異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン)   作:3S曹長

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 「異世界転生者殺し チートスレイヤー」という、ハーメルンのランキング上位にある小説の元ネタと比べると、決して人気があるとは言えない元ネタで始めたこの作品ですが、皆さんの支えもあってここまで来ることが出来ました。本当にありがとうございます。
 この先も物語がより楽しくなるよう奮闘して執筆して参りますので、よろしくお願いします。


第四章 離反 その12 「ラベリングの呪い」

 立花(たちばな) (てとりす)はとある一般家庭の長女として生まれた。父は普通のサラリーマン、母は専業主婦というごく一般的な家庭だったが、両親は極度のゲームマニアだった。社会生活に支障を(きた)すほどでは無かったが、二人の間に生まれた長女に(てとりす)と名付け、一つ下の弟には光宙(ぴかちゅう)と名付けてしまうほどにはゲームに毒されていた。

 小学三年生の頃、彼女はいじめを受けるようになった。

 

「あいつの名前、(てとりす)って変じゃねぇ?」

 

「変なの~」

 

「や~い、変人!」

 

 立花(たちばな)(てとりす)が人生で最初に苦痛を受けたラベリングは、「変な名前の人間はいじめても良い」という内容だった。弟の光宙(ぴかちゅう)は逆にクラスの人気者になっていた。

 

「俺はピカチュウだぞ!強いんだぞ!食らえボルテッカー!!」

 

変な名前なのは弟も一緒なのに、どうして自分だけいじめられるのか。(てとりす)は強い理不尽さを感じていた。

 いじめは次第にエスカレートしていき、彼女のいじめを止めるように先生が指導するための臨時ホームルームが開かれたほどだった。

 

「いいですか!もし彼女の名前を変だと感じたとしても、ソレを理由に人をいじめて良い訳ではありません!いえ、そもそも他の人をいじめるという行い自体が、人として最悪な行いです。上履きを隠される、机の中にかびたパンを入れられる、そういったことが自分に起きたとしたらどう思いますか?嫌な気持ちになるでしょう?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。当たり前のことです!」

 

小学三年生という純粋さがまだある時期だったこともあり、このホームルームを契機にして彼女への名前を理由にしたいじめは無くなった。

 

 その後、彼女は平穏な日々を過ごして中学校に入学した。中学校の学年メンバーが小学校時代とほとんど変わらなかったこともあり、名前を理由にしたいじめが再発することもなかった。

 しかし彼女はこの中学生活で再び理不尽なラベリングを受けることになる。

 彼女にはイチゴちゃん、ユキちゃんという小学校からの親友が二人いた。三人で大好きなアニメの話をしたりして、いつも一緒だった。彼女たちがいつも三人で行動していることは学年の皆が知っていた。

 そんな平穏な日常が続いていた中学一年の七月のある日、ユキちゃんが学校の階段で足を滑らせ、転げ落ちてしまう。命に別状は無かったが頸椎(けいつい)を損傷し、長期間の入院生活を余儀なくされた。その翌日に、今度はイチゴちゃんが下校途中で車にはねられる事故に遭った。こちらは全身の骨を折る重症を負い、長期入院をすることになった。

 親友二人がいなくなり、教室で孤立してしまった(てとりす)。彼女が孤立した原因は、親友以外の人とはあまり仲良くしていなかったから、というのも理由の一つだったが、それよりもっと大きな理由があった。

 

「イチゴとユキが怪我したとき、テトリスも一緒だったらしいよ?」

 

「マジ?アイツ死神なんじゃないの?」

 

「立花さんとは関わらないようにしようよ。私達も不幸になりたくないし」

 

