今回からは4話ほど、同じ時系列の作品を投稿予定です。
今回はそのプロローグです。
では、短いですがお楽しみくださいまし。
「私は、地球連邦初代大統領としてここに宣言します。波動砲艦隊構想の要たる、4人の姉妹の進宙を。この4人の姉妹は、先行して進宙した長女アンドロメダに続き、波動砲艦隊の中核を成すものであり、先の大戦で大きな痛手を被った地球の強力な盾、そして矛となるでしょう。この大いなる力は、ひいては宇宙を守るための大きな切り札となり……」
壮大な軍楽隊の演奏と、地球政府上層部、軍高官、大企業幹部、各国マスコミ、さらには駐地球ガミラス大使までもが同席し、同じ式典を祝うことになろうとは3年前には到底考えられなかった。
少し頭上を見れば、ガミラス大使と地球防衛軍最高司令官らが隣同士だ。
「地球は変わったな」
そう染々と呟くのは地球連邦防衛軍宇宙軍第2航宙艦隊旗艦アルデバラン(BB-A-0002-01)だ。
新生地球艦隊副総旗艦も兼任する彼女は、波動砲艦隊創設案を最初に提唱しただけでなく、マルチ隊形を含む大規模統制波動砲戦の戦術概念、地球軍の基幹戦略構想など、地球軍の頭脳として、いくつもの重要な貢献を果たしていた。
そんな彼女は、かつて巡洋艦アオバとして戦っていた頃、つまりはガミラス戦役当時のことを思い出していた。
光陰矢の如しとは言うが、あれから3年も経っているとは、信じ難いことだった。
「急にどうしたんですか?ナーバスになるなんて、珍しいですね」
声をかけたのは同じく進宙の時を待つ3番目の姉妹艦、アポロノーム(BB-A-0003-01)だった。地球連邦防衛軍宇宙軍第3航宙艦隊旗艦にして、宇宙軍航空主席参謀を兼任する彼女は長く共に戦ってきた戦友の1人でもあった。
「別に。何ともないさ」
強がってはみせたが、どうやら彼女に察知されるほどに顔に出ていたようだ。
「そうは言っても、あまり気乗りしない顔をしていると私たちだって不安になりますし、何より
彼女のあざとい笑顔に私はめっぽう弱いな。そう思いながら、自身の胸中を打ち明けることにした
「それを言われてしまっては弱るな。わかった、認めよう。少し昔を思い出して辛気臭くなってたよ」
昔からアポロノームには敵わなかった。部下や同僚、上司に関係なく気配りが出来る性格の彼女はどんな相手だろうと分け隔てなく慈愛の眼差しを向け、老若男女を問わず魅了する、まさに慈母というべき誇れる妹だ。
「昔ってもしかして……いや、やめとくよ。不意に地雷は踏みたくねぇからな」
「助かるよ、アンタレス」
彼女、5番目の姉妹艦アンタレス(BB-A-0005-01)は粗っぽいように見えて実際にはかなり細かい気配りが出来る性格だった。
粗暴な性格はむしろ照れ隠しにも見て取れ、彼女自身優しい性格であるのはよくわかる。
「…………」
ふと、自艦の左に控える4番目の姉妹艦アキレス(BB-A-0004-01)が何かを言ったような気がした。
「どうした、アキレス。何か言いたいことでもあるのか?」
アキレスは小さく首を横に振る。彼女は幼少の頃よりこの調子で、どうも他人とのコミュニケーションが苦手な性格だった。
「そうか……おっと、そろそろ進宙だ。私語はこれ以上は禁止だ」
『了解』
声の揃った返礼が聞こえると、古くからの進水・命名式の伝統であるシャンパンボトルが用意された。
艦娘の進水式でも、この伝統的儀式は変わらない。
今回は姉妹艦と、後続の波動砲艦隊全艦へ向け、アルデバランが訓示を述べる。
「私たちアンドロメダ級は、地球艦隊、そして地球そのものの復興の象徴にして、最新最強の艦隊決戦兵器"波動砲"を有する地球の盾であり、矛。私たちは地球に振りかかる全ての害悪を駆逐し、この命を懸けてその任務を全うすることをここに誓い、姉妹艦と後続の波動砲艦隊全艦がこの誓いを全うすることを期待する」
短い訓示を述べると、シャンパンボトルが振り下ろされ、艤装に勢いよく打ち付けられる。破片が光のつぶてのように美しく軌跡を描きながらシャンパンを撒き散らす。
心地よく濡れる感触を味わいながら、アルデバランらの頭上で、造船技官主任が命じる。
「進宙、準備!」
アンカーが巻き上げられ、船台が稼働段階に入る。仰々しく放出される蒸気を合図に、アンドロメダ級4姉妹は独特なエンジンの唸り声をあげ始める。
「機関始動、出力上昇中」
「航路上の安全をクリア。ワープ座標計算完了」
「………エンジン出力安定、推力1160万t……」
「全艦オールグリーン、いつでもイケるぜ」
姉妹からの報告と、自身のコンソールから準備の完了を判断し、アルデバランはその右手を大きく掲げ、振り下ろす。
「これが、我らの良き船出となることを願って……全艦、発進!!」
船台が稼動し、半着水すると、その前途を祝福するかのように水飛沫が上がる。
重厚な汽笛が鳴り響き、盛大なファンファーレと歓声の中、アンドロメダ級4姉妹は発進する
エンジンが一際大きな唸り声を上げ、船台から勢いよく飛び出す。
まるで、天へと昇る龍か、空へ飛び立つ天使のような神々しさを放ち、4姉妹は行く。
その前途に広がる宇宙が、はたして祝福の海か、はたまた絶望の海かはわからない。
だが、止まることのない時代において、いきる術を多くは持たない彼女らはただ前を見つめ歩むしか出来なかった。
万感の思いを胸に秘め、4人の少女は超空間へと消えていった。
いかがでしたか?
短いですが、キレイに纏まったと思うので自分としては満足です。
このあと、ユウナギを主人公にした短編も投稿予定です。
蒼き艦娘たちが、一体何を思ってあの時代を生きたのか、お楽しみに。
では。