幼馴染のついでにマフィアにされたら、武器がフォークでした 作:クォールツ
この小説は読者の皆様の善意の元になりたっております。
昼飯を食べるため、ツナの家を出て道を歩く。
休日だからだろうか、昨日と同じ時間帯と場所だが昨日と違い通行人もちらほらと見かける。
「全く、アイツと住み込みとか勘弁してくれよ……」
「まぁまぁ、落ち込むなよツナ。きっと良い事あるさ、きっとな」
落ち込むツナを宥めながら歩く俺。そしてその後ろには……
「直継の言う通りだぞ。安心しろ、俺が立派なマフィアにしてやる」
さっきまでツナの家で飯を食っていたはずのリボーンがいた。
「なんでついてくるんだよ!? っていうか、俺はマフィアのボスになんてならないから!!」
「良いじゃねーか。なりたくてもなれるもんじゃねーぞ」
「俺はなりたくないんだよ! ていうか、誰に考えてもらったかは知らないけど、いつまでその嘘引っ張るつもりだよ!」
ツナが歩きながらリボーンに文句を言うが、そんなものは気にしていなんだろうな。リボーンは毅然とした態度でそれを聞き流している。
これじゃどっちが赤ん坊か分かんねーな……そんな事を思いながら前を向くと、道の先に見知った顔を見つけた。
「おいツナ、早速良い事あったぜ。見ろよアレ」
そう言って俺が指を指す方から歩いてくる茶色の髪の美少女を見たツナは、顔を赤くしたかと思うと素早い動きで横道に身を隠した。
俺達の前から歩いて来る美少女は
持ち前の明るい笑顔と黄色に近いその髪色からまさに太陽といった印象を受けるこの美少女の事を知らない奴は学校にいないだろう。校内には既にファンクラブも出来ているらしく、十人に聞けば十人が美少女と答えるであろう美少女の中の美少女……それが笹川 京子だ。
ちなみにこの笹川に御執心のツナ曰く「無邪気な笑顔がサイコー!!」らしい。
そんな我が校のアイドル笹川にせっかく会えたというのに、隠れてしまうツナ。まぁ気持ちは分からんでも無いけどな。ダメダメコンビと学校のアイドルである笹川じゃあ生きるステージが違いすぎる。
別に俺は隠れる必要は無いんだが、ここはツナに付き合って一緒に隠れることにする。
「おいおい、隠れることないだろ? 愛しの京子ちゃんだぜ?」
そうツナを揶揄うと、ツナは赤くなっていた顔を更に赤くさせる。
青春ってヤツだねぇ〜、確かに笹川は可愛いが俺はそこまで意識したことはない。幼馴染と同じ女を取り合うなんてゴメンだ。
そんな事を考えつつ、俺とツナは横道に隠れて笹川をやり過ごそうとする。
だが俺達についてきていたリボーンは、俺には関係ねーと言うかのように、笹川京子の前に立っていた。
「何やってんだ! お前も隠れろよ!」
「待てよツナ。今出てけば笹川に見つかるぜ?」
勢いのままに飛び出そうとするツナを止めて、笹川とリボーンの様子を伺う。
どうやら笹川はリボーンの事を気に入った様で、目線を合わせて楽しげに会話してた。
「あ、アイツいきなり京子ちゃんに気に入られてる……!」
「こりゃあリボーンに一歩先を行かれたなぁツナ君よ」
しばらくすると笹川はリボーンと別れ、俺とツナの横を通り過ぎていった。どうやら俺達には気づかなかった様だが、にしても楽しげな顔だったな。
笹川が見えなくなるまで待ってから、リボーンの所へ行くと、リボーンはツナの顔を見てニヤリと口を歪める。
「どうだツナ。マフィアモテモテ」
「んなっ! だ、だからってマフィアにはならないから!」
「ツナ、あの女に惚れてるだろ。俺は読心術をマスターしてるから分かるぞ」
「頼むからほっといてくれよ!」
「もう告白したのか?」
