シュナの飯を食べたあと、俺は、カイジンの様子を見に行くと言ったリムルのあとについていった。
「へー、焼き入れん時の温度は勘なのかい!」
「んだ!火の色を見れば大体わかるだよ」
「おらぁ計るなぁ」
クロベエとカイジンは職人同士すっかり意気投合し、かれこれ二時間、専門的な話を始めた。黙って聞いてるこっちはなに言ってんのかさっぱりわからん。
「な!」
「鍛造って面白いべぇ?」
「え、あ、うん」
「お、おう」
ガチャ。
誰か来たようだ。
「リムル様とソウゴ様はいらっしゃいますか?」
「ん?どうしたの?」
「リムル様!ソウゴ様!
どうやらお客さんが来たようだ。たしか蜥蜴人族って湿地帯に住んでるからここら辺には来ないはずだよな?
「リムル様!ソウゴ様!」
リグルドについて、その使者のところへ向かおうとすると、紅丸、紫苑、白老が現れた。
「俺たちも同席して構わないか?蜥蜴人族の思惑が知りたい」
「もちろんだ!」
「俺も構わないよ」
さて、果たして、敵か味方か、それとも救援を要請しに来たのか・・・。
紅丸達と共に、蜥蜴人族の使者のところへ向かうと、槍を持った蜥蜴人族達がいた。
「どいつが使者だ?」
リムルが問いかけると、蜥蜴人族達は槍の柄で、地面を一斉に叩き始めた。まるで王様が登場するみたいだ。
すると、背後から小さな竜に乗った蜥蜴人族が現れた。どうやら、彼が使者らしい。
「とーう!!」
その蜥蜴人族は竜から飛び降り、名を名乗り始めた。
「我輩は、蜥蜴人族のガビルである!!お前らも配下に加えてやろう、光栄に思うがよい!!!」
「よっ!ガビル様!」
「最高ー!!」
「カッコいい!!」
「イカしてる!!」
ずいぶんおバカな使者だな。
「ご尊顔をよーく覚えておくがよいぞ!このお方こそ、次の蜥蜴人族の首領となられる戦士長、頭が高い!!」
なーんか仲間の過剰な評価に完璧に乗せられちゃってるなぁ。誉められたらダメになるタイプの子か・・・。親は相当苦労してるだろうなぁ。
「ちょっと!紫苑さんやめて!!スライムボディがスリムボディになっちゃうううううう!!」
「ハッ!すみませんすみませんすみませんすみません!!」
どうやら、紫苑ちゃんは怒りのあまりリムルを握りつぶしていたようだ。
「うぉっほん!恐れながら、ガビル殿ともうされましたかな?配下になれと突然申されましても・・・」
「やーれやれ、皆まで言わんとわからんか、貴様らも聞いておるだろう、豚頭族のブタ共が、このジュラの大森林を進行中だという話だ」
そうなんだ。そういえばこの前、オークロードの話を紅丸から聞いたな。たぶんその軍勢のことだろうな。
「しからば、我輩の配下に加わるがよい、このガビルが、貧弱なお前達を、オークの脅威から守ってやろうではないか!!貧弱な!貧弱。貧弱?わーお」
おっと、紫苑のデカパイに目を持ってかれたな?俺もたまに持ってかれる。
すると、ガビルは仲間と話し合いを始めた。たぶん、こんなこと言ってるんだろう。
「ゴブリンがいないようだが?」
「あれー?」
「ここは確かゴブリンの村のはず」
「ていうか、貧弱な奴が誰もいないよ?」
オークロードと戦うために、蜥蜴人族と共闘するのはいいんだけど、あのおめでたい子だとなぁ。頼りないというか、学習能力無さそうっていうか。
「あー、おほん!聞けばここには、牙狼族を飼い慣らしたものがいるそうだな?そいつは幹部に引き立ててやる。連れてくるがよいぞ」
「ぐぅうううう!」
あ、また紫苑ちゃんがイラつき始めた。
「リムル様、ソウゴ様、こいつ、殺していいですか?」
「いいよ!」
え!?許可出すの!?
「ってNO!NONOOOOOOO!えっと、牙狼族を飼い慣らしたというか、仲間にしたのは俺なんですけど?」
「スライムが冗談を言うでないww」
「あ?ランガ!」
あ、ちょっとイラッとしたみたい。影からランガが現れ、ガビルの前に立つ。
「お前に話があるようだ、聞いて差し上げろ」
「御意!」
ランガはスキル、威圧を使い、蜥蜴人族を怯ませる。そういえば、なんかでかくね?
「あれ?あんなにデカかったですかね?」
「あれが本当の大きさなんだよ。まっ、威嚇するにはあのサイズが調度いい」
「へー」
あんなデカかったんだ、ランガ。子供大泣きだな。
「主より、お前の相手をすることになった。聞いてやるから話すがいい」
「貴殿が牙狼族の族長殿かな?」
おー、ガビル、ランガの威圧に耐えてる。根性だけはあるようだな!!
