○○と付き合ってるって言ったらテイオーはどうなるのだろうか   作:ししゃも丸

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俺とテイオー

 

 トレーナーとは多忙な仕事である。担当ウマ娘が一人なら一人分のメニューを考えればいいのだが、二人以上となると中々大変なのだ。

 その娘の脚質や適正レースに向けてメニューを日々考えなければならいし、レースに出走する際も提出書類を出さなければいけないし、学園側に提出するその他諸々の書類も用意しなければならない。特に大変なのが、彼女達は年頃の女の子ということ。なので男性である身としてはかなり気を使わなければならないので、やはり精神的疲労も日々蓄積される。

 

 それでもトレーナーというのは人気の職業であるのだから、それに見合う給料をもらえているのも確かなのである。

 多忙とは言っても24時間毎日働くようなブラック企業ではない。レースが行われる日を除けばちゃんと休日は公務員と同じように休みになっている。

 

 俺にとって休日は、義理の妹であるトウカイテイオーと過ごすことに費やしている。一年目は両親である二人の仕事の都合で家に帰れる時間が遅いので、俺が仕事を早仕舞いしてテイオーの面倒を見ていた。それも二年目になると、二人の仕事が落ち着いたこともあって仕事も定時までいられるようにはなったが。

 

 そんなテイオーと過ごす休日は俺にとって癒しの時間だ。テイオーは義理の妹だけど、本当の妹のように接してきた。でも、年が離れていることもあってか、時には娘のように思うときもある。兄妹愛、家族愛のようなものだろうか。それ程までに俺はテイオーを大切に思っている。

 

 レースがない週はいつも二人で買い物に行くことが多い。基本的にはテイオーが食べたいものを作るために買い出しに行くのだが、こうして二人で買い物行くことすら、俺にとっては大切なものになっている。

 テイオーは年頃なのでついついお菓子などを強請るのだが、妹に弱い俺は最初はダメとは言っても最後には許してしまうダメな兄貴である。そうなると量が増えるので、一番大きいビニール袋二つでは足りない時も多々ある。

 

 テイオーはウマ娘だ。まだ小学生であるテイオーでも、この程度の重さなどへっちゃらで、むしろ俺より軽々と片手で持ててしまうのだから、やはりウマ娘というのはすごい。それでも俺達は仲が良いので、二人で一緒に持ちながら家に帰るのだ。

 

 そんなある日のこと、テイオーが俺に訊いてきたのだ。

 

「ねえお兄ちゃん」

「んー?」

「お兄ちゃんはどんな仕事してるの?」

「どうしたんだ急に」

「それがさ、作文の宿題が出てね? お題が家族の仕事についてなんだ。パパとママは会社員なのはわかるんだけど、一応話を聞いたらむずかしくて」

「あー。それはしょうがないな」

 

 二人は会社員ではあるが平社員ではなくて、むしろもっと上の立場の人間だ。そういう立場である人間であるが故に多忙なのである。

 

「だからお兄ちゃんの仕事について書こうかなって」

「そっか。成程な」

「それにお兄ちゃんの仕事ってボク知らなかったし。ちょうどいかなって」

 

 実を言うと、俺はテイオーに自分がトレセン学園でトレーナーをしていると伝えていない。タイミングを逃したというのもあるし、担当の一人であるシンボリルドルフがテイオーの目標になってしまい、そういうこともあって中々言い出せずにいたのである。

 

 でも、いつかは教えなければいけないことなのは理解していた。ウマ娘であるテイオーは、当然ルドルフがいるトレセン学園を目指すからである。

 だけど、俺はトレーナーを辞めようかと考えていた。それは二人の仕事が来年か再来年辺りから忙しくなるらしく、それで家を空ける日も多くなると言われていたからだ。今担当している彼女達には申し訳ないとは思っているが、こればかりは仕方がないと納得してもらわなければならないだろう。

 

 もしトレーナーを辞めるのであれば、多分俺はテイオーにトレーナーであることを教えずにいたかもしれない。でも、こうして訊かれてしまえば、嘘をつける訳がないのである。

 

「……お兄ちゃんの仕事はね、トレーナーなんだ」

「トレーナーって……ウマ娘の!? お兄ちゃんのバカバカ! どうして教えてくれなかったのさ!」

「いや、その、な? タイミングが……」

「ブー! ボクがトレセン学園に入学するかもしれないのに黙ってんだ。ふーん。そんなお兄ちゃんなんてキライだい!」

 

 頬を膨らませながらそっぽを向くテイオーも、これまた可愛いものである。写真を撮りたいが生憎と両手は塞がれているので、残念ながらカメラに収めることはできない。

 

「あはは。ちなみに担当している一人にお前の好きなルドルフがいるぞ」

「え、ウソ!?」

「ほんとほんと」

「だったらますますお兄ちゃんなんてキライだ!」

「だからごめんって。……まあでも、お兄ちゃんは仕事辞める予定なんだ」

「ど、どうして!? お兄ちゃんのことキライって言ったけど、それはぜんぜん本心じゃないんだよ!」

 

