水橋パルスィは朝帰りする霧雨魔理沙に目をつけた、2人は互いの利益の為に計画を実行していき、それは人間の里に火をつける事となった、2人の運命や如何に!

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キャラ崩壊、無いようにはしてますが、東風谷さんはちょっとやっちゃってます、すみません


東方 妬心異変

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 星熊勇儀の宴会に呼ばれた霧雨魔理沙は酔いつぶされて朝を迎えていた、地底に朝日は届かない、故に昼過ぎに目を覚ます事になってしまった。

 

 未だ眠りこける勇儀の横に書き置きを残し、少し痛む頭で箒を駆り地上を目指す、すると途中で橋姫が声を掛けてきたのだ。

 

「貴方、そこな貴方、こちらへいらっしゃい」

 

「お、なんだ? お前から声をかけて来るなんて」

 

「貴方、やはりあの人間に嫉妬してるわね」

 

「いきなりなんなんだ、私は帰るぜ」

 

「貴方に力を授けましょう、あの人間を追い越し、抜き去るまでの力を」

 

「興味ないな、妖怪の力なんて借りない、何を企んでいる?」

 

「まずは訂正するわ、私は妖怪ではあるけれど、同時に神でも在るのよ、あの巫女に出来て貴方には出来ない事、知りたくないかしら、神降し、努力次第ではあなたにだって出来る、でも今は教えるために私の力が足りないの、ここ50年くらいは殆ど自分の心しか食べてないからね」

 

「霊夢にできて私に出来ない事……」

 

「そうよ、貴方は力を得て私は信仰を得る、私達って良い関係になれると思わない?」

 

「私は霧雨魔理沙だ、お前の思惑に乗ってやる」

 

「私は水橋パルスィよ、私はいつでも人を妬む人の味方、彼岸(こちら)へようこそ、さぁこれからの事を話しましょう?」

 

 

2

 

 

 

霧雨魔理沙と水橋パルスィは人里に来ていた、強い日差しに目が眩みパルスィは顔をしかめている。

「妬ましいわね、あれほど光り輝き人々になくてはならない存在……」

「良ければ帽子貸そうか?」

「そんなに破廉恥なことを人前でやろうというの⁉︎」

「破廉恥? 私には分からん感覚だな、ほれ」

 何の気なしに自分のトンガリ帽子をパルスィの頭に載せてやる。

「ひえぇ、公然とこんなことが出来る胆力……妬ましい」

「いや、私に嫉妬してどうするんだよ」

「で、でもまぁこうすることで想い人であるかのように見せる事が出来る、お手柄よマリサ」

「パルスィが良いならなんでも良いか」

「あら? 何してるのよ魔理沙」

「おおっ⁉︎ れ、霊夢⁉︎ どうしたんだ?」

「いや、どうしたんだ? って私の台詞よ、何よそれは」

 霊夢が指をさす先には、顔を真っ赤にしてぷるぷると震えているパルスィが居る。

「あー、実は私達、な……」

 パルスィがさりげなく腕を絡めてくる、自分がやられて1番妬ましい事を熟知しているのだ。

「はぁ? 女同士で? 気持ち悪……あんたがそういう趣味してるとは思ってもみなかったわ」

「お待ち下さい霊夢さん‼︎ 今や同性愛は虹に輝く時代ですよ! 幻想郷でも神奈子様もとい革命の神の名の下に古臭い価値観を捨てて、さぁ私と更に密な関係になりましょう!」

 東風谷早苗、降臨である。

「げっ、早苗……はぁ、私はもう帰るわ、でも魔理沙までこいつと同じだとは思ってもみなかったわ、ちょっと裏切られた気分」

「あっ、霊夢」

 振り向いて去る霊夢に追い縋ろうとする魔理沙の腕をパルスィが掴む、大きく開かれたその眼には暗くも鮮やかな緑が燃えている。

「……お前様、私というものが在りながら他の女に色目を使うのですか?」

 掴まれた腕には爪が食い込み、骨は軋み、肉は蒼白から紫色に変わりつつある、そして魔理沙は、これはこういったものなのだと再確認した。

「いやスマンな、私が悪かった、許してくれ」

「……抱き締めてくださいまし」

 むくれた顔でそんな愛らしい事を言うのだ、だが魔理沙はもう知っている、これまでわかっていたようで理解かっていなかった事、妖怪は人間とは違うモノだと言う事を。

「あぁ……って熱っ!」

 魔理沙はパルスィの細い躰を引き寄せて躰を重てパルスィの熱を感じる、いや、これは熱い、火傷をしそうなくらい熱いがパルスィからのホールドを抜け出せない、そうこうしているうちにパルスィの熱は引き、もとの屍人のような冷たさに戻っていく。

