ハイスクールD×D ~マジシャンズ・ウォー~ 作:ゼロ・ツー
第三者side
立ち上がった零弐は満身創痍なのには変わりなかった。
身体のあちこちから血を流し、額から流れ出ている血で左目が開けず、イッセーたちが水の壁で守られているときに折られた右足もそのままであった。
にもかかわらず立ち上がり、尚且つほとんどなくなっていたはずの魔力をわずかに放出するほどになっている。
だが、それと同様に驚かれるのは、レーヴァテインである。
これまで、魔剣として知られていたその剣は、今は聖剣にしか見えなかった。
いや、正確にはもともと聖剣だったレーヴァテインが、レーギュルンという鞘によって魔剣となっていただけなのである。
その鞘を抜いたことで、今は不完全ながら本来の聖剣としての姿を取り戻している。
「まさかここでレーヴァテインを抜くとはな」
「面白れぇじゃねぇか、クソガキ!」
シヴァが自身の魔法で、視認することが出来ない速度で接近した。
しかし、次の瞬間には元いた場所よりも後ろに飛ばされていた。
理由は簡単である。
零弐がレーヴァテインの柄で殴ったからである。
「面白れぇ。面白れぇな、クソガキ!」
それでもシヴァは攻撃をやめない。
ほとんど瞬間移動のような速度での攻撃にもかかわらず、零弐はそれに対応している。
先ほどまでであれば、決してありえない光景だった。
「なめんじゃねぇぞ、クソガキがぁ!」
振りかぶったシヴァのトンファーが零弐の顔面をとらえた。
だがそれが当たることはなかった。
零弐はすでにシヴァのすぐ脇を通り過ぎていた。
それと共に、振りかぶられたトンファーを破壊した。
「この、このガキがぁ!!」
「よせ、シヴァ!これ以上はマズイ」
さすがにローが止めに入った。
魔力がほとんどなくなった状況で、鞘から抜かれたレーヴァテインを相手にする。
もし倒せても、この場から逃げることが出来なくなると判断したローは撤退を決めた。
「おい、誰かそこの二人に伝えとけ。今回は見逃すが、次こそは殺してやるってな」
ローはシヴァを連れて、魔方陣で転移して消えた。
それにより、今回の戦闘は漸く終了した。
黄金色の粒子となっていたレーギュルンが、レーヴァテインの刀身に付着していき、次第に元の魔剣としての形を取り戻した。
元に戻ると同時に、零弐は当に迎えていた限界で倒れた。
「誰か!救護班を」
「止血を急がせるんだ!」
どこからともなく声が上がり、治療が行われ始めた。
今回の会談において、天界代表天使長ミカエル、堕天使中枢組織『
以降、三大勢力の争いは禁止事項とされ、魔法使いともども協力体制へ――。
この和平協定の部隊になった場所から『駒王協定』と称されることとなった。
また、この協定締結に際して行われたテロにより、『
現段階で判明しているその組織の内情は、悪魔の旧魔王派、魔法使い組織『ゴーストトレイラー』、
これから大規模な戦争が起こるかもしれないという見解は誰もが持っていた。
Side end
フェイside
どれぐらい眠っていただろうか。
誰かがそっと頬に触れたのを感じ、瞼を震わせながら開いた。
「フェイたんっ!?」
まだ目がかすんで見えるが、その声で誰かはわかった。
「……まだ……生きている……の?……七美」
「バカッ!そうだよ!生きてるよ、二人とも!死なせるわけないでしょ!」
「ハハ……ッ」
顔の半分、特に右側を覆うように包帯が巻かれていて、うまく笑えなかった。
だけど、七美の二人ともという言葉を聞いて、心の底から嬉しい気持ちがこみ上げてきた。
「もう……ダメかと思った。七美、ごめんね」
〝スペースアーク〟を使った後からの記憶がほとんどなかったけれど、途中で何か暖かいものが現れたのだけは覚えていた。