リボーンのその言葉に、ツナは落ち着きを取り戻していつもの自虐的な口調で答える。
「まさか、するわけないだろ。京子ちゃんはどーせ俺なんか眼中に無いって。告白するだけムダだよ」
「すげーなその負け犬体質」
「そう言わないでやってくれよリボーン。笹川京子は我が校のアイドルだからな、俺にはツナの気持ちも分かる」
そう俺がツナに助け舟を出してやると、リボーンは嬉しそうにスーツの内側から何かを取り出した。
「やっと俺の出番だな」
そう言いながら取り出したそれは、およそ日本では見かけることのないであろうオートマチックの拳銃だった。
黒光りするその銃口をツナに向け、リボーンは引き金に指をかける。
「おい待てリボーン。それまさか……」
本物じゃないよな? と俺が言いきる前にリボーンは一切の躊躇もなく、当然だと言わんばかりに引き金を引いた。
「いっぺん死んでこい」
ズガンッ!と音がして、リボーンが手にした銃から煙が吹く。
それと同時にツナの頭から血が噴き出て、まるで糸が切れた人形のようにツナは倒れた。
「おい……嘘だろ?」
目の前で起きた光景を、俺はすぐに受け入れる事ができなかった。だってこの平和な日本の住宅街で幼馴染が赤ん坊に銃殺されるなんて誰が予想できる?
さっきまでコロコロと表情を変えていたいたツナの顔も、今では目を見開いて口を開けた、どこか間抜けな顔をしたまま動かない。
「なんで……なんでツナを……」
呆然自失とする俺に、たった今ツナを撃ち殺した殺し屋は何事もなかったかのように淡々と言い放った。
「見てれば分かる」
その言葉に俺はカッとなってリボーンの胸ぐらを掴もうとしたが、赤ん坊とは思えない見のこなしで避けられる。
「どういうつもりだ説明しろ!」
「言った筈だ。俺は殺し屋だぞ」
「ふざけんな! マフィアのボスにするって話はどうなったんだよ! アレはツナを殺す為の嘘か!?」
「ツナは死んでねーぞ。見ろ」
そう言ってリボーンは俺の後ろを指さす。
どうやらこのクソガキはこの後に及んでまだ意味のわからない事を言って話をはぐらかす気らしい。いくら赤ん坊とはいえ、幼馴染を目の前で殺された俺は怒りがおさまらなかった。
「頭撃たれて死んでねーわけっ……!?」
俺は最後まで言う事ができなかった。何故なら、リボーンが指を差した方ではありえない事が起こっていたのだから。
「なっ……!?」
頭を撃たれて死んだ筈のツナの腹がどんどん膨れ上がっていく。そしてツナが着ていたシャツをぶち破って中から出てきたのは……
「
何故かパンイチで額にオレンジの炎を灯した、さっき撃たれて死んだ筈のツナだった。
「何が起きてるんだよ……!?」
絶句する俺を尻目に、パンイチのツナはその目に決意を宿らせながら、普段なら絶対言わないであろう言葉を叫んだ。
「オレは笹川京子に死ぬ気で告白する!!」
そう叫んだかと思うと、普段の運動音痴なツナではありえない猛スピードでどこかへ駆け出して行く。
「ッ……お、おいツナ! どこ行くんだよ!!」
呆気に取られながらも、俺はツナの後を追うべく駆け出したその瞬間、リボーンのどこか楽しげな声が響いた。
「イッツ死ぬ気タイム」
「クソっ……ツナの奴どこ行ったんだ?」
ツナの後を追って駆け出したは良いものの、ツナの普段では考えられない異様なスピードに追いつける筈もなく。
ものの二十秒でツナを見失った俺は、ツナを探して街を走り回っていた。
にしてもアイツどうなっちまんだ? 確かに頭撃たれて死んだよな? 血も出てたし。
まさかゾンビか……? なんて突拍子もない考えが頭に浮かぶが、それを振り払う。
その時だった。閑静な住宅街に聴き慣れた幼馴染の声が響いたのは。