「……もう大丈夫よ霧雨魔理沙、ごめんなさい、ちょっと興奮してしまったわ」

「大丈夫だ、火傷するかと思ったけれどな」

「ふふ、アレこそが私よ、ところでこれは一体どうなっているの?」

 足下には東風谷早苗が血だらけで気絶している。

「いつもの事だな、女2人が仲良くしていると、尊死! と叫んで鼻血を出して倒れるんだこいつは」

「ちょっと恐いわね」

「そうだな、そろそろ移動しよう、蕎麦なんかどうだ? 人気の店があるぜ」

「蕎麦、良いわねぇ人間の食べ物は栄養にはならないけれどおいしいものね」

 

 

「うーん、大行列だな」

「マリサ、向かいの団子屋で食べましょう、美味しそうな香りがするわ!」

「んー、いいぜ」

 がらんとした団子屋で団子を頬張るパルスィ。

「んー!これは絶品ね、なんでこんなに伽藍堂としているのか全然分からないわ!」

「そういえば、あの蕎麦屋には福の神が来たとか言う噂だぜ、店主が賭け事で大儲けしたって話もある」

「へぇ、このお店もお味は良いのに運悪く福の神が来ないと言うだけでこんなに閑散としているのねぇ、まぁお土産も持ったしこんな寂れた場所離れましょう」

「そこまで言うか? まぁ寂れてるのは間違って無いけどな」

 そして2人が向かったのは鈴奈庵、幻想郷隔離から50年の間にこれまで108回焼け落ちているという由緒正しい貸し本屋だ、犯人はほぼ捕まっていない、ちなみに本は全て転写した物か外界のものなど、原本は全て別にある倉庫に置いてあるのだ。

「よう、遊びに来たぜ」

「失礼します」

「あ、いらっしゃいませ、魔理沙さんと……お連れ様ですね」

「水橋パルスィよ、よろしくね」

「はい! 店番をしている本居小鈴と申します、どうぞ御贔屓に」

「新しい木の香りがするわね、最近建ったばかりなの?」

「そうなんです、半年に一度くらい燃えてしまうので……里の製本はここでしか出来ないので稗田家から資金を頂いて居るんですが、何故か燃やされてしまうんです、本に興味の無い方には関係のない事ですけれど」

「へぇ、本も安くはないでしょうに、少し見させて貰うわね」

 小鈴の嫌味もどこ吹く風、パルスィは本棚

「はい、ごゆっくり」

「パルスィ、この本とかどうだ?」

「食べられるキノコ、食べられないキノコ100選、もっと情緒的な本は無いのかえ?」

「うーん、パルスィってたまに物言いが古臭くなるよな」

「なによ、自分が若いって言いたいの?」

「そんな事ないが……これとか良いんじゃないか?」

「光源氏物語? ずっと昔に全部読んじゃったわよ、でもチョイスは良いわね」

「それじゃあ作者不明だが、これだ!」

「反則探偵奇譚?さとりが書いたものね、同じものを持っているわ……」

「ん? この本は……なるほどね」

 パルスィの手元には一冊の本、読者諸兄はご存知であろうあの本、そう易者の書いた占術の本にはスペアがあったのだ、パルスィはそれをそっと本棚に戻す、時は今では無いのだ。

「なんか、アレだな」

「そうね、アレね」

「そろそろお暇するか?」

「いや、もう少し居ましょう、此処でもやれそうよ」

「気がつかぬ間に阿求が来ていたな、もしかしてアレか?」

「えぇ、そうよ」

 

 

「それじゃあ私は帰るわね」

「じゃあね阿求」

 阿求が去り、店内は再び3人だけが取り残された。

「阿礼乙女……今のが件の稗田のご当主様ね、親しそうにはしているけれど見下されているんじゃないかしら、貴方」

「なんですか? 人の友人にいちゃもんを付けないでください」

「あら? 心当たりは無いのかしら、前世の記憶を全て保つ程の人間ですし、もしかしたら貴方の事は永い孤独を紛らわせるペットくらいに思って居るかも知れないわね」

「うぅ〜、そんな事無いです! だって、友達だもん……」

「おい、パルスィ、ちょっと言い過ぎなんじゃ無いか?」

 しかし静止する魔理沙をよそに、パルスィは小鈴に囁き続ける。

「でも大丈夫、貴方が大きな事を為せば、彼女が驚くような事を為せば、彼女の心に刻まれるような事を為せば、幻想郷の歴史に残されるような事をすれば、きっとそうは思わなくなるわ」

