異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン)   作:3S曹長

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 その手は人を殴るためでなく人と手を(つな)ぐため
 その口は人を差別するのでなく人と愛を語るため

 そして魔女の魔法「転生殺しの箱(デリートチートゾーン)」で
 劣等転生者ベストナインを殲滅(せんめつ)


第四章 離反 その14 「呪縛」

 バニーラはリュートに確認の意味を込めて質問する。

 

「リュートさん、やっぱり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 リュートは少し驚いた。今までのバニーラはベストナインのメンバーを呼ぶ際には「通り名+様」で呼んでいたはずだが、今の発言では「名前+さん」で呼んでいた。彼女なりにリュート達に味方する覚悟を示したのだろうか。まだ呼び捨てで呼ぶわけにはいかないようだが、彼女が転生前は人に飼われていたウサギだったことを考えれば、それは仕方の無いことだった。

 

「そうだよ。ルイは俺が、スパノはゴーギャンさんが殺したんだ」

 

 リュートは素直に認めた。「いつかバニーラに、自分達がルイとスパノを殺したことを話さなければならないのだろうか」と先程思い悩んでいたが、まさか今日がその()()()になるとは思わなかった。

 だが、先程のように重たい気分にはならなかった。今のバニーラになら何でも話せるような気がした。

 

「やっぱりそうだったんですね」

 

「その…やっぱり幻滅したかい?」

 

「いいえ!とんでもないですぅ!その…リュートさんは…ルイさんに自分の村を滅ぼされたんでしたよね?」

 

 バニーラがおずおずと尋ねる。リュートのトラウマをえぐる可能性のある質問だとは理解していた。

 

「うん、そうだよ」

 

「だったら!その…ルイさんを殺したのは…当然だと思いますぅ!」

 

先程まで尊敬した相手を殺されても仕方ない人だと認めることが、どれほど勇気の()る発言なのかをリュートは理解していた。だから彼は

 

「そうか、ありがとう」

 

と一言返すだけに留めた。

 と、その時だった。

 

「殺せええええぇぇぇ!!」

 

二階から悲鳴が聞こえた。立花亭座個泥(たちばなていざこでい)の悲鳴だ。まさか、魔女達が凄惨(せいさん)な拷問でも行っているのだろうか。リュートとしては、そこまでして情報を吐き出させようとは思っていなかった。そして何より、今のバニーラに立花亭の悲鳴は聞かせたくなかった。

 彼は慌てて階段を駆け上がる。バニーラと台所にいたはずのリンも後を付いてきた。立花亭が監禁されている部屋を勢いよく開ける。

 

「おい!何やってんだ!?」

 

リュートは立花亭を見たが、彼女に特に変わった様子は無かった。

 

「おいおい、私は何もしてないぞ」

 

魔女が答えた。怪しい、信用できない。

 

「私達は何もしてませんよ」

 

ケイルが答えた。彼女が言うならそうなのかもしれない。

 

「俺達は何もしていない」

 

ポセイドラが答えた。ようやくリュートも三人が立花亭に対してひどい仕打ちをしていたのでは無いと確信出来た。

 

「リュート…さん、ですね」

 

 立花亭がリュートを睨む。彼女の目からは、彼に対しての憎しみの感情と、彼に対する謝罪の念とが、ごちゃ混ぜになって感じられた。彼は今まで人からそんな風に見られたことは無かった。

 

「貴方がルイさんとスパノさんを殺したんですね?村を滅ぼされた仕返しに…」

 

立花亭の質問にリュートは素直に答えた。

 

「ああ、そうだ」

 

本当はスパノを殺したのはゴーギャンなのだが、ここは素直に認める。

 

「そして最後の一人である私を殺して、仕返し完了。そういうことでしょう?さあ、早く私を殺して下さい」

 

「お前は俺の村の人を殺してないだろ。お前を殺す気は無い」

 

