異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン)   作:3S曹長

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「強い力を持つ転生者が、わずかな身の危険を感じた際に危険な方にわざわざ向かうのは、自室で虫の羽音を聞いた際に殺そうと思って虫の姿を探すのと似ている。」

~転生者専門行動学 博士 ココマリン~


第二章 「ソルティングブレッド」殺し その5 「パン祭り」

王都 「神の反逆者」ギルド

 

 夜、「神の反逆者」ギルドにあるベストナイン専用の食堂では、ベストナインのメンバーによる晩餐が行われていた。一日の活動を締めくくる意味のある毎夜の晩餐だったが、この日参加していたメンバーは七人だった。

 

「スパノさんは今日も歓楽街ですか?」

 

そう尋ねるのは、序列7の立花亭座個泥(たちばなていざこでい)

 

「そうだよ。まあ、この晩餐は強制参加じゃ無いんだから、皆も好きな場所で食べても構わないんだよ?」

 

答えたのは、序列1、マウントール=フランス。彼は晩餐中にワインを大量に飲んでいたが、全く酔った様子を見せていない。

 

「だってここのごはんが一番おいしーんだもーん!」

 

マリネを食べながら、序列9の御手洗幼子(みたらいようこ)が主張する。

 

「そういえば、あれから進展は無いのか、米沢?」

 

「うん…何も無いまま…」

 

序列6のギットス=コヨワテの質問に、序列4の米沢反死(よねざわはんし)が答える。

 

「ふん、あんな雑魚のことなんて忘れりゃ良いのよ!」

 

序列3、アルミダ=ザラが吐き捨てる。

 

「豚にしては珍しくまともな意見だな」

 

序列2、アシバロン=ボーナスのこの発言に対してアルミダが突っかからなかったのは、食堂に新たな料理が運ばれてきたからである。

 運ばれてきた料理は大皿いっぱいの唐揚げ。無論、単なる唐揚げではなく、ベストナインのために厳選された食材と腕利きの料理人の手で作られた、最上級の唐揚げだった。

 

「よっしゃー!唐揚げ来たーー!!」

 

アルミダが歓喜の叫びを上げる。

 

「唐揚げにはこれでしょ!!」

 

言うが早いか、アルミダはテーブルに置かれたレモン汁を手に取り、誰の許可も得ずに唐揚げに向けて大量にかけ始める。

 

「はぁ、これだから豚は困る」

 

ため息をつくアシバロン。

 

「唐揚げには()()()だろうが」

 

アシバロンもテーブルの上のかぼす汁を手に取って、唐揚げに向けて大量にかけ始める。

 

「もう!二人とも似たようなもんじゃん!唐揚げにはタルタルソースだってば!!」

 

御手洗も負けじと叫び、手元からタルタルソースが大量に入ったタッパーを取り出して中身をかけ始める。

 

「いい加減にして下さい皆さん!」

 

立花亭が憤慨する。

 

「なんで唐揚げに専用の塩が付いてくるのか知らないんですか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

立花亭が唐揚げに付いてきた塩をかけ始める。

 

立花亭が、()()()()()()()()()()()()()()()と気付いたのは、塩をかけ終えた後だった。

 

「もうタッチー、気をつけてよ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()じゃん!」

 

御手洗が不満の声を上げる。

 

「す、スミマセン皆さん!!ついうっかり…」

 

立花亭が素直に謝罪する。

 

「立花亭、今回はそこまで重要な事象じゃ無いから水に流そう。だが、発言にはくれぐれも気をつけてくれよ?」

 

そうマウントールが場を取りなす。

 

「ま、いいんじゃない?()()()()()()()()()んだし」

 

アルミダが言う。

 

「うぅ…スミマセン…反省します…」

 

立花亭はしょんぼりとした様子で言った

 テーブルの上にはレモン汁、かぼす汁、タルタルソース、唐揚げ専用塩の4種類が大量にかかった「四重奏唐揚げ」の大皿。米沢は大皿から「四重奏唐揚げ」を取り、黙々と食べ始める。

 

「うまい!うまい!うまい!」

 

そう言いながらマウントールも「四重奏唐揚げ」をひょいぱくひょいぱくと口に次々と放り込む。

 

「結局唐揚げって…」

 

ギットスがぼそりと言う。

 

「本体の味はどうでも良いってことだよな?」

 

 

 

 

 

同時刻 歓楽街

 

 歓楽街の店にいたスパノの手には一枚の紙。紙には「ノイワ村 夏のパン祭り 開催!!」の題名とともに開催日時や場所、看板メニューが載っていた。看板メニューの中で特に目立っていたのは塩パン。だがスパノが気になっている箇所はそこでは無く、開催場所がノイワ村であることだった。

