幼馴染のついでにマフィアにされたら、武器がフォークでした 作:クォールツ
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この小説は、皆様の善意に支えられております・・・。
「どーすっかなぁマジで……」
この教室でリボーンとの二者面談をした次の日の放課後、俺は昨日と同じようにポケットから取り出した銀色のフォークを意味もなく弄んでいた。
フォークを人差し指と親指で挟んで左右に振って遊びながら、昨日のリボーンの言葉を思い出す。
「俺には俺のファミリーねぇ」
「ファミリー?」
「うおっ!?」び
急に俺の後ろから聞こえた声にビビりながら振り返ると、そこには怪訝な顔をしたツナが居た。
「どうした、ツナ? なんか用か?」
持っていたフォークをさりげなくポケットに戻しながらツナにそう聞くと、ツナは怪訝な顔を崩さないまま口を開いた。
「用ってほどじゃ無いけどさ、獄寺くんと山本と一緒に遊びに行くんだけど、良かったらナオもどうかなって」
「あぁ〜、悪りぃツナ。今日はちょっと用事がな」
いつもの台詞を使ってツナの誘いを断る。流石にこの二ヶ月の間に何回も使い込まれたこの台詞は、今のツナにはあまり効き目が無いようだ。
「またそれかよぉ? っていうかさっきファミリーとか聞こえたけれど、もしかしてリボーンに何かやらされてるんじゃ無いだろうな!?」
そう心配して詰め寄ってくるツナ。穏やかなツナがこうして詰め寄ってくるというのはなかなかないことだ。まぁツナがリボーンにやらされてることを聞けば、この反応は当然とも言えるが。
これは上手く丸め込まないとヤバいな……よし、ここはとっておきのを使おう。正直あまり使いたくは無かったが。
「まぁまぁ落ち着けよツナ。安心してくれ、用事っつーのはコレだよコレ」
そう言って左手の小指だけを立て、ツナの目の前で振って見せる。
俺の言いたいことは伝わったらしい、顔を赤くしながら興奮した様子で俺に色々聞いてきた。
「マジかよ!? 待ってナオ、いつの間に!?」
よし、食いついたな。後はそれらしい理由を並べるだけだ。
「お前がリボーンに色々扱かれてる間に、ちょっとな?」
「羨ましいぞこの〜! で、どんな子なの!?」
「教えるわけねーだろ、秘密だ秘密! 悔しかったらお前も彼女の一人作るんだな」
そう言って俺はわざとらしく高笑いしてやる。本当は恋人どころか暇を潰す相手すら居ないのだが。
あぁいくらツナの為の嘘とはいえ虚しい……どっかに俺の事好きになってくれる娘居ねーかな?
そんな虚しい俺の胸中を知らないツナは、何故かホッと胸を撫で下ろした。
「クッソ〜、でも良かったよ。ナオがリボーンに巻き込まれて無くて。アイツメチャクチャだからさー、マフィアがどーとかこーとかマジ勘弁してほしいよなぁ……俺はマフィアになんかなりたく無いのに……」
「ま、まぁ確かになぁ?」
実際は、俺も現在進行形で一流のマフィアにさせられているんだがな。
ツナは俺がリボーンにマフィアの道を進まされてる事を知らない。
俺とリボーンが協力して徹底的に隠している。理由は俺がツナと距離を置いた理由と同じだ。まぁマフィア仲間がいたら頼っちまいそうにもなるよなぁ、正直俺もツナにファミリーの作り方を教えて欲しい。
「まぁそういうことだから、暫くの間は無理だ! 悪りぃな!」
そう切り上げてそそくさとその場を離れる。これでしばらくは大丈夫だろう。また新しい言い訳を考えておかないとな……。
にしても、どうして俺はこんな虚しい嘘を使わなきゃいけないんだろうか? 一瞬そんな考えが頭に浮かんだが、ツナの為だと気を取り直す。
にしても、この後はどうするか。勢いに任せて行き先も決めないで教室を飛び出て来てしまった。
まぁ時間だけはあるからな。とりあえず今日は適当に校舎でも回ってみよう。
アテもないまま、並森中の校舎を練り歩く。
今日は休みの部活が多いみたいで、昇降口に向かう生徒の数がいつもより多かった。そういやツナが山本と遊びに行くって言ってたな。ということは野球部も休みか。
そんな事を考えながら脚を動かしていると、いつのまにか剣道場の方に来ていた。ここからツナの伝説が始まったんだよなぁ……なんて考えつつ遠くから剣道場を眺めていると、剣道場の扉が開き、中から一人男子生徒が出てくる。
きっと剣道部員だろうな。右手に竹刀を持ったまま面を脇に構え、身につけたままの防具の前垂れには大きく『持田』と書いてある……って、持田!?