「笹川京子ぉ! 俺と付き合ってください!!」
間違いない、ツナの声だ。俺は声のした方向へ向かった。
そして、二つほど路地を駆け抜けた俺の目に映ったのはパンイチで突っ立っているツナと、悲鳴をあげながら逃げ出す笹川の背中だった。
本来ならピンピンしてるツナの姿を見て喜ぶべきなんだろうが、俺の頭には別の思いが浮かんでいた。
あーあ、やっちまったなぁツナ。
そんな事を考えながら立ち尽くしている俺の後ろから、黒髪の男が走ってきたかと思うとソイツは棒立ちのツナを殴り飛ばした。
「テメェ、ふざけてんじゃねーぞ変態野郎!」
そう言い残し、笹川の後を追う黒髪の男。
どっかで見たことある気がするが……まあいい。それよりも今はツナだ。
「おいツナ! 大丈夫かよ!?」
俺がツナに駆け寄ると、意識を取り戻したみたいだ、ツナの目が俺を捉える。
気づけば額で燃えていたオレンジ色の炎も消えていて、雰囲気もいつものツナのものに戻っていた。
「なぁナオ……オレ、京子ちゃんにこんな恰好で告白しちゃったのか?」
意気消沈した様子でうわごとの様につぶやくツナ。そりゃショックだよなぁ……笹川にも悲鳴あげて逃げられるし、挙句の果てには変態野郎呼ばわりされたしな。まぁこの恰好じゃ仕方ないが。
「にしてもツナ、お前一体どうしちまったんだ?」
「オレにも分かんないよ! アイツに撃たれて死んだと思ったら、次の瞬間には京子ちゃんに告白することしか考えてなかったから……」
「それが死ぬ気弾の効果だ」
声が聞こえた方を見ると、そこにはあの赤ん坊が……リボーンが突っ立っていた。
「どういうことだよリボーン!」
ツナがヒステリックに叫ぶとリボーンはどこからか取り出した銃弾を指で摘み、俺達に見せつけた。
「この弾は死ぬ気弾。コイツに脳天を撃たれた奴は一度死んだ後、死ぬ気になって生き返る」
「「ハァ!?」」
俺とツナの声が合わさる。にわかには信じがたい話だが……
「ってことは、オレは一回死んでから生き返ったの?」
「そー言ってるだろーが」
ツナの質問にリボーンは飄々とした態度を崩さずそう返した。普通は死んだら生き返らないと思うんだが?
「ちょっと待て。百歩譲ってツナが生き返ったとして、なんで京子に告白しに行くことになるんだ? それもいつものツナじゃ考えられない速さで」
「それも死ぬ気弾の効果だ。一度死んだ時後悔したことを、生き返った後に死ぬ気でやり遂げるようになる。制限時間は五分。その間は身体中の安全機能を取っ払ってるからな、ギリギリまで命を削る代わりにスゲーパワーが出るんだぞ」
リボーンの説明は荒唐無稽ではあったが、実際にその光景を目のあたりにした俺達には信じるしか選択肢が無かった。
にしても死ぬ気弾ねぇ……ツナは死んだ時、笹川に告白しなかった事を後悔したのか……って待てよ?
「もしツナが死んだ時に後悔してなかったらどうなってたんだ?」
「俺は殺し屋だぞ?」
「オレ死んでたのかよ!!」
わざとらしく横を向いてしらばっくれるリボーンにツナが突っ込む。
にしても、マジモンの銃に死ぬ気弾か。ツナをマフィアのボスにするって話も現実味を帯びてきたな。
「死んでたらどうするつもりだったんだよ!」
「死んでねーから良いじゃねーか。笹川京子に感謝するんだな」
「偉そうにするなよ! 大体……」
ツナとリボーンが言い合う横で俺が色々と考えている最中、ふと周囲の白い目線に気がついた。
そーいや、今のツナはパンイチだったな……。
それに気づいてツナの方を見ると、ツナも周囲の白い目に気づいた様だった。
「とりあえず帰ろーぜ……?」
そうして俺達は周囲の白い目に耐えながら、ツナの家に戻っていったのだった。