「おい、パルスィ」

「えぇ、お暇しましょう?」

 魔理沙が帰り際に振り返ると、小鈴は机に突っ伏して泣いていた、その様子にいたたまれない気持ちになる。

「……すまん」

 

 

 

 

「お前、どういうつもりだ?」

「貴方も納得した事でしょう魔理沙、あの娘も思うところが無ければあの程度の言葉で揺るがないわ、とはいえ人里はもう十分ね、何日かあれば博麗霊夢が動き出すはずよ、そこで博麗霊夢に私を調伏させて、鎮めるための祠を建てさせる、私は神に返り咲き、そして貴方は更なる力を得る、完璧な作戦でしょう?」

「人里ではもうやらないんだな?」

「ええ! あとは妖怪あたりね、私にたどり着く材料を適当にね」

「もう人間に手を出さないなら……それじゃあ適当にその辺を散策していくか」

 

 

3

 当ても無いので霧雨魔理沙の主導により、2人はとりあえず紅魔館に向かおうとしたところ、面霊気、秦こころと尸解仙、物部布都が立ち塞がった。

「何? 貴方達」  

「太子様に人里を脅かす存在が居ると言われてきたのじゃ、それとこやつのお守りも兼ねてな、物部布都いざ参る!」

「見たところお前が犯人だ、大人しく首を切らせよー」

「私とやろうっての?」

「まぁ待てお前ら、ここはまだ人里だぞ、妖怪同士で争って良い場所じゃない」

「確かにそうね」

「む、確かにそうじゃ、我が人を害してはなるまいな」

 

 そういうわけで霧の湖方面の人里から離れたところで戦いは幕を開ける。

「パルスィ、あれはお皿の仙人とお面の妖怪だ、2人ともアホだが手強いぞ」

「仙人と感情の妖怪ねぇ、楽しくなってきたわ」

「魔理沙、仙人の相手をお願い出来るかしら」

「ああ、任されたぜ!」

 面霊気はパルスィと対峙して薙刀を構える。

「やあやあ我こそは秦こころなるぞ! 我と最強の称号を賭けて戦え!

「貴方に勝ったら最強になるのかしら、うふふ、みんなに妬まれてしまうわね」

舌切り雀「大きな葛籠と小さな葛籠」

「いきなり分裂系……だが甘い!我々の薙刀を受けてみよ!」

「そっちは偽物よ」

 

