タイトル通りのお話。実は勇者の姉ソフィア、ごく普通の村娘で妹リュシー。そんな姉妹のある夜のお話。綺麗なお姉さんが弱々の可愛い妹に反撃を喰らう。そんな話が好き。小説家になろうにも投稿しています。

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趣味全開の話


妹を美味しく食べちゃおうと内緒で頑張る姉、そして実は知ってる妹が反撃を予定している夜の話

 

 

 

 姉、ソフィア

 

 

 

 

「ムルムルの尻尾はこれで良しと」

 

 目の前には赤黒い身体を持つ怪物が倒れていて、長い尻尾の先は千切ったから短くなってる。ぱっと見は魔族っぽいかな。何かの絵で見た気がするけど、詳しく知らないから適当。

 

「後はライラの涙? 人型の魔物で、獲物を誘惑して食べちゃう。ふーん」

 

 目を落とした紙にズラズラと並ぶ文字、斜線でムルムルの尻尾を消して。目的の薬を作るために必要な材料は次で最後。少し苦労したけど、長年温めて来た夢が叶うと思うと疲れないから不思議だ。

 

「場所は……ナイトメア級のダンジョンの下層に現れる、か。ささっと終わらせちゃお。リュシーに心配掛けたら本末転倒だもん」

 

 確かナイトメア級は最難度ダンジョンで、国が管理してて一般人は入れない筈。捕まるのも嫌だから、認識阻害で入ればいいか。下層らしいし途中の魔物達はスルーで。面倒だし興味も無い。

 

「よし、と」

 

 軽く集中し、魔法で一気に飛翔する。

 

 地面を歩いて行ったら何日必要か分からないし、早く帰って大好きなリュシーの可愛い顔を眺めたい。思わず全力を出してしまって、体感では一瞬で着いちゃった。晴れてて良かったな。雨や寒さを魔力で防ぐ必要が無い。

 

「ん、あれかな。鎧姿の男の人が沢山見張ってるし間違いないよね」

 

 遥か上空から観察してるから微妙だけれど。

 

「地図地図。ハナン山があれで……川があっちに流れてる。うん間違いない、ナイトメア級のダンジョンだ」

 

 取り出した地図をお手製のポーチに収めたとき、贈り物された手鏡が目に入って思わず手にする。つい自分を見てしまった。まあまあの美人だけど、妹のリュシーには到底敵わない。髪も眼だって同じ色なのに印象が随分変わる。

 

「やっぱり、可愛げないなぁ」

 

 垂れ目だけど可愛らしい訳なくて脱力系。唇も厚ぼったい気がする。よく眠いの?って聞かれるけど納得してしまう自分が可笑しい。

 

 そのくせ胸もお尻も大きいのが気に食わない。太ってるわけじゃないけど、個人的にはちっちゃくて可愛いのが好きなのに。あと色気とか要らない。男達の目線も誘われるのもウザい。

 

 何にしても、無愛想な私と明るい妹と比べるのが間違いだよね。

 

「お姉ちゃんはもっと身嗜みをしっかり、か。折角の美人がって言われてもなぁ」

 

 寝る前の手入れ、朝の化粧。当たり前だとしても面倒は面倒。リュシーの肌なら幾らでも触ってられるけどな。

 

「よし、行こ。あの子が十五歳になる日……"生誕の祭夜"は明日だから、それまでに完成させないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「あ、お姉ちゃん、おかえり!」

 

 可愛い。

 

 振り返ったその笑顔、可愛い。

 

 何回見てもリュシーは可愛い。毎朝櫛を通してる銀髪は薄らと青色が混ざってキラキラ。まあナイショで魔力を送ってるから当然かな。田舎の村だから日焼け肌荒れが当たり前だけど、眠った後のリュシーにいつも回復魔法を掛ける事で健康的な白はそのままだし。垂れ目の優しい瞳は深緑で、毎日眺める日課が最高。身長も低くて、抱き締めると包み込めるから丁度いいのもやっぱり最高。胸だって慎ましやかに育ってくれて、これも私好みで大好き。大きいのは好きじゃない、私みたいに。