 そんなことは言われなくてもわかってはいたけど、すぐに正直に言うあたりテイオーは優しい子なのだと思う。

 俺はテイオーに辞める理由を教えてあげると、何故か余計に困惑しているので理由を尋ねれば、どうやら将来トレセン学園に入学したら俺にトレーナーになってもらおうと考えていたらしい。つい先程伝えたばかりだというのに、子供の想像力というか発想は恐ろしいものだ。

 

「テイオーは俺にトレーナーを辞めてほしくないのか?」

「だ、だって、さっきも言ったけど。ボクはお兄ちゃんにボクのトレーナーになってほしいんだもん」

「でも、そうなるとお兄ちゃん家に帰ってくるの遅くなるんだぞ。今までのように一緒に過ごせる時間も少ないし、家に一人で待っててもらうことにだってなるんだ」

「がまんするもん!」

「我慢って。まだ子供のお前を一人で留守番させるわけには……」

「お兄ちゃんこそいいの!? トレーナーになるのには、すっごくたいへんなんでしょ? それなのに辞めていいの!?」

 

 子供でも知っているぐらいには、トレーナーになるにはとても大変だということをテレビか何かで把握しているらしい。

 確かにトレーナーの資格を取るのは難関である。地方のトレーナーならばまだ難易度は数段下がるが、中央となると話は違ってくる。筆記試験はもちろん面接もかなり厳しい。俺だって高校生の時から勉強し、講演会とか参加もしたりして、サブトレーナーとして数年経ってからようやく中央に異動になったぐらいだ。

 まあ俺の場合は、懇意にしてもらっているベテラントレーナー達からのアドバイスもあって、サブトレーナーをしていたんだけど。

 中にはコネで中央のトレーナーになる者もいるだろうけど、いまはあまり関係ない話だ。

 

「そりゃあ辞めたくないって言われたら、辞めたくはないさ。でも、俺にとって一番優先すべきことは誰でもないテイオーだから、トレーナーを辞めることだってできるよ」

「ボクのためなのはうれしいよ? でも、そんな簡単に辞めていいのって言ってるんだよ。お兄ちゃんにだって夢とか目標があって、トレーナーになったんじゃないの?」

 

 それを言われて思わずはっとした。俺にはそういった夢や目標などなかったこと思い出したからだ。

 トレーナーを目指したのは、確か……何となくだったからだ。向いてそうな気がしたというのもあるし、トレーナーになる以外の進路を見いだせなかったからだというのもある。サブトレーナーとして活動した時も、毎日その日の仕事に夢中だったし、頑張るウマ娘達をサポートとしたいという思いでやっていた。

 

 なら、今はどうだろうか。今は自分がトレーナーで担当しているウマ娘も多くいる。中には三冠馬になるとか色々と目標を持った娘がいるけど、それは彼女達のモノであって俺のではない。俺はそれを叶えるのが仕事だ。いや、それがトレーナーとして当たり前のことだと思っている。トレーナーとはそうあるべきだと。

 

「……特に夢とかはないな」

 

 少しばかり考えた末に出した答えを言えば、テイオーにため息をつかれた。

 

「はあ。お兄ちゃんって意外と軽いっていうか、つまらない男だよ」

「つまらないって。トレーナーっていうのはそれがしご──」

「だから! ボクがお兄ちゃんの夢になってあげるよ!」

「テイオーが、俺の夢?」

「うん。ボクはルドルフさんみたいなウマ娘になってみせる。だから、そのためにお兄ちゃんはボクのトレーナーになってよ。よくあるじゃん。オリンピックとかでメダルとるのが夢な親子。アレだよアレ。兄妹で同じ夢を突き進むんだよ。これ程までに素敵でサイコーな夢はないでしょ?」

 

 こんな俺に気を使っているのかと思ったけど、多分本当に本心からそう言っているのはわかる。

 親の再婚でできた義理の妹がウマ娘で、その兄はたまたまトレーナーをやっていて。なんていうか出来過ぎな気がしなくもない。でも、俺がトレーナーになったのはこのためだったらどうだろうか。

 

 妹であるテイオーと二人三脚で頂点を取る。兄としてこれ以上のことはないだろう。これはテイオーが言うように、素敵で最高な夢だ。

 

 なにより面白そうである。

 

「……わかったよ、テイオー。トレーナーは辞めない。その時が来るまで、俺はトレセン学園でお前を待つよ」

「じゃあ!」

「テイオー、お兄ちゃんと一緒にてっぺんでも取るか」

「うん!」

 

 今までに見た以上の最高の笑顔をしたテイオーを見て、俺は自分が取った選択は間違いじゃなくてよかったと心から安堵した。

 だからだろうか。ついさっきまでトレーナーを辞めるかどうか悩んでいたのに、今はとても心が軽くなった気がした。

 

 そして家に帰るまでのテイオーの足取りは、まるで空でも飛びそうなぐらいに軽やかだった。

 

 

 

 

 

