異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン)   作:3S曹長

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 前回の後書きに「次回はベストナイン視点です」と書いてしまったのですが、テンスレ視点でまだ説明していない部分があったので、今回はその補足になります。少し短いですが、ご了承下さい。


第四章 離反 その15 「『転生殺しの箱』との相性」

 立花亭座個泥(たちばなていざこでい)の捕獲及び監禁に成功したテンスレ一行だったが、彼女からの情報の引き出しに苦戦していた。

 監禁当日は結局何も話そうとはしなかった立花亭。尋問は翌日にも行われたが、やはり彼女の口から出たのは「マウントールを裏切りたくない」「早く殺せ」といった内容だけだった。

 立花亭の今後の扱いをどうするか、魔女を中心として話し合いが行われた。

 

「全く参ったモノだな…。立花亭(ヤツ)め、一向に口を割ろうとしない」

 

 魔女が辟易(へきえき)とした様子で言う。

 

「アイツもマウントールの能力を受けているんじゃないか?バニーラと同じように解除してやれば済む話だろ」

 

リュートが口を開く。

 

「当然だ。ヤツもマウントールの能力を受けているのは間違いない。だがな、解除してやるのは無理だ」

 

「どういうことだよ」

 

「マウントールの能力を解除してやるには、相手が比較的冷静な状態でなければならない。今の立花亭は錯乱状態だ。一方、私の『転生殺しの箱(デリートチートゾーン)』は冷静な状態の相手には発動しない。ヤツを今捕獲できているのは『転生殺しの箱(デリートチートゾーン)』が効いているからなんだぞ?ヤツを平常心にするわけにはいかない」

 

 リュートは魔女が悩んでいる理由を理解した。これまでの経験から彼自身十分に理解していたはずの「転生殺しの箱(デリートチートゾーン)」の発動条件が、立花亭から情報を引き出すという目標達成の妨害をしているのだ。転生者の心を乱さなければ能力を封じることが出来ない。しかし、心が乱れている状態ではマウントールの能力を解除出来ない。加えてまともに情報を引き出すことすら難しい。

 

「この制約があるせいで、私の鎮静剤(ちんせいざい)も使えませんしね」

 

ケイルが付け加えた。

 

「そういえば、ケイルさんは薬師(くすし)さんでしたよね?」

 

「そうですよ」

 

 バニーラの質問にケイルが答える。

 

「リュートさんに渡していた赤い液体も薬なんですかぁ?」

 

「はい、あの赤い液体は即効性の睡眠薬ですね」

 

「良かったぁ。ずっとアレが毒だったんじゃないかと心配していたんですぅ」

 

バニーラが胸をなで下ろす。赤い液体が顔にかかった自分の仲間が倒れたのを目にしてから、彼女はずっと液体の正体を気にしていたのだ。

 

「当然です、私は薬師ですから。人の(えき)になるものが薬、人の害になるものが毒です」

 

ケイルは誇りを持って答える。

 

「あ、あの時飛んでいった赤いのって、やっぱり俺に渡してくれた瓶に入っていた薬だったんですね」

 

リュートはあの時立花亭に踏みつけられていたこともあって、今になって気付いたようだ。

 

「はい。私の魔法『エレメントウォーター・リトルフェアリー』です」

 

「何ですそれ?」

 

「ふふ、見せた方が早いですね」

 

そう言ってケイルはリュートに渡したのと同じ瓶を懐から取り出し、右手にスポイト杖を持って魔法を唱える。

 

「『エレメントウォーター・リトルフェアリー』」

 

すると、瓶に半分ほど入っていた液体が妖精のような姿に形を変える。()()()()と表現するのがぴったりな形だ。しかしリュートの世界にはクリオネは存在しないので、彼は「小さい妖精みたいだ」と思った。

 ケイルが杖を振ると、妖精の形をした赤い液体は瓶の栓を押し開け、空中をヒラヒラと舞った。

 

「液体を妖精の形にして使役することが可能になる魔法です。杖の向きと連動しているので、遠くからリュート君達を尾行することも出来ます」

 