 こころは大きな弾幕の隙を縫い素早く逆袈裟にひと薙する、しかし、そう! 斬り付けられた分身のパルスィは大量の大きな弾幕に変化する、そして本体はというと。

「うふふ、捕まえた」

 こころの真後ろだ! その手には般若のお面を掴んでいる、パルスィは他の面による抵抗を受けながらも般若の面を離さない。

「なんだお前やめろやめるんだ」

 パルスィは他の面の集中攻撃に屈せずに般若の面に嫉妬の力を流し込んでいく。

「うぐぐ、頭が割れそうだ、何かを突っ込まれてれているような」

「もっと自分の気持ちをようく知りましょうね」

 そして、ついにこころの抵抗は静止して、その瞳から一つの雫をたらした、そして般若の面は本成の面となる。

「なんだこれ、我々の知らないかんじょうだ、憧れのようでもあるが怒りでもあるような、そして胸がチクチクする……」

「それは嫉妬という感情よ」

「嫉妬……」

「私は嫉妬する者の味方よ、貴方は何が妬ましいの?」

「……妖怪、安定して存在できる妖怪だ」

「ならそれを倒してしまいましょう、出来るわね?」

「……ああ、希望の面の時と同じだ、相手が妖怪か宗教家なのかの違い、敵を倒すと感情は安定する、世界は単純….…」

「じゃあまず布都ちゃんを倒しましょう、布都ちゃんは今は安定しているけれど欠けているものがあるわ、お友達を助けてあげましょう?」

「布都は友達ではないが神子の子分だ、我が助けてやろう」

一方布都と魔理沙の方では刺しつ刺されつの接戦が繰り広げられていた。

 しかしそこに魔理沙が静止をかける

「なぁ、物部の」

「なんじゃ? 霧雨の、戦闘中におしゃべりかの?」

「いや、あっちが終わったみたいなんだが、あれ仲良くなってないか?」

「あぁ全く! 彼奴は生まれたばかりでちょろいからのう」

「ふむなるほど、この場合はブレイジングスター‼︎」

「うおおっ⁉︎ このタイミングでそれはずるいぞよ!」

「グリーンアイドモンスター、今よ!」

「仮面得心舞 暗緑能楽!」

 これは非道な3対1による圧殺、慈悲はなかった。

「わっ、ぐぬっ、これは……っ! むぐぐぐぐ仮面がっ!もがががが……ぱたり」

「よし、布都をすくってやったぞ」

「今のは美しさもへったくれも無かったな」

「あら、妬み嫉みに美しさがあると思って?」

「お前は美しいだろう?」

「何故そんな気恥ずかしい事を言えるのかしら、やはり破廉恥な軟派女なのかしら」

「……私だってこんな事誰にでも言うわけじゃないさ」

「はぁ、布都は助けたし、私は最強に安定した存在になるために妖怪を倒しにいくぞ、今の私は秦こころと言う名の炎だ、然らば去らばだー」

「おう、頑張れよ」

「それじゃあ地底に戻りましょうか」

「布都はどうするんだ?」

「魔理沙がおぶってあげれば?」

「人遣いが荒いなぁ、よいせぉあっ⁉︎ なんだこいつ、軽すぎる」

「私が重たいって言いたいの?」

「誰もそんな事言ってないだろ、でもほら、指でつまんで持ち上げられるぞ、人間の重さじゃないなこれ、掴んで持っていくか」

 時は程なくして、地底の橋にたどり着く。

「魔理沙、貴方はもう地上に戻って良いわよ、そして魔理沙は私に操られていて今日の事を憶えていない、そうね?」

「あぁ、予定通りに、今回の手柄を霊夢に譲るのはムカつくが、主催が私らだからな」

「じゃあはい、これあげる」

 魔理沙が渡されたのは硝子の小瓶に入った どろっとした暗い玉虫色の粘体である、これは石桜の粉にパルスィの力と霊水を練り込んだ霊薬である。

「なんだかヤバそうな雰囲気だな」

「これを触媒にして召喚を実行すると多分私が召喚されるわ、魔法の道具に使いなさい、それと飲んだらダメよ、死んでしまうか妖怪になるかの2択だわ」

「それは流石に、誰が飲むかこんな妖しいもの」

「それはそうね……そうだ魔理沙、髪を梳かしても良いかしら」

「ええ? 良いけれど、それで藁人形だとかを作らないでくれよ?」

「そんな事しないわよ、私からの親愛を拒むと言うのかしら、ほらほらこの石に座って」

パルスィは魔理沙を丁度いい高さの石に置いて髪を梳かして行くのだが髪からの抵抗が激しい。

「貴方ねぇ、せっかく良い髪持ってるんだから手入れくらいしたら? 妬む事も出来やしないわ」

「前髪は2日にいっぺんやってるんだがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今日はこの辺にしておきましょうかもう一刻もたってしまったわ」

「もうそんなに経ったのか?」

「ええ、きちんと美しい髪になっているわ」

 珍しく素直なようであるが、もちろん言の葉の裏にはいつもの奴が潜んでいる事は魔理沙も当然気がついている。

「お前は結局それなんだな、改めて確認するが私は家に居れば良いんだよな、そして勇儀達と酒盛りをした後の事は何も覚えていない」

「そうよ、なんなら博麗の巫女の味方としてここに来ても構わないわよ、信用されてるならね」

「それはどうだか、でも霊夢はそういう所あるからな」

「それじゃあまた」

「ああ」

2人は簡単な別れを告げてそれぞれの住処に戻る。

「ふーん、橋姫様らしいね、勇儀のお気に入りに色目使うなんてさ」

「あらフランドール、いつから勇儀の腰巾着になったの?」

「そのうちよ、そのうち倒してやる、もちろんあなたもね」

「楽しみにしてるわ、強者への憧れも私の力になるのだし、私は困らないからね」

「はぁ、鬼以外の地底の妖怪って、例えアイドルでも嫌な奴ばっかりなのね」

「あら?私だって「あんたは鬼の気質じゃない」」

「否定はしないけど、そろそろ最後の準備にかかるからお暇するわね」

「はいはい、じゃあね」

 

 

 

 