 

 素直で、真面目で、お淑やかで、擦れてない。

 

 つまり、精霊そのもの。見た事も会った事もないけど、国の王女様もそんな感じなのかな。

 

 

 可愛い。

 

 早く食べたい。

 

 私色に染めたい。

 

 あと少しの我慢。

 

 今日の集めた材料で禁断の媚薬が作れるんだから。

 

 明日……リュシーの誕生日、この世界で一人前として認められる大事な日に、私のモノにする。何年も掛けた計画も終わりが近い。いや始まりかな。

 

「今日は……わぁ、墨吐き兎が二羽も。きっと村一番の狩人だよ、ソフィアお姉ちゃんは」

 

 村一番どころか、多分世界でも上の方だと思う。兎なんてダンジョンからの帰りに狩りしただけ。まあ本当の力を隠してるから分からないだろうけど。矢は念の為に二本捨てて証拠隠滅もしてる。

 

「墨袋は破れてないから高く売れると思うよ。血抜きはしたけど、任せていい? 水浴びしたいし」

 

「うん、任せて」

 

「お願い」

 

 リュシーは手先が器用だから安心して任せられる。お裁縫も料理も、私より上手。ホント理想の女の子に育ってくれたな……まあ、そう仕向けたの私だけどさ。

 

 水浴びの時間は色々と考えるのにピッタリ。

 

 癖になってる独り言も聞こえないし。

 

「そういえば、女の子が好きって気付いたのいつ頃だろう。今まで何となく満足出来なかったけど、リュシーが居たからだよね」

 

 大きめの胸を片方ずつ少し持ち上げて、濡らした布で拭く。ホント邪魔。

 

「あんな理想の女の子が目の前に居て、毎日一緒に過ごした訳だから仕方ないよ。素敵な姉であるよう頑張って来たけど……ごめんね。もう我慢出来ない」

 

 計画は順調。間違いなくリュシーは私の事が好きで依存もしてる筈。それに、狩人として格好良いところ見せてるし……同じ狩人だったお父さんのこと憧れてたもんね。私達を一人で育ててくれたお父さんには心から感謝してるけど、死んで何年も経った。だから、もう、私の好きにする。

 

「媚薬を完成させて、初めて飲むお祝いのお酒に混ぜて……毒じゃないのは確認したから大丈夫。でも、幸運だったな」

 

 リュシーが行商から偶然手に入れたらしい古書の中に挟まってた古い紙。其処には大昔の色々なヤバい薬の製法、その数々が記されていた。私に見せてくれたのは古代言語が読めないからだけど、それも幸運だったと思う。基本的にアレな方面ばかりだったから。でも、お陰で計画が早まった。

 

「最近は水浴びも一緒にしてくれないから、久しぶりにリュシーの身体を……ううん、油断しちゃダメ。最後の詰めを誤ったら最悪だもん。決行の夜までは優しい姉じゃないと」

 

 酷い姉だと自覚してる。

 

 だって血の繋がった妹を抱こうとしてるんだから。しかも媚薬を使って。

 

 でも、きっと私は元々そんな人間。誰に対しても無理矢理は絶対しなかったのに。そんな昔も良かったけど、リュシーを抱いたら幸せで一杯になる確信がある。此れからは毎日毎日、ずっと一緒に寝よう。

 

 沢山気持ち良くしてあげるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、今日村長さんから聞いたんだけど」

 

「なに?」

 

 ご飯を食べながら、可愛い声に耳を傾ける。私はあまり喋らないから、殆どが聞き役。リュシーも慣れたもので、無愛想な相槌にも笑顔で返してくれた。

 

「王様が勇者様を探してるって。吃驚だけど、精霊様の御告げがあったらしいよ」

 

 御伽噺を語るみたいに楽しそう。可愛い。

 

「ふーん」

 

「えっと、何て言ってたかな……勇者様は胸の上辺りに小さな紋章が現れて、凄い力に目覚めるんだって。ナイトメアン?のダンジョンから溢れて来る魔物から私達を守る為に戦うらしいよ。魔物なんて凄く怖いけど、きっと勇者様が助けてくれるよね。御告げだからきっと大丈夫!」