そこで気づいてそいつの顔をよく見てみる。間違いない、持田だ。ツナに髪の毛を全部抜かれてつるっ禿げになっていた時のイメージが強くてすぐに気付かなかった。
生えてくるかどうか心配にだった髪の毛も無事に生えてきたみたいだ。ツナに抜かれる前程では無いが、少し短めのショートヘアに落ち着いている。
しかしツナとの試合前と比べると、纏う雰囲気がなんか暗い気がする。ツナにこっ酷くやられたのをまだ引きずっているのか。俺には自業自得としか言えないが。
しばらく持田の様子を伺っていると、持田はそのまま剣道場を離れどこかへ歩いていく。
防具をつけたまま剣道場から出てきた持田が何故か気になったので、俺はバレないようこっそり持田の後をつけることにした。
持田は剣道場からどんどん離れて行き、ツナと獄寺が決闘していた人気のない校舎裏まで来るとようやく脚を止めた。
抱えていた面を地面に置くと、周囲に誰も居ない事を確かめてから竹刀を構え素振りを始める。
俺は物陰から隠れてその様子を覗きながら首を傾げた。
一見すれば、やってることは至って普通の剣道の練習だ。でも、なんで剣道場で練習しないんだ? わざわざ剣道場から離れてこんな所で一人で練習する理由が分からない。
俺が、持田の様子を不思議に思い観察を続けていると、急に背中に衝撃が走った。
《big》「うげえっ!!」
完全に無防備だった俺は、そのまま前のめりに倒れてしまう。
「痛ってーな、何が起き……」
そう愚痴りながら立ち上がろうとした時、俺に向けられる視線を感じた。
視線を感じる方に顔を向けると、そこには先程まで素振りをしていた持田がその手を止めて、明らかな敵意を込めて俺を睨みつけていた。
やべぇぇぇ! バレちまった!
とりあえずこの場を誤魔化さなければ……しかしどうする?
黙り込んだままの俺を見て、持田は俺に対する敵意を更に強めている。
まずい、まずいぞコレは……。ずっと黙っているわけにもいかないので、何か言わなければと思い口を開こうとしたとき、逆に持田の方から声をかけてきた。
「お前、確か沢田とよく一緒にいた四阿だよな……」
「はっ、はい。その、練習覗き見するつもりは無かっ……」
覗き見してた事を素直に謝ろうとした俺を遮るように持田の口から飛び出してきた言葉は、思いもよらないものだった。
「……お前もか?」
「えっ?」
「お前もアイツらのように、俺を馬鹿にしに来たのか!? 沢田に負けた俺を!!」
そう怒鳴る持田の両手は、怒りに打ち震えている。
一方で俺は、言われたことの意味が分からず固まることしかできなかった。
持田が馬鹿にされてるなんて話は聞いたことが無かったし、それにアイツらって誰のことを言っているんだ?
呆けたまま何も言わない俺に痺れを切らしたのか、持田は置いてあった面を持ってこの場を離れようとする。
スタスタと足早に去っていく持田の背中は、俺の目には何処か哀しげに映った。
次の日の放課後、俺は今日もツナの誘いを断ってから、持田に会う為に校舎裏に向かっていた。
結局覗き見をしていたことを謝れていないし、なにより持田の様子が気になった。
別に持田と俺は親しいわけでもない、むしろ昨日初めて喋ったくらいだ。
でも……何故かは分からないけど、昨日見た持田の哀しげな背中が頭の中から消えなかったんだ。
持田を探して、校舎裏へと続く道を歩く。
一応、剣道場も覗いてみたがそこに持田の姿は無かった。
恐らく今日も、昨日のように校舎裏で一人練習しているんだろう。
俺はそう予想していたのだが……辿り着いた校舎裏には持田の姿は無かった。
昨日はたまたまここに来ただけか?