「次は助けられないかもしれない。先生が頑張ってくれたのもあるけど、魔法でもできないことがあるのは知っているでしょ?フェイたん」
確かに魔法は魔術の上を行くものであるが、それにだって限界があるのは自分でも言っている事だった。
心臓が止まってしまえば、いくら『
ぼくたちは幸運だったとしか言えない。
「そう言えば、レイジは?」
「……フェイたんよりひどかったけど、何とか命は助かったよ」
そう言って、七美が仕切られていたカーテンを開けた先にレイジが眠っていた。
だけど、その姿は過去に一度だけ見た事があったとき程にひどかった。
ぼく自身も全身に包帯を巻かれているけど、動かそうと思えば、体は何とか動かせる。
だけどレイジはそれ以上に包帯が巻かれ、体を動かすことが出来ないようにされていた。
体格がぼくの方が小さいから、ローの魔法を受けてもレイジの方が被害が大きいのは予想していたが、ここまでとは思っていなかった。
「やぁ、フェイ君は起きたみたいだね」
そう言って入ってきたのは、井蛙だった。
「三日も寝ているもんだから、みんな心配していたよ」
「……そうなんだ。三日も寝てたんだ」
「君たちがここに運ばれたとき、正直助かるかは微妙だったけど、僕の腕に掛けて全力で治療したかいがあったよ」
「ねぇ、レイジは何時頃起きる?」
「さぁね。現時点だと分からないとしか言えないね。明日か明後日か、はたまた一週間後か」
「そう……なんだ」
なんとなく、泣きたい気持ちになった。
悔しいからなのか、悲しいからなのかわからないけど、泣きたい気分だった。
一滴の涙が、目尻から流れると、不思議なことが起きた。
「……ん、ぁ……ぁ」
声が聞こえた。
聞き間違えるわけがない。
「……生きて……るのか?」
「……うん、生きているよ。レイジ」
涙が溢れてきた。
生きていた。
話を聞いていても、実際に目を覚ましてくれないとその実感が無かった。
だから、目を覚ましたレイジを見た時には、嬉しさで涙が溢れてきた。
「……よぉ、フェイ。泣いてんのか?」
「……そうだね。レイジが生きていてくれて嬉しかったからね」
「……へぇ、嬉しいこと言ってくれんな」
互いに交わした会話は、弱々しいものだったが、確かに生きていることを実感できた。
「やぁ、気分の方はどうだい?」
「……井蛙か。……体は最悪だけど、最高に気分がいい」
「そうかい。それはよかった」
レイジの言葉に、井蛙も安堵していた。
「さて、二人はもう少し寝ていなさい。体はボロボロなんだから」
「そうだね。八月の頭までは安静でいてもらうからね」
「そんなに休んでいたら……身体からキノコが生えそうだな……」
「確かにそうね……」
「大丈夫よ。フェイたんは、あたしが毎日濡れタオルで拭いてあげるから。身体のすみずみまでね!」
「んなことしてみろ……後々潰すぞ」
七美の言葉に、身体の痛みとは別の恐怖を感じ身震いしたけど、レイジの一言で、七美もしぶしぶ引き下がった。
「さて、七美。二人を寝かせてあげるよ」
「はいはい、わかりました。フェイたん、また後でね」
井蛙と七美が出て行ったことで、部屋に静寂が生まれた。
「なぁ、……フェイ」
「どうしたの?」
「俺さぁ、お前の手……掴めていたかな?」
レイジの言葉に、驚きつつも、固い笑みを浮かべた。
「うん、大丈夫。……しっかり掴んでもらっていたよ」
「……そうか、掴めていたか」
互いに顔を向き合わせたけど、お互いに顔の半分が包帯が巻かれていて、うまく表情を作れていなかったけど、涙をなかなか流すことにないぼくたちだったけど、この時だけは嬉し涙を流していた。
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