言峰綺礼(偽)は愉悦したい~Painlessness~   作:アイス&コーン

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早く学園編までいきたい、それだけが楽しみなんだ……。


いやおかしすぎーー!

side リオン

 

 理解が追い付かない。

 

 俺は前世も含めて今が一番混乱している、と思う。

 

 さっきまで談笑して、良い奴と思っていた奴が、今では脳が震えるほどの殺気を垂れ流しにしているのだ。

 

 そりゃ混乱するのも仕方がないだろう?

 

 だが、さっきまでに比べれば少しは冷静に考えることが出来る。

 

 まず、今必要なのは『対話』『時間稼ぎ』、この二つだろう。

 

 

 ルクシオンが破壊されて、今の俺にはこいつに対抗する術がない。

 

 だが、破壊されたのはルクシオンの子機だ。

 

 本体は無事、だが持ってくるのに時間がかかるだろう。

 

 それの時間稼ぎと、こいつの今の豹変した態度は一体何なのか、それを俺は知る必要がある。

 

 故に対話、これも必須事項だ。

 

 緊張で喉がカラカラだが、無理にでも話さなければ。

 

「ぃ、いきなりどうした? そんなに怖い顔してよ。それにこれは重大な問題行動じゃねぇか? お前は俺が苦労して持ってきたロストアイテムをたった今壊したんだぞ。……まさか、知りませんでしたなんて言うつもりはないよな~?」

 

「これは失礼。そう怯えずともアナタに害を及ぼすつもりはありませんよ。ただ、アナタの保有していたロストアイテムが問題なのです。アレは、とても危険なモノなのです。アレを破壊した後は、賠償をお支払いいたします。決して悪いようには致しませんから。――それでは」

 

 サッと消えるように部屋を去る。

 

 逃げた、という風には見えなかった。

 

 恐らく外に出てルクシオンと戦うつもりなのだろう。

 

 あいつはルクシオンについて知っていそうだったから、本体があることも知識として知っているはずだ。

 

 ここでは、人が多くいるこの浮島で戦うのは危険と判断したのだろうか?

 

 

 だがともかく、いずれにしろ被害は多く出るだろう。

 

 ルクシオンは俺が危険に晒されるという点と、あいつのルクシオンと同類を破壊してきたという発言から、パルトナーではなく本体で来るはずだ。

 

 普通なら俺の許可が必要だが、緊急事態だから止む無しとか出来そうだし。

 

 そして今のところ戦闘力が未知数な所のある神官の男、キレイ。

 

 素人の言だが、あいつはなんとなくヤバイ気がする。

 

 ただの勘ではあるが、多分当たってる。

 

「おいリオン! 中で何があった! 神官さんが何やら急いで出ていったぞ!」

 

「ちっ、早いな。親父! お袋と他の奴連れて離れてくれ、ここも危ないかもしれない!」

 

「お、お前またなんかやかしたのか!? あああ、詳しくは聞かんが後で絶対なにがあったか話せよ!」

 

「これを無事乗り切れたら話すよ」

 

 親父たちには避難してもらい、俺はルクシオンがいるであろう場所へと向かう。

 

 だが、向かっている途中で突如轟音が鳴り響く。

 

「これは……ルクシオンか!」

 

 島中に轟く程の音が、腹の底まで鳴り響く。

 

 それが何度も鳴る。

 

 気のせいか地面も揺れているようにさえ感じる。

 

「くっ、島から離れててこれかよ。ルクシオンもこっちに被害が出ないようにちゃんと加減してるんだろうな?」

 

 ちょっと、いやめちゃくちゃ行きたくないが仕方ない。

 

 俺が行かないとルクシオンは攻撃を止めないだろうし、このままじゃマジでここも沈んじまう。

 

 実家が沈むとか絶対嫌だし、何よりここには家族も領民もたくさんいる。

 

 誰か代わってほしいが、俺がやらなきゃダメだろうな。

 

「俺モブなのに、なんでこんなに頑張らなきゃいけないんだ………」

 

 決めた。

 

 これが終わったらマジで学校始まるまで引き籠ってやる。

 

 と、そんな覚悟を決めていると、また地面が揺れた。

 

「っと、そんなこと考えてる場合じゃねぇ。急いで止めに行かないと!」

 

 本当に俺に止められるかはわからないが、可能性があるからならなかったら絶対後悔する!