そう思って辺りを見回す。すると、少し離れた水飲み場で、何かを必死に洗う持田の後ろ姿を見つけた。
遠くからでは持田の体で隠れていて何を洗っているのかは分からなかったが、声をかけようと近づいた時、俺には分かってしまった。何を洗っているのか、何故人気のない校舎裏で練習しているのか、何故持田の背中が哀しげに見えたのか……その全ての理由が。
持田が洗っていたもの……それは防具だった。持田が使っているものと思われるそれには、赤いマジックで書き込まれたと思われる罵詈雑言が一面に広がっていた。『馬鹿』『雑魚』『ゴミ』……そんな悪意に塗れた落書きを落とそうと持田はスポンジで必死に擦るが、油性マジックで書かれたと思われるそれは簡単には落ちそうにも無かった。
それだけじゃない、よく見てみれば落書き以外にもカッターで付けられたと思われる大量の切り傷によって持田の防具は見るも無惨な状態になっていて、俺は思わず息を呑んだ。
「ッ……!!」
俺の息を呑む音が聞こえたんだろう、持田は此方をチラッと確認したが、すぐに防具に目を戻して落書きを落とす作業に戻った。
持田の目は一瞬しか見えなかった。
だが、そこには何の感情も無かった。
本来ならある筈の、加害者に対する怒りや憎しみ……自分に対する悲しみや嘆きは一切存在していなかった。
ただただ虚無のみが広がるその目は、このような事が初めてではないということを物語っていた。
しばらくの間、俺は絶句していたが持田の防具から出たガコッという音に我に返る。
持田は左手で胴を抑えながら右手に持ったスポンジで落書きを擦っているが、置き場が良くないせいで酷く洗いにくそうだ。
それを見た俺は、どう声をかければいいかだなんて考えよりも先に行動に移していた。
「あの! 手伝います!」
そう一言だけ言って水飲み場の裏に周り、後ろから防具を押さえる。
……なんかヤケに重いような気がするぞこの防具。
「同情なら要らない。失せろ」
持田はそう吐き捨てるが、ここで止めれる様なら、そもそも最初から手なんか出していない。
「同情なんかじゃない、俺がやりたいからやってるんです」
そう俺が言うと、持田はフンッと鼻を鳴らした。その後は特に何も言っては来ず、しばらくの間、俺と持田の間には蛇口から出る水の音、スポンジが防具と擦れる音だけが響いていた。
しばらく持田は防具をスポンジで擦っていたが、一向に消える様子のない落書きを見て、徐ろに蛇口を閉めた。
俺の協力も虚しく、防具にはまだ半分以上落書きが残っていた。
「……これ以上は時間の無駄だ」
そう言って持田は、ポケットから取り出したタオルで防具を乱暴に拭きあげる。
あらかたを拭き終えるとタオルを肩にかけて防具を掴み、校舎の方に向かう。
「あっ、あの……!」
思わず呼び止めてしまったが、俺は何を言えばいいのか分からなかった。
"いつからなのか"とか、"誰がやったのか"とか、聞きたいことは山のようにあったけど、それを素直に声にするのは憚られた。それを持田に聞いたら、嫌なことを思い出させてしまうと思ったから。
「……助かった」
何も言えない俺に向けてそう一言だけ言って、持田は校舎に戻っていった。
「……なんだそれは?」
次の日、昨日と同じように防具を洗う持田の元に現れた俺を見て、持田は開口一番にそう言った。
「コレっすか? 消毒用アルコールっす。マジック落とすならコレが効くらしいっすよ?」
そう言って俺は手に持った消毒用アルコールを振ってみせる。
「というか、なんでお前が居るんだ。俺のことは放っておいてくれ!」
「まぁまぁ、とりあえず試してみましょうよ。その洗剤じゃ落ちねーみたいだし」
そう言って俺は、昨日よりもいくつか落書きが増えた持田の防具を指さす。持田が持ってきたと思われる洗剤は無いよりはマシといった所で、お世辞にも役に立っているとは言い難かった。
持田は「チッ」と舌打ちして、俺が防具に触れられる様に身体を少しずらす。
それによって生まれたスペースに入り、表面の水気を取ってから持参したティッシュに消毒用アルコールを少し吹き付け、防具の表面を撫でるように擦る。
すると、あんなに頑固だった落書きは面白いように取れ、ティッシュが通った場所には防具の元々の色だけが残った。
「「おおおおおお!」」
