異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン)   作:3S曹長

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店員「この前調べたんですけど、『賭ケグルイ』の主人公の声優、早見沙織さんなんですよ」

五郎「うーん…蛇喰夢子と胡蝶しのぶで早見沙織がダブってしまった」


(上記のエピソードは原作及び当作品と本編には一切関係ございません。当作品のキャラクターは元ネタの本人では無いということを踏まえた上で、本編をお楽しみ下さい)


第二章 「ソルティングブレッド」殺し その6 「俺が俺であるために」

「力持ちのゴーギャン先生」

「うっかりさんなゴーギャン先生」

「優しいゴーギャン先生」

 

 一生懸命な後輩と優しい所長、そして何より自分を慕ってくれる子供達に囲まれた託児所で働く毎日は、ゴーギャンにとって幸せな毎日だった

 

 あの日が来るまでは。その日、ゴーギャンは非番で、家の中で昼寝をしていた。村の騒がしさに目を覚まし、彼は家の近くにいた男を捕まえ話を聞いた。

 「託児所にいた人間全員が謎の死を遂げた」という話を聞いたとき、ゴーギャンは話を受け入れることが出来なかった。他の人に聞いても話す内容は同じだった。彼は急いで託児所へ向かった。

 託児所では、所長含めた所員3名と児童20名の計23名が死んでいた。うっかり白目になって無残な現実を目に触れないようにすることが、このときの彼にはなぜか出来なかった。

 我が子の突然の死を悲しむ父や母、現場の立ち入りを制限する駐在所の人々、検死をする医者、そして野次馬達。人々の群れの中にうずくまり、彼は泣くことしか出来なかった。

 眠れない日々が続いた。ようやく眠って目が覚めても現実は変わらなかった。日が経ち、遠くから高名な医者が来たようだったが死因は分からないままだった。

 

 事件から十数日が過ぎた頃、ゴーギャンの家の中に突然「ワープゲート」が開いた。女が出てきたが「どうしていきなり入ってくるんだ」という当然の疑問すらゴーギャンは口に出来なかった。

 

「託児所での大量死…。未だに犯人が分からないようだな」

 

「…当然だ。死因も分からないままなのだ…」

 

 突然入ってくるなり、デリケートな話題に触れ始める女にゴーギャンは答える。

 

「ふふふ、当然だ。この世界に()()()()()()なんて知識は無いのだからな」

 

女は言った。そして、次の一言は彼にとって信じられない内容だった」

 

「単刀直入に言おう。犯人はベストナインの序列5、通称『ソルティングブレッド』のスパノ=ヤナティンだ」

 

「…馬鹿な」

 

ゴーギャンはつぶやく。確かに事件当日ベストナインのメンバーが近くで魔人の討伐を行っていたのは知っていた。しかし、彼の知っているスパノの能力は「魔族にとって毒となる物質を魔族の体内に生成して毒殺する」能力だった。

 

「本当だ。奴の能力は『魔族にとって毒となる物質を魔族の体内に生成する能力』ではない。『生物の体に必要な物質を毒に変換する能力』だ。それを使って託児所の人間を殺したのだ」

 

女の言葉は信じられない内容ではあったが、なぜか彼には嘘には思えなかった。

 

「奴が憎いか?()()()()()。私に付いてくれば、皆の敵を討たせてやる」

 

魔女を自称するその女の言葉に乗る以外、ゴーギャンにはやるべき事が見出せなかった。

 

 

 

 

 

 

「こちらになります~」

 

 パン祭り終了後、スパノはリンに導かれて、村の外れに設置された大きめの小屋の前に立っていた。リンが扉を開けると、中には白目をむいた大柄の男が立っていた。スパノは一瞬ヒヤリとする。

 

「も~う、ゴーギャンさん!白目になってますよぉ!」

 

「すまん…うっかりしていた」

 

リンの指摘にゴーギャンが答えた。スパノは困惑していた。

 

「もう!ゴーギャンさん、()()()()()()()()()ね?失礼しました、スパノ様、彼が貴方に食べさせたい自信作があるらしいので~。では、わたしはこの辺で~」

 

リンが小屋の扉を閉め、スパノはゴーギャンと二人きりになった。小屋の奥にはキッチンらしき設備に大きめの冷蔵庫があったが、他には何も無い、空きスペースの広い小屋だった。

 

「で、何だヨ?俺に食わせたいモノっテ?」

 

「これだ、食べてみてくれ」

 

ゴーギャンの手には皿に乗った塩パンが一つ。スパノはゴーギャンのぶっきらぼうな態度も気になったが塩パンの方に一層の興味を惹かれた。

 

「あれだけ美味しいパンを作ったヤツらダ。このパンも相当旨いに違いないヨ」

 

そう考え、スパノはパンを一口かじる。次の瞬間、彼はあまりのしょっぱさにパンを吐き出した。

 

「なんだこの塩パン!?めちゃくちゃしょっぺぇじゃね…」

 

スパノはハッとする。

 