「きりーつ、礼」

『先生さよーならー』

「さようなら。みんな気を付けて帰るように」

 

 クラス委員長の号令で帰りの会が終わると、みんなカバンを背負って帰る準備を始める。それはボクも同じで、誰よりも先に教室を出ようとすると仲の良い友達に呼び止められた。

 

「テイオーちゃん、今日もいくの?」

「うん、ごめんね。最近付き合い悪くて」

「いいのいいの。テイオーちゃんがお兄さんのこと大好きなのはみんな知ってるからね」

「そうそう。でも、たまにはわたしたちの方を優先してよね」

「わかってるって。じゃ、また明日ね」

 

 友達と別れを告げてボクはヒト並みの早歩きで──まあそれでも早いんだけど──廊下を歩いて玄関まで向かう。ここまで来てしまえば誰にも迷惑をかけない程度の速さで校庭を走ればいいだけだ。

 ボクの学校にも多くのウマ娘がいるけど、体育の授業でも昼休みでもないのに走って帰ろうとする子はあんまりいない。そこはやっぱり一緒にしゃべりながら帰る子が多いからね。まあ、少し前までのボクもそうだったんだけど。

 

 学校を出てすぐにウマ娘専用歩道というか車道があるところまで歩く。そこに入ってしまえば小学生のボクでも問題なく走ることができる。お兄さん曰く主に学園のウマ娘のトレーニングコースになっているらしくて、だけど一般のウマ娘も利用はできるらしい。だからこれに沿って走れば、目的地であるトレセン学園に迷わず行けるわけなんだよね。   

 

 トレセン学園の正門前まで来たら、ボクはカバンから特別許可証を首からぶら下げて中に入る。いくらボクがウマ娘といっても、学園の生徒じゃないから部外者ということになる。なので、お兄ちゃんが学園側に事情を説明してコレを発行してもらったんだ。

 

 一応このままトレーニングコースに行ってもいいんだけど、学園に来たらまずは駛川たづなさんのところに行かなければない。たづなさんはここの理事長秘書をやっているんだけど、なぜか普通の事務員の人じゃなくてたづなさんがボクの案内係を請け負っている。

 これについてはお兄ちゃんも首をかしげているんだけど、ボクにはそれとなくだけど察しがついていた。

 

 ボクはある日たづなさんにお兄ちゃんの所に案内された際にふと口に出したんだ。

 

「たづなさんみたいな人がお兄ちゃんの恋人だったらなあ」

「……と、トレーナーさんって、いま独身なんですね」

「え、知らなかったの?」

「テイオーさんも知ってると思うけど、彼は人当たりもよくて面倒見がいいから色んな事を知ってるんだけど、逆に自分の話ってあんまりしてくれなくて……」

「してくれなくて、か。たづなさんってお兄ちゃんのこと好きなの?」

「ま、まさか!」

「じゃあ嫌いなんだ」

「べ、別にそういうわけでは……」

 

 小学生ぐらいの知識でも、たづなさんがお兄ちゃんに好意を抱いているのは理解できたよ。いや、わかりやすいのかな? 

 

 そんなことを思い出しながら、ボクはたづなさんの所に顔を出して、お兄ちゃんの居場所を聞いてその場所へ向かう。今では案内されなくても行けるようにはなって、そうなると当然たづなさんはついては来ない。だけど、あれやこれやと理由をつけて週の半分ぐらいは一緒に行くんだよね。

 

 好きなら好きって言えばいいのに。大人って面倒だなって思った。

 

 

 

 

「おっ、ちび助じゃねぇか。今日も大好きなお兄ちゃんに会いに来たのか。このこの」

 

 トレーニングコースに行くと、ボクは毎度のごとくゴールドシップのイジリというなの洗礼を味う。ゴールドシップは変な帽子をつけてて、なんていうか変わってるウマ娘。最初はモデルさんみたいって思ったけど、その考えは一瞬にして変わったのは言うまでもない。

 頬っぺを突っつくゴールドシップの手を払いのけて、ボクはこれまた毎度同じセリフを吐く。

 

「ちび助じゃなくてテイオーだって言ってるでしょっ。ゴールドシップの癖に物覚えが悪いんだから」

「あらやだ。なんて口の悪い子なのかしら。おーいおいおい、ゴルシちゃんショック。ていうか、ゴルシちゃんの癖にってなんだ」

「お兄ちゃんがゴールドシップは適当に扱えばいいって言ったから」

「あんの野郎……!」

 

 と、彼女は少し離れた所にいるお兄ちゃんを睨みつけると、一目散にお兄ちゃんの所に走っていきドロップキックをお兄ちゃんはもろに食らった。

 

「いってぇな! なにしやがる!」

「うるせぇ! それがアタシの心の痛みだ!」

「意味わかんねぇよ⁉」

 

 ボクは常々思っていたことがある。お兄ちゃんって意外と鍛えているのか、ボディビルダーとまではいかないけど、腹筋とか割れてたりしてすごいんだよね。でも、家にはダンベルとか筋トレグッズなんてないから、ボクの知らないところで鍛えている思っていたんだけど。どうやらボクはその秘密を知ってしまったらしい。