 スパノは塩パンが大好物だった。そのことは周知の事実で、「ソルティングブレッド」の二つ名もそこから来ていた。これまでも彼の元に直接塩パンの宣伝が来たことはあった。しかしそういうのは大抵、名の知れたパン職人の自信作か王都で開かれる大規模イベントだった。それが今回は、辺鄙(へんぴ)な村でのパンの直売会。しかも開催場所のノイワ村は、彼が()()()()()()()()()()()だった。

 怪しい、そう思わざるを得ない広告。自分を誘う罠なのではないかとスパノは考える。行くべきかどうか迷う彼の頭の中では、過去の苦い思い出が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

 

 スパノ=ヤナティンの転生前、素矢野(すやの) 多賀瑠(たがる)はスーパーの店員だった。彼が働いていたのはそこまで大きくない町のスーパーマーケット。ある程度の人員に指示を出せる程度の立場、所謂中間管理職のような地位にいた。

 彼は「ありがとう」の言葉が好きでは無かった。むしろ嫌いなほうだった。そんな彼がスーパーで働いていたのは、学生時代にアルバイトを始め、手際が良いと評価されていたので、学生生活が終わってもそのままそこで働き続けていたからだった。

 彼の人望は薄く、同業者からは陰で悪口を言われているような存在だった。そんな彼にとって目の上のこぶだったのは、ベーカリー部門で働く一人の男性店員。魅力の無い顔をしたあいつがレジ係の可愛いあの娘と良い感じになっている、そのことが心底気にくわなかった。そんなあいつが今度、自分の作った新作パンの試食会を従業員一同の前で行うことになった。

 素矢野(すやの)多賀瑠(たがる)はパンが好きだった。自宅では手作りのパンを作って食べたりもしていた。一緒に食べてくれる相手は誰もいなかった。彼は自分のパン作りの経験を活かして、むかつくあいつに恥をかかせてやろうと考えた。

 あいつが帰った後、ベーカリー部門の厨房に忍び込んで、あいつが作って寝かせているパン生地と自宅で作ってきた「塩を大量に含んだパン生地」をすり替える。

 

「明日あいつは、しょっぱすぎるパンを皆に振るまい大恥をかくのだ」

 

 彼は一人ほくそ笑んだ。

 

 翌日、むかつくあいつがパンを振るまい、しょっぱすぎるパンに皆が不満を漏らした。そこまでは成功だった。だがあいつは自分のミスを認めなかった。

 

「そんな、ありえない!配分は何度も確認したんだから間違っているはずがない!誰かに悪戯されたんじゃ…」

 

 素矢野(すやの)多賀瑠(たがる)は冷や汗をかいた。だが、証拠が無い以上はあいつの妄想に過ぎない、と自分に言い聞かせた。しかしそうもいかなくなった。

 

「そうだ、監視カメラ!監視カメラを確認すれば誰かが悪戯したことが分かるはずだ!」

 

 あいつが叫んだのだ。なぜ自分がこんな訳の分からないミスをしたのか未だに分からない。まさか監視カメラの存在を失念していたとは。

 素矢野(すやの)多賀瑠(たがる)は逃げ出した。あいつは店長とカメラを確認しに行った。全部がばれた。皆にどう言い訳したら良いのかも分からなかった。

 

 とその時、裏口から出てきた商品配達の大型トラックが横から飛び出してきた。周りを見ればすぐ分かるような存在に、逃げるのに必死だった彼は気付けなかった。素矢野(すやの)多賀瑠(たがる)の生涯はこうして幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 スパノの脳裏に浮かぶ苦い記憶。だが、転生後はあんな訳の分からないミスは犯していない。今の自分に彼は絶対の自信を持っていた。

 パン祭りの開催は明日だった。どう考えても怪しいそのイベントにスパノは行くことを決めた。スパノはルイと同じように、自分にとって不可解な謎はそのままには出来ない、と考えていた。

 

「大丈夫サ。いざとなれば「致死塩分量(デスディーリングソルト)」があル。俺は無敵サ」

 

そう自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

五日前 とある荒廃した村にある地下室

 

「次のターゲットはスパノ=ヤナティン、通称『ソルティングブレッド』だ」

 

「私の出番か…」

 

 夕食後、魔女の宣言にゴーギャンが答える。

 

「計画は六日後だ。リュート、お前も参加すると良い」

 

「何で俺が?」

 

魔女の提案にリュートが尋ねる。

 

「正直に言おう、リュート。お前の村の人間を殺したのはルイ=ジュクシスキーとスパノ=ヤナティンの二人だ」

 

魔女が答えた。

 

「じゃあ、立花亭座個泥(たちばなていざこでい)は殺しをしてなかったのか?」

 

「残念ながらそうだ、あいつはさっさと帰って行ったよ」

 

魔女が「残念ながら」と口にしたのがリュートは気になったが、あえてそこには触れなかった。

 

