異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン)   作:3S曹長

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 この前、母親にタンショ=スモッツ(ボツ転生者その1、第三章6話「エンチャントソード」の前書き参照)の元ネタ作品を勧められました。
 母は私がこの作品を書いていることを知りません。こんな偶然もあるんだなと思いました。

 そしてこの機に、母親がこの作品のベストナインの元ネタをどれだけ知っているか調査してみました。
 結果、アルミダ=ザラの元ネタしか知らないと言われました。アシバロンとかスパノとか私の方には滅茶苦茶出てくるので絶対知っているだろうと思っていたのに、知らないと言われました。
 元ネタの出現率には個人差があるんですね。


第四章 離反 その11 「詰問」

 立花亭が手放したルイの剣をバニーラが奪取した。形勢はバニーラに有利となる。

 立花亭は焦っていた。一刻も早くリュートを無力化したい。しかしバニーラが邪魔をしてくる。本来ならば楽勝のハズなのに、リュートから足を離せないせいで押されている。

 否、リュートは彼女の「ラベリング」で弱体化しているので、足を離してもすぐに捕まえられる。しかし、今の彼女にはソレが出来ない。足を離せばリュートに返り討ちにされてしまう、という恐怖が拭(ぬぐ)えないからだ。

 焦りは正常な思考を困難にする。立花亭はどうすれば現在の危機を逃れられるのかを必死で考える。本来ならばバ(・)ニ(・)ー(・)ラ(・)に(・)勝(・)つ(・)た(・)め(・)に(・)深(・)い(・)こ(・)と(・)を(・)考(・)え(・)る(・)必(・)要(・)は(・)無(・)い(・)はずなのに。

 

「『決めつけ講談師』様、早くリュートさんから離れて下さい…」

 

両手に武器を持ったバニーラが催促してくる。立花亭がバ(・)ニ(・)ー(・)ラ(・)に(・)勝(・)つ(・)最(・)も(・)簡(・)単(・)な(・)手(・)段(・)を思いついたのは、その数秒後だった。どうしてこんな簡単なことに気付けなかったのか。彼女は苦笑しながら口を開く。

 

「分かりました…、彼から離れましょう。ですから貴女も武器を下ろしてください」

 

そして次の言葉を大声で口にする。

 

「バ(・)ニ(・)ー(・)ラ(・)さ(・)ん(・)が(・)私(・)に(・)逆(・)ら(・)う(・)な(・)ん(・)て(・)心(・)情(・)的(・)に(・)不(・)可(・)能(・)な(・)ん(・)で(・)す(・)か(・)ら(・)!!」

 

 その瞬間、バニーラは立花亭に向けていた武器を下ろしてしまう。「ラベリング」が発動し、バニーラが立花亭に反逆することが心情的に不可能になってしまったのだ。「リュートを助けたい」という強い気持ちで再び立ち上がろうとしても、「自分が立花亭に逆らってはいけない」という更に強い気持ちが湧いてきて行動に移せないのだ。

 一方で、立花亭も一つミスをしたことに気付く。バニーラは現在、自分から離れた場所にいる。ルイの剣を取り返そうにも、リュートを踏みながらでは手が届かない。だがその問題に関しても特に問題は無い。バ(・)ニ(・)ー(・)ラ(・)は(・)立(・)花(・)亭(・)に(・)逆(・)ら(・)え(・)な(・)い(・)のだから。

 

「さあバニーラさん。その剣を私に返して下さい」

 

「っ!」

 

 バニーラの足が、立花亭に向かってゆっくり歩き始めようとする。

 

「だっ、ダメですぅ!この剣を渡したら…リュートさんが、リュートさんがっ!!」

 

心の中で必死に抵抗するバニーラ。しかし足は一歩ずつ立花亭に進んでいく。それでも今の自分が諦めたら、あんなに優しくしてくれたリュートを傷つけてしまう。そんなことは絶対にしたくない。その一心でなおも抵抗を続ける。

 立花亭にとってもバニーラがなかなか剣を渡そうとしないのは想定外だった。一体どれだけ抵抗すれば、ここまで命令の実行に時間がかかるのか。ダメ押しにもう一度命令してみる。

 

「何をしてるんですか!早く私に剣を…」

 

「やめろぉ!!」

 

 立花亭の命令を遮(さえぎ)ったのは、彼女が踏みつけているリュートだった。

 