 

 ていうか。ゴールドシップのドロップキックをもろに食らって平気なお兄ちゃんは、もう鍛えてるからっていうレベルじゃあない気がするんだけど……。

 

 

 お兄ちゃんの妹だからなのかはわからないけど、ゴールドシップの他にもボクを構ってくれる人は大勢いる。主にお兄ちゃんのチームのウマ娘だけどね。

 そこには当然ボクの憧れるであるルドルフさんもいるし、マルゼンスキーさんなんていつも懐かしいお菓子をくれるんだ。二人だけじゃなくて、チームのみんながトレーニングの合間を使ってボクの面倒を見てくれている。それはとてもうれしいんだけど、逆にみんなの邪魔になってないか不安で。だからそのことをお兄ちゃんに聞けば、みんな好きでやってるからって言うんだけど、やっぱり申し訳ないと思ってしまった。

 

 でも、ボクの面倒を見るためだけにお兄ちゃんは手を回したわけじゃない。ボクは誰よりも間近でみんなの走りを見れるのだ。これは、生徒ではない身からしたら破格の体験なんだ。みんなが走ってる時も、お兄ちゃんはボクの横で丁寧に教えてくれた。

 

「いいかテイオー。あいつらの走りをよく見ておくんだ」

「うん」

「知識は無駄にならない。聞いて知るのと見て知るのとではまた違ってくる。こうして現役のウマ娘のトレーニングを間近で見れる機会は、そうそうないから貴重だ」

「やっぱり企業秘密とかってあるの?」

「まあ特別なトレーニングをする時はな。マスコミは入ってこれないけど、ここにいる人達は別だから、見ればわかる人にはわかるけどな。でも、基本は出走するレースに向けたトレーニングを重点的にするから、違いは些細なものだけど」

「じゃあやっぱりルドルフさんをよく見るべきかな?」

 

 夢であり目標である彼女を見て学ぶというのは、ある意味では当然だとボクは思った。でも、お兄ちゃんは渋い顔をして唸っていた。

 

「ン~。あいつのは参考になると言えばなるし、ならないと言えばならないんだ。ルドルフは主に先行策を選択するが、出遅れた時はまくり差すことだってできる。要はどんな状況でも対応できる柔軟性を持っているんだ。まさに皇帝の名に恥じない走りをする」

「ボクだって天っっ才だもんっ。絶対できるもん!」

「あはは。そうだな。お前は……お前には才能がある。それは間違いないよ、テイオー」

「えへへ」

 

 褒めながらお兄ちゃんはボクの頭を撫でてくれた。お世辞にも聞こえるけど、それがボクには本心から来てる言葉っていうのが、なんとなくわかったんだ。

 

「そうそう。ここだけの話だけどな?」

「うん」

「実を言うと、ルドルフよりシービーの方が人気だぞ」

「え、そうなの? どうして?」

「いつも腕を組んでそうな人をどう思う?」

「うーん。なんていうか偉そうで近寄りがたい、かな?」

「つまりはそういうこと」

「?」

 

 ボクは自然と首を傾げた。お兄ちゃんが言いたいのは、つまりルドルフさんは親しみにくいってことなのかな。そりゃあシービーさんはなんていうか、自由気ままっていうか……雲とか風のようなウマ娘だけど。

 でも、ルドルフさんはボクからしたらとても優しいお姉さんって感じ。

 

 するとトレーニングメニューをやり終えたのか、ルドルフさんがやってきた。

 

「私がどうかしたのかい?」

「え!? えーと……」

 

 突然話題の本人が現れたので、当然ボクは挙動不審になってしまう。でも、お兄ちゃんは平然としていて……。

 

「テイオーがルドルフの走りを参考にしたいっていうから、説明しながら教えていたんだよ」

「そ、そうか。私を参考にか。なんだか照れるな」

「……」

 

 自然と返答したお兄ちゃんの口舌は中々のものだと思ったよ。けど、それを言われて喜んでいるルドルフさんを見れば、本当に親しみにくいウマ娘だとは到底思えないんだけどなあ。

 

 

 

 

 それから数年の月日が流れた。

 テイオーは予定通りトレセン学園を進学することを決め、そして無事に入学することができた。公に言えることではないが、身内ということもあってか学園側に口添えすることはできなくもなかった。

 さらに言えば、俺はルドルフのトレーナーでもあるので、それを可能にするだけの力を持ち合わせてはいた。

 だけどそんなことはテイオーが望むわけがない。そもそも入学に必要な成績は全く問題なかったので、そこまで心配する必要はなかったのである。

 

 テイオーは同じ年に入学した同期のウマ娘と比べれば、頭一つも二つも抜きん出ていた。それは当然だろうなと思う。

 

 入学する前からトレセン学園で現役のウマ娘達のトレーニングを目にしているし、レースに対する勉強だってみんなや俺が教えていたからである。何よりもそのために普段からトレーニングをしていたので、この結果は当然だと言えるだろう。

