裁判後、その場所は静まり返っていた。そして、その場所に居たのは、武装国家ドワルゴンの王、ガゼル・ドワルゴと、先ほどの裁判を起こしたベスターである。
「さてベスター、何が言いたいのかわかるな?」
「こ、これは誤解です王よ!!何かの間違いでございます!!」
情状酌量の余地がないというのに、いまだに見苦しくわめきたてるベスター。対するガゼルは、感情を除かせない冷酷な態度で、ベスターを追い詰める。
「誤解、か・・・。余は忠誠な臣下を一人失うことになるとはな」
「何を仰る!!あの様な者など王に忠誠を誓うどころか、どこの馬ともわからぬ・・・」
「ベスター、お前は勘違いをしている。カイジンの奴はすでに余のもとを去っている。余が失う忠実な臣下は、ベスター、お前のことだ」
一瞬、ベスターはガゼルが何を言っているのか理解できなかった。
王は今、なんと言った?失うのは、お前だ?
聞き間違いだと思い、何度も先ほどガゼルが言ったことを考える。だが、何度考えてもガゼルが言った言葉は変わらない。ガゼルが失う忠実な臣下はベスターなのだ。
「ベスター、なにか言いたいことはあるか?」
ガゼルが問うてくる。ベスターは、なにか弁明しようとするが、恐怖のせいで、何も言えなかった。
「余は、お前に期待していたのだ。ずっと、待っていた。魔装兵事件の際も、お前が真実を話してくれるのを待っていた。
そして、今回も。これを見よ」
そう言って、ガゼルはとある3つの品を指差す。いつの間にか近習によって運ばれてきていた。ベスターは、それらを虚ろな目で見る。
3つの品はカイジンが鍛造し、我が魔王が仮面ライダービルドの力で複製したロングソード。我が魔王の友、リムルがドワーフ達に使用したポーション。そして、濃密すぎて弱者には見えないオーラを可視化することができる水晶である。
「教えよ」
ベスターが不思議に思っていた謎の球体、ポーションについて、近習が解説を始めた。
解説を聞いたベスターがその内容を理解するのに、しばしの時間を有した。
ヒポクテ草から抽出された液体で作られる回復薬。それはこの国でも大量に作られていた。だがしかし、作られたポーションには、完全にちぎれている腕や足などをもう一度くっ付ける程の効果は持っていなかった。なぜかというと、この国のすべての技術を使って抽出できるのが、98%までであったからである。しかし、このポーションはこの国の技術で越えることができなかった1%を越えた完全回復薬というものである。
なぜ越えることができたのか?なぜそんなものが作れたのか?知りたい!!
ベスターは血走った目で回復薬を見た。
さらに、近習がなんの変哲もないロングソードについても解説を始めた。なんと、本来であれば十年、鋼に馴染ませてから行われる魔鋼の侵食がすでに始まっているというものであった。
あり得ない現象が、物が目の前に存在している。その事にベスターの脳が活性化され、そして一つの答えにたどり着いた。それは
「このポーションとロングソードを齎したのは、あのスライムと人型の魔物、ソウゴ。いや、カメンライダージオウと言うべきか。お前の行いがあの魔物達との繋がりを断った。その意味がわかるな?さらに、この水晶の映像を見よ」
水晶によって映し出されたのは、我が魔王の姿であった。
「これはカメンライダージオウのオーラを可視化したものだ。お前は戦闘職についていなかったせいか、わからなかったと思うが、彼が出していたオーラは余は愚か、いまにも魔王に覚醒しそうな勢いのものだった。まさに、時の王者という名にふさわしいのもののな」
映像に映る我が魔王のオーラ、そして、我が魔王の背後に映る、未来の我が魔王の姿に恐怖するベスター。
わ、私は、こんな化け物にあのようなことをしていたというのか!?
「この国が無事であったのは、ソウゴが寛容であったからである。ベスター、なにか言いたいことはあるか?」
ベスターは、ガゼルの怒りの深さ、そして、あの瞬間、あの裁判がこの国の命運を左右していたことを知り、そして理解した。自分には、なにか言うべきことなどないのだと。
「王よ、何も、ございません」
ベスターの目に涙があふれでてくる。
自分は、王に捨てられた。その事を初めて理解できた。
王の役に立ちたかった。そして、王に認めてもらいたかった。ただそれだけだったというのに、私は、どこで道を間違えた?カイジンに嫉妬をしたときか?あるいはもっと前か?だが今さら考えても遅い。時は前にしか進まない。過去を変えることは不可能なのだ。
「で、あるかベスターよ。お前には、王宮への立ち入りを禁止する。余の前に、二度と姿を見せるな。
だが、最後に一つ言っておこう。大義であった!!」
ベスターは、王の言葉を聞くと、立ち上がり去っていった。ン我が魔王とリムル、そしてカイジン、ドワーフ三兄弟の証言代理人はすぐに逃げ出した。だが、この国の暗部の人間にすぐ捕まってしまった。
「暗部よ!すぐにあのスライムと時の王者の動向を探れ!!絶対に気取られるな!!絶対にだ!!特に、あの時の王者には!!命の危険がある!!」
念を押してまで発せられる命令。その重要さ、そして危険を感じ、気を引き閉める暗部。
「この命に代えましても!!」
そう言い、暗部は闇へと消えていく。
と、ここまでが、この逢魔降臨歴に書かれた、我が魔王の歴史である。お楽しみ頂けただろうか?この後、ドワーフ三兄弟やカイジンの活躍があり・・・おっと、これはあなた方がまだ見ていない未来の出来事であった。