 立花(たちばな)(てとりす)が人生で二番目に苦痛を受けたラベリングは、「彼女の側にいると不幸に見舞われるから近寄らない方が良い」という内容だった。

 彼女がこんな理不尽なラベリングを受けた背景には、二つの事実があった。一つは二人の事故現場に彼女がいたことだ。しかしこれに関しては、いつも三人で行動していたのだから当然と言えば当然である。もう一つは、同じ時期に弟の光宙(ぴかちゅう)も怪我をしていたことだ。だがこれに関しても、怪我をした理由は彼が友達と殴り合いの喧嘩をしたからである。怪我と言っても顔が()れた程度のモノであり、喧嘩相手も同じような怪我をしていた。にもかかわらず「(てとりす)の弟が怪我をした」という情報だけが知れ渡り、結果として彼女が周りに不幸をばらまく存在として扱われるようになったのだ。

 孤独な環境にいきなり落とされた(てとりす)。状況を良くしようと周りに働きかけることも出来ず、学校に行くことさえ嫌になっていった。

 そんな彼女に追い打ちをかけるかの如く、第三のラベリングが襲いかかった。その日日直だった彼女は日誌を書いていたために皆より遅くに下校することになった。階段を降りる途中で、クラスの男子数人が話し合っている声が聞こえた。下の踊り場にたむろして、中学生男子特有のいやらしい会話をしていた。

 

「タツ、この中でお前だけ彼女いねぇだろ?」

 

「うるせぇな!ほっとけよ!」

 

「そんなお前に良いこと教えてやるよ!お前が立花を(なぐさ)めてやるんだよ!」

 

「は?何でそんなことしなきゃならねぇんだよ?」

 

「アイツが今、周りに不幸をばらまく存在だって言われて孤立してるのは知ってんだろ?」

 

「そりゃあ、まぁ」

 

「そんな今のアイツをお前が慰めて見ろよ!コロッと落ちるぜぇ!」

 

「一人きりでいたところを救ってくれた白馬の王子様ってな!」

 

「それだけじゃないね。孤独から救って貰ったアイツは簡単に股を開くぜ!」

 

「なんせアイツにはタツしかいない状況だもんな!そりゃあ開きますわ!」

 

「マジでか!じゃあ明日辺りにでも試してみっかな~」

 

 (てとりす)は大きなショックを受けた。涙が止まらなかった。泣きながら走って階段を降りた。彼女の姿を見た男子連中が気まずそうにしていたのにも気付かなかった。

 立花(たちばな)(てとりす)が人生で三番目に苦痛を受けたラベリングは、「孤立したアイツを慰めれば簡単に落ちて簡単に股を開く」という内容だった。

 

 その日を境に彼女は不登校になり、部屋から出ることすらしなくなった。辛い現実から逃げるように、好きなアニメのかっこいい男性キャラと脳内恋愛をしていたが、心に空いた穴は塞がらない。どうして自分だけがこんな仕打ちを受けなければならないのだろう。自分と同じくゲームから名付けられた弟は学校生活を楽しく送っているのに。どうして自分だけいじめられるのか。どうして怪我をしなかった自分が不幸をばらまく存在にならなければいけないのか。どうして自分が男子達に(なぐさ)み者のように言われなければならないのか。全ては他人の勝手な「ラベリング」のせいだった。

 彼女は幼い頃に見た子供向け番組にレギュラー出演していた講談師を思い出していた。

 

「あの人のように自分がもっと口が達者ならばこんなことにはならなかったのだろうか?」

 

そう思いながら彼女は部屋に引きこもっている間、色々な講談師の動画を見た。流れるような口調で話を進める講談師。周りのラベリングに対して抵抗もせず、黙り込んでいた自分とは大違いだ。

 そんな暮らしをしながら月日は流れ、彼女は生きること自体が馬鹿馬鹿しくなっていった。

 

「中学の最初は、仲良しの皆と大好きなアニメの話をしていたのに、今は講談師の動画もアニメも一人ぼっちで見てるなんて…。何やってんだろ、私」

 

 とうとう自分と同学年の皆が中学を卒業する日になった。彼女はこの日まで一度も学校に行かなかった。イチゴちゃんもユキちゃんも今は退院して卒業式に参加しているのだろう。

 

「今度の人生では自分からラベリングしてやる。自分で他人の存在意義を決めるんだ」

 