「立花亭座個泥(たちばなていざこでい)!どうして、村の皆を見殺しにしたんだ!」

 

立花亭に踏みつけられながら、リュートは自分が抱いていた疑問について必死で問いかける。

 

「な、何を…。私が貴方の村の…?」

 

「俺の村にいた皆はルイ=ジュクシスキーに殺された!お前はヤツと一緒にいたはずだ!どうして、どうして皆を見殺しにしたんだ!!」

 

「っ!!」

 

 立花亭は凍り付く。スパノの死体を確認した日に皆の前で、ルイが滅ぼした村の生き残りが二人を殺したのではないか、という自分の推測を口にした。その推測は当たっていたのだ。

 

「やはり貴方はあの時の…、ルイさんが滅ぼした村の生き残りだったんですね!?」

 

「質問を質問で返すなあーっ!!」

 

「くっ!」

 

 不思議な光景だった。現在の状況は立花亭が圧倒的に優勢なのに、当人はリュートの剣幕に押されている。彼女の弱った精神が、リュートのことを必要以上に驚異的な存在として認識しているのだ。

 

「仕方…無いじゃないですか…」

 

 立花亭は苦しそうに口を開く。

 

「仕方ないじゃないですかっ!!ルイさんは元々人を殺すことを何とも思っていないクズだったんですから!私が止めたところで聞くわけ無いじゃないですか!!」

 

「そうか…そうだったんだな…」

 

 立花亭の叫びを聞いたリュートが言葉を返す。

 

「ルイは人殺しを止めない人間だからしょうが無いと!だから自分が止めても意味が無いと!そう決めつけて!そうラ(・)ベ(・)リ(・)ン(・)グ(・)し(・)て(・)!!行動にすら移そうとしなかったんだな!!」

 

「それの何がいけないんですかっ!?ルイさんの通り名を変えてしまった日に、私はマウントールさんに注意を受けたんです!『今後ルイに危害を加えてはならない』と!」

 

「マウントールは虐殺の阻止さえも許さない男なのか?」

 

「くっ…」

 

 事実、マウントールはベストナインの虐殺を黙認している状態だ。彼が味方殺しを禁じている以上、虐殺の阻止さえ許さない可能性はある。だが、ル(・)イ(・)を(・)止(・)め(・)る(・)た(・)め(・)な(・)ら(・)ば(・)話(・)は(・)違(・)っ(・)て(・)く(・)る(・)。マウントールはルイを毛嫌いしている。ルイの虐殺の阻止ならば、マウントールは不問にしたに違いない。そう考えたからこそ、立花亭は言葉に詰まったのだ。

 

「私が…私がラベリングをするのは私(・)自(・)身(・)を(・)守(・)る(・)た(・)め(・)で(・)す(・)!先に決めつけなければ…、先に決めつけなければ被害を受けるのは私なんですから!自分を守るためにラベリングすることの何が行けないんですか!?」

 

「でもお(・)前(・)が(・)そ(・)こ(・)で(・)ラ(・)ベ(・)リ(・)ン(・)グ(・)し(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)皆(・)助(・)か(・)っ(・)た(・)か(・)も(・)し(・)れ(・)な(・)い(・)!!」

 

「!!!!」

 

 リュートの必死な叫びは、彼女に何らかの精神的ダメージを与えようと発せられたモノではない。彼はただ、村が滅ぼされてから今日までの間、ずっと立花亭にぶつけたくて仕方なかった本音をぶつけただけに過ぎない。

 しかし彼のその叫びが、立(・)花(・)亭(・)の(・)心(・)に(・)大(・)き(・)な(・)ダ(・)メ(・)ー(・)ジ(・)を(・)負(・)わ(・)せ(・)て(・)い(・)た(・)。立花亭がルイのことを「クズだから止めても仕方ない」とラベリングして放っておかなければ人々は助かったかもしれない。そんな彼の本音は彼女に大きな衝撃をもたらした。

 それもそのはず、彼女は転生前に他(・)人(・)の(・)ラ(・)ベ(・)リ(・)ン(・)グ(・)行(・)為(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)苦(・)し(・)め(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)か(・)ら(・)だ。

 

「あ…ああ…」

 

 立花亭の口から声が漏れ始める。

 

