ハイスクールD×D ~マジシャンズ・ウォー~ 作:ゼロ・ツー
突如として現れた一人の少女。
だが、気になったことというよりおかしな点があった。
何故、魔法使いでも上級に入る俺とフェイに気づかれなかったのか。
それどころか、一体いつからそこにいたのかすらわからない。
始めからいたのか、それとも今の会話の間に現れたのか。
とにかく俺たちに気づかれずに現れた時点で普通ではない。
わかっているとすれば、そいつらが魔法使いであるという事だけである。
「クロノワール!何で此処にいるにゃん?」
「なに、儂も此処には遊びに来ただけじゃよ」
黒歌の言葉で、理解した。
こいつが誰なのかも、どれほどの人物かも。
「お前、クロノワールシュバルツ・シックスか?」
「ほぉ。さすがに儂のことは知っていたか?いかにも、儂がクロノワールシュバルツ・シックスじゃ。お主らは蒼薙零弐にフェイシス・クラウンじゃったな」
嫌な笑みを浮かべながらこちらを見ていたクロノワールの姿に、隙が見えなかった。
「おい、蒼薙。あいつ誰なんだよ?」
「……クロノワールシュバルツ・シックス。上級魔法使いの中でもトップクラスの実力を誇る、トレイラーの魔法使いだ」
「ついでに言うと、二十年ほど前に終戦した第一次魔法戦争の生き残りでもあります」
「そう褒めるでない。儂が参加したとしてもほぼ終戦のころじゃ。それに、今はトレイラーを抜けて、ヴァーリと一緒に行動しておるからの」
「……戦闘狂が」
「その言い方は気に入らんの。儂はただ強くて美味そうな相手を喰うてみたいだけじゃ」
クロノワールは不敵な笑みを浮かべながら、舌なめずりした。
得物を見つけたように睨んでくるクロノワールに対し、俺の腕は震えていた。
それを抑えるために、もう片方の腕で押さえたが、どれだけ考えてもクロノワールに勝てる気がしなかった。
フェイの方も様子を見たが、俺と同じようだった。
「黒歌よ、お主はそいつらを相手しておれ」
「了解にゃ。クロノワールはどうするの?」
「無論儂もやるぞ。儂はこやつらの相手をするがのぉ」
「っち。兵藤!そっちはおまえがなんとかしろ!」
「おい、それってどういうことだ?」
「そのままの意味です。ぼくたちだと彼女にはまともに勝てないという事ですよ」
フェイの言葉に、兵藤だけでなくグレモリー、塔城が驚いていた。
「では、行かせてもらうかのぉ。セバス、お主はフェイシスの方をやれ。儂はこやつをやる」
「承知イタシマシタ」
セバスと呼ばれた鰐紳士がフェイの方に向かったので、フェイの前に立とうと体の向きを変えると、すでに目の前にクロノワールがいた。
「お主の相手は儂だと言ったであろう」
「クッソがぁぁぁぁ!!」
少し時間が経ち……。
「まったくつまらん勝負じゃったのぉ」
クロノワールとの戦闘は、完全敗北だった。
膝立ち状態で、複数の剣のようなもので拘束された状態の俺と、セバスに頭を木に押し付けられた状態のフェイ。
あまりにも実力に差があった。
魔法の使用のうまさではなく、純粋な経験からくる戦闘能力が俺たちよりも上なのだという事を思い知らされた。
クロノワールは俺の顎に手を添えながら、顔を近づけてきた。
「にしてもお主、……暗示かのぉ?いや、それとはもっと違う。まるで……。なうほど、そういうことか」
「何が言いたい?」
「ハハハ、なに気にするでない。そうかそうか、あやつが何故こんなやつに執拗に狙うのかがわかったぞ」
クロノワールは一人で何かを納得したのか、笑い始めた。
「だが、これを解くには一体どうしたものかのぉ?……そうじゃ!黒歌と闘っているあやつらを殺せば、いい刺激になるかもしれないのぉ」
クロノワールが俺を横目で見ながらそう言ってきた。
その言葉に、俺は怒りを覚えた。
数か月前であれば、決して抱かないだろう怒りが込み上げてきた。
「……けんな」