「だから、尾行されていることに気付かなかったんですねぇ」

 

 バニーラが納得したように言う。ケイルはこの魔法を使って、バニーラの聴覚が効かない遠距離からの尾行を可能にしていたのだ。

 

「じゃあ睡眠薬を持たせたのは、ピンチになったときに俺を守るために?」

 

リュートが尋ねる。

 

「それもありますが、リュート君が私達の制止を聞かなかった際に無理矢理連れて帰ることも出来る、というのも理由の一つでしたね」

 

「あ、ああ…。なるほど。あはは…」

 

 リュートは苦笑いする他無かった。やはりあの時の自分は、立花亭に会いたい一心で危うい状態に見られていたのだ。確かに、仮に魔女がリュートを止めるようケイル達に指示をしていたとしても、その制止を聞かなかった可能性もあったかもしれない。

 

「それにしても魔女、お前はどうしてこうなると予測出来なかった?」

 

話を本題に戻す意味も含めて、ポセイドラが尋ねる。

 

「人のミスを指摘して楽しいかポセイドラ?嫌われるぞ」

 

魔女が言葉を返す。

 

「いや、ポセイドラの言うとおりだ。魔女ならこうなることは予測できたハズだ」

 

ラーシャは魔女が逃げようとしているのを逃さなかった。

 

「ミスだと言っただろう?正直もう少し話が通じると思っていたのだがな…。やっぱり転生者はゴミクズ、はっきり分かんだね」

 

魔女は苦笑しながら答えた。

 

「ふざけるな」

 

ポセイドラがイラッとした様子で言うと、魔女はマジメなトーンで話を続ける。

 

「正直に言おう。立花亭がマウントールの能力を受けていることは予測できていた。だがそれだけなら、話を聞き出せたはずだ。問題なのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。ルイとスパノが先に死んだことがよっぽど応えていたらしい。ヤツは今までずっと、我々に目を付けられることを恐れていたのだ。その恐怖が現実となった今、恐怖に耐えきれなくなり、早く殺して欲しいとだけ強く願っているみたいだな」

 

「このまま情報が得られない場合はどうなるのだ?」

 

ゴーギャンが尋ねる。

 

「人が平常心を失っていられる時間には限りがある。所謂『()れ』というヤツだな。そうなれば能力を封じられなくなる。問題はその慣れがいつ来るかだ。ヤツがまともに話せるようになった時には、もうすでに慣れてしまっている状態かもしれない」

 

 魔女は一息ついて、次の言葉を口にした。

 

「こうなれば、多少痛い目にあわせて聞き出さねばならないかもしれないな」

 

 つまりは本格的な拷問ということである。だが、闇雲に拷問するだけでは余計に口を固くする結果になるかもしれない。

 そうでなくとも魔女を除いたテンスレメンバーは元々、誰の復讐相手でもない転生者を無闇に傷つけることを嫌う人間ばかりだ。肝心の魔女は人間を傷つけることが出来ないので、拷問を行うのは魔女以外ということになる。(ゆえ)にどこまでの拷問を良しとするのかについて議論が起こるのは避けられなかった。ケイルは相手が死なぬ程度の拷問ならば構わないと主張するのに対し、ポセイドラはほどほどの流血で留めて置くべきだと主張した。リュートやリンはそもそも拷問自体に反対する始末だ。

 結局一日かけて議論を続けることになってしまった。そして同じ一日の間に、ベストナイン側はすでに行動に移り始めていたのだった。




 またまた投稿が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。

 理由としては、土曜日に一回目のワクチンを接種したからです。一回目はそこまで副作用が重くならないと聞いていたのですが、バッチリ副作用が出て投稿が不可能な状態でした。

 一回目でこれだけ悪くなるってことは、二回目は死ぬかも分からんね…。もし私が死んだらこの小説も投稿されなくなるので悪しからず。

 ケイルの得意魔法「エレメントウォーター」にはいくつかの種類があるようです。その中には彼女の切り札となる魔法も…?
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