異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン) 作:3S曹長
アシバロンは米沢が言う場所に「ワープゲート」を開く。そこは以前ルイが滅ぼした村であったために場所を知っていた。ベストナインのメンバーを二人も殺した相手がどんなものなのか、彼は若干の期待を抱きつつゲートをくぐる。
「ここか?祭りの場所は…」
ゲートの先は荒廃した村の空き地。目の前には剣術修行の最中と見られる男が三人。オレンジ髪の男、左半分がえんじ色で右半分が深緑色という特徴的な服を着た黒髪の男、そしてもう一人は…
「あいつか…」
アシバロンは
「なっ…」
リュート達の方は動揺を隠せない。緑の十字が付いたクリーム色のヘルメットに薄いグレーの上下ジャンパー、上着には黄色の夜光反射帯。ベストナインの序列2、アシバロン=ボーナスに間違いなかった。しかも彼はポセイドラの復讐相手でもある。
高まる緊張感の中、レースバーンがポセイドラを片手で制止しつつ言う。
「これはこれは、『Mr.土方』アシバロン=ボーナス様。このような
何も知らない人から見れば、この状況は単にアシバロンが荒廃した村に来ただけである。リュート達の討伐に来たとは限らない。
「やめとけ!やめとけ!貴様らだろう?ルイとスパノを殺したのは。こっちは確かな情報を元に足を運んでいるからな。しらばっくれても無駄だ」
アシバロンはこう答え、リュートに顔を向ける。
「お前がリュートだな?」
リュートは息を呑む。ルイやスパノを殺したことも、自分のこともバレている。相手はどこまで知っているのか、困惑で真っ白になりそうな頭を必死で正気の状態に保つ。
「おい…」
「ああ、抵抗は無駄なようだな」
ポセイドラとレースバーンが小声で言葉を交わす。相手がどこまで知っているのか分からない。無意味に情報を与えてしまう発言は避けたい。
「リュート、こいつが知っているのは恐らくお前だけだ。分かるな?」
ポセイドラの言葉を耳にし、リュートは考えを巡らせる。
「ポセイドラさんは今、殺意を抑えて俺に忠告したんだ。無闇に相手に情報は与えられない」
三人の会話を聞き、アシバロンが口を開く。
「賢明だな。俺がある程度の情報を持っていることを知り、これ以上の余計な情報を与えないようにしているな?ならば、逆にこちらの情報を教えてやろうか」
そう言って彼は言葉を続ける。
「アシバロン=ボーナス。ギルド『神の反逆者』幹部『ベストナイン』の序列2。通り名は『Mr.土方』。もう一つの顔は建築業者『アシバロン建設』の
唐突な敵の自己紹介に対し、三人は動かない。相手がわざと無防備な状態をさらしているのは明白だ。不用意な攻撃は危険すぎる。アシバロンが「言葉を介して発動する能力」を持っていないことは知っている。この自己紹介自体に危険性は無い。彼の能力も知っていた。むしろ今は相手の思惑を知りたかった。
だが、相手の次の言葉には動揺せずにはいられなかった。
「転生前の本名は、『
リュートは動揺を隠せなくなった。彼がいきなり転生前の情報をバラし始めたのはなぜか。考えられる理由は一つだ。
「どうしたリュート?随分と動揺しているじゃあないか。言っておくが、この程度の転生前の情報はすでにベストナインのメンバーには言ってあるぞ。なのにお前は動揺している。なぜか。『自分が相手の転生前の情報を握っていることを、相手は知らないと思い込んでいたから』だ。いや、こうも考えられるな。『向こうから転生前の情報を語られるとマズいから』かもしれんな」
リュートの動揺が激しくなる。相手は自分の様子を見て、更に情報を引き出そうとしている。平静を保とうにも、予想外の状況や相手の与えるプレッシャーが邪魔をする。そんな彼の様子を見たレースバーンが相手に言葉を返す。
「随分と親切だな!
