ハイスクールD×D ~マジシャンズ・ウォー~ 作:ゼロ・ツー
零弐side
授業参観が終わった次の日。
俺たちは旧校舎の一階にある、開かずの教室の前にいた。
塔城や祐斗から聞いた話によるとここにもう一人の『僧侶』がいるそうだ。
それにしても、何とも言い難かった。
『KEEP OUT!!』というテープが幾重にも貼られ、刻印まで書かれている。
それはもう、ここまでするかと言わんばかりにである。
「ここにいるの。一日中、ここに住んでいるのよ。いちおう深夜には術が解けて旧校舎内だけなら部屋から出てもいいのだけれど、なかにいる子自身がそれを拒否しているの」
所謂、引きこもりだった。
兵藤も同様に思ったのかグレモリーに聞いたら、溜め息を吐きながら頷かれた。
「祐斗に塔城、どういう奴なんだ?」
「まぁ、会ってみればわかるよ」
「……簡単に言えば、へたれヴァンパイアです」
へたれって。しかもよりによって
これまた珍しいのかわからなかった。
「さて、扉を開けるわ」
グレモリーが扉に刻まれていた刻印を消し、扉を開く――。
「イヤァァァァアアアアッッ!」
刹那、絶叫が聞こえ、あまりの五月蠅さに耳を塞いだ。
フェイも同様に、あまりの五月蠅さに、耳を塞ぎ、目を閉じていた。
そうしているとグレモリーと姫島が入っていた。
中から会話が聞こえてはきたが、一言で表すと。
「これまた重度だな」
「そうみたいだね」
俺が漏らした言葉に、フェイも同意した。
周りを見ると、事情を知っている祐斗と塔城はそれぞれ苦笑し、溜め息を吐いていた。
兵藤とアルジェント、ゼノヴィアは訳が分からないようだった。
とりあえず、話が進まないので、兵藤に続いて部屋に入った。
部屋はかわいらしく装飾され、女子の部屋みたいだった。
しかし、部屋の主である引きこもりを見た瞬間に、顔が強張った。
「おぉっ!女の子!しかも外国の!」
兵藤が部屋の主を見て、歓喜していた。
「なぁ、兵藤。こいつが女に見えるのなら、お前の頭はおめでたいな」
「はぁ!見えるだろ!女子の制服を着ているんだし」
その言葉に思わず、溜め息が出た。
全てを悟ったような目で祐斗と塔城を見たら、苦笑されたり、溜め息を吐きながら頷かれた。
「見た目、女の子だけれど、この子は紛れもない男の子よ」
「いやいやいや、どう見ても女の子ですよ、部長!……え?マジで?」
「女装趣味があるんですよ」
グレモリーの言葉にイッセーが否定したが、姫島の言葉に否定する余裕がなくなった様だった。
「ええええええっ!?」
あまりの衝撃に大声を張り上げていた。
「ヒィィッッ!ゴメンなさいゴメンなさぁぁい!」
部屋の主もビックリして悲鳴を上げた。
俺とフェイは、また耳を塞いだ。
「うわぁぁああああッ!」
イッセーが頭を抱えて、その場にしゃがみ込んだ。
俺はその背中を踏みつけた。
「うるさい!!」
「うるせぇぇ!!こんな残酷な話があっていいものか……。完全に美少女な姿で……男だなんて……チブゥ」
「言わせねぇよ!!」
「……下品な単語禁止」
俺と塔城が兵藤に鋭くツッコミを入れた。俺は物理的に。
「女装趣味ってのがさらに残酷だ!似合っている分、余計に真実を知った時のショックがデカい!引きこもりなのに女装癖かよ!誰に見せるための女装ですか!?」
「だ、だ、だ、だって、女の子の服の方がかわいいもん」
「かわいいもん、とか言うなぁぁ!クソッ!野郎のクセにぃぃ!俺の夢を一瞬で散らしやがってぇぇっ!お、俺は、アーシアとおまえのダブル金髪美少女『僧侶』を瞬間的にとはいえ、夢見たんだぞ!?返せよぅ!俺の夢を返せよぅ!」
「「「……人の夢と書いて、儚い」」」
「蒼薙にフェイちゃんに小猫ちゃぁぁん!シャレにならんから!」
この後少し、俺たちの紹介がされた。
唯、イッセーが部屋の外に出そうとしたら、俺とフェイ以外が動きを止めた。
その時、そいつは驚いていたが。
みんなが動き出してから、彼の紹介がされた。
名前はギャスパー・ヴラディ。
時間を止める神器を所有している、人間とヴァンパイアのハーフだそうだ。