4

それから幾日後、茨木歌仙が霊夢を連れて人里を練り歩いていた。

「霊夢、何を食べる?」

「折角の奢りなんだから普段は行かない行かない所にしようかしら、そこの蕎麦屋とかどう? いっつも混んでるんだから間違いないわ!」

「そうしましょうか、ところで霊夢、ここまで来る時に何か感じた事はないかしら」

「感じた事? そうは言われても特に妖力とかは感じないし、いつもどおりじゃないかしら」

「確かに傍目には分からないくらい小さな変化だけれども、何かが張り詰めている感覚があるわ、勘のいい貴女なら何かわかるかも、と思ったけれど、それも駄目みたいね」

「火事だ!誰か火消しを用意してくれ! まだ余裕は有ります、入り口側のお客さんから避難してくだせぇ!」

「あわわ火事だってどうしようあんた何とかならないの⁉︎」

「火事を止める仙術は残念ながら修めていませんね」

「火消しの所に飛んで行くわ! 走るよりはずっと早い!」

「それじゃあ私は避難の手伝いをするわ」

 華仙が避難を済ませ、火消し隊が火を消し終わった頃、東風谷早苗が空を飛びやってきた。

「火消しの方! 稗田屋敷で火事です! お願いします!」

「お……おうよ!」「きっついな、今日で3軒目だ」「なに、普段無駄飯食ってる分は働こうぜ!」「……うぉし!」

「やっぱり男の人って体力あるわねぇ」

「仙になればこれくらいは余裕で動けますよ」

「霊夢さん、私達も行きましょう! 犯人が近くで妖怪を使役しているんです!」

「ええっ! 何であんたこっちに来たのよ!」

「寺子屋の上白沢さんがどうやらそのお知り合いだったようで任せてきたんです」

「なるほど、すぐに行くわよ!」

 3人が空を飛んで現場に向かうと甲高い笑い声が聞こえて来る、この声は

「小鈴ちゃん⁉︎」

 霊夢が驚きの声を上げると小鈴は笑うのをピタリと辞め、霊夢を睨みつける、彼女の周りには無数の妖魔本が浮遊している。

「嗚呼、嗚呼、矢張り博麗の巫女様は私なんかよりも阿求の方が余程大事なんだ……」

「慧音! 何かわかっていることは?」

「使役していた妖怪はもう引っこんでいて、呼び掛けても笑い続けるだけだった、それくらいだ」

「霊夢さん、無視は非道くないですかぁ? やっぱり私ってそんなにどうでも良い存在だったんだ……」

「小鈴ちゃん、今助けるから!」

「霊夢さん、私は何にも操られていませんよ? 純然たる私の意思で阿求の家を燃やしているんです」

「歌仙、思い出したわ、何日か前に嫉妬心を操る妖怪が魔理沙と一緒に里に来ていたわ、小鈴ちゃんはきっとそいつの支配下にある、魔理沙もアイツにやられたんだわ」

「わかりました、ところで霊夢、手伝いは必要?」

「まさか!妖怪に心を奪われた女の子1人助けられなきゃ博麗の巫女の名が廃るわよ!」

「うふふ、私はあの人の言葉で自分の素直な気持ちを知れたんだ! 今更この気持ちを裏切ることは出来ない! 止めるなら……恨みますよ」

「小鈴ちゃん! ちょっと痛いだけだからね!」

「霊夢さん……野火よっ!

霊夢は野火による攻撃をひらひらと最小限の動きで躱していく、野火が追いすがるのを辞めてしまったところに大入りの護符を叩きつける。

「……グリモワールオブサモンストームアトロナク」

 これは強力な嵐の精霊(強力)を召喚する使い捨ての異世界の妖魔本だ、書物自体に契約とマジカが込められている。

「話も通じなさそうな奴ね、ってきゃあ゛あ゛あ゛」

 嵐の精霊のチェインライトニングは正確な雷撃で避ける事は叶わない。

「ぐっ、二重結界」

霊夢は空間の揺らぎとループの狭間に嵐の精霊を閉じ込めた。

「良い? 小鈴ちゃん、操られてるとは言っても限度ってものがあるわ、覚悟の準備は出来たかしら? 霊符「無双封印」‼︎」

 怒りの表情の霊夢から虹色の光がぐわんぐわんと小鈴に向かってくる、当然避けられず小鈴はダウン!

「ふぅ、どうやら私の勝ちのようね」

「きゅ〜私は人生の敗者ですぅ」

「歌仙、この子をあんたの所で匿ってくれない? このままだと里で私刑が行われてしまう」

「わかりましたが、この先の同行は出来なくなりますよ」

「私1人で大丈夫よそんなもん」

「霊夢さん、私も居ますよ」

「なんだ、早苗、まだ居たの?」

「そんなぁ」

「冗談よ、さぁ魔法の森に行くわよ」

 

 

 

 

 魔法の森、霧雨魔法店は魔理沙の自宅でもあり構えている店である、あるが看板にはなんかしますとしか書いていないので仕事は全く来ていないようだ、ノックをしてもベルを鳴らしても返事どころか生気が感じられない。

