転生者がトレーナーとしててえてえを拝みたい話   作:Siranui

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 転職や転職先の仕事や国家資格の勉強とかで気が付いたら1年経過していた……??
映画を見てまた書きたくなったので再発していければと思います。

劇場版 ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉 はまだ三市町の方は是非見て頂ければと思います。とても…そう、とてもとてもお勧めです!!


何故伝えたい事と伝わる事がすれ違うのだろうか

 

 「……して……」

 

 

 最初、それが目の前に立つ彼女から放たれたと理解できなかった。 それはか細く、不安定で、迷子になった子供が弱弱しく吐き出す吐息にも似ていた。

 

 このままでは足の負担が酷くなるから対策を考えて欲しい、俺はそう伝えたはずだ。 だが何故だ、何故目の前の娘はそんな〇刑宣告をされた囚人か、余命幾ばくもないと告げられた病人のような表情をしている。

 

 耐えていた表情が崩れる、つうっ と一筋の流星が流れたと思うとそれは流星群となって彼女の頬を伝う。

 

 

「どうして……私は、まだなにも償えて……いないのにっ……?」

 

 

 ズルズルと足が力を失い、彼女が床へと膝をついた。

 

 そこで漸く俺は動き出せた、あまりに唐突過ぎて脳が理解する事を放棄していたからか、目の前で泣いている娘をただ観察してしまった。

 

 慌てすぎてソファーを蹴り倒し彼女の元へと急ぐ、重い音がトレーナー室に響くが関係ない。 もつれ込むように彼女の隣へと膝をつく。

 トレーナー室の出入口付近でよかった、周囲にぶつかりそうな物が無いうえにこうして隣に膝をつくことができる。

 

 

「落ち着いて」

 

 

 まずは声を掛ける、いきなり体に触れては更に混乱する可能性があるからだ。 何度も何度も同じ様に声を掛け続ける。 目線を合わせれれば良かったが、俯いて震えながら自信の体を抱える彼女と目線を合わせる事は出来ないが、少し前のめりになる様に体を屈める。

 

 

「落ち着いて、まだ大丈夫だから」

 

 

 大丈夫、という言葉に垂れていた耳が反応する。

 

 ようやく彼女が顔をあげ目線が合うが、それは先程迄見ていた彼女の瞳では無かった。 虚空と目を合わせているのかと疑い何度か瞬きをしたくらいだ。

 

 

「なにが」

 

 

 彼女の唇が動く。

 

 

「なにが大丈夫なのよ」

 

 

 ゆらり と彼女が動き始める。 錯乱している、少なくとも正気ではないと判断し動かない方がいいと静止しようとするが遅かった。 彼女の手が自分の肩を押しバランスを崩して尻もちをつく。

 

 不味い 姿勢を戻そうとするが両肩が床へと押し付けられる。 正面には彼女が目じりから涙を流しながら見下ろしてくる。

 

 ポタポタと彼女の頬を伝った雫が自分の顔を打つ、振りほどけるか? いや、跳ね除けたらそのまま倒れ込んでしまうかもしれない。 むしろこのままなら話は出来るのではないか?

 

 

「他の人から見ても、もう走れなくなるような足の、何処が……大丈夫なのよぉ……」

 

 

 勘違いしているだけだ 今の走り方では負担がかかるからフォームを修正するか、蹄鉄やシューズを見直そうと伝えたかっただけだ。

 

 

「……落ち着いて聞いて欲しいんだけど、君の足は今すぐ走れなくなるって訳じゃない。 ただ今のフォームだと左側に傾斜してるから左足に負荷がかかる。 ケアだけじゃなくて何らかの対策をして欲しいってだけで……君が考えている程、まだ深刻な状況じゃないはずだよ」

 

「…………は?」

 

 

 言葉が足りなさ過ぎた。 足は彼女達の命と同等だと言うのに、あまりにも簡素に伝え過ぎた。

 

 

「つまり……左足へ負荷が強いだろうから姿勢を矯正するか、何かしら考えて……ってこと?」

 

「そうなる、第三者から見て君のフォームは左に傾いている。 君自身が気付いているかどうかは分からないから聞くけど痛む事は無いだろうか?

 今のところ異常はないとしても自重が左足に多くにかかるのはよくない。 必ず無理が出る、何処かが故障する。 それを心配して……」

 

「……それならそうと、最初からそう言って」

 

 

 ふっ と押し付けられていた力が弱まる。 思いの外強い力で押されていたみたいで思い出したように肩が痛む。 声には出さなかったが、口元が反射的に引き攣る事は防げなかった様で、気が付いた彼女が慌てて手を動かしその身を俺の上から退ける。

 

 それに続いて自分も身を起こす……掃除が行き届いている為か埃等で咳き込む事は無かった。 痛む箇所が押さえつけられた肩だけで済んだのは、ギリギリ残っていた理性で傷つけてはいけないと彼女が思いとどまってくれたからかもしれない。

 

 彼女は抑え込んでいた自身の手を胸の中央で掴んでいる。 改めて冷静さを取り戻し自分がなにをしていたのかを理解しつつあるのかもしれない。

 

 

「あのっ……ごめんなさい」

 

「気にしないで……と言っても気にしそうだけど、あれは俺の伝え方が悪かったんだ。 足は君達の命と同等のものだというのに、もっと言い方やタイミングがあったと反省している。

 周囲に居る娘達が言葉少なくても意思を汲み取ってくれるものだから伝える努力を怠った、これは俺の責任だ」

 

「でも……早とちりしたのは私、勘違いしたのも……」

 

