異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン)   作:3S曹長

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(ピローン)
m○iji

『何を隠そう私は、多田野○人の筋肉です!」
※声/多田野○人の筋肉

材料屋のネズミ「何だこれはたまげたなぁ」


第三章 「Mr.土方」襲来 その4 「ウサギ娘」

 翌日の朝、新聞には大きな文字で衝撃的な内容が報道されていた。

 

「訃報 「ベストナイン」メンバー ルイ、スパノ 魔人との戦いで戦死」

 

 見出しの通り、ギルド「神の反逆者」の最高幹部「ベストナイン」のメンバーであるルイ=ジュクシスキーとスパノ=ヤナティンが魔人との戦いで戦死したことを伝える内容だった。二人は日常的だった過剰な油断が原因となり魔人との戦いで命を落としたこと、二人を殺した魔人は他の転生者が仕留めたこと、火葬はすでに()り行われており後日告別式が王都で開かれること等が書かれていた。

 

「なるほど、奴らが決めた落としどころは『魔人との戦いでの戦死』というわけか。本当は誰にどのように殺されたかも分からないんだろうが、二人を行方不明のままにするわけにはいかないからな」

 

 魔女が新聞を読みながら言う。この世界にはパソコンはもちろんテレビも存在しておらず、人々が情報を得る主な手段は紙媒体である。記事の書かれた新聞は、「ベストナイン」を始めとした転生者の活躍を毎日のように報じることで購買層を急速に伸ばしている「サクワ新聞」で、リュートもよく読んでいた。

 

「今頃世間は大騒ぎだろうな」

 

 リュートは以前の自分を思い返しながら言う。毎日のようにサクワ新聞を読み、いつか転生者と一緒に魔人討伐をすることを夢見ていた自分。少し前のはずなのに、なぜだか遠い昔のように思われた。

 

「どうした?今になって自分のしたことの重大さに気付いたのか?」

 

魔女は新聞からリュートへと目線を移す。

 

「深刻に考えることはないさ。まだ転生者は沢山いるんだから二人くらい減っても問題ない、という感じで軽く考えた方が良いと思うぞ?これからのためにもな」

 

「…ああ、そうだな」

 

 リュートは魔女に賛同した。魔女の言う考え方が正しいのかはさておき、これから更に「ベストナイン」の数を減らすのだから尻込みしてはいられない。ならば、魔女の考え方が今の最善であるように彼には感じられた。

 

 

 

 

 

 「テンスレ」メンバーは普段魔人討伐でお金を稼いでいるが、魔人討伐には四人で向かうのが基本で、他のメンバーは修行をするなり買い物をするなり別行動を取っていた。

 メルクリオとリン、魔女の三人は魔人討伐に向かわない。動けないメルクリオは言わずもがな、リンは食事の準備や洗濯等の家事をしながらメルクリオの看病に付きっきりだった。魔女が魔人討伐に行かないのは、彼女には人間を殺すことが出来ないのと同じく魔人を殺すことも出来ないからである。彼女は主に人々を殺す転生者の情報を集めたり、これからの計画を練ったりしていた。

 

 この日、リュートは魔人討伐のために森へと出向いていた。一緒のメンバーはポセイドラ、ケイル、ラーシャの三人だった。リュートはこれまで、男性陣としか魔人討伐をしたことが無かったので、女性の戦闘要員二人と一緒なのはこの日が初めてだった。

 魔族は人間には無い独特の魔力を持ち、常に体から放出している。その魔族特有の魔力を探知する探知機が、魔人討伐のため、自己防衛のために売られていた。探知機に付いている針の向きと振れ幅で、魔人の大凡(おおよそ)の位置や勢力が分かるのだ。この探知機は魔力の高い人が持つと精度が上がる。今はケイルが探知機を持っていた。

 

「この先に魔族の反応がありますが、大分歩かなければなりませんね」

 

 ケイルが言う。

 

「そう言えば、リュートも剣使いだったな」

 

 ラーシャが歩きながら尋ねる。

 

「はい。結構腕には自信があったんですけど、レースバーンさんやポセイドラさんのほうが圧倒的に上手でした。二人の剣術指南を受けてるんですけど、俺なんかまだまだだったんだなって痛感しました」

 

リュートが答える。

 

「へぇ~。ポセイドラさん、リュートくんの剣術修行に付き合ってあげてるんですねぇ」

 

ケイルが意外そうな声を上げる。

 

「そうだ」

 

ポセイドラの答えは短かった。

 

「良いところもあるんじゃないですか」

 

ケイルが言う。素直に褒めているようにもからかっているようにも聞こえる。

 

「別に普通だ」

 

ポセイドラの答えはやはり短かった。照れ隠しでは無く、話すのが面倒だ、というニュアンスが感じ取れた。

 

「もう、やっぱり冷たいんですね」

 

ケイルが呆れたように言う。二人の会話を続けると空気が悪くなると判断したのか、ラーシャがリュートに話しかける。

 

「だがリュート、あの二人に見てもらっているのは心強いんじゃないのか?」

 

