異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン) 作:3S曹長
夜間の監視役は夕食の時間に日中の監視役と交代する。この日の当番はバニーラとポセイドラだった。バニーラは魔人討伐から帰宅してすぐ仮眠を取り、夜の仕事に備える。ポセイドラが二日連続なのは、夜起きていることが得意だと言う理由でこの仕事を積極的に引き受けたからだ。
夕食後、魔女は皆の前で話を始めた。
「日中、立花亭への聞き込みを再び行ってな。ヤツはしっかりと情報を吐いてくれたよ」
「どういうことだ?この前までは話すのを嫌がっていたのに…」
「御手洗が側にいるから、だとよ」
ラーシャの疑問に対し、その場にいたジモーが答える。彼は自分で言った通り聞き込み終了後に就寝し、夕食直前に起きてきた。
「だとしてもだ。ヤツもマウントールの『
「あ、それは俺も気になってました。素直に答える立花亭を見て、変だと思ったんです」
ラーシャの再度の疑問にリュートも便乗する。
「何か魔法でも使ったのぉ?」
「いいやリン、ソレは違う」
魔女が答える。
「まず勘違いしてはいけないのは、マウントールの能力は『自分のスゴさに対する相手の感覚を
そこまで言って魔女はリュートに目を向ける。
「立花亭にその『強い感情』を生じさせたのはお前だ、リュート」
「俺が?」
「そうだ。お前との出会いが、お前の質問が、ヤツの奥底に眠っていた強い罪悪感を目覚めさせたのだ。
「どうして?」
「ヤツは今、仲間の蛮行を黙認していた罪悪感で心を乱してる状態だ。『
「あまり気乗りはしないが…」
ゴーギャンが
「仕方が無いだろう?
魔女が本題に入る。
「ヤツへの聞き込みで判明したのは、昨日の御手洗が言っていた情報は正しい可能性が高い、ということだ。立花亭が吐いた情報は御手洗の情報と
「ああ、それは間違いないぜ。俺の証言だけで不満なら後でポセイドラにでも聞くんだな」
ジモーが自信満々で答える。
「一方で不満点も二つあった。一つは御手洗の言っていたベストナインの新入りについてだ。この情報は立花亭が私達に監禁された後に話されていたことだったらしく、ヤツは知らなかった。嘘か本当か。どちらにせよ面倒なことには変わりないな。嘘なら、他の情報も怪しくなる。本当だとしても、新入りへの対策は困難になるかもしれない」
「どうして?天使だった頃に転生者の能力と過去は調べていたハズでは?」
「私が天使の役職を追放されてから、もう数年が経っている。その後に転生された人間なら、私は情報を持っていない」
「ああ、そうか」
「仮に私が天使だった頃にいた人物だとしても、転生者全員の過去について調べた訳じゃ無い。私が転生前について調べたのは、人々を虐殺するような外道だけだ。そもそも転生者を無力化する方法が向こうにバレている以上、今までの手は通じないと思った方が良い」
「そう言えば…」
ラーシャが何かを思い出したように話し出す。
「新入りなのかは定かじゃないが、気になる男が一人いるな」
「もしかして、あのゲスですか?」
ケイルが反応する。いつもお
ラーシャは魔人討伐中に出会った転生者カセロジャ=クテンハーモンとの一部始終について皆に話した。
「軽率でゲスなのは確かだが、あの素早い身のこなし…。転生者にしても相当レベルが高い。ヤツがベストナインの新入りだったとしてもおかしくは無い」
ラーシャの話を聞いて魔女が苦しそうに言う。
「カセロジャ=クテンハーモンか…。
「能力については、ケイルが持ち帰ったあの死体から何か分かるんじゃ無いか?」
ラーシャがケイルに尋ねる。
「明日にでも分析を開始しましょう。最もあのゲスが新入りじゃなければ調べる意味も無いでしょうが、念のためです」
ケイルの言葉を聞いたジモーが口を開く。