皆が卒業証書を受け取っているだろう時間を見計らい、彼女も()()()()()()()卒業することにした。

 

 神から転移転生の話を聞いた立花(たちばな)(てとりす)は、まるで自分が見ていたアニメの世界のようだと心を躍らせた。神に望みを尋ねられたときに願ったことは当然「自分が他人をラベリング出来ること」だった。彼女は自分が好きな三人の講談師、架電(かでん) 座椅子(ざいす)古紺(ここん) 個子人(ここじん)杯刷亭(はいずりてい) 泥土(でいど)の三人から一文字ずつ取って「立花亭座個泥(たちばなていざこでい)」と名乗ることにした。

 

 

 

 

 

「立花亭を殺す気は無いんだな?リュート」

 

 魔女がリュートに尋ねる。

 

「ああ。それが、俺が立花亭との会話を通して下した決断だ」

 

リュートはハッキリと答えた。

 

「立花亭を完全に許せたわけじゃ無い。でも、彼女の言い分には何だか影があるような感じだった。自分じゃどうしようも無い何かに必死で抵抗しているような感じだった。少なくとも、他人が苦しむ姿を見るのが大好きでたまらない、って感じじゃ無かったよ。だから俺は、彼女を殺そうとは思わない」

 

「そうか」

 

魔女はリュートの意見に異議を唱えることはしなかった。

 

「…怒っているか?」

 

 リュートは思い切って魔女に尋ねてみる。

 

「怒ってなどいないさ。お前なら立花亭を殺さないと言うだろうと思っていたからね」

 

「そうじゃない。新しい拠点に移ってから今まで、(ベストナイン)に見つからずに過ごせていたのに、俺の自分勝手な判断で平穏を崩してしまったことだ」

 

 立花亭座個泥(たちばなていざこでい)は一切の抵抗をせず、ロープに縛られた状態だ。最も抵抗しようにも魔女の「転生殺しの箱(デリートチートゾーン)」で能力を封じられている今の状態ではどうしようも無いが。そして彼女はテンスレの拠点に生きたまま監禁することになった。この行為が、テンスレとベストナインの争いの火蓋(ひぶた)を再び切ることになるのは明白だった。

 

「なんだ、そのことか」

 

 魔女は若干明るい口調でリュートに言う。

 

「怒ってなんかいないさ。むしろ感謝しているんだよ」

 

「え?」

 

「新拠点に移ってから今日まで続いていた膠着(こうちゃく)状態をお前が解いてくれたのだからな。本当はもっと早く行動に移したかったのだが、アシバロンの襲撃を受けたせいで、いささか慎重になりすぎてしまってな。何か良いきっかけは無いだろうかと頭を抱えていたんだよ」

 

 そう告白して魔女は言った。

 

「さあ、他の仲間が来ない内にさっさと引き上げよう。バニーラ=チョコミクス、お前にも当然来て貰うからな」

 

「ふえええ!?」

 

 バニーラが驚きの声を上げる。

 

「当然だろう。お前も当事者なんだからな」

 

ポセイドラがぶっきらぼうに言う。

 

「で、でもわたし…」

 

「心配要らないよバニーラ。君にひどいことは絶対しない。俺が約束するよ」

 

「あ、リュートさんがそう言ってくれるなら…」

 

 こうしてバニーラもリュートに手を引かれながら、ケイルの開いた「ワープゲート」をくぐっていった。




 よくキラキラネーム反対派の意見で、「キラキラネームにされた子がいじめられる可能性があるからダメ」って意見を耳にしますが、これって暗に「いじめられる人間に原因があるからいじめは起きるんだ」と言っているのに他ならないのではないでしょうか。私は「いじめはいじめる方が100%悪い」のだと思います。

 そんな私の考えも含まれた、立花亭の過去回想でした。これくらいの作者の考えを物語に内包するのは大丈夫ですよね?「異世界転生モノは総じてクソだ」って主張を自分の作品に内包した人もいるようですし。
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