 

「ナイトメア級ね」

 

「あ、そうそう」

 

 胸の上の紋章。まあ、あるね、私の身体に。

 

 内緒にしてるから誰にも見つからない。嫌な予感だったけど、やっぱり当たった。昔から異常な力を自覚してたし、ありがちだ。ほんと勇者とかどうでもいい。面倒。そもそもナイトメア級のボスなら一年くらい前にしっかり脅してるから大丈夫なんだけど。

 

 浅黒い肌した魔族の美人さん。背中に小さめの羽があって、何だか色気が凄かった。肌の露出も凄くて寒く無いのかなって。名前は確かアンデシュレンネ。まあ、レンネと呼んでくれとか言ってた。

 

 でも、歳上お色気枠は好みじゃないから食指も伸びなかったな。最後辺りはこっちをお姉様とか言い出して鳥肌が立ったっけ。偶に行かないとダンジョンから出て来て会いに来そうだからウザイ。

 

 兎に角、探すのはご苦労様だけど、それで許して欲しいかな。

 

 私の生きる目的は、目の前に座ってニコニコ顔のリュシー。媚薬の材料も集まったから、精霊様に感謝します、一応。

 

「お姉ちゃんの胸に紋章があったりして」

 

 え?

 

「……何で」

 

「……ふふふ! 冗談だよー。そうだったら素敵だなって」

 

「変な事言わないでよ。私はただの狩人」

 

「村一番のね! だって墨吐き兎なんて普通年に二、三度しか獲れないもん。お姉ちゃんって当たり前に狩ってくるから吃驚するのが大変」

 

 格好良いとこ見せたくてやり過ぎたかな……あんなの幾らでも獲れるから。

 

「お父さんから習った事を頑張ってるだけだよ」

 

「うーん、お父さんが墨吐き兎を狩った事あったっけ?」

 

 確か一度くらい……いや、無いかも。

 

「ほら、色々と教わって、組み合わせて、運が良いのも、あるし」

 

「お姉ちゃんて焦ると切れ切れの話し方になるよね」

 

「そんな、こと、ないけど」

 

「そうかなぁ」

 

 無邪気な笑顔を見ると、益々気持ちを抑えるのが一苦労。綺麗な唇に指を這わせたい。息が出来ないくらいキスして塞ぎたい。でも大丈夫、もう少し。

 

「お祝いだけど、クウェルのローストでいい?」

 

「それは大好物だけど……狙って獲れる鳥じゃないよね? 大体高い木に住んでるし、魔物の一種だから危ないよ。市場で買ったら凄く高い……」

 

「一生に一度だし、リュシーをお祝い出来る家族は私だけだから何とかするよ」

 

「だからだよ! お姉ちゃんに何かあったら私はどうしたらいいの? お願いだから無理しないでって毎日言ってるのに」

 

 クウェルの巣なら何箇所か見付けてるし、余裕なんだけどな。そう言えばアイツって魔物なんだ。まあ変にデカい鳥と思ってた。

 

「分かった。無理しない。他の獲物で我慢して」

 

 嘘だけど。

 

「うん、勿論」

 

 後は飲み易くて、媚薬と色の似てるお酒だ。まあ目星は付けてるし、味なんてリュシーに判るわけない。でも念の為確認しておこう。

 

「明日準備もあるし早く寝よっか」

 

「そうだね」

 

 こんな姉妹の関係も明日の夜までだ。リュシー、ごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 妹、リュシー

 

 

 

「ンフフ……あぁ、お姉ちゃん可愛いよぉ」

 

 焦ると視線が泳ぐし、片言になる言葉だって。アレで隠せてるつもりなのが特に堪らない。

 

 背も高いし、胸も大きい。なのにスラリとした長い脚と細い腰、ちょっと大きめのお尻なんて一日中眺めておける。眠たげな瞳なんて、気を抜いたら視線が外せなくなるよ。

 