「しっかしケイルがここまで
「ああ、だがあそこまでブチ切れたケイルも中々見れるものでは無いな」
「何か言いましたぁ?」
ラーシャの返答に対し、ケイルが恐ろしげな口調で尋ねる。
「お前がそこまでキレるなんて珍しい、って言ったんだ。聞こえなかったのか?」
ラーシャは一切動じず言葉を返した。ケイルに対して喧嘩を売る意図や挑発する意図が彼女にあったわけでは無いらしい。単にケイルが「何か言ったか」を尋ねたので答えただけのようだ。そのことはリュートにも口調から伝わったが、多少面食らってしまう。そこは「いや何でも無い」と返すのが、人間のルールでは無いのか。
「とにかく、そういうことなら分析はよろしく頼むぞケイル。さて、もう一つの不満点だが…」
魔女が話を戻した。
「
彼女の残念そうな声を聞き、ゴーギャンが尋ねる。
「仲間ならば能力くらいは知っているだろう?そうでなければ連携すら取れないハズだ」
「ん、ああ…、言い方が悪かったな。正確に言うなら、『能力の詳細は分かったが、不可解な点が多すぎる』ということだ」
魔女はそう言った上で説明を始める。
「ヤツの能力が、虫を使役する能力だということは知っている。だがそれでは説明出来ない点が現段階でも二つある。一つは情報収集能力だ。案の定、我々の情報を集めていたのは米沢だった。虫を使って我々を監視し、その虫が米沢の元に帰ることで初めて情報が得られるという仕組みだ。このことは二人も認めていた。問題なのは
「情報の正確さ?」
「米沢が虫を介して得る情報は正確すぎる。戦闘の様子はおろか、私達の容姿や会話の内容すらも正確に持ち帰ったそうだ。まるで米沢自身がその場にいたみたいじゃないか。
「虫の改造能力も同時に授かったのでは?普通は存在しない魔力袋も持っていましたし」
ケイルが尋ねる。
「その可能性は高いな。それにしてもヤツが虫から情報を得る方法は不気味だぞ?
「そんなことを俺達に言われても…」
「『そんなことを俺達に言われても』何だ?言ってみろリュート」
「いや何でもない」
お前が言うんかい。
「まあいい。もう一つの謎は、『米沢が自身の肉体を無数の虫に変換出来ること』だ」
魔女は興奮を抑えるために、目の前の紅茶を一口飲んだ。
「ヤツは自身の肉体を無数の虫に変えることで、高速で移動したり狭い隙間から進入したり出来る。肉体を変換させた虫の群れが再び集まることで、米沢の姿に戻れるというわけだ。この能力は私も知っていたし、二人もこの能力については認めていた。だが、
「どこがだ?虫を使役する能力と虫を改造する能力に加えて、自分の体を虫の群れに変換する能力も授かったってことで良いんじゃ…?」
「ソレは無理だ」
リュートの意見を魔女はバッサリと否定する。
「以前話したことがあったかな?
確かに以前そんな話を聞いたことがある、とリュートは頷いた。
「他にも色々不可能はあるが、『一つの命を複数の命に変換する能力』も不可能だ。そもそも『全身を違う物質に変換し、その上で自身の思考などは失われずに好きなときに元通り』だなんて、それだけでも大分無理がある。出来ても体の一部分、全身を変換するなら元通りになる保証は無い、そんな所が関の山だ」
魔女の言うことが本当なら、確かに米沢の能力は色々とおかしい。
「でもそんなこと、以前天使だった魔女にしか分からないじゃないか」
「そうだ。だからこそ立花亭も御手洗も、米沢の能力について不信感を持たなかったのだ。だが『元・天使』の私が断言する。米沢の能力は普通じゃ無い。二人の情報でもう少しその辺の謎が解けるかと思ったのだが、結局何も分からず終いというわけさ」
魔女は残念そうに言って、再び紅茶を口にするのだった。
「後、『原作は面白いから読んでみろ』とか『エロゲーは面白かったから』とかいう