異世界転生殺し チートスレイヤー アナザーミッション(VSアナザーベストナイン) 作:3S曹長
ヴァターシの名前はエンポリオです
最近のリュート達は運が良かった。
「神の反逆者」ギルドメンバーの中で唯一友好的な関係を築いていたバニーラと再会した日が偶然、彼女が立花亭と一緒に魔人討伐に出かけた日だった。その日にたまたま迷子になっていた彼女と偶然再会し、結果として立花亭を監禁することに成功した。そして立花亭を監禁出来たお陰で、御手洗をも手中に収めることに成功したのだ。
しかし「運は収束」する。彼らはこの幸運の埋め合わせを、
米沢はアシバロンの指示を受け、翌日からの捜索を「御手洗を見失った場所」付近に重点を置いて行うようにした。結果、米沢は
その日の夜にベストナインの会合が開かれ、米沢が捜索の結果を皆に伝えた。
「ついに見つけたよ、『魔女の集団』の拠点を。アシバロンの言ってた通り、御手洗ちゃんを見失った場所の近くを探していたら見つけたんだ」
「だから言っただろう。ポルポル地区ではなく、御手洗を見失った場所の近くを探せと」
アシバロンが仏頂面で言葉を返す。
「どうしたんだ、アシバロン?ようやく敵の拠点が見つかったというのに、随分不満そうじゃあないか」
マウントールが尋ねると、アシバロンは不満そうな顔を彼に向ける。
「お前がもう少し真剣にヤツらの拠点を探そうとしていれば、『
「なるほど、そういう不満かい。その点についてはまあ、私の判断ミスだっただろうね」
平然とマウントールが返す。彼がこういった返し方をするだろう事は分かっていたので、アシバロンもそれ以上何も言わなかった。
「ってことは、『睡眠薬の女』の姿を見たってことか?」
カセロジャが興奮した様子で米沢に尋ねる。
「ううん、ヤツらは建物の外に出てこないんだ。窓にもカーテンがされていて、中の様子は分からなかったよ」
米沢が首を横に振りつつ答える。
「おや?今の言い方だと君は建物の中には入ってないって事かい?」
「う、うん…。アシバロンが『拠点は既に虫が入っても平気な状態になっているのだろう』って言ってたから、中に入るのは危険かと思って…」
「は?じゃあお前はどうしてそこが敵の拠点だと分かったんだ?」
カセロジャが尋ねる。
「ぼ、僕の虫の触角は普通の虫と違って、生き物が発する魔力を捕えることが出来るんだ。まあ、長い間一緒にいる人間じゃないと誰の魔力なのかは分からないけど…」
「と言うことは、その建物が敵の拠点だと分かったのは、その中に
米沢の言葉を聞いたマウントールが、期待を込めた口調で尋ねる。
「そ、そうなんだ!重要なのはそこなんだよマウントール!その中から御手洗ちゃんの魔力を感じ取れたんだ!彼女はまだ生きていたんだよ!!」
米沢がまたしても興奮した様子で返したが、安堵の声を上げる者は誰もいなかった。
「とすると、立花亭の魔力は感じ取れなかったと?」
「え?あ、うん…」
「ということは、立花亭は殺されてしまったか…」
「おいマウントール、そう考えるのは早計だ。敵は転生者の能力を封じることが出来るんだぞ?立花亭は能力を封じられた状態なのかもしれない」
「立花亭の能力は封じて、幼子ちゃんの能力は封じてないって事かい?」
アシバロンの指摘を受け、マウントールが疑問を返す。
「立花亭の心は乱せたが、御手洗の心は乱せなかったと考えれば
「なるほどねぇ。ああ見えて幼子ちゃんは結構
納得した様子のマウントールに対し、アルミダが不満そうな声を上げる。
「どちらにせよ、中に入らなきゃ何も分からないってことじゃない!さっさと入っちゃいなさいよ!」
しかし彼女の不満をマウントールは冷静に受け止める。
「アルミダ、気持ちは分かる。だが焦って、敵に見つかればアウトだ。何か良い案は無いだろうか?」
「あ、あの…」
「人が住んでいる家ならば一カ所、外へと繋がってなければおかしい箇所がある」
「どこだい?アシバロン」
「台所の通気口だ。そこは必ず外と繋がっているはずだ。でなければ料理中、煙たくて
「でもそんなこと、敵も気付いているんじゃないの?」
「ほう、豚にしては中々の指摘だ」
「ムッキー!!」
「ねえ、聞いてよ!!」
勝手に話を進める上位三人に対し、米沢が大声を上げる。
「おっとごめんよ、米沢。何か言いたいことがあるのかい?」
「その…、中に入る方法なんだけど、良い方法があるんだ。この方法なら、敵に怪しまれる事も無いはずだよ」
「本当にそんな上手い方法があるのか?」
アシバロンが懐疑的な反応を示す。
「そのためにはカセロジャ、お前の力が必要なんだよ」
「え?俺?」
唐突に米沢の使命を受けたカセロジャが戸惑いの声をあげる。
「お前の従えている魔族の中に、魔力が少なくてパワーのある個体はいるかい?」
「ああ、いるけど?