 まあ依怙贔屓と言われると耳が痛いのだが、俺のような似た環境のトレーナーは当然いるので、その中でテイオーが一番目立っていたということだろう。

 

 テイオーが入学したことにより、正式にあの子は俺のチーム所属となった。と言っても、そのことはみんな知っていたし、入学する前から頻繁にここに訪れていたからあまり新鮮さはなかったかな。

 

 つまりあまり変化がない、そう思っていたけど実際は違った。

 

 トレセン学園に入学したということは、当然テイオーも他のみんなと同じように寮生活を送ることになる。つまり学校が終わっても自宅に帰ることはない。帰るのは俺一人ということだ。

 

 まあ、それがテイオーにとってどんなキツイトレーニングよりも辛いことだったらしい。寮生活によって俺との時間が今までより減ってしまったのが嫌なのか、あの子は暇な時間はいつも俺が普段いるトレーナー室にやってくる。

 

「はぅ~。お兄ちゃん成分補給~」

 

 そう言っては俺に抱き着いてくる。それをみんながいる前でもするのだが、彼女達の目がなんだからとても羨ましそうに見えるのは気のせいだろう。

 俺としてもテイオー成分を補給できるので強くは言えない。でも、互いの依存度が以前よりも増したように思えるのは気のせいだよな? 

 

 

 

 レースでのテイオーは、はっきり言って敵なしと言っていいほど仕上がっている。今まで積み重ねてきたトレーニングのおかげでもあるし、何よりルドルフやみんながいるこのチームという環境が良い結果に繋がったんだと思う。

 だからこそテイオーの、俺達の夢である三冠ウマ娘になるという夢が現実になるんだと、自惚れてしまうぐらいの自信があった。

 

 デビューを果たしてからの翌年。現にそれは確かに現実のものとなった。皐月賞、日本ダービーとここまで無敗の二冠を達成したからだ。残すは菊花賞。近いようで遠い三冠までの道のり。でも、それは確かにもうすぐ手が届く距離まで迫っていたんだ。

 

 でも、何一つ不安や心配事がなかったわけじゃない。

 

 異変はまず日本ダービーを終えたから起きた。

 テイオーが見事二冠ウマ娘となってから数日たった頃だろうか。俺は、悪夢というやつを毎晩見るようになった。

 内容はいつも同じ。暗い部屋に一つだけ光が照らされている。それはまるで舞台のようだった。でも、そこは舞台じゃなくてどこか見慣れた場所で、そこにテイオーが脚を抑えながら泣いていた。

 

「痛い、痛いよ……」

 

 テイオーは脚を怪我していていないのに、毎晩あの子が泣く光景を見せられる。一回だけかと思えばそれは毎日続き、当然それは俺の体調にも現れ始めてみんなからとても心配された。不安に駆られた俺は、担当しているメジロアルダンとメジロマックイーンの名門メジロ家のウマ娘二人に理由は誤魔化して、メジロ家の力を貸してもらうことにした。最新の医療設備がある病院を紹介してもらい、俺はテイオーを連れて診察してもらった。

 結果はどこにも異常はなく、とても健康そのものだと言われた。懸念していた脚の方も骨にヒビなどないとも言われた。

 

 当然テイオーにはからかわれたよ。心配しすぎだって。確かにその報告は俺の不安を和らげることにはなった。でも、嫌な感じは抜け切ることはなくて。

 

 過保護と言われるようになったけど週に一度は病院に通うことになった。それが効いたのだろうか。気づけば悪夢は見なくなった。

 

 俺は悪夢を見ることはなくなった。けど、今度はテイオーが悪夢を見るようになった。

 

 それは菊花賞を控えた一週間前ぐらいだろうか。朝、突然テイオーから電話がかかったのだ。

 

「んーどうしたんだテイオー? もしかして──」

『お、お兄ちゃんそこにいるよね? 本当にお兄ちゃんだよね?』

「……テイオー?」

『お兄ちゃん、怖いよ。何でか全然わからないんだ。でも、怖いんだ……』

 

 いつもの出勤する数時間も早く、俺はトレセン学園の女子寮へと向かっていた。スーツではなく、そのまま寝間着であるジャージのまま、俺は家を飛び出した。

 近頃は秋を飛び越えて冬のような寒さだ──とまではいかないけど、走り出してから数分も経てば体は温まるから気にすることもなかった。

 自宅からトレセン学園までは徒歩でいけなくはない距離だけど、少し楽をするために普段は最寄り駅から通っているが、時間が時間だけに電車は走っていない。自転車でもあればよかったんだけど、生憎と持ってはいなかった。

 

 多分、高校生のマラソン大会以来だろうか。いくらたまに教え子達と一緒に鍛えることはあっても、流石にそこまでガッツリと取り組んでいる訳では無いから、年齢も相まってちょっと辛い。それでもやっとの思いでトレセン学園までたどり着けば、女子寮の入口で座り込んでいるテイオーを見つけた。

 