 枕の下からお姉ちゃんが着古した下着を取り出す。本人は捨てたつもりだから、絶対に見つかる訳にいかない。もう匂いは消えちゃったから、そろそろ新しいのを手に入れよっかな。洗濯も買い物も私がしてるから簡単だけど、どうせなら最高の宝物が良いし。

 

 毎日水浴びを欠かさないお姉ちゃんだから、全部を眺めるのが日課。早く両手で思い切り掴みたい、胸とお尻。

 

「やっぱり勇者なんだ。でも不思議、驚かないもん」

 

 以前は一緒に水浴びしてたけど、もう最近は我慢する自信が無くなったんだよ? きっとあの胸に視線が釘付けになって、顔を真ん中に押し付ける未来が見える。だから別々の水浴び。でも、あの紋章は覚えてるから。

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん……」

 

 きっと明日、あの媚薬を使うよね?

 

 古代語を読めないフリまでして渡したし。あのレシピを見た日からお姉ちゃんの行動が変わったから間違いないはず。狩りの匂いじゃない香りがしてる日が増えたのも、墨吐き兎にたった二本の矢だけなんて不自然過ぎる。

 

「レシピの細工に気付かれたら……ううん、お姉ちゃんは大切なところで抜けてるから大丈夫」

 

 こんな相思相愛ってある? 

 

 普通に告白してくれたら恋人同士になれたかな。でもお姉ちゃんは媚薬を使って私を襲うつもりらしい。勇者の力を使われたら逆らう事も、抵抗だって無理。それはそれで、お姉ちゃんとなら素敵だとは思う。でも……

 

「ごめんね。私はお姉ちゃんで沢山遊びたい。泣き顔も我慢する表情も、赤く染まった頬だって見たいの。足の先から頭の天辺まで私の触れてない場所を世界から消したい。全部が欲しいの」

 

 私はきっと病気なんだろう。自覚してる。お姉ちゃんが好きそうな女の子になって、本性を隠して……それに快感だって感じてる。理想の妹でいるから、私にとっての理想の姉でいて?

 

 もう村の女の子達には警告してるから、お姉ちゃんに近付かない。私だけを見て、私だけのモノになる。

 

「沢山愛して、泣かせて、気持ち良くして上げるから。私抜きで生きていけないように」

 

 

 

 

 

 生誕の祭夜。

 

 この村で今年成人になるのは私ともう一人だけ。だから直ぐに終わった。花冠して精霊様の御言を呟いて、歌って踊るだけだから当たり前かな。大人達は楽しそうに酒を酌み交わして笑ってる。田舎の村だから催しなんて少ないし、料理も美味しいもん。きっと夜遅くまで騒いで、明日は畑仕事も狩りも休みかお昼からだろうな。

 

 私にとっての祭夜は此れから。

 

 ああ、お姉ちゃん、もっと上手く隠さないと。視線がおかしいし、その手にあるお酒を気にし過ぎて不自然だから。知らないフリするのも楽しいけど、つい苛めたくなっちゃうよ。

 

 どうやって私に飲ませるのかな。大丈夫、ちゃんと罠に嵌るから、お姉ちゃんが。

 

「リュシー、帰ろ」

 

「もう帰っていいの? まだ皆んな居るけど」

 

「もう誰が誰だか分からないよ。あの連中はお酒が飲めたら満足だから」

 

 ちょっと焦らしてみよう。

 

「でも片付けとかあるし、地面に寝てる人が……」

 

「帰ったらクウェルのローストが有るの。食べたくない?」

 

「えぇ⁉︎ そんなの見てないけど!」

 

「驚かせたかったから。ね、だから帰ろ」

 

 早く、早く、そんな気持ちが隠せてないよ? 食べ物で釣るってところも可愛い。

 

「んー、分かった。お姉ちゃんと二人きりだね!」

 

「う、うん。そう、だね」

 

 二人きり。ほら、返事が途切れ途切れだ。

 

「手を繋ごっか? 昔みたいに」

 

「え、えっと、うん」

 

 お姉ちゃんの手は汗でしっとりと濡れていた。ふふふ。

 

 

 

 

 

 

「ホント美味しい……世界で一番幸せな妹だよね、ソフィアお姉ちゃんがお姉ちゃんだから」

 

