウチの修道院だけみたいだし。マイナーな神なんだろうよ。

 

え?結局機械って何なの、だって?私の両腕と両脚がそれだよ。材料が魔法金属で魔力を流すことで駆動してるが、構造自体は前世の機械技術を流用してるんだ。私が作ったんだぜ?凄いだろう。もっと褒め称えろ。そして『機械の神』を信仰し・・・・・・嫌だって?まあ、そうだよな。言ってみただけさ。

 

まあ、そんな感じで新たな人生を楽しんでいたんだが、(シスター長が勝手に決めた)私の誕生日が来てな。15歳になったんだよ・・・・・・ああ、ありがとう。漸く成人になれたよ。

 

それで、以前からシスター長に相談していた事があってな。私が成人したら、修道院を出て『冒険者』になるって決めてたんだ。

 

最初は滅茶苦茶怒られて、引き留められたけどな・・・・・・シスター長も、私が他の修道女達とは何かが違うって気付いてたみたいでさ。最後は送り出してくれたよ。いつでも帰ってきて良いって言われた時、ぶっちゃけ私は泣きそうだった。ついでに『機械の神』の布教もしてこいとも言われたけど。

 

それで冒険者ギルドに登録に来たときに出会ったのが、同じ日に登録したお前だったってわけだ。以上。話終わり。

 

え?どうして今こんな話をしたのかって?私達、コンビを組んでもう一ヶ月だろ?これ以上隠し事をするのは良くないと思ってさ。元男のシスターだって分かって軽蔑したか?

 

・・・・・・気にしてない?本当に?・・・・・・ありがとう。正直不安だったんだよな。見捨てられて、パーティも解散させられるんじゃないかって・・・・・・

 

・・・・・・ああ、嬉しいよ。これからもお前と一緒に冒険できるなんて。お前と我が神に感謝だな。

 

 

 

 

 

 

ん?恋愛対象?女だけど。

 

ああ。よくフィクションだと、魂が身体に引っ張られて趣味趣向が変わる、なんて話があるけど。私は特に変わってないなぁ。恋愛も性愛も女が好きだよ。いつか恋人を・・・・・・なんて贅沢はいわないが、セックスはしてみたいなぁ。男の頃は味わえなかった女の快楽にも興味あるし。

 

え?宿屋に行こう?まだ昼だぞ?これから簡単な依頼でもこなそうかと思ってたんだが・・・・・・そんなことどうでもいいから早く行くぞ?おいおい、いったいどうしたんだよ?

 

はいはい。分かった分かった。行くよ。行けば良いんだろう?ああ、店主さん。お代はここに置いておきますね。ありがとうございました。美味しかったです。また寄らせて貰いますね。

 

いきなり口調を戻すな?ビックリする?うるさいな。別に良いだろ?素の状態で話すのはお前と一緒に居る時だけなんだし。

 

ん?どうした?・・・・・・もう我慢できない?一刻も早く宿屋に行く?・・・・・・顔が赤いな。もしかして、具合が悪いのか?・・・・・・すまん、配慮が足りなかったな。すぐに行こう!

 

・・・・・・どうしてそんなにニヤけてるんだ?女がその顔じゃ色々マズいだろ・・・・・・

 



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