「魔理沙さん、居ないんでしょうか」

「あいつの場合は居ないことの方が多いのよ、勝手口から入りましょ」

「え? 勝手口空いてるんですか⁉︎」

「誰もこんな森まで泥棒しに来ないわよ」

「えぇ……」

 東風谷早苗は外の世界とのカルチャーギャップに驚いていた、しかしこれはズボラな魔理沙の家だけだという事をまだ知らない、霊夢の家は障子なので鍵なんて無いも同然だ、洩矢神社も多分に漏れないのだが。

「魔理沙ー、家荒らすわよー」

「失礼しまーす、廃墟探索みたいでドキドキしますね」

「あんた時々失礼よね」

「だってこれ私たちが荒らす前から廃墟レベルですよ、キノコ生えてるし」

「確かそのキノコ衝撃を与えると爆発するわよ」

「えぇ、そんなもん家に生えてるんですか」

「ちょっと前に養殖に成功したって言ってたわ、魔法使いの家なんてこんなものじゃない?」

「確かに魔女のイメージまんまですけれども、あれ、霊夢さん奥のベッドにふくらみがありますよ」

「寝てるのかしら? 魔理沙ー、えっ、魔理沙! 魔理沙⁉︎」

「どうしたんですか⁉︎ ……これって呪術的な感じでしょうか」

2人が驚いたのは屍人の様な青ざめた顔とストレートになった魔理沙の髪にちりばめられた紫の煌めき、そこから放たれる高密度の妖力である。

「恐らくは……ちょっと祓ってみる、あんたも手伝って」

「わかりました!」

 2人の巫女の祈祷の甲斐あってか魔理沙の髪に付着した石桜は浄化され、程なくして魔理沙は目を覚ます。

「おー? 2人してどうしたんだ、泥棒は良くないぜ」

「あんたねぇ、まぁいいわ、昨日の覚えてる事全部話しなさい」

「昨日か? チルノと弾幕ごっこした後夕方から勇儀と宴会して今朝帰ってきたばっかりだ」

「霊夢さん、昨日って魔理沙さんパツキンの美人さんと一緒でしたよね」

「ええ、魔理沙とイチャラブを繰り広げてたわね、今回の黒幕は橋の妖怪で決まりね、そうとわかれば地底に向かうわよ!」

「あー、つまり私は昨日の記憶が無い感じか? そして、パルスィとイチャラブしていた」

「私見てましたけど霊夢さんが行った後抱き締めあってベロチューまでしてましたよ!」

「「ええっ⁉︎」それは嘘なんだぜ⁉︎」

(抱き締めては居たけどそんな記憶全くないんだぜ???)

「おや? 魔理沙さんには昨日の記憶が無いというのに何故嘘だと言い切れるんですか」

「この魔理沙さんの唇がしてないと言っているんだZE」

「魔理沙の唇がしてないと言っている???」

「魔理沙さんの唇がしてないと言っている???」

「ああ、乙女だからな、そういうのはわかるんだ」

「乙女」

「魔理沙が乙女?」

「お前ら酷いな……私は二度寝を決め込むぜ、おやすみ、お前ら帰れ」

「えぇ、勝手口の鍵まで締めなくてもいいじゃない魔理沙!」

「地底……行きますか」

「そうね、気は乗らないけれど」 

 呑気な2人の巫女は地底を目指して飛び立ったのである。

 

 

 

5

 

「おや? 紅白の人間じゃないか、ちょっとここで遊んで行きなよ」

「早苗頼める?」

「良いですとも、借し1つですよ」

「ありがと、それじゃあ私は先いくわ」

「おっ、緑の方が相手かい? どの病がいいかねぇ、おっ、紅白も頑張るんだよ〜」

「妖怪に言われるまでもないわ」

 

 

 

 

「あいつの住処はこの辺りだったと思うけれど」

「甘いわ! そこの紅白!」

「はっ? この声は、誰だっけ」

「私よ、フランドール・クリムゾン」

「名前変わってない?」

「スカーレットの分家として独立したのよ」

「前に来たときは此処には居なかったと思うけど」

「今は地底に住んでるの、まぁちょいと遊んでいきましょう?」

「終わったら橋姫の所まで案内してもらうわよ」

「オーケーオーケー任せて、急いで居るみたいだし新しいのだけ、禁忌「クリック?クラック」」

紅い米粒弾幕が規則的に配置され、散らばっていく、速度はいまいちだが密度が高い、しかし霊夢は滑らかな動きによってぬるぬると弾幕の間を縫って避け切る。

「あんたの弾幕ってこう言うの多いわよね」

「やっぱり霊夢はこの遊び上手いね、次いくよ、禁忌「世界終末時計」

 密度の薄い通常弾幕と十字のクソデカレーザーが上と下から回転しながら迫ってくる、霊夢は気合いで避けながら……二つのレーザーに挟まれる! しかし霊夢に触れる直前に消えてしまう。

