異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン)   作:3S曹長

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 長かった第四章が終わり、第五章の開幕です。

 章題ですが、従来の「(通り名)○○」のスタンスに戻そうかと思ったのですが、止めました。第二章までは10話以内に終わっていたので、誰を殺すか最初に判明していても良かったのですが、第三章以降、一つの章にかかる話数が多くなってしまったために「章題で結末分かってるのにダラダラやられてもつまんない」と読者に思われてしまうな、と感じたのです。
 こんなどうでもいい話を最初にしつつ、新章開幕です。


第五章 外道死すべし その1 「なぜか素直に」

 御手洗幼子(みたらいようこ)監禁後、リュートの所属ギルド「テンスレ」では新体制が組まれた。御手洗と立花亭の監視を一日中行う必要性が出てきたからだ。もちろん、日々の収入源である魔人討伐も行わねばならない。

 現在、テンスレの正式メンバーは10名。この中でメルクリオは動けず、リンは彼の介護と家事という特別な役割を持っている。魔女はこの世界の生物を殺すことが出来ない。この制約をクリアしつつ仕事を分担した結果、以下のような体制が組まれることになった。

 日中に魔人討伐に行く者が3名、日中の監視役が2名、夜間の監視役が2名である。監視役は魔女も行えるため、1名余りが出るが、その人は休暇ということになる。ただし休暇に当たった人間は、拠点への襲撃時に戦力になるため拠点内で休暇を取ることになる。夜間の監視役は交代後に睡眠時間が設けられた。

 

 新体制1日目、つまり御手洗確保の翌日。リュートは日中の監視役を魔女と行うことになった。夜間の監視役だったポセイドラとジモーの二人と交代をし、監禁部屋に入る。

 御手洗と立花亭は、手足を縛られ口に猿轡(さるぐつわ)をされた状態だ。口を封じられた状態では魔法を唱えることが出来ない。だが御手洗の心は正常なので、正確に言うと彼女は見た目だけ無力化している状態だ。油断は出来ない。

 

「さあ、リュート。今日の監視は単なる監視じゃないぞ。再び立花亭からの聞き込みを行う」

 

 部屋に入るなり、魔女が切り出した。

 

「どういうことだ?立花亭は情報を吐き出そうとしなかったんだろ?」

 

「それは御手洗がいなかったときの話だ。二人でいる今なら、口を割る可能性がある」

 

魔女がそう言ったとき、後ろから声が聞こえた。

 

「何やら楽しそうなことやろうとしてんな?」

 

振り返ると、そこにジモーが立っていた。

 

「俺も混ぜろよ」

 

「ジモーさん、眠くないんですか?」

 

「いや、ねみーよ?でも魔女のことだ。御手洗監禁なんて大きなイベントがあった翌日に黙ってるわきゃね~な、と思って聞き耳立ててたらビンゴだったもんでな。眠気をこらえて参加するってスンポ~よ」

 

「ほう、殊勝なことだな。夜間に引き続き日中の監視役まで請け負ってくるとは」

 

魔女の言葉に対し、ジモーは首を激しく横に振る。

 

「勘弁してくれ。イベントが終わったら寝るさ。それに聞き込みに一々口挟んだりはしねーからよ。御手洗からの聞き込みの時、俺はここにいて聞き逃してたんだぜ?こんくらい良いだろ?」

 

「好きにしろ」

 

魔女はそう言って立花亭の猿轡だけを取る。彼女の話した内容が御手洗と同じならば、情報の信憑性(しんぴょうせい)はぐっと高まる。そのため御手洗の猿轡はあえて外さなかった。

 

「おはよう、立花亭座個泥(たちばなていざこでい)。聞いてた通りだ、しっかり答えてくれたまえ」

 

「またですか…」

 

立花亭の声には相変わらず覇気は感じられなかったが、御手洗が隣にいる安心感からか落ち着きをある程度取り戻していた。以前のように大声を出す心配は無さそうだ。

 

「そうだ。言っておくが、御手洗は全て話してくれたぞ?無駄な抵抗は諦めることだ」

 

 魔女の言葉を聞き、リュートの頭にある疑問が浮かぶ。

 

「あれ?立花亭はまだマウントールの能力にかかったままのハズだ。だから情報を吐こうとしなかったんだよな?今から解くのか?」

 

そんな彼の考えの裏をかくように、立花亭が答えた。

 

「分かりました…。御手洗ちゃんが話したなら、私も素直に話します」

 

「あれ?」

 

リュートは意外に思ったが、あえて口にはしなかった。

 

「最初の質問だ。ベストナインは私達のことについてどれだけ知っている?」

 

「私達は…、ベストナインはあなた方の拠点も人数も把握できていません。アシバロンさんの戦闘終了後、半年以上捜索を行いましたがここを見つけることは出来ませんでした」

 

「どうやって探した?」

 

「米沢さんの虫を使った捜索しか行っていません。マウントールさんはあなた方を『ベストナインの強さを試す試金石』だと思っています。あなた方と戦い、生きて帰れた者がベストナインに相応しい、と」

 

「なるほど、ヤツらしい考え方だ」

 

試金石の件以外は、すでに御手洗から聞いた情報だった。

 

「把握している人間は5人。リュート、魔女、ゴーギャン、ポセイドラ、レースバーンです。レースバーンに関しては、アシバロンさんが死亡を確認しています」

 

この内容も御手洗の話と同じだ。レースバーンの死亡が確かになったことで、リュートは心の傷が再び開いたような気持ちに(おちい)った。

 

「更に、あなた方の『転生者を無力化する方法』も見当が付いています。『転生者の心を乱すこと』が無力化の条件で、その条件を達成するために『転生者の転生前の情報を暴露する』という方法を取っている、と」

 

