ハイスクールD×D ~マジシャンズ・ウォー~   作:ゼロ・ツー

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決着と始まりの歴史

零弐side

 

兵藤の鎧が解除され、倒れこんでしまう。

制限だったはずの十秒という時間の途中だったはずにもかかわらず、兵藤の身体自体が耐えきれなくなったのだろう。

 

「『兵士(ポーン)』の力でよくやったと褒めてあげよう。本当によくやったよ。正直、ここまでやれるとは思わなかった。ドラゴン使いの力、この身で十分に体験できた。おまえがあと一年――いや、半年、ドラゴンの力になれていたら俺は負けていただろうな。なに、引け目を感じる事はない。俺がリアスの婿になったら、俺がおまえを鍛えまくってやる。強い悪魔になるぜ」

 

ライザーが冗談ではなく、真剣な面持ちでそう言った。

 

「さて、そろそろ眠って貰おうかな。少し意識がなくなるだけだ。目が覚めるころには無事式も終わってる。お前はこれ以上心身ともに苦しむのは嫌だろう。俺もサドじゃないからね、一気に決めさせてもらう」

 

ライザーが兵藤に止めを刺そうとするが、兵藤はその前に懐から小瓶を取り出した。

 

「火を消すなら、水だよな!」

 

兵藤が懐から出した聖水の小瓶をライザーにかける。

しかし、ライザーもそう簡単にやらせるわけもなく、兵藤の喉を絞めて行った。

 

「ブーステッド・ギア・ギフト!」

 

Transfer(トランスファー)!!』

 

「しまっ――」

 

ライザーが兵藤の攻め手に気づいたときには、聖水が効果を増して、身体を激しく焦がした。

 

「うがぁぁああああッ!」

 

ただの聖水では上級悪魔のライザーを傷つけられないが、効果が倍増されれば話は別だ。

いくらフェニックスとはいえ、精神だけは瞬時に回復できない。

 

「アーシアが言っていた。十字架と聖水は悪魔が苦手だって。それを同時に強化して使ったら、悪魔には相当なダメージだよな」

 

兵藤は、相手とその周囲をよく見た。

 

「木場が言っていた。視野を広げて相手と周辺も見ろと」

 

魔力のオーラを一点に集中させ、十字架と聖水に力を譲渡した。

 

「朱乃さんが言っていた。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集める。意識を集中させて、魔力の波動を感じればいいと。あぁ、ダメな俺でも感じられましたよ、朱乃さん」

 

体勢を整えて、拳を構えた。

 

「小猫ちゃんが言っていた。打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉りこむように打つんだと!」

 

「ま、待て!わ、わかっているのか!この婚約は悪魔の未来のために必要なものなんだぞ!?おまえのような何も知らない小僧がどうこうするようなことじゃないんだ!」

 

「難しいことはわかんねぇよ!だけど、フェイちゃんと蒼薙が言っていた!この世に(ヴァイス)(シュバルツ)もない。どう選択して、どう考えるかは自分自身だと。その思いを、気持ちをどんなものだろうと、自分の武器(こぶし)に込めるんだと!籠めた意志の強さが、思いの強さだと!それにあのとき、うっすらとだけ覚えていることがある。――泣いていた。部長が泣いていたんだよ!そして、さっきも泣いていた!俺がてめぇを殴る理由はそれだけで十分だぁ!」

 

兵藤の拳が、ライザーの腹部に突き刺さり、ライザーは倒れ、そのまま動かなくなった。

 

「お兄様!」

 

ライザーの妹であるレイヴェル・フェニックスがフィールドへ向かおうとしたのを、俺が立ちはだかって止めた。

 

「な、なんですの?」

 

「怯えんなよ。どうこうしようなんて思っていないからよ。唯よ、これ以上やるっていうんなら、俺が相手してやる」

 

レイヴェルの頭を軽く叩いて脇を通った。

 

「まったく、忘れてもらっては困るよ。ぼくはレイジのパートナーだろ」

 

「あぁ、そうだな。お前は俺にとって最高のパートナーだよ」

 

いつの間にか俺の隣に来たフェイの言葉に同意した。

 

「まだ、文句のある奴はいるか!いるっていうんなら、俺たちが相手になってやるぜ!!」

 

会場全体にそう響かせたが、誰も向かってこようとしない所を見ると、文句はあるが、倒せる気がしないので、手を出さないといったところだろう。

そんな俺たちの前に兵藤とグレモリーが来た。

 

「ありがとうな、蒼薙、フェイちゃん」

 

「礼はいらねぇよ。それより、負け犬姫よぉ」

 

「その名前に反論はできないけど、何かしら?」

 

「今度はきちんと部室で会おうぜ」

 

ゲームから今までの二日間。

俺とフェイは部活に顔を一切出していなかった。

そのため、グレモリーは俺の言葉に驚いていた。

 

「えぇ、わかったわ」

 

兵藤とグレモリーに続いて、祐斗達もその後を追うように会場から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が少し変わり、俺とフェイは中庭を見渡せるテラスにいた。