「……お兄ちゃん!」

 

 俺が声をかけるよりも早くテイオーは俺に気づいて胸に飛び込んでいた。テイオーは酷く怯えているようで、まずはぎゅっとテイオーを抱きしめながら頭を撫でることにした。

 

 それから落ち着いたテイオーを抱き抱えながら、まだ開いていない学園へと忍び込んでトレーナー室へと向かう。

 トレーナー室へ入るなり暖房をつけて、ずっとしがみついているテイオーを抱きかかえたままソファーに座る。

 

「一体どうしたんだテイオー」

「……ゆ、夢を見たんだ」

「夢?」

「周りは真っ暗で、ボクはそこに立っていたんだ。でも、目の前にお兄ちゃんがいたんだ。ボクは駆け寄ろうとしたけど、まるで見えない壁に邪魔されて。そしたら急に脚が痛くなって。ボクはお兄ちゃんに助けって、何度も……何度も何度も叫んだんだ。だけど、ボクの声は届かなくて……」

「……そうか。怖かったな。でも、大丈夫。俺はここにいるし、お前の脚は大丈夫だよ」

「そんなのわかってるんだ。けど、これはなにかの前触れじゃないかって。だって菊花賞がすぐ目の前に迫ってるのに、こんな夢を見るんだよ!? だから、だからボクは怖くて……」

 

 同じ。俺と同じだ。

 テイオーの話を聞いて、これは俺が数ヶ月前に味わった悪夢と一緒なのではないか。血の繋がりなんてないのに同じ体験をするなんて。やっぱり俺達は、血の繋がり以上に深いナニカで繋がっているんだ。

 

 不謹慎だけど、それがとても俺には嬉しくて堪らなかった。

 

「大丈夫だよテイオー。お兄ちゃんに任せろ」

「うん」

 

 俺にはそう言うしかなかった。けど、どうにかできるという妙な自信もあったんだ。

 

 

 

 

 結局の所、真っ先に頼ったのはメジロ家お抱えの医者だった。電話越しだけど今回の件を話して診断書を書いてもらい、あとはそれを使って理事長を説得するだけだった。

 

 要は菊花賞当日まで、治療のため女子寮ではなく自宅から通学させてほしい。ただこれだけだった。

 理事長は話の分からない人ではないから話はすんなりと通った。面倒だったのはチームのみんなにどう説明するかだけど、ちゃんと理由を話せばみんな納得してくれた。

 そしてその日の夕方。トレーニングを終えて、俺はテイオーと数年ぶりに一緒に帰宅することになった。

 

「なんだか懐かしいね。昔は毎日のことだったのに」

「そうだな。けど、あんまりお前の身長は変わらないけど」

「それを言ったら戦争だからって言ったじゃん!」

「あはは!」

 

 俺としても数年ぶりに平日をテイオーと過ごせることは、やっぱり嬉しくて隠し通せるものではなかった。一緒に帰宅し、夕食を食べ、同じ空間で過ごす。ごく普通のことだけど、いつしかそれは普通ではなくなってしまったことをしみじみと実感する。

 

「じゃあ寝ようか」

「うん……お兄ちゃんと一緒に寝るのなんて、すっごく久しぶりだね」

「そうだな」

「……お兄ちゃん、あったかいね。お兄ちゃんの匂いだ」

「おやすみテイオー。俺はずっと傍にいるから」

「……うん」

 

 それから菊花賞まで俺達は一緒に夜を過ごした。年齢を考えれば、あまりいいことではないのかもしれない。受け入れられることではないのかもしれない。

 

 でも、俺達二人とってこれは普通のことだった。

 

 そして、菊花賞までテイオーは悪夢を見ることはなかった。

 

 

 

 

 

 菊花賞当日。この日、日本中は新たな伝説を目撃すべくレース会場は満員御礼で、会場外でも多くの人で溢れていた。

 

 新たな三冠ウマ娘の誕生。これだけで今日の話題は持ちきりだった。

 

 その当事者である我が妹トウカイテイオーは絶好調だ。一緒に過ごしたのがよかったのか、これほどまでにない仕上がりだ。

 

 対して俺は、少し変だった。

 落ち着きがない。そわそわしている。挙動不審。言葉にすればこんな感じだけど、そうじゃなかった。

 みんなにもそれは指摘された。テイオーの前では平静を装うのが精一杯で、それ以外では全く隠し通せなかったのだ。

 

 それはゲートが開いた瞬間でも収まらなくて、それが収まったのは──

 

『トウカイテイオーだ! トウカイテイオーがいま、最終コーナーを飛び出した! 速い速い、後続も必死に追いつこうとしているがまったく伸びない! トウカイテイオー全く衰えない! そしていま……ゴール! トウカイテイオー一着! ここに新たな無敗の三冠ウマ娘の誕生です!』

 

「やったなトレーナーくんっ。全く、君という男はどれだけの三冠ウマ娘を生み出すんだ……。と、トレーナーくん!? どうした!?」

 

