異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン) 作:3S曹長
これからも新事実が判明次第、人物紹介を更新していきます。
アシバロンから逃走した後、テンスレの皆と合流したリュートは新たな拠点となる「リンの実家の別荘」に向かっていた。
「でも知りませんでした。リンさんの家がお金持ちだったなんて…」
歩きながらリュートが言う。確かに彼女は「~ですわ」という話し方をしていたが、まさか本当に金持ちの令嬢だったとは思わなかった。
「まぁ確かにそうだったんですけど~、もう
「えっ、そうなんですか!?」
「そこまで話すのか?」
「大丈夫ですわポセイドラさん、恥ずかしいとは思ってませんし~。まあだからといって
そう言いながら、リンは自分の実家との関係について話し始めた。
「わたしは結構大きい村の領主の長女でしたわ。弟が三人、妹が一人いましたわ。お金持ちだったのはホントなんですけど、それだけに家にいたときのわたしはとても縛られてました。生活の作法もみっちりしごかれましたし、馬術とか魔法とか、色々お稽古もさせられました。『将来どこに嫁に出しても恥ずかしくない女性に育てるのだ』なんてお父様達は
リンは何てことのない思い出を語るかのように話す。
「わたしはそんな縛られた生活が嫌になって、反抗的な態度をとるようになりました。例えば本当なら使用人が作るはずの、わたしの食事を勝手に作ったり、遠くの村に勝手に出かけたり…色々ですわ。そしたらお父様、『以前趣味の狩りで使っていた別荘をくれてやるから家から出て行け』って私を追い出したんですぅ」
「そ、そうだったんですか…」
リュートはどう反応したら良いのか分からず、同情したような曖昧な返しをした。ただ一つだけ彼は確信していた。彼女が料理を始めたのは正解だった。あんなにすごい料理の腕前が世に出ないなんて世界の損失だ。
「そんなに深刻に思わないでね?わたしは今の自由に行動できるわたしに満足しているのですわ」
リンは笑顔でそう言った。
そんな話をしていると、目の前に目的の別荘が見えてきた。
「え、大きくないですか?」
森の中に
「リンさんのお父さんとか、帰ってくるんじゃ無いんですか?」
「大丈夫ですわ~。『ここら辺の狩りにはもう飽きた』って言ってましたし、実際にここにお父様が来たのを見たことありませんし~」
リンの答えを聞き、新たな疑問が浮かんだリュートは今度は魔女に尋ねる。
「こんなすごい場所があるなら、なんで地下室なんかにいたんだ?」
「いやいや、単純に目立つじゃあないか」
魔女は「お前は何を言ってるんだ」とでも言いたげに答えた。
「こんな目立つような場所で大丈夫なのか?」
「リンが貰った別荘で一番小さいのがここなんだよ」
「えぇ…、他にも別荘あるんですか…?」
「はい~、ここを含めて三件ほど」
リュートは呆れてしまった。「勘当した、なんて言いながら本当は滅茶苦茶過保護なんじゃないか?」と思ったが口にはしなかった
「それに対策はすでに考えてある。虫は大丈夫だな?」
魔女が皆に尋ねる。道中も全員、自分の周りを飛ぶ虫がいないか細心の注意を払っていた。結果として、怪しい動きをする虫はいなかった。
「大丈夫なようだな。隠れ家に入った後は、窓を閉め、カーテンを閉じろ。カーテンが無い窓は何か別の布を貼り付けるんだ。その後は、隠れ家の壁や天井に穴が空いてないか徹底的に調べろ。見つけたら即
魔女の指示を聞き、リュートは新たな隠れ家に入る。ドアの先には玄関と一体になった大広間。右手にはキッチン、左手には風呂場やトイレに続く扉と、二階と地下に続く階段があった。長い間使用されていないというのは本当だったようで、あちこちに
「穴を塞ぐ木の板や布は二階の物置にある。それから、地下室の通気口も塞ぐんだ。ただし、そこを塞ぐのは簡易的にな」
以前から地下室が使えなくなった時のために視察をしていたようで、魔女はテキパキと皆に指示を下す。
二回にはトイレの他に部屋が四つあり、一つが物置だった。リュートは物置から木の板を持ってきて地下室に降りる。地下室は敷地の半分ほどの広さをした四角い部屋だった。がらんどうで、石の壁に囲まれた殺風景な部屋だった。四方の壁に一つずつ通気口を見つけ、木の板で簡易的に塞ぐ。これで虫は入って来られない。
その後は穴を見つける作業だ。一つでもミスがあれば全てが台無しだ。別荘自体はしっかり作られたものだったので、塞ぐべき穴はほとんど無かったのだが、そのことが逆に不安を駆り立て、余計に注意力を使うことになった。穴を塞いだ後は、快適に過ごすために家中の掃除が始まった。
リュートとポセイドラがアシバロン戦で受けたダメージは、テンスレメンバーを探す前に魔女の回復魔法を受けていたため平気だった。しかし、あの激闘からの必死の捜索、新しい拠点の整備と続いてリュートはクタクタになった。
夕食後、これからの活動について話し合いが行われた。と言っても、これまでに魔女が色々と思案していたらしく、その末に導き出された作戦を聞くというものだったが。
「さて、
魔女が説明を始めた。
「新聞ではルイとスパノは魔族との戦いで死んだと報道された。ベストナインのメンバーがどこの誰とも分からない馬の骨に殺された、などという
魔女の推論を聞き、ポセイドラが口を開く。
「魔女、お前は米沢がこんな能力を持っていることを知っていたのか?」
「いや、そこまでは知らなかったよ。だが、他のメンバーにここまでの情報収集能力を持っているヤツはいない。加えてお前が殺したあの虫…。米沢の能力だと断言するには十分だろう?」
「なるほどな」
「そしてその黒い虫についてだがケイル、何か分かったんだな?」
「はい」
ケイルは虫の死骸を手に入れてからこれまで、入念に死骸を調べていた。
「黒い虫は大部分の特徴が
「カナメクロムグリ?」
「草木や動物の死骸を食べる雑食性の害虫です。薬の材料にもなる
ケイルが答える。
「ただ、普通のカナメクロムグリには無い特徴が二点ありました。一つは牙が異様に発達している点、もう一つは
「それを踏まえてですが、
「なるほどな。つまり一週間の耐久戦というわけだ」
ケイルの発言を受け、魔女は皆に向かって話し始める。
「米沢がどうやって情報を収集しているのか分からない。最悪なのは、
魔女はまず、最悪のパターンとそれに
「そして米沢が
こうして、一週間の籠城戦が始まった。いつ来るかも分からない敵襲に備え続ける日々。常に武器を構えて戦闘の準備をしていなければならず、安眠すら許されない。カーテンを開けて外の様子を見ることすら出来ない苦しい日々だった。この間、ケイルと魔女は二階の一部屋に
米沢が虫から情報を収集するためには、情報を持った虫が米沢の元へ帰還しなければならない。彼が以前行っていた「自らの元へ飛んできた虫を食べる行為」こそが、彼が情報収集を済ませるのに必要な行為だったのである。
そしてこの縛りの存在がリュート達にとって有利に働くことになった。一週間後、米沢は彼らの位置を把握出来なくなるからだ。
ごめん、やっぱ楽しみにしないで。多分ご都合アイテムでがっかりするから。
あと次回は話が進みます。