「そう言う弾幕なら先に言いなさいよ!びっくりしたじゃない!」

「避け切ったんだから別に良いじゃない、ボムも使わなかったって事はわかってたんじゃないの?」

「まぁ薄々だけど……それよりこれで終わり?」

「まさかでしょ、次が最後のとっておき!秘弾「クリムゾンラビリンス」

 フランドールから弾幕の壁が迫ってくる、逃げようにも背後にも弾幕は張り巡らされている、完全に閉じ込められてしまった。

 霊夢の目の前の弾幕が消え、後ろの弾幕が迫ってくる、その速度はどんどん早くなっていき……次は左、後ろ、右、前……最終的にフランドールの目の前に現れるやいなや、フランドールから霊夢狙いのビームが放たれるが霊夢、辛うじて回避! 右袖が無くなってしまった!

「これで終わりだよ」

「あんた前よりずっと強くなってない?」

「地底(ここ)に来てからしたくもない努力してるからね、皆強いし」

「通りで、似た避け方した記憶あるわけだわ」

「さ、こっちだよ」

「って、なんだい、結局この橋か」

「おお、博麗霊夢、我の真なる復活を祝福しに来たか」

「祝福してないよ」

「それじゃあお主はは何故ここに?」

「迷惑な妖怪を退治しに来たの、尸解仙には用は無いわ」

「なるほど、我が恩人パルスィ殿の邪魔立てをする気じゃな? ならば我がお相手仕ろう」

「あんたが妖怪を守るなんてね、豊郷耳と聖に言いつけてやろう」

「構わぬよ、我はあれ等とは袂を別つでな」

「そういえば雰囲気変わった?」

「うむ、正確言うと元に戻ったのじゃな、お主が見ていた我は操られていたのじゃ、わが古代シントーカラテ、今一度見せてやろうぞ」

 

 

「我の負けじゃな、まぁ義理は果たしたろうて、博麗霊夢よ我が試験相手になってくれたもの感謝するぞ」

「なんであんたまで急に強くなってるのよ」

「我はかつての全てを取り戻したのである、力と記憶をな、ではまた会おう」

「なんだったのよ」

「彼女は嫉妬の心を奪われていたのよ」

「出たな元凶、あんたを倒して皆の嫉妬心を収めてもらおうか」

「能力は使ってないわよ、やばそうな子は1人居たけど」

「あんたならできるでしょう」

「私を倒せたならやってあげるわ!」

妬符「グリーンアイドモンスター」

「え、ちょっと待って通常弾幕とスペカを混ぜるな! 無双封印!」

「ちゃんと攻略出来る様に作ってるわよ、私を封じる気持ちあるの?」

「ムキィーッ! 絶対に許さないんだから!」

「この出力が限界なら貴方には本気の私を倒す事は出来ないわ」

「ええい!二重結界! 八方鬼縛陣! 陰陽散華! 魔浄閃結! そして反則結界無双封印!」

 もう何がなんだかわからないくらいの量の光の球がわんさかと、赤青白黄色だ緑だそりゃそりゃそりゃと、治まった頃には地形が変わっているんじゃないか、この頃到着した早苗はそう思ったそうな。

「えぇ……なんですかこれ……」

「良いところに来た! あんたも手伝いなさいよ! 打ち込め!」

「はぁ、奇跡 ミラクルフルーツ」

「足りないもっと!3つくらい!」

「えぇ……もう既に訳わかんない事になってますよ」

「これで終わり? 博麗の巫女の術も大した事無いわね」

「あんまりにも出鱈目なんだけど、あんた橋姫ってのは嘘で実は鬼とか言わないわよね、鬼ってこう言うやつ多いのよね」

「霊夢さん、橋姫は鬼でもあり神様ですよ、京都の橋姫神社にお祈りに行ったこと有りますから」

「え?」

「あら、私に祈ろうだなんてよっぽどの事があったのね、慰めてあげるわ、こちらへおいでなさい」

「今は加奈子様も諏訪子様も側にいてくれるので大丈夫です」

「それは良かったわね、妬いてしまうわ、話が逸れたけど博麗の巫女にはお願いがあってこんな事したのよね」

「妖怪の言うことなんて聞かないわよ!」

「さっき緑の巫女が言っていたように、私は神でもあるんだけど、何年か前に外からちょろっと信仰が流れ込んで来てからというもの、社が欲しくなって来たのよね、というわけで祟りを起こしてみました、後は巫女が祀って神を鎮めるだけって寸法よ」