「大袈裟だよ」

 

 クウェルは魔物に分類される大きな鳥だけど、肉質も脂も良くて、有名な食材の一つ。ただ、当たり前だけど手に入れるのは簡単じゃない。だって魔物で、凄く高い場所に住んでるらしいし。

 

「市場で買ったの? 高かったでしょ?」

 

「ん、偶然だけど矢が当たったの。お金は出してない」

 

「今日? お昼頃に帰って来たよね? その間に狩りしたって事だから……どんな偶然なのかな」

 

「木から降りて来てて、ね」

 

「すっごいねぇ」

 

 お姉ちゃん知らないのかな、クウェルって一生木の上で過ごすんだけど。死ぬ時ですら、人の目に晒されない場所を探すんだよ? だから貴重で、貴族様も偶にしか食べられない訳だし。去年も偶然とか言って持って帰ったの忘れた?

 

「だから沢山食べて」

 

「ローストだから仕方無いけど、味付けが強くて沢山は無理だよぉ。明日のパンに挟んだり、サラダに合わせようね。暫く贅沢な御飯になるよ。太らないかな……」

 

「……じゃあ、何か飲む? リュシーも、今日から大人に、なったし、お酒と、か」

 

 危ない、反応しそうだった。だって、こんな分かり易いお誘いとは思って無かったから。あと、また言葉が切れ切れになってるよ。

 

「そっか! 私もお酒飲めるんだね。でも大丈夫かな」

 

「持って来るね。用意してるから」

 

「じゃあ手伝うね!」

 

 ビタリと動きが止まった。まあ手伝われたら細工出来ないもんね。

 

「大丈夫。今日は、リュシーのお祝い、なんだから座って、て」

 

「そう?」

 

 美人さんなのに凄く挙動不審。可愛いけど。

 

 ギクシャクと変な動きしながら隣に消えて行くお姉ちゃん。台所の方からゴソゴソと音がしてるから、準備が大変なんだろう。

 

「さてと」

 

 いよいよだ。

 

 ある意味で時間との戦い。勇者であるお姉ちゃんは、普通の罠なんて簡単に突破しちゃう。無理矢理なんて不可能だし、大抵の薬や魔法も効かない。

 

 だからこそのレシピだった。賭けだったけど、お姉ちゃんは必死に集めたみたい。あんな材料なんて普通は手に入らないからね。"ライラの涙"なんてナイトメア級ダンジョンの最下層だもん。でもお姉ちゃんは知らない。揃った材料を()()()()()()()貰ってる事を、私が。

 

 テーブルの真ん中、燭台の蝋燭を入れ替える。色も形も一緒だから絶対に分からない。

 

「火をつけて……少し甘い香りかな。まあ大丈夫でしょ」

 

 あとは椅子にお尻を下ろして待つだけ。

 

「リュシー、お待たせ」

 

「わぁ! 綺麗な色だね!」

 

 グラスに注がれてるお酒、ホントに綺麗。夕焼けから夜に変わる時の強い赤、そんな色。

 

「色は濃いけど、飲みやすいお酒だから」

 

「もし酔っちゃったらお姉ちゃん介抱してね?」

 

「う、うん、任せ、て」

 

「何で片言なの? ふふ、可笑しい」

 

 何を想像してるのかな?

 

「じゃ、じゃあ、リュシー、おめでと」

 

「ありがとう!」

 

 カチリと軽くグラスを合わせた。お姉ちゃんは口を付けずに私をジッと見てる。このお酒の中に、禁断の媚薬が入ってるんだもんね。でも、見過ぎで不自然なんだけど……

 

「ん……わ、甘いね……でも、美味しい」

 

 ホントに美味しい。あ、でも後から苦味も感じる。酒精はどれくらいなんだろう。もう一口。

 

「少しお腹がポカポカする。お姉ちゃん、飲まないの?」

 

「え? あ、ああ。飲むよ、うん」

 

「もう一回乾杯しようよ」

 

「いいけど、何に?」

 

「後で教えてあげる」

 

 初めての夜に、私の夢が叶う今日に。

 