「それで、どのようにいくつもりだ?」

 

「ああ。六日後、ノイワ村でパンの直売会を開く。そこにスパノをおびき寄せる」

 

 ゴーギャンの質問に魔女が答える。

 

「なるほど!パン好きのスパノなら効果はありそうだな!」

 

レースバーンが声を上げる。

 

「ふふふ、パン祭りだから奴が来るんじゃ無いぞ。重要なのは開催地だ。ノイワ村は奴が初めて人殺しをした場所でもあり、ゴーギャンが託児所の皆を失った場所だ」

 

魔女が言った。ゴーギャンは一度静かに頷いた他には反応を示さない。

 

「紹介状は奴に直接渡す。いきなりの辺鄙(へんぴ)な村での直売会の誘い、しかも場所は自分が初めて人を殺した場所。奴は気が気じゃ無いはずだ。奴はこの不可解さを解消しようと現れるはずだ」

 

「だが、初めて人殺しをした場所を覚えているのか?」

 

「あいつはノイワ村でゴーギャンの託児所の子供や保育士の計23人を殺した。だがそれ以降、奴は大規模な殺戮(さつりく)を行っていない。一度に10人以上殺した事すら無いのだ。あの殺しは奴にとって何か特別な意味を持っているはずだ」

 

ラーシャの疑問に魔女が答える。

 

「必ず来る。なんせスパノは『自分を賢いと思い込んでいる大バカ野郎』だからな。監視カメラの存在を忘れるほどのだ」

 

魔女が笑いをこらえながら言うのを聞いて、リュートは自分の聞き慣れない単語の意味を尋ねる。

 

「監視カメラってなんだ?」

 

「なんて説明すれば良いんだろうな…。まぁ、分かりやすく言うなら『家に人がいるかの確認を忘れたまま泥棒をする』のと似たようなものだろう」

 

魔女の言葉を聞いて、確かに大馬鹿だ、とリュートは思う。

 

「村で直売会をやるんだ。当然、他の人も来るだろう。奴を普通の直売会だと油断させて誘い出し、奴に『あるもの』を食わせて動揺させる」

 

「パンはどうするんだ?」

 

魔女の作戦を聞いてポセイドラが尋ねる。

 

「そのための五日間だ。皆でパンを沢山作るぞ。売り上げは臨時収入だ」

 

魔女が答えた。

 

 

 

 

 

パン祭り当日 ノイワ村

 

 パン祭りは大盛況で村の人々がこぞってパンを買いに来た。皆は客の対応に追われていたが、魔女とリュートとゴーギャンは他の人間の前に姿を見せなかった。

 

 パン祭り開催までの間、リンの主導の下でパン作りが行われた。リンの料理の腕はそこらの人間の腕を遙かに凌駕するものだった。初めてリンの料理を食べたリュートは

 

「おいおいマジかよ…。俺が今まで食ってたリディアの弁当は何だったんだ…。()()()()()()?」

 

と思ってしまった。

 リュートは料理が出来なかった。皆がパンを作る間、レースバーンとポセイドラが剣の稽古に付き合ってくれた。肝心のゴーギャンは時折パン作りを手伝っていたが、その他の時間は来たる日に向けて、体と心の準備をしていた。

 

 そしてパン祭りも終盤に差し掛かった頃、目的の人物が現れた。

 

「ちょっと見てあの人、『ベストナイン』のスパノ=ヤナティンさんじゃない?」

「本当だ!なんであんな超有名人がこの村に?」

「あのパン屋さんってそんなにすごい人達なの?」

 

 周囲がざわついた。スパノは紙を持ってパン売り場に近づく。

 

「この宣伝を見てやってきたんだガ?」

 

「おいでませ~、ようこそお越し下さいましたわ。どうぞ、貴方様専用の食事席を用意しましたわ!」

 

 リンが元気よくスパノの接客を行う。次々と運ばれるパンにスパノは舌鼓を打つ。リンの料理の腕は、高級な料理ばかり食べているスパノも納得するほどのものだった。

 

「なかなか旨いじゃないカ。気に入ったヨ」

 

「ありがとうございます~。どうぞごゆるりとおくつろぎ下さいまし」

 

 リンが言う。

 

「パン祭り終了後、貴方様に私どものトップからご挨拶がありますので~」

 

 




「一話でいきなり告白してくる幼なじみに人権は無い!」

~スレイヤー リ○・イ○バース~





 
 「唐揚げに無断でレモンをかける」を題材に物語作るならこのくらいはしたいですよね。ギャグ入れて、パロディ入れて、なにやら意味深な描写も入れて。
 まさか、作品作って金もらっている人が「唐揚げに無断でレモンかけた人が皆から冷たい目で見られた」だけで終わるなんて、そんなことないですよねぇ?
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