「ほら、噂をすればなんとやら、ってね」
五条はそう言って目線を悠仁達の後に向けて片手を挙げる。
「おっひさ~武比古。
また、呪力量が増えたね」
「お久しぶりです、屑野郎。何もしなくても勝手に増えていくのでね」
久しぶりに会う旧友のように会話を弾ませる二人、しかし五条は心底楽しそうに会話するのに対し、武比古の背後には明王が見えるような気がするほどの呪力が滾っている。
「……五条先生、こちらの方の紹介してください」
(っ! んだこの呪力量、乙骨先輩よりも多いぞ……!)
「あーはいはい、こちら小野武比古君。恵たちの一つ上の二年、普段は普通の高校に通っててたまに手伝って貰ってる」
「呪術高専の所属ではないんですか?」
「そうそう本人の希望でね。じゃなきゃ暴れるって脅されちゃって」
てへぺろ☆、とでもいうような擬音が出てくような顔をする五条。
その表情を見た武比古や呪術高専組は内心、(((キッモ!!)))と心を通わせていた。
「えっと、改めて小野武比古です。この屑に日本がヤバイ危機だって聞いて助っ人で来ました」
「虎杖ゆーじでーす!よろしくおなしゃっす!!」
「伏黒恵…です。あと五条先生に騙されてます」
「釘崎野薔薇、優良物件かと思ったけどただのバカね」
呪術高専の一年生の自己紹介が終わり、二年生の自己紹介がはじまる。
「禪院真希ヨロシクな」
「しゃけ、おかか」
「このちっこいは狗巻棘、術式の影響でおにぎりの具に語彙を絞ってる、で俺がパンダよろしく」
「うん、みんな宜しくね。あと屑はその顔殴らせろ」
二年生も終わり一通りの顔合わせは終了した。武比古は内心、クセが強いなー、と思った。
「じゃあみんな本題に入ろうか」
自己紹介が終わったタイミングで五条は武比古以外のメンツに声を掛けた。
「本題って顔を合わせじゃねーの?」
「うん、本来の目的は武比古の術式の説明だよ」
「術式の説明ってそんなもん教えていいんですか?」
「問題ないよ伏黒くん」
術式の説明と聞いて驚く高専組。それもそのはず、術式とは本来他人に開示することなど皆無に等しい行いである。術式を開示しそれが呪詛師に伝われば殺されるリスクが急激に増加する、何のメリットもない行為。
「術式にもね二つの種類があるんだ。一つが種がバレたら終わりの術式。こっちがほとんどね。」
「それと僕や武比古みたいに知られても問題のない術式。君ら僕の術式知ってるけど勝てないでしょ?そう言うこと」
「僕の術式も屑みたいなタイプでね…、と説明するより視てもらった方がはやいかな?」
武比古はそう言って自分の胸の辺りで掌を合わせてこう言った。
「領域展開━━━━」
■■■■
「理解した?」
あまりにも特異過ぎる領域展開を目の当たりにし声を失う高専組。
その中でも一番はやく我を取り戻した伏黒が質問する。
「小野先輩は一般の生まれですか?」
「うん、一般の生まれ。先祖に術師がいたって訳でもないよ」
「一般の生まれであの術式に呪力量……天与呪縛ですか?」
この質問に少したげ間を開けながら答える。
「うん、って言いたい所だけど生まれ付きでね、今も勝手に増えていくんだ」
「そう…ですか…」
「でもね、先祖に術師はいなかったけどちょっと逸話のある人物が先祖にいて、多分それが関係してるんだと思う」
乙骨のように菅原道真と同列の日本三大怨霊の誰かかと、我を取り戻した二年生は考える。
「あぁ乙骨くんみたいに日本三大怨霊の子孫とかじゃないよ。ご先祖様の名前は小野篁って言ってね。地獄に行ったと言われる人なんだよ」
予想していたものと違う答えを聞き、?が浮かぶ伏黒と二年生。釘崎は三大怨霊は知っているが乙骨のことを知らないので早い段階から?が浮かんでいた。
虎杖にいたっては何を言ってるのか一つも分からなかったので我を取り戻してから蝶々を追いかける始末。
「小野…篁?誰ですか?」
「あんまり有名じゃないからね知らなくて当たり前だよ。
平安時代にいた貴族で、ある寺の井戸に落っこちて地獄に行ったんだ」
「まぁ小野篁がホントに地獄に行ったかはわからないんだけどね、武比古の術式を僕の眼で見た限り本当に行ったぽい」
目隠しを外して六眼を指差しながら説明する。
聞いたことのない名前の人物を聞き余計に?を浮かべ、その後さらに地獄に行ったと聞きまた余計に?が浮かんだ虎杖を除く高専組。
「多分だけど地獄で料理でも食べたんじゃないかな?料理と言えど地獄を身体に取り込んだ篁の中に地獄が混じったんだ」
「平安時代には仏教によって地獄が色々な人に知られ初め皆が地獄は恐い場所と認知され始めていた。その恐れが現世にいた小野篁の子孫たちの中にある地獄の卵に溜まっていった」
「時代が経るにつれ人口が増え、子供が増える。子供の親は悪いことをしたら地獄に堕ちるよ、と子供に言い聞かせる。それが今この時代にまで続いてる」
「そしてそれが武比古の代で武比古の中に地獄を生み出すほどまで溜まった」
「それが僕の術式が出来た理由だと僕とこの屑は考えてる。だから僕は一般の生まれでもこんな意味のわからないことになってるんだ」
「なんだか呪霊みたいでしょ?まぁ地獄って基本恐いものだから仕方がないんだよね」
術式の成り立ちを聞き終えた高専組は、そんな滅茶苦茶な理論で術式が出来るものなのかと頭を抱えたが、先程から訳のわからないということしかわからないので、まぁそういうこともあるかと納得した。
■■■■
顔合わせと術式の説明も終わり、明日の渋谷での決戦に備え各々が寮の部屋に帰った頃、武比古は五条を呼びとある喫茶店でお茶していた。
「で、五条先生。さっき伏黒くんが言っていた騙されてます、って本当ですか?」
「うーん…今のところは騙してるかな?…でもね武比古、もし明日僕が死ぬか封印されるか、みたいな僕が身動きが一切とれない事態になると日本全国が本当にヤバい、と僕の勘が言ってるからね」
伏黒に言われたことが気になった武比古は五条に真偽を確かめ、それが今のところ事実であると判明した。
だがそれが明日の決戦で起きてはならない最悪の事態によって引き起こされるとも判明した。
「なるほど…伏黒くん達はそれを知らないんですね?」
「言ったところで何も出来ないからね…」
「僕の役目はその最悪の事態が起きないように先生の援護と皆の援護ですね」
「話がはやくて助かるよ、明日説明する手間が省けた」
明日する自分の役目を確認した武比古はそろそろ帰ります、と言って先にお会計をして帰って行った。
五条はまだ残っているコーヒーを飲み干すと少しだけ悲しそうな顔をして呟いた。
「本当はこんな事を頼みたくないんだけど…頼んだよ武比古」
鬼灯の冷徹を見てこのネタが浮かびました。
感想待ってます。
※少しだけ加筆しました。