 お姉ちゃんは少し戸惑いながらも、ゆっくりとグラスを持ち上げてくれた。そしてもう一回合わせる音を響かせようとする。

 

「あ、あれ?」

 

 でも、グラス達は音を奏でる事は無かった。

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

 

 大丈夫な訳ないけど。

 

「リュ、リュシーが二人に……それに、グラスが、凄く」

 

「ん?」

 

「凄く、重、い」

 

 ポロリと手から落ちたグラスを受け取り、テーブルに頭が落ちた。咄嗟に手を差し入れたから、ぶつけたりしてない。お姉ちゃんに怪我して欲しい訳じゃないし。

 

「凄い効き目……ううん、普通なら一息吸ったら意識を失うらしいから、かなり耐えたのかも。流石お姉ちゃん」

 

 少し頬を赤く染めて、可愛らしい寝息が聞こえる。

 

「遂にこの時が来たよ……さぁ、お姉ちゃん。沢山可愛がってあげる、ふふ」

 

 

 

 

 

 

 

○ ○ ○

 

 

 姉、ソフィア

 

 

 

 

 

 リュシー、リュシー、リュシー……

 

 華奢な身体、控えめな胸、ほっそりとした腰。

 

 優しい声、艶々の銀色した髪、深緑の瞳は垂れ気味で可愛い。

 

 ねぇ、こっちに来て。

 

 怖くないよ。

 

 だって、私はお姉ちゃんなんだから。

 

 

 

 

「ん……」

 

 寝てた? 

 

 何で?

 

 確かご飯を食べて、お酒を用意して、リュシーは笑ってた。

 

 最高の夜になる、ううん、するはずだったのに。

 

 あれ……?

 

 何だかピリピリする。この感覚、ダンジョンで……もしかして、強い魔物が近くに居る? 大変だ、リュシーが危ない。

 

「おお、信じられないな。もう目を覚ますとは」

 

 頭の上から声がした。いや、寝転がってるから上じゃない。

 

「その声……」

 

 ヌッと上下逆の顔が目の前に現れた。頭の方に立っていて、私を覗き込んできたんだ。

 

「やはり勇者。抵抗力(レジスト)も常識外れだ。あの香を嗅いで、普通に意識を保てるとは。ああ、何だか興奮して来たな……今なら()()()を無茶苦茶に出来る」

 

 長くて赤い舌がチロチロと見える。

 

「貴女……レンネ?」

 

 間違いない。ナイトメア級ダンジョンのボス、アンデシュレンネ。浅黒い肌、人外の色気、波打つ長い銀髪。あと、デカイ胸が頭に当たってる。いや、当ててる、絶対。

 

 慌てて起き上がろうとした。でも、全く身体が動かない。肌を撫でる空気やベッドの感触はハッキリと感じるのに。いや、寧ろ皮膚感覚は鋭いくらい……

 

「動けないだろう? 眠ったお姉様に、(われ)特製の麻痺毒をタップリ体内へ流し込んだからな。どうやって流し込んだかは聞かない方がよいぞ? ん?」

 

「な、なんで」

 

「喋れるし、意識もハッキリしてる筈だ。でも魔力も当分は動かせない。ああ、ついでに感覚器は強化しておいた。だから触ると」

 

「ひぅ!」

 

 サラリと頬を撫でられただけなのに、鳥肌が立ったのが分かる。

 

「ああ、堪らん、堪らんぞ……どれ、味見を」

 

 ゆっくりと唇を近づけて来る。私の口に……

 

「や、やめて、私の最初は……」

 

 リュシーと……

 

「やめなさい、レンネ」

 

 ピタリと止まったレンネは直ぐに離れた。でも安心は出来ない。その綺麗で最高の声が誰か分かってるから。

 

「リュシー……? リュシー、逃げて! 今は私が」

 

 アンデシュレンネは魔物。リュシーに何かあったら……

 

「お姉ちゃん、大丈夫だよ。レンネに酷い事なんてさせないから」

 

 フンワリと柔らかな声音。

 

「リュ、リュシー?」

 

 どういう事? 