 

 そんなことを思い、俺は全力で走る。

 

 

 

 

side ルクシオン

 

『これは予想外です』

 

 私はマスターの危機のため、本体を出動させ、敵を排除することにしました。

 

 敵は一人、武装は無く、単体では脅威にはならないでしょう。

 

 強いて言えば人間とは思えないほどのパワーとスピードはありましたが、そんなものは私の前では無意味です。

 

 間違いなく私の敵ではなく、マスターの安否だけが憂慮すべき問題でしたが、生きていることを感知し、後は敵を排除するだけです。

 

 こちらに飛んできた敵を攻撃しましたが、それが避けられてしまい、また攻撃するといったことが何度も起こっています。

 

『それにしても、この鎧は何でしょうね。科学で作られたものではなく、かと言って新人類側の兵器でも無いはず。なにより鎧としては()()()()()()。小さいということに利点がないわけではありませんが、圧倒的にパワー不足でしょう。これに私と同じ人工知能たちが負けた? まだ他になにかあるのでしょうか? それともあの発現はブラフ?』

 

 敵の鎧を解析します。

 

 銀色に眩く光るその鎧は、使用者の背丈ほどの大きさしかなく、素早く動ける反面、パワー不足であると解析します。

 

 アレに芸術的価値があるのは認めますが、実用的にするのであれば今の鎧のようにもっと大きくするべきでしょうね。

 

『結論、予想外ではありましたが脅威ではないと判断してよいでしょう。マスターにいる島に被害が出ないよう調整、攻撃を修正し、敵の完全排除を遂行します』

 

 攻撃パターンを変えると、敵も動きを変えましたが、その動きには多少のズレがあり、敵は少し混乱していると思われます。

 

 ここから一気に肩を付けましょう。

 

 島に被害が出ず、今行える私の最大火力を敵へと放ちます。

 

 凄まじく響く轟音が島にも届き、多少の自身が引き起こされたと思われますが、その程度は想定内です。

 

 私の最大火力を2発、3発と続けていき、敵の鎧を破壊します。

 

 恐らく鎧だけでなく使用者にも一定のダメージがいっていると予想できますが、そんなものはどうでもいいです。

 

 むしろ死んでくれるならば私としてもありがたい、新人類はマスター以外全員滅んでくれて結構ですからね。

 

 

 おや、そうこうしている内に中々の量を打ち込んでいましたね。

 

 やはり憎き新人類に攻撃すると私もやり過ぎてしまします、マスターからの注意を汲むわけではありませんが、少し反省します。

 

『? この反応は……まだ生きているのですか?』

 

 私の予測した未来と結果が少々異なりますね。

 

 あの攻撃の中、高い確率で落ちるか死ぬかの二択だと思っていましたが、なるほど。

 

 あの鎧はなんらかの結界でも張れて、それが私の想定以上に強固だったと考えれば理解できます。

 

『ですが、やはり疑問ですね。その程度で私たち人工知能に対応出来るとは到底思えません。その程度であれば対応策などいくらでも思いつきます。やはり、あの発現はブラフだったのでしょうか? 断定はできませんが、その確率は高くなりましたね』

 

 私は生体反応がまだある敵に対して、追撃を仕掛けようとしましたが――

 

『―――マスターも甘いですね。攻撃を止めろなどと、ここは破壊するチャンスではありませんか。私という存在も明らかになるかもしれないというのに………。ですが、これもマスターの指示です。ここは降伏勧告でもすれば……!!』

 

 私の常時発動しているバリアに、攻撃が感知されました。

 

 なぜ? どこから? だれが?

 

 そこで私は気づきました。

 

『! 生体反応の位置が若干ずれています。これは、あの鎧の攻撃であると断定、ですがこちらはマスターから攻撃の中止を命令されています。マスターに至急反撃の許可を』

 

 ですが、マスターからは攻撃するなという命令が返ってきます。

 

 やはり甘い。

 

 しかしながらそれも命令です、敵が降伏してくれるのか確認しましょう。

 

『こちらはあなたへの追撃を中止します。あなたも攻撃を中止するのであれば、私もマスターも話し合いの場につこうと考えています。返答をお願いします』

 

 ピタリと攻撃が止みます。

 

 どうやら敵もこれ以上戦うのは無意味と悟ったのでしょうか、はたまた別の理由でしょうか。

 

 どうあれ、マスターも近くに来たことですし、子機を出してマスターの命令を待ちましょう。

 

 

 攻撃をしている時に出ていた霧のようなものも晴れ、相手の姿が浮かび上がり、驚くべき事実が判明します。

 

『!? 無傷―――馬鹿な……』

 

 そこには傷一つない、銀色に輝く鎧の姿があった。

 

 

 

 

side リオン

 

「うっそーん……」

 

 

 思わずそう呟いてしまったがそれも仕方ないだろう。

 

 だってルクシオンの総攻撃浴びて無傷の鎧が出てきたんだもん。

 

 そりゃビビるだろ。

 

「え、ていうか本当何なの? あんな鎧課金アイテムにはなかったぞ! えぇ、じゃあ鎧の性能じゃなくて搭乗者の純粋な技量とか? ……いやいやないわー、本当に頼むからそれだけは止めてくれよ~?」

 

 鎧の性能でゴリ押しして耐え切ったなら理解できなくもない。

 

 だがもし、有り得ないとはいえもし本当に技量だけであれを耐え切ったとするなら、あいつは人間じゃ無いんじゃないかな?