「ん?なんて言ったんじゃ?」
「ふざけんなぁぁ!あいつらに、仲間に手は出させねぇぇ!」
身体の至る所を固定している剣のようなものを力任せに外そうとした。
刃が肉に食い込み、治療したばかりの傷が開きそうになるが、そんなことは構わずに続けた。
その時、膨大な質量の赤いオーラが出現した。
その方を見ると、兵藤がそのオーラに包まれていた。
『
どうやら、兵藤の
唯、その至り方に問題があった。
兵藤の近くでは、グレモリーが胸元をはだけさせていた。
塔城に至っては、顔を真っ青にしながらも、兵藤に軽蔑の目を向けていた。
それだけで、何があったかは大体わかる。
「……あれがお主の仲間というやつなのか?」
「……なんか、すまん」
「何でそこで謝ってんだよ!」
「……レイジ先輩がいいこと言っていたのに、台無しです。イッセー先輩」
さすがにこのことに関してはみんなが呆れていた。
唯タンニーンが一人至ったことに対して喜んでいた。
だが、さすがに禁手に至ったとあれば、その力は凄まじかった。
兵藤の放った一撃は、結界を消し去るほどの威力だった。
「さすがにあれになられては黒歌にも分が悪いようじゃの。それに、こちらにも違う獲物が来たようじゃ」
その瞬間、クロノワールがいたところに何かがその場所を切り裂いた。
クロノワールは瞬時にその場から離れていたので当たりはしなかった。
「大丈夫ッスか?レイジさん、フェイさん」
「レヴィか。どうしてここにいる?」
「話はあとッス。りのんはフェイさんを捕まえている鰐を頼むッス」
「了解ですよ!」
レヴィの言葉と一緒に、セバスが誰かの拳で飛ばされた。
だが、その屈強な体にはダメージはなかったようだった。
鰐を殴ったのは、レヴィと同じように黒を強調としたブレザーに赤いチャック柄のスカートの上から、上半分が黄色、下半分がワインレッド色のロングコートのようなパーカで、腕の部分はキグルミのような丸いシルエット、頭には左だけ竜の牙のようなものがくっついているという格好をした女だった。
「『ウィザードブレス』、『フォートップ』の一人、風間レヴィとその相方、乙女橘りのんじゃな。お主らでは儂らの相手には不足じゃな」
「言ってくれるッスね」
レヴィの小太刀をクロノワールは片手で易々と受け止め、りのんの拳をセバスは簡単に受け止めた。
そして、二人とも攻撃を受けて、後方に大きく飛ばされた。
それと同時に、タイミングを見計らったかのごとく、空間に裂け目が生まれた。
「そこまでです、美候、黒歌、クロノワール。悪魔たちが気づきましたよ」
現れたのはメガネをかけた男だった。
どうやら、クロノワールたちの仲間の様だった。
「まったく、もう少しで喰えそうじゃったというのにのぉ」
仲間が現れたことに、少し不満があるようだったクロノワールだった。
だがさすがにこれ以上やり合っては他の奴らが集まってきて、クロノワールたちが不利になるのに気づいていないわけではないので、従うことにした。
「まぁ、仕方がないのぉ。そうじゃ、蒼薙。最後にお主にいいものをやろう」
そう言ったクロノワールは、俺にキスしてきた。
始めは何が起きたのかわからず呆然とした。
周りの奴らも、突然の行為に驚いて声も出ていなかった。
だが、クロノワールが離れるとともに、俺の頭の中で何かが書き換えられていく感じがした。
「がぁぁぁぁああああ!!」
頭が割れるような激痛と共に、どんどんと記憶が書き換えられていく感じが広がっていった。
剣のようなものが無くなったことで、地面に倒れこみ、そのまま頭を抱えた。
「それじゃ、また会おうではないか」
そう言い残し、クロノワールたちは消えて行った。
少しして、頭の痛みが引いた俺は、そのまま気絶した。
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