「でも私は二人の虐殺を黙認していました。貴方にとっては同じ復讐相手のハズです。早く殺して下さい!」

 

「だからそこまでする気は無いって!なんで二人を放っておいたのか、それだけ聞けたならもう俺は良いんだ!」

 

「嘘だッッ!!!貴方は私を責めたじゃないですか!私に憎しみを抱いている証拠です!早く!殺して下さい!!」

 

立花亭の言葉のボルテージが上がっていく。

 

「そりゃあ、あの時はお前に対して文句の一つでも言いたくなったさ!だからって、お前を殺したいほど憎んでいる訳じゃ無いっ!!」

 

「私がっ!!今までどれだけっ!貴方に殺される恐怖に苦しめられたと思ってるんですか!!殺すのでしょう!?私を殺すのでしょう!?もう十分苦しみましたっ!!早く!ひと思いに殺して下さいっ!!!!」

 

「だから…」

 

「殺せええええええぇぇぇぇ!!!!」

 

 立花亭は声の限り叫んだ。彼女の叫びが部屋全体を振るわせる。

 

「殺せええええぇぇぇ!!!!殺っ…!!」

 

「うるさいですね……」

 

 ケイルが後ろから立花亭に猿轡(さるぐつわ)を噛ませた。

 

「……!!…………!!!!」

 

立花亭は必死で叫ぼうとするが、猿轡をされた状態では一切声にはならない。見張りのケイルを置いて、全員一階に戻ることにした。

 

 リンが四人分の紅茶を持ってくる。バニーラは今日だけで何杯紅茶を飲んだだろう。正直もういっぱいなのだが、立花亭の迫真の叫びを聞いたせいで心が異常に高ぶってしまった。結局紅茶を飲んで、気分を落ち着かせることにした。

 

「私達は普通に彼女から情報を引き出そうとしただけだよ。まだ拷問なんてしていない。ヤツは『何も言いたくない。マウントールを裏切るのは絶対に嫌だ』と言うんでな。しつこく尋ねてみたら、さっきお前にやったようにテンション上げていって、最終的に『殺せ』と叫ぶようになったんだ。まったく、悲劇の王女様気取りさ」

 

 魔女がうんざりした様子でリュートに説明をする。魔女が「まだ拷問なんてしていない」と言ったのを彼は聞き逃さなかったが、追求は避けた。ポセイドラもうんざりした様子だ。

 

「そんなに殺されたいなら、舌でも噛んで自殺しろって話さ。まあ、猿轡をされていてはそれも出来ないだろうがね」

 

 魔女は本当にうんざりしているんだろうか。それとも実は上機嫌ではないのだろうか。魔女と行動するようになって長い期間が経ったが、リュートは未だに彼女の心情を図れないことが多い。

 だが自分の気持ちは分かる。バニーラにはなるべく魔女のこういう側面を見せたくなかった。何とか話題を変えようと、リュートは魔女に話しかける。

 

「魔女、それからポセイドラさん。一つ良いかな?」

 

「何だね?」

 

「バニーラが俺達に協力してくれるそうなんだ」

 

彼にとって魔女とポセイドラは、この事実を最も伝えたくない二人だった。他の者なら温かく迎え入れてくれそうだが、二人に関しては文句を言ってくるビジョンしか思い浮かばない。

 

「本当か?それは心強い!」

 

 しかし魔女は、彼の予想に反して嬉しそうな反応を示した。そういえば彼女は獣人の転生者は気に入っているのだった。先程までの立花亭への悪態のせいで忘れていた。

 

「いやあ嬉しいよ。と言っても、リュートに協力したい一心なのだろう?バニーラ」

 

バニーラは顔を赤くして下を向いてしまう。

 

「まあ何でも良いさ。これからよろしく頼むよ、バニーラ」

 

魔女が右手を差し出す。

 

「は、はい!よろしくお願いしますぅ」

 