 すぐ傍にいたルドルフが俺を見て、とても慌てふためいている。ああ、わかってる。いや、わからないんだ。どうして俺はその場に跪いているのか。どうしてこんなにも涙が止まらないのか。

 

「トレーナー!?」

「お、おい、どうしたんだよっ」

「そうですわ! い、今すぐメジロの医療班に連絡を──」

「大丈夫……本当に大丈夫なんだ……」

 

 俺は声を絞り出すようにみんなに伝えた。それでもみんなは納得はしなかった。

 

「大丈夫なわけないだろ! ほら、とりあえず医務室に行くぞ!」

 

 いつもだったらからかうであろうゴルシでさえ俺を心配していた。腕を引っ張って無理やり立たせようとする。その所為か、はたまた意識的にやったのかは定かではないけど、俺はゴルシに抱きついてしまった。

 どういう訳か、これまたゴルシは珍しく年頃の女の子のような反応をした。

 

「……っ! お、おまえ!」

「俺は、なんともないんだ。本当に嬉しくて、でもどうしてか涙が止まらないだけなんだ……」

 

 結局の所、俺がどうしてこんな事になってしまったのかはわからないままだった。そのあとすぐにテイオーが俺達のところに来て、俺を見て当然驚いた。テイオーが来ても俺は変わらず泣いていて、終いにはテイオーに抱きついてライブが始まる直前まで泣いていた。

 

 何度もよかった、よかったと呟いていたと思う。するとテイオーももらい泣きしたのか、二人してわんわん泣きめいた。

 

 後に毎年菊花賞の日になると、みんなにそのことを弄られるようになったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 その後のことを語ろうと思う。

 

 無敗のテイオー伝説の幕開け──そう誰もが思っていたんだけど、翌年の天皇賞(春)ではチームメイトでもあり親友でもあるメジロマックイーンに負けた。それも2着ではなく5着。

 

『あれぇ〰?』

 

 ボクとお兄ちゃんは二人して情けない声を出して首を傾げた。いや、マックイーンが勝ったことに関しては不満はないよ。お兄ちゃんもトレーナーとしてとても喜ばしいことなのは間違いないんだ。だけど問題はそのレース内容で。まさか2着じゃなくて5着とだと思わなかったのである。

 

 それまでのトレーニングでは今までと同じレベルで仕上がっていたので、だからこそマックイーンと接戦になるようなレースだと思っていたのだ。

 

 身体に異変があるとのでないかと思い検査すれば、どういう訳か異常はなくて健康そのもの。その後のトレーニングも問題ないしで余計に訳がわからなかった。

 なんていうか、スラムダンクでいう山王に勝ったあとの湘北だなぁとお兄ちゃんはぼやいていた。

 

 まあこれがレース、ということなのだろう。その後も勝ったり負けたりもしたけど、怪我は一度もなかった。

 

 チームも増えて、後輩もたくさんできて。気づけばお兄ちゃんはベテラントレーナーって言われるのは、まあ当然の流れだった。一方でボクらのチームをインチキ集団って呼ばれるようにもなったのは何故だろう。

 

 そんなボクといえば、シニアを終えたあとはたまにレースに出たりする程度で、そろそろ引退を考える頃合いだった。一方で先輩であるはずのカイチョーやマルゼンスキーも普通にまだ学園にいるしチームにもいる。

 

 一体どうしてなんだろうか……ワケガワカンナイヨ。

 

 

 それから何度目かの夏合宿のとある夜。

 

「なんていうか、今日まであっという間だったなぁ」

「そうだね〰。お兄ちゃんも老けるわけだよ」

「老けたお兄ちゃんは嫌いか?」

「まさか。お兄ちゃんはどんな姿でも大好きだヨ」

「なんか含みがあるような……」

「気の所為だよ〰」

 

 ボクとお兄ちゃんは二人きりで夜の浜辺を歩いていた。気分はさながら恋人同士って感じだけど、なんていうかボク達の関係はその枠に入らないようなきがするんだよね。

 

 そんなお兄ちゃんはお兄ちゃんでまだ独身だ。恋人のコの字もない。お兄ちゃんもいい加減いい年なんだから、そろそろ身を固めてほしいと妹のボクは思うわけですよ。

 

 こういっちゃあれだけど、お兄ちゃんってモテるから選り取り見取りだし。ここはやっぱり大人の女性であるたづなさんとかどうだろうか。いや、あえてカイチョーだとボク的には嬉しいかもしれない。

 

「ところでテイオー。実は……その、大事な話があるんだ」

 

 なんてタイムリーなんだろうか。お兄ちゃんの恋人問題について考えていたら、まさかそんな感じの雰囲気になってきたではないか。

 

「大事な話?」

「そう。大事な話だ」

「うん。わかった」

 

 ボクはついに来たかと思った! どう見たってこの雰囲気は、実は付き合っている人がいるんだって言う雰囲気だよこれ! 