「美しい毛並み、鋭い眼光。さすが威風堂々ある佇まい。しかし、主がスライムであるとはいささか拍子抜けであるな!」
「ああああん!?」
アイツ煽るのうまいな。
「貴殿は騙されておるようだ。よかろう、この我輩が貴殿を操る不埒ものを、倒してみせようではないか!」
「ガビル様カッケエエエ!!」
「見せてやってくださいよガビル様ぁああああ!!」
「ガビル無双!!」
「「「あそーれガビル!ガビル!ガビル!ガビル!」」」
「ハッ!んあっ!ハァッ!!」
なんかポーズ取り出したし。
「蜥蜴無勢が、我が主を愚弄するとは・・・」
あ、アイツ死んだな。
「おー!なにやってるんすか?」
「ゴブタ!?」
「お前生きてたのか!?」
「まーたまたひどいっす!ちゃーんと生きてるっすよ!!」
『告:個体名紫苑の料理に抵抗して、毒耐性を獲得したようです』
紫苑の料理毒なんだ・・・。なんちゅうもんを作るんだ紫苑。
「いいところに来た」
「え?」
ランガがゴブタを持ち上げ、槍を持たせると、ガビルの前に出した。
「え?なんすかこの状況!?」
「蜥蜴、この者を倒せたのなら、貴様の話し、一考してやろう」
「な、なんでぇ!?」
おー、冷静に対処できるようになってる。成長してるんだなぁ。
「構いませんぞ!部下にやらせれば恥はかきませんからなぁ。なぁ、スライム殿?」
「むっ、ゴブター、遠慮いらん、やったれー!」
「えー、なんなんすかもー」
「勝ったら黒兵衛に頼んで、お前専用の武器を作ってやる」
「おー!ほんとっすか!ちょっとやる気出たっす」
「負けたら紫苑の手料理の刑な!」
「それだけは勘弁っす!!」
あ・・・。
「なにやら非常に
そんなこと言うからだよ。
そんなことはさておき、ゴブタと向き合うガビルの方を見ると、高速で槍を回し、構えていた。
「準備は、いいかな?」
「うぉおおおおおおお!!」
すごい気合い入ってるなぁゴブタ。そんなに紫苑の料理って酷いんだ。見たことないからわからないけど・・・。
「では、始めろ!!アォオオオオオオン!!!」
審判のランガの遠吠えにより、試合がスタート。
「偉大なるドラゴンの末裔、我ら蜥蜴人が、ホブゴブリンなんぞに」
「ふっ!」
余裕の表情で挑発するような台詞を言っていたガビルに槍を投げるゴブタ。
「ぬおっ!?おのれ小癪な!!」
槍に気を取られたガビル。すぐさま槍を振るうが、そこにゴブタの姿はない。
「なっ!消えナァアアアアアアアアアアアアァァァァァァフッ」
ガビルの影からゴブタが現れ、後頭部を蹴り飛ばし、試合は終わった。ガビル陣営は地獄絵図である。
ゴブタあんなことできるようになってたんだ、すげぇえええ。俺は鏡の中しか移動できないからな。
「勝負あり!!勝者、ゴブタ!!」
「よし!」
「よぉおし!」
「やった!」
ランガとリグルドにどあげをされ始めるゴブタ。みかけによらず成長してるんだなぁゴブタ。
「さすがはゴブタ、我が見込んだだけのことはある」
「ようやった!ホブゴブリンの力をよく見せつけた!!」
「見直したぞ、私に対する失礼な発言は、聞かなかったことにしてやろう」
いやぁそれはどうかな?一応覚えといた方がいいんじゃないかな?
「俺達と戦ったときより、強くなっているようだな」
「鍛えがいのある才能を持っているそうですじゃ」
額に汗を垂らすリムルの姿が見え、どうやらそんなに期待していなかったようだ。だが、すぐに持ち直し、空気を読んでゴブタを誉めた。
「やったなゴブタ!約束通りクロベエに武器を頼んでやる!」
「やったスッ!!」
「お前ら、勝負はゴブタの勝ちだ!」
「「「「ハッ!!」」」」
「オークと戦うのに協力しろと話なら、検討しといてやるが、配下になるのは断る!!今日のところはそいつを連れて帰れ!!」
気絶したガビルを二人係で担ぐと、
「いずれまた来るぜ!」
「然り!」
「これで終わりと思うなよ」
「「「「おっ、覚えてろぉおおおおおお!!」」」」
そんな捨て台詞を吐いて、彼らは去っていった。なんかあいつらタロスズみたいだな。まぁ性格は全然違うけど。空気感が同じというかなんというか。
「さてと、今後の方針を立てないとな。ソウゴ!!お前も来てくれ!!」
「さっそく戦いの準備をしよう」
そんなこんなで、別世界版のタロスズとのゴタゴタが幕を閉じた。