中庭では、兵藤とグレモリーがグリフォンに乗り、帰っていくところだった。

 

「にしても、なかなか傑作だったな」

 

「おや、今回のことに関しては君も一枚噛んでいるんじゃないのかい?」

 

「グレイフィアにでも聞いたのか?サーゼクスさんよぉ」

 

テラスに入ってきたのは、サーゼクスとグレイフィアだった。

 

「まぁね。にしても、赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)。まさかあれがこちら側に来るとは思ってもいなかった」

 

「ですが、目覚めた以上白い龍(バニシング・ドラゴン)と出会うのは時間の問題ですね」

 

会場から去っていくグリフォンを見ながら、サーゼクス達がそう言った。

だが、悪魔達にとって赤い龍と白い龍が懸念すべきものなら、俺たちの懸念すべきものはそんなものではない。

 

「今代は、荒れるだろうな」

 

「だろうね。僕たちもより一層気を引き締めて、二天龍を相手にしなくてはいけないからね」

 

「いや、二天龍についてじゃない」

 

「おや、違うのかい?」

 

やはり、俺たちとは考えと危機感の違いが大きくあったみたいだった。

 

「確かに今代も二天龍を中心に荒れるだろうが、それ以外にも渦の中心のようなものがあるんだよ」

 

「それってつまり……」

 

「えぇ、ぼくたちのような魔法使いです」

 

「どうしてそう言えるんだい?」

 

俺とフェイの考えにサーゼクスは疑問があるようだった。

 

「魔法使いについて、サーゼクスはどれくらい知っている?」

 

「リアスからの報告で聞いたくらいで、他に知っているとすれば、魔法使いが大きく動き出したのは大体半世紀前位からだった位だよ」

 

「そうか。なら、少し話をする必要があるな」

 

俺が話したのは、魔法使いの歴史についてのようなものである。

その話自体は井蛙に聞いたことなので、信じられるものでもあるが、同時に不明な点があるのが歴史というものである。

まず、魔法使いという存在は魔術師よりも歴史が長い。

何故なら魔術というものは、魔法と同じようなことをするために作られたのだから、土台となる魔法が無ければ、魔術も存在しなかったかもしれないからである。

そして、そんな長い歴史の中で魔法使いはいくつかのコミニティと呼ばれる組織が存在していた。

例えば、貴族出身の魔法使いが所属できるエンシェント・ペンドラゴン。

例えば、女性のみが所属できるビショップ・オブ・ザ・キャメロット。

例えば、最も歴史があり最大勢力だったウィザードブレス。

このようにコミニティはいくつか存在した。

しかし、歴史が長いという事は、それだけ腐敗があったりするものである。

それはどの歴史でも同じで、今の悪魔も生まれた家柄だけで階級が決まり、格差があったりする。

魔法使いたちも例外ではなかった。

腐敗の根源であったのはウィザードブレスで、そこはどんな汚い手を使ってでも他者を屈服させる面があったらしい。

そんな状況を変えたのが、ゴーストトレイラーと呼ばれるコミニティである。

もともとゴーストトレイラー、通称トレイラーは、腐敗しきった魔法使いの世界をやり直すという目的で結成した集団だった。

そのための手段は簡単である。

戦争。

全てのコミニティを潰し、自分たちが魔法使いを統制するという事を考えたトレイラーは、他のコミニティに対して、戦争を仕掛けた。

これが今から半世紀ほど前の事で、第一次魔法戦争と呼ばれている。

つまり、魔法使いが大きく動き出したというのは、ただ単に魔法使い同士が戦争を行った結果に過ぎない。

戦争は三十年以上続いた。

そして、戦争に勝利したのは圧倒的に不利だったはずのトレイラーだった。

トレイラーは全ての魔法使いを統括、管理するという名目で魔法使いたちをかき集めた。

唯、そういうことがあっても、人間は簡単には変わらない。

トレイラーは自分たちの都合のいいように魔法使いたちを使ってきた。

そのため、十年ほど前に崩壊した。

原因は簡単である。

俺とフェイである。

俺とフェイが崩壊させたと思っていたトレイラーは、一度は崩壊したはずだったが、時が経ち、勢力を整え直したのである。

それが今の魔法使いの世界の状況である。

 

「なるほどね。そんなことが……。にしても驚いたよ。まさかと思ったけど君があの『裏切りの悪魔祓い(エクソシスト)』だったなんてね」

 

「……知ってたのか?」

 

「あぁ。たぶんだけど、教会は全体に知れ渡っているはずだ。悪魔と堕天使側はトップ陣しか知らないとは思うけどね」

 

「そうか」

 

「レイジ。そろそろ」

 

「ん?あぁ、そうだな」

 

「おや?もう行くのかい?」

 

「そりゃねぇ。会談って話だったけど、俺たちも少しばかり忙しいものでね」

 

「そうかい。なら、今度はじっくりと話す時間が欲しいものだね」

 

「あったらな」

 

そう言い残して、俺とフェイは魔法陣で自分の家に戻った。

 




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