 

 

 俺がそんな風に少し現実逃避しながら考え込んでいると、ルクシオン(子機)と鎧を脱いだキレイが降りてきた。

 

 気のせいだろうか、あいつらの間に不穏な空気が流れているのは。

 

 ――きっと気のせいだろう。

 

 さっさと済ませれるなら済ませたいし、話し合いをしなきゃな。

 

「よし、ルクシオンもキレイも来たな。まずキレイ、お前に一つ聞くが、なんでルクシオンをいきなり攻撃した? それを聞かなきゃ話し合いも何もないだろう?」

 

「ワタシが『ソレ』に攻撃した理由、ですか? そんなものを問答する意味はありません。ソレは『悪』であり、ワタシはそれを『人々を守るため』に断ってきた。今回もそれをやろうとしたまでです。なんの疑問もないでしょう?」

 

 ……どうしよう、この人は『会話』が出来ない人なのだろうか?

 

 俺がなんでか聞いてるのにいきなりそんなこと言われても困るんですけど。

 

『マスター、相手の方はどうやら言葉を理解して話が出来ないようです。よろしければ教科書でも作ってお渡ししてあげたほうが良いのでは? 私がすぐにお作りしますが』

 

「お前なんでそんな怒ってんの? 今はそんなことどうでもいいから理由を聞かなきゃいけないんだよ」

 

『ですから相手の方はそれが理解できていないではないですか。理解できていないものを理解しろとはマスターも中々酷いですね。ですが良いですね、私が相手の方に英語や他の言語で話してきますのでマスターはそのままお待ちください』

 

「いや、そういう意味じゃないから。……もうお前は一回落ち着け、俺が話すから」

 

 思わずため息が出る。

 

 このルクシオンは放っておいて、いい加減話を進めたい。

 

「お前、俺の質問聞いてる? 俺はなんでかを聞いてるんだ、守るためとか悪とか、そんなの答えになってないだろ。いいか、今度は細かく俺が聞いていくからそれには答えてくれよ? まず、お前はルクシオンみたいな奴を知ってるて言ってたが、本当にそうか? ちょっと似てるだけとかじゃないか?」

 

 俺が気になっていた点、その一つがこれだ。

 

 キレイはルクシオンと同じような存在を知っているといっていたが、それが事実なのかどうか。

 

 それを確かめたかった。

 

「―――リオン殿が持つそのアイテムは『人工知能』と呼ばれる存在であり、目的は人類の殲滅。そして例外なく尋常なる兵器を保有している。ワタシが持つ認識としてはこんなものです。では、リオン殿の肩に乗っている寄生虫のような方、ワタシの認識は間違っていますか?」

 

『全て間違いですね。我々は人類の殲滅ではなく新人類の殲滅を目的に持ち、例外なく兵器を持つと言いましたが持っていない人工知能もいるでしょう。そして最も愚かなのは私が寄生虫と同じような発言をしたことです。寄生虫の定義で考えれば、それはどちらかというと私ではなく私の力で色々しているマスターの方です。よってあなたの言っていること全てが的外れな事であり、あなたはそれを謝罪しなければなりません。謝罪、もしくは自殺することで許しましょう』

 

「これはこれは、ワタシが間違っていた認識を持っていたということは潔く認めましょう。ですが、問題はそんな低次元な話ではありません。ワタシは同じようなモノと対峙したことが何度かあるが、須らくワタシを排除しようとした、そして目的はワタシと同じ存在の殲滅だと知った。だから破壊しているのだ。問題はどこか、そんなことも分からないとは流石はきせい――おっと、いやなんでもないのだ。気にしないでくれ給え」

 

 どっちもめちゃくちゃ怖い。

 

 ていうかこいつら仲悪すぎるぞ!