「勘違いしない様に伝えるのが俺達トレーナーの仕事でもある。 分かり辛い事を噛み砕いて分かりやすい言葉に変えるのも、理解できる様に表現を変えるのも、その為に俺達はいるんだから。 ただ分かり辛い事をそのまま伝えるのなら辞書かパソコンでも並べておけばいい。

 何の為に俺らが居る? 何故君達に指示が出せる? 助言をすると言う事はその言葉に責任を持つことだ。 君を勝手に心配して、慌てて言葉足りずに勘違いさせたのは全部俺の責任だ。 それは君の責任ではない」

 

「…………」

 

「失敗したと思うなら学んでくれればいい、他の何処かで同じことを繰り返さなければそれでいい。 それが大人の、先に生きる者の務めだ。

 生意気言うなよ子供の癖に、大人には素直に甘えておくものだ。 君はもう間違わないだろう?」

 

 

 ポンポンッ と軽く彼女の頭を撫でながら語り掛ける。 俯き気味だった彼女が顔をあげ俺の顔をじっ と見返してくる。

 

 

「……まあ、それでも何かしたい と言うのなら……今度結成する俺のチームに加入する事を検討して欲しい。 言っておくけど強制では無いしお願いという事だからね? それを断っても受け入れてくれても検討してくれるだけで今回の事は水に流す という事にして欲しいかな」

 

 こんな新人トレーナーの元でも良ければね と笑いながら伝える。 責任感が強そうな娘にはこちらも何かしたお願い事を伝えてお互い様でした にした方がスムーズに話が進むはずだ。

 

 しばし揺らいでいた瞳が芯を取り戻し、何を言ったところで目の前の人物は意思を変えないだろうと察したのだろう、肩の力を少しだけ抜いたように見えた。

 

 

「……戻ります。 チームの事は……検討させて」

 

「ああ、もう時間も時間だしね」

 

 

 手を退けると彼女は立ち上がり、落とした荷物や紙ファイルを纏めてドア前に向かう。 一度振り返り、頭を深々と下げてから部屋から出て行った。

 

 言葉を簡潔にしすぎるのは悪い癖だ。 ブルボンは何をすれば良いかだけの伝え方を好むし、ライスもどちらかと言うと指示を聞く事が多く、説明を望むことが少ない。

 

 今回の事は何とかなったから良かったのだが……まだまだ未熟者だな。 これでは推薦してくれた先輩方に申し訳が無い。

 

 が、いつまでも引きずっている訳にもいかない。 気を取り直して仕事に戻ろう……とりあえず、ソファーを直す事や片付けから……

 

 コンコン とノックの音と同時に扉が開かれる音がする。 ブルボンやライスならば返事があるまで開ける事は滅多にない。 またノックをしている事からタキオンであることも無い。

 

 となると一体誰だろうか? そう思いながら入口に目を向けると……

 

 

「こんにちは~ちょーーっとカレン、お聞きしたい事があるんてすけど良いですか? 良いですよね??」

 

 

 とてもいい笑顔を浮かべた芦毛のウマ娘が居た。 そこに居るだけなのにとてつもない圧を感じるウマ娘がだ。

 

 顔は笑顔だが頭部のウマ耳が後ろに……いや、髪の毛に張り付くくらい後ろに引き絞られている。 はっきり言ってかなり怒っている様子だ。

 

 

「……はい、汚い部屋ですが掛けて下さい」

 

「は~い、でも聞きたい事はひとつだけなんですよね」

 

 

 対面のソファーを直し、ニンジンジュースをグラスに注いで彼女の机に置いてから正面に座る。 その間も圧は和らぐ事が無く張り付けた様な笑顔も変わらない。

 

 

「一つだけ?」

 

「正直に答えて下さいね?……アヤベさんに何をしたんですか」

 

 

 背筋に氷柱が張り付いた思いであった。 スウッ と目が細くなり底冷えする様な視線を感じる。 それだけ目の前の娘がアドマイヤベガを大切に思っている証拠だろう。 こうして他人の為に怒って乗り込んで来れる事などそうそうある物でもない。

 

 自分の失態と悪癖を暴露する形になるので恥ずかしい事ではあるが、目の前の娘にはしっかりと説明しなければならないだろう……

 

 

「少し長くなるけど、全部説明するよ……えっと」

 

 

____________

__________

_______

____

 

 

 

「それはトレーナーさんの言い方に問題があると思いますけどね~……」

 

「全く持ってその通りです……」

 

 

 一通り説明が終わった後、ため息を吐きながらニンジンジュースを口元に運ぶカレンチャン。 説明途中で言葉足らずによる意思の行き違いと勘違いでアドマイヤベガを泣かせてしまった事が分かった事により、最初の頃の圧は霧散し安心と気疲れによるものか耳は前に力なく伏せられていた。

 

 う~ん……と指を口元に当てて何かを考えているカレンチャン、だが一つ一つ確認する様に言葉を紡ぐ。

 

 

「トレーナーさんはアヤベさんにした事は悪かったって思ってますよね?」

 

「勿論」

 

「じゃあ、何かしら償いをして多少嫌な空気とかも払拭したいですよね」

 

「それはそうだけど……ただアドマイヤベガがどう思っているかかな」

 

「アヤベさんだって、悪い事したって思っているからチームの件だって検討するって言ってくれたんだと思いますよ? あの人なら嫌だったら断ってると思いますから。 お互いがお互い悪い事をしたと思ってて、謝ろうと思ってるんだと思いますから」

 

 

 うんうん、と一人で頷いているカレンチャン。 同室の彼女が言うのなら間違いはないのだろうが……

 

 

「と、言う事なので今週末に皆でおでかけしま~す」

 

 

 どうしてその結論に至ったんだろうか??




次回はおでかけの話か、タキオンの話を書ければと思っています
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