「あんたのせいで色々と燃えている上に人間関係が壊れたりしているわ、それをいけしゃあしゃあと祀れですって?」

「霊夢さんが嫌なら私がやりましょう! いやぁ、こんな神災を治める手柄を投げ捨てるなんて霊夢さん損してますよ」

「早苗、あんた正気なの? でも、う〜ん……わかったわ、一緒にやりましょうね早苗?」

「仕方ありませんね、ですが1度2柱に報告に行きますね」

「既に風神に話を通しているわ、もう1柱は会ったこと無いけれど、神社の建立は河童とヤマメに頼んであるし、明後日の朝には出来ているでしょう」

「大筋としては、パルスィもとい嫉妬の神が人々の嫉妬心を利用して操ったり取り憑いたりして被害を与えた、それを私達巫女が必死の祈祷の末に鎮めた、こんな感じで良いかしら」

「完璧よ博麗の巫女、私達が立てた計画の通りだわ、では詳しく話を詰めていきましょう、まずは……」

 

 

6

 

 

 飛び交う怒声、野次、そして悲鳴

 その先には稗田屋敷に放火した小鈴や団子屋の店主をはじめとした、パルスィにちょっかいをかけられたもの達が縄で縛り付けられていた。

「フゥーッ! フゥーッ! ガアッ!」

「小鈴……」

「阿求ゥ、アンタ……」

 

 小鈴の顔は最早鬼の形相であり、先日まで友人に向けていた表情は全くなくなっている、阿求はまた1つため息をついて一雫だけ、涙を流す。

「私が貴方に感じていた友情は私だけのものだったと言う事なのね」

「では霊夢さん、お願いします」

「ええ任せなさい、スゥーッ! ハァーッ! スゥーッ! ハァーッ! スゥーッ! ハァーッ! スゥーッ! ハァーッ! スゥーッ! ハァーッ! キエエエーッ!」

霊夢の独特な呼吸法から生み出されるプレッシャーにより、ざわざわと落ち着きのないこの場の雰囲気は神降ろしの祭祀場へと変化し、ミコ・シャウトにより神が降臨する、現れたのはパルスィだ、いつもと違うのは荒ぶる髪と乱れた十二単衣を纏っているところか。

「人間よ、この私を呼びだすとは何のつもりだ」

 正真正銘の神気を浴びても霊夢と早苗は怯まない! 動いたのは……早苗だ!

「さぞなし名のある神とお見受けしますが、何故そのように荒ぶるのか」

「何故だと⁉︎ 久方ぶりに目を覚ましてみれば社は寂れ蔑ろにされていた、なれば我が好きにしようと人間に異を唱えられる謂れなぞあるまい」

「であれば、我々が社を建立すれば人間に手を出さないで頂けると考えてよろしいですか?」

「む? それはうーむ否ここで鎮まれば私の力は広まらず誰も詣でに来ないであろう」

「それでは、この東風谷早苗、お相手致しましょうか?」

 早苗が神気を発する、しかし相手の神気と比べると遥かに劣る、しかし対峙する神は慄いている!

「む? 弱々しい神気ではあるがその気質、よもや神の血を引くか、あいわかった、私が引こう、社を建立するならばそこに落ち着こう」

「あんたが操った人達も元に戻してよね」

「良からう、そこな者共であるな」

 1人、また1人と憑き物の落ちたように解放されて行く、しかし小鈴だけは違った。

「やめろ! これは私の意思だ! 教えてくれたのは貴女じゃあないか! 私の心を弄らないでくれ!」

「眠らない心は疲れ果ててしまうわ、今は休みなさい」

 パルスィは実りに実った小鈴の嫉妬心を食べてしまう、収穫は熟れ落ちてしまう前に、天然ものを食べられてパルスィはご満悦な様子だった、そこで何かを思いついたようで早苗に問う。

「人であり神でもあるソコの、私はこの人間を気に入ったぞ、月に1度で良いから私の社に寄越させろ」

 パルスィは阿求とアイコンタクトを交わし、阿求は頷く。

「えっ、まぁ阿求さんが言うなら……いいでしょう! またこの様な事をしでかさなければ自由になさって下さい」

 

 

そしてこの茶番は幕を降した。

 

 

 

「稗田の、ほんの少し時間あるかしら」

「どうしました? 妖怪の橋姫」

「私は昔の通り神よ、存在承認は得られたもの、私が預かるあの子だけど、私は本当に言葉しか贈ってないわ、どういう付き合いしているのかは知らないけれど、あんた相当に愛されてるわよ」

「そりゃあ……ありゃ居ない、そりゃあわかってはいるんだけれどね……」

 

 




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