 

 キレイもなんか口悪くなってるし、もう本当これ以上言い争われたら収拾がつかなくなる。

 

「ゴホンッ! と、とりあえず落ち着け二人とも。キレイがこちらを勘違いで攻撃したわけじゃないことは分かった。だがキレイ、その懸念してることは問題無いぞ」

 

「―――何故ですか?」

 

「なぜって、簡単なことだが俺はルクシオンのマスターだ。こいつは俺の言う事は聞くから、例えルクシオンがそれを望んでいたとしても俺がさせないから心配いらないぞ?」

 

「マスター? リオン殿、まさかアナタはこのきせ…………一つ目を使役されているのですか? 洗脳、もしくは操られているのではなく?」

 

「洗脳ってまた物騒だな。少なくとも俺はそんな風にされた覚えは無いぞ」

 

「……すこし失礼」

 

 キレイが俺に近づこうとするとルクシオンが警戒しだしたので、それを手で制して止めさせる。

 

 俺に近づき、キレイは俺の額に手を置き目を瞑り、その額から暖かい何かが漏れる。

 

 恐らく何かの魔法だろうが、何の魔法だろう?

 

「……確かに洗脳や魅了の類は無いですね。精神攻撃の類で無いことは確実です」

 

「誤解は解けたか?」

 

「いえ、まだ言葉巧みに騙されたという線もありはしますが……、ここで確かめられることではないですね」

 

「じゃあ、とりあえず納得しては貰えたのか?」

 

「…………そうですね。一先ずこの場は矛を収めましょう」

 

 今めっちゃ長い葛藤があったな。

 

 ちょっと面白いぞ。

 

「今はそれでいいさ。もっと時間に余裕があるときにでもまた確かめればいいだろ」

 

 だがこれでやっと帰ってくれる流れになった。

 

 できれば早く帰ってほしい、ルクシオンの精神安定情のために。

 

「―――それもそうですか。ワタシも帰ればまた主のために働く必要があるのですが、まずはここに住まう人々への謝罪ですね。それと諸々の説明なのですが、その一つ目のことは話しても良いのでしょうか?」

 

「あぁ、それは俺から説明しとくぞ。ていうかこのまま帰ってくれると俺としてはありがたいんだが」

 

「いえ、それは出来ません。説明であればリオン殿に任せることも出来ますが、戦闘の余波でここも若干の揺れなどあったでしょう? それはワタシが償うべき罪です」

 

 それは自己満ですか~、て言いたくなったけどやめとこう。

 

 これ以上変な事になるのは勘弁だからな。

 

「わかった。謝罪なんかは好きにしてくれ。ただし、ルクシオンのことについては隠してくれよ?」

 

「心得ております。ではワタシはここで失礼させていただきます」

 

 そう言った次の瞬間にはキレイの姿は消えていた。

 

 あいつは本当に人間なんだろうか?

 

 不思議だ。

 

『マスター、本当に奴を潰さなくてもよろしいのですか? こちらの情報を、弱みを奴は持っているのですよ? あまりにも危険だと判断します。一刻も早く奴を排除するのが一番の解決だと、マスターもわかっているでしょう』

 

「いや、キレイはバラしたりなんかはしないだろう。動機とかメリットとかじゃなくて、少しだけしか関わっていないがそういうことをする奴じゃないことは分かる。それより、お前がキレイを排除したい理由にこそ私情駄々洩れじゃないか?」

 

 前からこいつは妙に人間味があると思っていたが、こいつは本当に人工知能なのか疑わしくなるな。

 

 まあ、聞いても『私は科学の結晶の人工知能ですよ』、とか答えてきそうだが。

 

「とにかく、もう頭がパンクしそうだから今日は休む」

 

『ご家族への説明はどうするのですか、マスター』

 

「お前からしといてくれ。どうせ話すって言っちゃったんだし、お前が話そうが俺が話そうが変わらないだろ~」

 

『流石はマスター。面倒くさいことは私に押し付けるその性根は素晴らしですね、尊敬します』

 

「お前、いつもより酷くない? 生理?」

 

『おや、私のことを女性だと思っていたのですか? ですが残念ですね、私には性別という概念がありませんので全てマスターの妄想ですよ』

 

 こいつの本当に捻くれてるな。

 

 もっと俺みたいに誠実な人間になってほしいものだ。

 

「ま、もういいからとにかく頼んだぞ。俺は今から寝る!」

 

『はい、後始末は私に押し付け早く寝てください』

 

 俺はルクシオンの皮肉を無視し、屋敷の自分の部屋へ向かう。

 

 今日は疲れたからぐっすり眠れるな。

 

 

 そんなことを思いながら歩いていると、ルクシオンが『それから――』と

 

『マスターは”誠実”な人間ではありませんので、勘違いなさらないよう気を付けて下さいね』

 

 そんなことを宣った。

 

 

 ………お前、俺の思考読めんの? と、密かに恐怖した瞬間であった。

 

 これからは俺の考えを読まないように注意しておこう。

 

 




 これ書いてて愉悦神父要素皆無なことに書き終わって気づきました。

 書き終わって気づいたからもういいやと思い投稿します。
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