「ああああ…ああああああああああああ!!うああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

言葉にならない声が口から漏れる。耐えきれなくなり、その場にしゃがみ込んでしまう。

 その時、村の入口から女性の声が聞こえた。

 

「『決めつけ講談師』様ぁ!!一体どうなさったのですか!?」

 

声の主は、立花亭やバニーラと一緒に魔人討伐に出かけた四人の内の一人だ。立花亭からバニーラを探すよう命を受け、しばらく探索していたが見つからなかったので一度戻ってきたのだ。

 彼女が見たのは異様な光景だった。バニーラが武器を手にして立花亭に向かってきている。立花亭は見たことの無い男性を踏みつけながら、なにやら叫びを上げている。何が起こっているのかサッパリ分からないが、立花亭がピンチなことだけは分かった。自身の武器である槍を構えてリュート達に突進する。

 

「『決めつけ講談師』様!今助けに行きます!!」

 

「そうはさせませんよ?」

 

 別の女性の声がした。声の主が門の近くの茂みから姿を現す。

 

「な、何者だ!?」

 

茂みから出てきた女性はケイルだった。彼女は問いかけを無視して、右手に持った杖を掲げる。リュートのいる方向と槍を持った女性のいる方向を結ぶ線を描くように杖を振った。

 すると、リュートの懐(ふところ)から赤(・)い(・)何(・)か(・)が現われた。小さな羽を持った生き物のような不思議な形をしている。赤(・)い(・)何(・)か(・)は槍を持った女性に向かって一直線に向かってくる。女性は持っている槍でソレを突き刺そうとするが、ヒラリヒラリと躱(かわ)されてしまう。赤(・)い(・)何(・)か(・)は女性の顔に直撃した。

 バシャッと音を立て、液体と化した赤(・)い(・)何(・)か(・)が女性の顔を濡らす。

 

「なっ!何を…する…だァ……」

 

女性はその場にバタリと倒れてしまった。

 ケイルはリュートに向かって歩いていく。

 

「聞きたいことは聞けましたか?」

 

「ああっ、ケ…」

 

ケイルの名前を呼ぼうとしたのを必死に抑えるリュート。立花亭に彼女の名を知られるわけにはいかない。

 

「な…誰ですかっ?」

 

立花亭の問いかけにケイルが答える。

 

「秘密です。貴女に名前を知られては困りますから」

 

「くっ…」

 

「俺を…、追ってきてたんですか?」

 

「当然じゃないですか。リュート君が捕まったら大ピンチですから」

 

ニッコリと笑いながら答えるケイル。

 その時、ケイルの背後に「ワープゲート」が開く。男性と女性が一人ずつ出てくる。

 

「あ、あああ…」

 

立花亭が声を震わせる。女性の姿は彼(・)女(・)に(・)と(・)っ(・)て(・)も(・)う(・)一(・)つ(・)の(・)恐(・)怖(・)の(・)根(・)源(・)だった。

 次の瞬間、リュートの体に力が戻った。同時にバニーラも、自身を強制的に動かそうとする理不尽な力から解放された。

 

「間に合ったな」

 

 男の方、もといポセイドラが言った。女の方、もとい魔女がリュートを見下ろしながら言う。

 

「いつまでそうしている?もう立てるだろう。それともお前は、そうやって女性に踏まれるのが好きなのか?」

 

「そ、そんなわけ無いだろっ!」

 

 リュートは魔女の言葉に反発するかのように立ち上がる。立花亭の足は簡単にはねのけられた。

 

「あああ…はあああぁぁぁ…」

 

 立花亭は力なくその場にへたれこむ。その様子を見たケイルが一言。

 

「そこまでですよ、立花(たちばな) 凸(てとりす)さん」

 

 もはや立花亭座個泥(たちばなていざこでい)からは抵抗する力も気力も失われていた。




Q.何でマウントールはルイを嫌っているのに立花亭に対して「ルイに危害を加えてはならない」と命令したんだ?

A.マウントールはベストナインのリーダーなので、勝手にルイの通り名を変えてしまった立花亭に対して何の注意もしない、というのは他のメンバーの手前良くないと考えたからです。加えて彼女に対し、自分の能力を使う際には周りの影響を考えなければダメだ、ということも伝えたかったからです。事実この事件以降、立花亭は「ラベリング」の発動に関して一層注意をするようになりました。
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