「それを見抜いたのは?」

 

「アシバロンさんです。彼は以前の戦いからここまで推理を重ねていました」

 

 リュートは改めて空恐ろしい気持ちになる。アシバロンはあの短いやり取りで自分達の無力化の方法について、ここまで的中させていたのだ。

 

「他に私達の手段で分かっていることは?」

 

「転生者を無力化出来る原理については、『そういう魔法を使っている』と推察しました。誰がその魔法を使っているのかについては、アシバロンさんが『魔女が怪しい』と言ってましたが確証は得ていません。『転生前の情報を得た手段』については何も分かってません」

 

「アシバロンが私を怪しんだ理由は?」

 

「直感だそうです。一応根拠としては『一人だけ俗称で呼ばれているのは怪しい』と言ってました」

 

「なるほどな。やれやれ、こんなことなら名前を呼んでもらう方法を取るべきだったな」

 

 魔女は呆れたように言うが、この情報も御手洗の言っていたことと同じだ。立花亭の言っていることはほとんど御手洗の情報と一致している。

 魔女はジモーの方を振り返って言う。

 

「おい、夜中に二人が話し合うようなマネはさせてないな」

 

「ああ、猿轡のおかげで一言も発してないし、筆談とかジェスチャーとかそういう手段を取ってないかも見張ってたぜ。まあ、そいつらしか知らない意思疎通方法があったりしたらお手上げだがな」

 

「ふふふ、そんなのは無いと信じたいね」

 

つまり、御手洗と立花亭の言っていることは信憑性が高いということだ。

 ちなみに「遠隔会話(テレパシー)」は元々、天使が転生者に神託を行う際に使用する魔法なので、使えるのは魔女だけである。

 

「質問を変えようか。御手洗はどうやってここを割り出したと思う?」

 

 魔女の質問を聞いた立花亭は一度、御手洗の方に顔を向けたが、御手洗が軽く頷いたのを見て正直に答える。

 

「御手洗ちゃんの第4の能力を使ったんだと思います。私の舐めたキャンディが、私の位置を示すレーダーとなる能力です。彼女は、この能力について他人に知られることを嫌っているので、知っている人間はほとんどいないと思います」

 

実際には第4の能力についても、すでに御手洗から聞き込み済みだ。彼女は、人に知られたくないと思っていたこの能力についても、正直に話していたのだ。

 

「ここまで話したんだから、わたしのこと信用してくれても良くない?」

 

その際、御手洗はこのように言っていたが、結局魔女の猜疑心(さいぎしん)を無くすには至らなかった。

 

「なるほどな。では、ベストナインに新メンバーが加入するという話は?」

 

「…え?なんですかソレ?」

 

 ここまでスラスラと答えていた立花亭が初めて違う反応を示す。

 

「とぼけているのか?それとも本当に知らないのか?」

 

「本当に知りません!そんなの初耳です!」

 

「どういうことだ?嘘だったのか?」

 

魔女は急いで御手洗の猿轡を外して問い詰める。

 

「タッチーが知らないのは無理ないよ。だってタッチーがいなくなった後の会議でマウントールから初めて聞いたことだもん。極秘の情報だって言ったでしょ?」

 

御手洗のケロリとした答えを聞き、魔女は歯噛(はが)みする。

 

「くそ…、一番知りたかった情報の信憑性が補強されないとはな。人生上手く行かないものだ…」

 

 

 

 

 

同時刻 とある森

 

 男は高揚感を隠し切れなかった。最近ずっとこんな感じだ。ここまで上手く人生が行ったことは今まで無かった。絶好調だ。

 今まで何も上手く行かず、何も成し遂げたことの無い人生を送っていた。しかし、新たな人生を歩み出してから状況は一変した。己の強さを誰もが認める。誰もが自分を持ち上げる。こんなことがあって良いのだろうか。

 こんな自分が縛られる必要なんてあるはずが無い。そう考えた彼は、パーティを勝手に抜け出し単独行動を取る。スキップしながら森の中を突き進む。深い考えなど持ち合わせてはいなかった。

 すると、近くで女性の声が聞こえた。

 

「思っていたより数が多いですね…!」

 

自分の強さを見せつけ女性をメロメロにする大チャンスだ。そんな下手くそな妄想みたいな状況が()()では容易に起こせる。彼は美人を期待して声のする方向へ向かった。

 思った通り、女性が魔族の群れに襲われている。彼は女性と魔族の間に颯爽(さっそう)と飛び出す。

 

「危なかったな。もう大丈夫だ」

 

「どちら様ですか!?危ないのはそちらですよ」

 

そんな女性の言葉は耳に入っていないようで、男は言った。

 

「俺が来ればもう安心だ」

 

 言うが早いか、男は一体の魔族の頭目がけてジャンプをする。そして素早い動きで()()()()()()()()()()()()()()()()()()。指を頭から抜いて再び跳躍。目にも止まらぬ早技で、次々と魔族の頭に指を突き刺す。

 全ての魔族に処置を終え、男は女性の前に颯爽と駆け戻る。

 

「終わったぜ」

 

「いや、全然殺せてませんけど?」

 

女性の言うとおり、魔族はまだ動いている。このままでは襲われてしまう。

 しかし男は魔族に対して呼びかけた。

 

「静まれ!これ以上許可無く人を襲うことは、この俺が許さん!!」

 

 魔族に人間の言葉は通じない。仮に通じたとして、この男の命令を聞く道理なんてあるはずもない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「終わったと言っただろ?」

 

「はい…そのようですね…」

 

呆然とする女性に対し、男は言葉を続ける。

 

「自己紹介がまだだったな?俺の名前はカセロジャ=クテンハーモン。転生者だ」




 この謎の転生者と女性は何者なのかっ!?次回をお楽しみに!
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