 ボクは平静を装いつつも、内心はワクワクドキドキしていた。

 

「実はお兄ちゃんはな」

「うん」

「ゴールドシップと付き合っているんだ」

「おめでとう! ……え?」

「そうか。テイオーも喜んでくれるかっ」

 

 おかしいな。絶対に有り得ない名前が聞こえたんだけど気の所為だよね。お兄ちゃんはとてもうれしそうにしてるけど、きっとカイチョーだからだよね。だけど一応聞いておこう。

 

「ご、ごめん。ちょっと待って! いま、誰と付き合ってるって言った!?」

「え? だからゴールドシップと付き合っているんだ」

「はぁあああ!? どうして! そこで! ゴールドシップなの!? そこは流れ的にカイチョーじゃないの!?」

「……なんてそこでルドルフの名前が出てくるんだ? まだたづなさんとか桐生院とかならわかるけど」

「だ、だだって! カイチョーはお兄ちゃんの最初の担当だから……」

 

 ボクがそう言うと、お兄ちゃんはこれまた不思議そうに首を傾げて言った。

 

「俺の最初の担当はルドルフじゃないぞ」

「……え?」

「ゴールドシップが最初の担当ウマ娘。言ってなかったけ?」

「言ってないよぉおおお!」

 

 う、うそだ。有り得ない。これは夢だ。なんでここでゴールドシップなんだ。確かに黙ってれば美人だけど、その行動ですべてがマイナスになって彼女にしたくないランキングに入りそうだというのに。

 

「なんでゴルシは駄目なんだ?」

「だ、だってゴールドシップだよ!?」

「大丈夫だって。あいつは見かけによらないぐらいいい女だから」

「うっそー!?」

「本当だって」

「じゃあボクはアレをお姉ちゃんって呼ばなきゃいけないの!?」

「ま、まあ、将来的にはそうなる、かな」

「すっごく嬉しそうに言うじゃん!」

 

 大人の癖に思春期の子供のように頬をかきながらお兄ちゃんは言う。すっごく可愛いけどなんかうざい。

 

「ほら。遠慮せずお姉さまって呼んでみろって」

「誰が言うか! ……って、なんでゴールドシップがいるの!? さっきまでいなかったのに!?」

 

 思わず声がする方にツッコんだら何故かそのゴールドシップがいた。細かいことは気にするなといいながら、彼女はお兄ちゃんと腕を組んで改めて報告するように言ってきた。

 

「アタシ達付き合ってまーす」

「な。嘘じゃないだろ?」

「……ゴールドシップのどこがいいのさ」

 

 とりあえずボクはありきたりな質問をしてみた。

 

「なんだかでゴルシはさ、内容はどうであれずっと傍にいてくれてさ。俺が辛いときなんて、誰にも見せたことないぐらい優しくしてくれて──」

「ストップ! で、ゴールドシップは」

「え〰。ゴルシちゃんはやっぱり〰。アタシとコイツはどす黒く染まった運命の赤い糸で結ばれてるっていうか〰」

「あ、もう喋らなくていいよ」

「おい!」

 

 どうやら二人は本当に付き合っているらしい。さらにもう将来を誓いあったような間柄のようにも見える。

 これはいけない。何故だわからないけど、ボクはゴールドシップをお姉さんとは呼びたくはない。

 

 なんでかはわからないけど! 

 

「なぁテイオー。ゴルシと付き合っていることに反対なのか?」

「うん反対! だからゴールドシップ、ボクと勝負ね。今度の天皇賞でボクが勝ったらお兄ちゃんと別れてね。まさか出ないって言わないよね? いまのボクなんてゴールドシップなら余裕で勝てるんだから」

「おいおい。そんな見え透いた挑発にアタシが乗ると思ってるのか? いいぜ、乗ってやろうじゃねぇか! アタシが勝ったらその日からゴルシお姉様と呼んでもらうぜ!」

「……別に勝っても負けてもゴルシのことだからどうとでもしそうだけどいいの?」

「お兄ちゃんは黙ってて!」

「はぃ……」

 

 ボクとゴルシは互いに向かい合い睨み合う。何故だろう。こんな光景をどこかで見たことがあるような気がするのは。初めてじゃないそんな感覚。

 

 まったく。引退を考えていたのに、どうやら当分引退できそうにないよ。

 

「フッフッフ。どうやらゴルシちゃんの真の姿を披露するときが来たぜ。今更なしっては認めねぇぞ」

「そっちこそ覚悟するんだね。今のボクは現役時代を超えているんだ……多分」

 

 そしてゴールドシップだけではなく、みんなを巻き込んだお兄ちゃんの恋人争奪戦が始まろうとしたとをボクはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 結論 色々あったけどテイオーはゴルシを受け入れてくれました。

 

 





気づけば二ヶ月も経ってしまいましたがなんとか終わることができました。
本当ならば最初のように個別に話を作る予定だったけどワンパターン化してきたのでテイオールートで終わらせることにしました。

書いては放置を繰り返していたのでだいぶアレですがね……。


改めて見ていただきありがとうございました。


次回作 魁!ときめきトレセンメモリアル でお会いしましょう(嘘)
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