 

 ギシリとベッドが鳴く。リュシーが上に跨ったからだ。お尻や太腿の柔らかな感触、何だか熱い。そして小さな手で私の両頬を挟み、視線を合わせる。

 

 可愛い……

 

「うむ、尊い」

 

 レンネが何か言ってる。

 

「はぁ……お姉ちゃん……」

 

 熱い吐息、お酒の甘い香り。

 

「な、なに? リュシー、どう、したの?」

 

「媚薬」

 

 ドキリと胸が鳴いた。

 

「な、何のこと?」

 

「おかしいと思わなかった? 都合よく古代語のレシピが買った本に挟んであって、更に都合良く禁断の媚薬の作り方なんて。おまけに人体に悪影響が無いのも」

 

 え? え?

 

「ひゃっ‼︎」

 

 耳にフッて息を吹き掛けられた……

 

「あの薬は一応ホンモノよ? 効果は眠りで、一つだけ材料が足りないのと、経口摂取じゃない点を除けば、だけどね。実際には香を焚いて使うの。例えば、蝋燭とか」

 

 リュシー? 私のリュシーだよね? 何だか雰囲気が違う。

 

 両頬から手を離すと、首筋に指を這わされた。何度も。

 

「レンネ、説明してくれる?」

 

()()の命令ならば仕方があるまい。お姉様、聞きたいだろう?」

 

 返事をする前に話し出すレンネ。コイツ、命令とか言ってるけど、楽しそうだよ。それに"お嬢"ってなに?

 

「お姉様……ソフィアは勇者で、大抵の力に耐性がある。当たり前の戦闘では私の毒ですら短時間で無効化する訳だ。ああ、体験済みだったな。しかし我は諦められない。一目惚れだった。そして考えに考え、ある方法を選択したんだ。つまりお嬢、リュシーの使役を受け入れ、お零れに預かろうとな。お嬢相手なら集中力も欠け、何より油断する。そして予定通りにお姉様は罠に掛かった。あとは美味しく食べられたら完成だ」

 

 実は内緒で、毎日の様に遊びに来ていたらしい。いつの間にか仲良しになって、意気投合した二人は契約を結んだ。リュシーの願いを叶える為に知恵と体液を提供し、同時にレンネは欲求を満たす……勘弁してよ。

 

「……なに、を」

 

 この間もずっと、リュシーは私の肌に指を這わせている。

 

「我自らが遊びたいが……美しき姉妹の睦言を聞き、艶やかな嬌声を、鳴き声を好きなだけ耳にするのも一興。うむ、尊い。なに、精気ならば大丈夫だ。同じ空間、匂い、声、タップリ美味しく頂こう。お嬢、契約だな?」

 

「取引だもん、仕方ないね。ただし、私の許可なく勝手に触れないで。ホントはお姉ちゃんの肌だって見せたくないんだから」

 

「うむ、尊い」

 

 何が尊い、よ!

 

「リュシー、正気に戻って」

 

「ん?」

 

「だって、無理矢理なんて」

 

「んふふ、お姉ちゃんが其れを言うんだ。ちょっとお仕置きしないとね」

 

「……え? きゃっ‼︎」

 

 胸を鷲掴みされて、思わず変な声が出た。

 

「ああ……最高……」

 

「ちょっ、や、めて」

 

「やめないよ。もっと遊ぶんだから」

 

「おお、美しいぞ。お嬢、もっと緩急をつけるんだ」

 

「分かった」

 

「あ、いや、ちょ、やめ……」

 

「さあお姉ちゃん、脱ぎ脱ぎしましょうねー」

 

「え? 嘘、でしょう?」

 

 だって、すぐそばでレンネが見てるんだよ?

 

「生誕の祭夜は始まったばかりだよ? 沢山可愛がってあげる。私だけを見て、感じてね」

 

「もっとやれ」

 

「レンネ! 後で覚えてなさいよ! 絶対に許さ……ひゃぁぁぁーーー⁉︎」

 

「いただきまーす」

 

「うむ、尊い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おしまい




ある長編の原案だったヤツです。残しておくのもアレかなと思って投稿します。綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高、なんです。

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