「目的?彼の反応を見て情報を引き出すことだよ」
「そうか、ならば邪推だな。彼は単に『相手が急に転生前の情報を話し始めたことに驚いているだけ』だ。それに、俺が聞きたいのはそっちじゃない!何しにここに来たのか、を聞いているんだ」
「随分と必死だな。なるほど、俺の本来の目的か。言わずとも分かるんじゃないか?」
アシバロンはハッキリと言葉を口にする。
「『ベストナイン』を殺して回る不届き者を始末するためだ」
「そうか!ならば!こちらも簡単にやられるつもりは無い!!」
レースバーンはそう言い放ち、右手を上空にかざす。手の平に大きな赤い魔法陣が浮かぶ。
「無駄話をしてくれて助かったぞ!お陰で大技を放つ準備は万端だ!『エンペラーファイアボール』!!」
魔法陣から巨大な
避ける隙が無かったのか、アシバロンは火球をモロに食らってしまう。巨大な火柱が上がり、アシバロンの姿は完全に飲み込まれた。
「いくら転生者でも無事では済まないだろう!…あっ!すまない!!」
隣にいる仲間の復讐相手に思わず手を出してしまった。レースバーンはポセイドラに勢いよく頭を下げる。
「構わない。このくらいではヤツは死なないだろう。それに、誰の復讐相手かなど関係なく
「
「そんなことは言ってられない」
二人は言葉を交わしつつも臨戦状態を解かない。いつ火柱から相手が出てくるか分からない。リュートも二人に習い、火柱に剣を向け体制を整える。
案の定、火柱からアシバロンが出てくる。ゆっくりと歩きながら。驚くことに
「ば、馬鹿なっ!いくら転生者でも無傷なんてあり得ない!」
「ふん、良い火力だな。確かに
困惑するレースバーンに対し、アシバロンが言う。
「俺が転生時に神に願ったモノ。それは『建設作業で死なない体』だ。建設現場では材料の加工、溶接に火属性魔法を使う。
高らかに宣言するアシバロンに対し、今度はポセイドラが魔法を放つ。先程のレースバーンのように上空にかざした右手に、大きな青い魔法陣が浮かぶ。
「『エンペラースピニングウォーター』」
現れたのは巨大な渦潮。それを見たアシバロンは地を蹴り、左に跳ぶ。ポセイドラが投げた渦潮はアシバロンに当たらず、未だに燃え盛る火柱に直撃する。
「どこを狙っている」
そう言い放つアシバロンに対し、レースバーンが斬りかかる。
「『エンチャントファイア』!」
単なる剣では無い、火属性魔法が付与された剣。そんなレースバーンの剣をアシバロンはなんと
「言ったはずだぞ。火属性魔法は俺には効かん。更に『建設現場で死なない体』を追求した俺の肉体は、そこらの刃物では傷が付かない。全て無駄だ」
睨むレースバーンに対しアシバロンが吐き捨てる。片手がふさがれているこの好機をリュートは逃さなかった。
「はあああああああ!!」
アシバロンに斬りかかるリュート。アシバロンはリュートの剣は手で受け止めようとせず、剣を振り上げたリュートの腹を左足で蹴りつけた。彼のキックをモロに受けたリュートは大きく吹っ飛ばされ、地下室とは別の家の残骸に直撃する。
「その剣はルイのものだな?流石にソレは手で受け止められんな。だが、使い手が
強い衝撃で動けないリュートを
「さっき、『どこを狙っている』と言っていたな。答えは火柱だ。あんなのがあっては本領が発揮できないからな」
ポセイドラだった。彼は深い藍色の刀をアシバロンに向けて魔法を唱える。
「『エンチャントウォーター』!」
アシバロンの特殊能力「
巨大な渦潮を放つ魔法「エンペラースピニングウォーター」は、本当は「エンペラー+渦潮の英語」にしようと思ったのですが、渦潮の英訳が聞いたことの無い単語だったので、分かりやすさを追求しました。ダサくなってしまったけど許して。やっぱり分かりやすさがナンバーワン!
そう言えば、原作のルイが最初のカラーページで放っていた魔法も「ウィンドウォール」でしたね。やっぱり分かりやすさがナンバーワン!
ところで、原作のルイの能力の一つに「詠唱無しで魔法を放てる能力」があったのに、どうして彼はカラーページで詠唱をして魔法を放っているんですか?