ベストナインのメンバーとなったカセロジャは、マウントールに一つ要望を出していた。それは、彼の従えた魔族をストックしておける家畜小屋だった。大きな個体の魔族を入れるためには、かなり大きめの家畜小屋でなければならないのだが、マウントールは彼の任命式にあわせて「魔族庫」をしっかりと用意しておいたのである。とは言っても魔族を入れる用途の小屋である以上、民衆の不満を
閑話休題、カセロジャの答えを聞いた米沢は嬉しそうに作戦を発表した。
「だったら話は早い!ソイツに拠点を襲わせるんだ。とは言っても建物を破壊するようなことは避けるんだぞ。中に御手洗ちゃんがいるんだから。魔族には建物を
米沢が皆の意見を募る。案の定、アシバロンが口を開いた。
「悪くないだろう。確かにその作戦ならば、相手は単なる魔族の襲撃としか思わないかもしれない。だが万全を期すならば、魔族が窓を壊すのと同時に虫を侵入させる方が良い。向こうはカセロジャの能力も知っているハズだからな」
他に反論を述べる者はいなかった。
こうして、米沢発案の敵拠点侵入作戦はすぐさま実行されることになった。
カセロジャは米沢の指定した場所に「ワープゲート」を開く。場所は敵拠点から大分離れた場所だった。
「なあ、大丈夫なのかよ?ここからだとお前の言ってた拠点から大分遠いぜ?」
カセロジャが米沢に尋ねる。
「うるさいんだよ。お前は黙って僕の指示に従っていれば良いんだ」
米沢はうっとうしそうに言葉を返した。
「なあお前、会合の時と口調が違わねえか?」
カセロジャがそう尋ねると、米沢は彼を睨みつけた。
「良い機会だ。一つ教えてやる。マウントールは『ベストナインのメンバーは自分を除いて皆平等だ』と言っていたな?だがそれは間違いだ。立場だけを考えるならそうかもしれないが、実際には
「あ、ああ…」
今までの米沢からは想像もつかない彼の口調を聞いて、カセロジャは言葉を失った。
「僕よりも上の三人はバケモンだ。あの三人に敵う人間なんて考えられない。でもな、これだけは言っておくぞ。あの三人のバケモンを除けば、
「っ……!」
「分かったらツベコベ言ってないで、とっとと僕の指示通り魔族を動かせ!そうしないと進入できないだろうがっ!」
「ちっ!わーったよ」
「何だ、その態度は?」
「お前の言いたいことは分かったよ。でもな、立場が平等と言われてる以上はお前にヘーコラする気は俺には無いね。それとも何か?マウントールに逆らって、ここで一発やり合うか?」
「…ちっ!」
米沢が引き下がったのを見て、カセロジャは魔族に指示を下す。彼の命を受け、魔族はリュート達の拠点へと侵攻を開始する。魔族の腕には米沢の虫が二匹張り付いていた。
拠点に到着した魔族は、指示通りに拠点の窓を破壊する。二匹の虫は、魔女達が魔族に気を取られている隙を見計らって中に潜入し、物陰に隠れた。
それから時を置いて、米沢の元に一匹の虫が帰ってきた。潜入した二匹とは別の、魔族を監視するために
「作戦は成功だ。魔族は殺されちゃったけどね」
虫を食べた米沢がカセロジャに伝えた。
「良かったんじゃないの?自慢の作戦が成功できたようで」
「お前、帰って皆に報告してこい。襲撃は僕一人で十分だ」
「お前一人で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
自信満々に言う米沢を見て、カセロジャは一人でギルドへと戻っていった。
ところで、米沢は拠点を捜索するに当たって全ての虫を「御手洗を見失った場所付近」に向かわせた訳では無かった。彼はこれまで通りの捜索も、小規模ながら続けていたのだ。
そしてこの日の昼、その小規模な捜索隊の内の一匹が、魔人討伐中のテンスレメンバーを見つけていたのだ。その虫は尾行を行い、地下室の殺虫剤カーテンの餌食になってしまった。しかしこのことが結果として、「米沢はまだこちらの場所に気付いていない」と魔女達を錯覚させる事になったのだった。これがリュート達にとっての第二の不運であった。
こうして米沢の虫は怪しまれる事無く、テンスレの拠点への侵入に成功したのだった。
米沢がオドオドしているのは、自分より上の人間(マウントール、アシバロン、アルミダ)がいる時だけのようです。
なかなかバトルにならねーな、とヤキモキしている皆様。もう少しで戦いますのでご安心下さい。