デイウォーカーという種類のため、日の光は大丈夫だが、血は定期的に輸血パックで補給しているらしい。
神器の制御がままならないので、封印されたそうだ。
とりあえず、グレモリーと姫島、祐斗が会談の打ち合わせのためにいなくなるので、ギャスパーの世話をすることになった。
そこまではよかったのだが、そこからが問題だった。
最初にゼノヴィアがデュランダルを振り回しながら追いかけ、ギャスパーが死に物狂いで逃げていた。
途中で、塔城がニンニクを持って、追いかけに行った。
塔城は、一年同士で仲がいいのか、『ギャーくん』と呼んでいたが、案外楽しんでいるように見えた。
そんなことしていると、匙が来た。
生徒会の仕事ついでに、ギャスパーを見にきたそうだ。
しかし、美少女だと思ったそうだが、女装癖の野郎だと知って、驚愕していた。
その途中、堕天使の気配が近づいているのを感じた。
敵意はなかったが、気配からしてめんどくさそうだった。
「へぇ。魔王の妹眷属の悪魔さん方はここに集まってお遊戯しているわけか」
「やっぱり、アザゼルか」
「アザゼル……ッ!」
「よー、赤龍帝。あの夜以来だ」
俺とフェイ以外がアザゼルの姿を見て、臨戦態勢を取った。
「ひょ、兵藤、アザゼルって!」
「マジだよ、匙。俺はこいつと何度か接触してるんだ」
イッセーの言葉に、匙も戦闘の構えを取った。
「やめなさい。今のあなたたちが束になっても勝てないことぐらい気づいてるでしょう。ましてや相手は敵意が無いんですから刺激しないようにするのが普通です」
「そうだぜ。そこの嬢ちゃんの言うとおりだ」
「嬢ちゃん呼ばわりはやめてもらえますか。これでも高二です」
「俺からしたらそれでも十分嬢ちゃんだよ」
アザゼルが笑いながら、フェイの言葉を受け流していた。
「大体、俺だって下級悪魔相手にいじめなんかするつもりはない。ちょっと散歩がてら悪魔さんのところに見学だ。聖魔剣使いはいるか?ちょっと見にきたんだが」
「木場ならいないさ!木場を狙っているんならそうはさせない!」
フェイの忠告があったが、祐斗の名前が出たら、構え直そうとしないので、俺が睨んで止めさた。
さすがに俺の睨みに反応し、みんながしぶしぶ構えを解いた。
構えを解いたのを見ると、アザゼルが頭を掻きながら近づいてきた。
そして、ギャスパーの神器のアドバイスをくれた。
その時、匙の神器についても教えてくれた。
さすが、神器オタクと呼ばれるだけある。
最後に、イッセーと一言二言交わしてこちらに来た。
「お前さんらが、例の魔法使いだな?丁度お前さんらに言いたいことがあったんだ」
「奇遇ですね。ぼくたちもあなたに聞きたいことがあったんですよ」
「ほぉ、そりゃ都合がよかったな」
「何所でトレイラーと接触したんですか?」
フェイの問いかけに、アザゼルの表情が強張った。
「やはりそのことか。そのことについて教えておこうと思っていたところだ」
アザゼルの話によると、トレイラーとの最初の接触は五年ほど前らしい。
その頃はただの珍しい魔術師集団程度だったらしいが、二年ほど前から人を探しているとのことで、時折堕天使の仕事について行ってたらしい。
探していたのは俺たちで間違いないだろう。
恐らく二年前まではトレイラーの組織の立て直しのための期間だったのだろう。
そしてつい最近、アルジェントの救出の際に俺たちを見つけたトレイラーは、堕天使との接触する回数が極端に減り、この前のコカビエル襲撃後はまったく接触が無いという。
それまでの間のトレイラーについて知っていることは、全て俺たちも知っている事だけだった。
「なるほど。そうだったか」
「悪かったな。これだけの情報しかなくてな」
「いえ、それだけでも十分な収穫でしたので、問題ないですよ」
「そう言ってもらえて助かる」
アザゼルが去るのを見届けてから、俺とフェイは思った。
やはり奴らの狙いは、始めから俺たちなのだという事を。
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