「何ダ?何でこいつはこのことを知っていル?いや、()()()()()()以外考えられないヨ!」

 

スパノの思考が巡るその刹那、ゴーギャンのアームハンマーが彼に振り落とされようとしていた。スパノは慌てて両腕でガードする。腕と腕のぶつかりで生じた衝撃が空き家の空スペースに轟いた。

 

「すごい力だネ。驚いたヨ。お前、転生者カ?」

 

 攻撃を防御しながらスパノが尋ねる。

 

「いいや、違う…」

 

スパノの防御を崩そうと自身の腕に力を入れながらゴーギャンが答える。

 

「へぇ…そうか…ヨッ!」

 

スパノは腕を開いて攻撃をはじきつつ後ろに下がる。

 

「今日がお前の命日だ…スパノ=ヤナティン、いや素矢野(すやの)多賀瑠(たがる)!」

 

「お前…その名ヲ…」

 

 ゴーギャンの大声にスパノがつぶやく。

 

「お前はスーパー…で周りから避けられていた陰キャ…だったそうだな。自分にとっての邪魔者に恥をかかせようと……グッ……」

 

 それ以上ゴーギャンは言葉が出なかった。突然激しい頭痛と吐き気に襲われ、その場にうずくまる。

 

「ふぅ…一瞬ヒヤリとしたネ。『スーパー』、『陰キャ』…どれもこの世界には無い言葉ダ。何で転生者でも無いお前がそんなことを知っているのカ」

 

スパノがゴーギャンに詰め寄る。

 

「答えは簡単ダ。()()()()()()()()()()ナ!?俺の転生前を知っているのはマウントールとアシバロンだけダ!」

 

スパノは叫んだ。

 

 

 

 

 

 スパノは以前、二人に自分の過去を話したことがあった。マウントールは普通に聞いてくれたのだが、アシバロンには

 

「馬鹿じゃねぇの?悪事を行うときに監視カメラを考えない馬鹿は初めて見たぞ」

 

と嘲笑されてしまった。それ以降、スパノは自分の転生前のことを他人に話さなくなった。

 

 

 

 

 

「マウントールは味方殺しを何より嫌ウ。()()()()()()()()()()()()()ダ。だから俺に手をかけるならアシバロンしかいないのサ。お前はアシバロンの手下だナ?」

 

スパノは質問を重ねる。

 

「アシバロンは何を考えていル?ルイを殺したのもヤツなのカ?」

 

 ゴーギャンは声を振り絞った。

 

「なぜ…なぜ…託児所の…皆を…殺した……?」

 

「ほう、お前あの託児所の関係者カ」

 

スパノが答えた。

 

「なぜ殺したのか、理由は二つダ。一つ目は俺の能力の応用性を確かめるため、もう一つは感謝されながら生きる俺は俺じゃ無いからダ!」

 

「…感謝?」

 

 ゴーギャンは苦しみながら言った。

 

「お前に説明しても分からんだろうが教えてやル。お前が気持ちよく俺の質問に答えられるようにナ。あの日まで俺は魔人と戦う日々を送り、魔人に対してだけ能力を使っていタ。そうすると皆が俺に感謝してくるんだヨ。『ありがとうございます、これで魔人の脅威に怯えず暮らせます』ってナ!俺は他人に感謝されるのが嫌いなんダ!最初は我慢していたが、続くとだんだん『感謝される自分なんて本当の自分じゃ無い』って思えてくるようになるんだヨ!」

 

スパノは大声で続けた。

 

「そんなある日、魔人討伐の後その辺をうろついていたら、あの託児所から楽しそうな声が聞こえてきてネ。俺はふと自分の能力を人に向けて使ってみようと思って、託児所に向けて『致死塩分量(デスディーリングソルト)』を発動したんだヨ!そしたら楽しそうな声が苦しみの声に変わってきてネ。気持ちよかったヨ。俺は『他人から感謝される人間』なんかじゃなくて『他人を苦しめる人間』なんだって改めて実感したんだヨ!!だから、『なんで託児所の皆を殺したのか』って質問については、たまたまだったとしか言えないネ」

 

「なん…だ…と…?」

 

「それからも定期的に人を殺したヨ。他人に感謝された分だけネ。そうしないと俺は俺じゃ無くなってしまうからサ。まあ幸い、皆には俺の能力を『魔族にとって毒となる物質を魔族の体内に生成する能力』だと伝えていたからルイみたいに面倒な掃除を行わずに済んだし、ルイみたいな残虐な男でも無いから、一人二人殺せば数日分の感謝の言葉は我慢できたヨ。さあ、次はお前が俺の質問に答える番だゾ。」

 

 クックックとスパノが笑った。ゴーギャンは口を開かなかった。




 スパノ=ヤナティンの発音はプロレスラーのスペル・デルフィンと同じでお願いします。

 スパノ=ヤナティンはどうやら、質問に質問で返されたときはちゃんと答えてあげる人間みたいです。

 前話「パン祭り」にほんの少し加筆しました。
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