「はい!自分がより強くなってる実感が湧いてくるので心強いです」

 

「…こいつの腕は悪くない」

 

ポセイドラがボソリと短い言葉を口にした。

 

 四人が魔族の反応に向かって歩いていると、何か変な声が聞こえてきたようだった。耳を澄ませると、それは誰かのすすり泣く声だった。誰かが怪我をしているのだろうか。彼らは泣き声のする方へと歩を進めた。声は茂みの奥にある木の下の方から聞こえた。

 声のする方向まで十歩程近づいたその時、すすり泣きが大声に変わった。

 

「ひえええええぇぇぇん!!だ、誰ですかぁ!!?」

 

リュート以外の三人が反射的に身構える。しかしリュートは

 

「ま、待ってくれ!俺たちは泣き声がするから近づいたんだ!怪しい者じゃない!!」

 

と大声を上げた。

 

「ふ、ふええ?そうなんですかぁ?」

 

「ああ、決して危害は加えないよ」

 

そう言ってリュートは声の主に近づく。他の三人もリュートの後を追った。

 声の主は案の定、木の(ふもと)でうずくまって泣いていたようだ。その姿を見てリュート達は驚いた。声の主は()()()()()()の少女だった。年齢は十代半ばくらいだろうか。とても可愛い顔をしていた。リディアを上回る可愛さにリュートはドキッとしてしまう。

 

「俺はリュート。魔人討伐のために森に来ていたんだけど君の泣き声が聞こえて、ここに来たんだ」

 

 リュートは平静を装いながら自己紹介する。

 

「わ、わたしはバニーラ。バニーラ=チョコミクスですぅ」

 

バニーラと名乗る少女も名前を名乗った。

 

「気をつけて下さいね、リュートくん」

 

バニーラの名前を聞いたケイルがリュートに耳打ちする。

 

「この子は転生者ですよ」

 

 彼女がバニーラを転生者だと断言した理由は二つある。一つは彼女の名前に苗字があったことである。名前と苗字があるのは転生者の特徴だ。

 もう一つは彼女が()()だったからだ。この世界に人間と同レベルの知能を持つ種族は三種だけだ。人間、魔人、そして獣人である。しかし()()()()()()()()()()()()()()に限定すれば人間と魔人だけである。獣人は元はこの世界に存在しない種族、つまり転生者だけだった。

 

「大丈夫です」

 

リュートはケイルに小声で返す。他の二人も警戒を崩さない中で、リュートがバニーラに話しかける。

 

「どうして泣いていたんだ?良ければ話してくれないか?」

 

「ふ…ふえぇ…。わ、わたしも魔人討伐に仲間と一緒に来てたんですけどぉ、他の足音が聞こえて様子を見に行ったら、皆とはぐれちゃいましたあぁ…」

 

バニーラが泣きながら答える。

 

「その足音ってもしかして俺達のなんじゃないか?」

 

「そ、そうみたいですぅ…。びええええぇぇぇん!!心配(じんばい)じで(ぞん)じまじだぁぁ!!」

 

彼女はなおも泣き続ける。リュートは彼女を放っておけなくなった。

 

「も、もし良かったら一緒に仲間を探してあげようか?」

 

「ふ、ふえぇ?ほ、本当ですかぁ?」

 

「ああ、君が良いんなら」

 

「おい、大丈夫なのか?」

 

 二人の会話を聞いたポセイドラが思わずリュートに問いかける。

 

「多分大丈夫だと思います。彼女、何だか無害そうですし」

 

リュートは正直に自分の考えを伝える。

 

「ええ、私も大丈夫だと思いますよ」

 

ケイルも同意する。最も彼女の場合、「こんな間抜けそうな子が危ない転生者とは思えない」と思ってのことだったが。

 

「も、もしよろしいんでしたら、よ、よろしくお願いしますぅ!」

 

 バニーラが立ち上がってお辞儀する。その姿を見てリュートはまた驚いた。でかい。今まではしゃがんでいて分からなかったが、女性の身長にしては余りにも大きかった。人の身長を超えるほどでは無かったが、少なくともリュートは彼女以上に背の高い女性を見たことがなかった。中肉の高身長、へそから下の下半身と胸部と肘から先の腕が白い毛に(おお)われていて、それ以外は人間の皮膚。手は人間と同じ大きさの兎の手だった。胸は魔女以上の大きさだったが身長の高さ(ゆえ)に普通の大きさに思える。瞳の色は赤く、白いロングヘアーの上に長い白のウサ耳が生えている。

 

「あ、ああ。よろしくね」

 

 こうしてリュート達は、高身長ウサギ娘の仲間を見つけるために歩き出した。




 新キャラ登場回でした。本当は一話完結にしたかったんですけど無理でした。

 バニーラも転生者なので、元ネタはベストナインの元ネタと同じ特徴を持ちます。ただ、ベストナインの元ネタと比べると、深井戸指数はほぼ無いに等しいですね、個人的に。普通にほっこりする内容だからでしょうか。ただその分見かける頻度も圧倒的に少ない。ドウシテ…ドウシテ…。
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