先程リュートとしたように、バニーラは魔女とも握手を交わした。

 

「大丈夫なのか?」

 

 一方のポセイドラは反対こそしなかったが、一言魔女に問いかける。

 

「獣人の転生者は人間に対して素直なヤツが多い。例え人間を騙そうとしても、下手をすることの方が多いしな。バニーラの様子を見てみろ。コイツが私達を騙してベストナインに情報を流そうと企んでいるように見えるか?」

 

ポセイドラはバニーラをしばらく見つめて言う。

 

「……見えないな。悪かった」

 

「よろしくお願いします、ポセイドラさん」

 

今度はバニーラからポセイドラに手を差し出した。彼女は今日三度目の握手を交わした。

 

「立花亭の捕獲に加えて、バニーラが加入か。これで、私達の対ベストナイン状況も向上したわけだ」

 

「あれ、ちょっと待って下さい?皆さんもしかして、マウントール様にも戦いを挑むつもりですか?」

 

 魔女の発言を受け、バニーラが尋ねる。

 

「まあ、ベストナインのメンバーを殺す以上、そうなるな」

 

「うわ…それだけは無理ですぅ!」

 

バニーラが急に尻込みし始める。

 

「マウントール様に逆らうなんて、絶対に無理ですぅ!ああ…やっぱり協力するの止めようかな…」

 

「おい!話が違うぞ!」

 

 ポセイドラが思わず立ち上がる。リュートもバニーラの急な心変わりを異常に感じていた。

 唯一、魔女だけは態度を崩さない。

 

「ほう…。これはひょっとして、()()()()()かな?」

 

「おい魔女!何をする気だ!?」

 

「そう不安がるなリュート。バニーラ、私達はマウントール様には逆らわないよ。だから安心して紅茶を飲んでくれないか」

 

魔女の言葉を受け、バニーラは紅茶を飲む。リュートには魔女の思惑がサッパリわからない。だが一つ言えるのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 

「どうだ、落ち着いたか?」

 

「ふぅ…。はい、落ち着きましたぁ…」

 

 魔女の言葉を受け、バニーラが答える。

 

「それなら良かった。ところで、バニーラはマウントールと会って会話したことがあるのかい?」

 

「直接は無いんですけど、朝礼であの方のスピーチを聞いたことなら何回もありますぅ」

 

「そうか、彼は何かフランス語を話していなかったかい?」

 

「はい!あの方の癖ですから」

 

「バニーラは彼がフランス語を話せることをすごいと思うかい?」

 

「えっ?そ…それは当然ですぅ。わたしのご主人様も話せませんでしたし…」

 

「本当にそうかい?」

 

 魔女は次の問いかけに一段と力を込めた。

 

「落ち着いて考えてみたまえ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。このことが本当にすごいのか?」

 

「ふぇ…?あ、あれれ……?」

 

バニーラは頭を抑えて悩み始める。

 

「は、はれれ?わたしはいったい……うごごご!!」

 

「バニーラ!」

 

「リュート、落ち着いてバニーラを見守ってあげるんだ」

 

 魔女の言葉を聞き、心配そうにバニーラを見つめるリュート。

 しばらくすると、バニーラはあっけらかんとした様子で口を開いた。

 

「もしかしたら、わたしは必要以上にマウントールさんのことを恐れていたのかもしれないですぅ」

 

「そうかい?」

 

「はい!もう大丈夫ですぅ、お騒がせして申し訳ありませんでした!改めて、わたしも皆様の仲間に入れて下さい!」

 

「ああ、よろしく頼むよバニーラ」

 

 満足げに言う魔女に対してリュートは尋ねる。

 

「おい魔女、何が起こったんだ!?」

 

「何てことはないさ」

 

魔女は平然と答えた。

 

「バニーラはマウントールの能力による呪縛にかかっていたのさ。私はその呪縛を解いただけだよ」




 次回は久しぶりにベストナイン視点です。
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