俺と持田の歓声が重なる。
思わず持田の方を見ると、持田は少し顔を赤くしてバツが悪そうにしていた。
「……なんだ?」
「いや〜、別にぃ? 持田先輩もこれ使ってくださいよ」
俺が使ったのとは別の、消毒用アルコールを含ませたティッシュを用意して持田に渡す。
「……さっさと終わらせるぞ」
持田はそう言ってティッシュを受け取り、落書きを落とし始める。
三十分もすれば防具を埋め尽くしていた落書きは全て消え、元の黒一色に戻った。
「いや〜落ちた落ちた! 消毒用アルコール様々っすねー!」
「……何にも聞かないのか?」
そう言って持田は俺の目を見た。
昨日は虚無しか映っていなかったその目には、今日は疑問の色が浮かんでいた。
「いや〜別に色々聞きたくて手伝ったわけじゃないんで。まぁ聞いて欲しいってんなら聞いてあげますよ?」
「チッ……お前、性格悪いな」
「お互い様でしょ? 持田先輩」
そう返すと、持田は更に舌打ちをして、置いてあった竹刀を手に取り素振りを始める。
手持ち無沙汰になった俺は、ポケットからフォークを取り出していつものように弄び始めた。
しばらくの間、俺達に訪れた静寂を破ったのは持田の方からだった。
「……俺が沢田に負けてからだ」
持田はそう語り始めるも、素振りを止めることはしなかった。
俺もフォークを弄びながら、何も言わず持田の声に耳を傾けることにした。
「今まで俺を持ち上げていた後輩や友人達は、掌を返すように態度を変えて俺を蔑んだ。当然だよな、あんな無様な負け方したら」
ブンッ、ブンッと竹刀を振る音が続いている。
「沢田をカスと侮り、その上小細工まで仕掛けた……剣道初心者の一年にそこまでして負ける、クズで弱い、なんとも小さい男なんだ俺は」
小細工までやってたのか、流石にそれは初耳だった。
「俺は沢田に……そして巻き込まれた挙句、賞品扱いされた笹川に一言謝って、ケジメをつけるべきなんだろう。
そしてキッパリ沢田との事を忘れ、前に進むべきなんだろう……」
「だが」と続けた持田は竹刀を大きく振り下ろし、そのまま腕を止めた。持田の目は竹刀の先端を真っ直ぐに見据えている。
「だが俺は、未だに沢田に執着している。
敗北を受け止められず、沢田を倒すことだけを……勝つことだけを考えて、今も練習を続けている。
そんな俺は……やはり小さい男なんだろうか?」
そう言って、持田は素振りを再開した。
なるほどねぇ、嫌がらせを受けてまで剣道の練習してたのはツナに勝つためだったのか。確かに小さいのかもしれない……けど。
「分かってるじゃねぇか! 小せぇ男だよお前は!!」
俺が持田の質問に答えるより先に、どこからか誰かの怒号が飛んでくる。
声がしてきた方を見ると、竹刀を持った男子生徒が五人ほど集まって此方に歩いてくるのが見える。
そいつらは俺と持田の前まで歩いてくると、先頭に立っていた茶髪のヤンキーみたいな奴は、その顔を悪辣に歪めて口を開いた。
「ダメツナなんかに無様に負けたハゲ野郎が! オメーなんかがうちの主将ってんだから情けねーよなァ!! 剣道部の名前も地に落ちたってもんだ!!」
どうやらコイツらは剣道部の奴らみたいだ。持田の防具にマジックで落書きしたのもコイツらだろう。……なんだかイライラしてきた。
茶髪野郎の口は閉じる事なく罵声を吐き出す。
「お前が辞めやすいように俺達が色々"親切"してやったのに、惨めに剣道部にしがみついてよぉ!
挙句の果てには沢田にリベンジだぁ!? 迷惑なのが分かんねーのかよ!?
さっさと消えろよクソハゲ!!」
罵声を浴びせられている間も、持田は何も言わずに茶髪野郎を睨むだけだった。
何も言えない持田を見て気をよくしたのか、茶髪野郎とその取り巻き達はギャハギャハと下賤な笑い声をあげている。
するとわ取り巻きの内の一人が俺の存在に気付いて、更に顔を醜く歪めながら俺を指さして笑った。
「
その言葉で他の奴らも気づいたらしい、俺の方を見て更に大声で笑い始める。
「コイツは何の関係もない!」
持田はそう言うが、コイツらはそんなのお構いなしのようだ。
霜川と呼ばれていた奴が笑いながら俺の目の前に来る。
「だ〜いじょうぶだよ持田、お前が小っちゃいってのはよ〜く分かってるからよォ! 俺は優しいからさァ、今度はお前でも勝てるようにしてやるよォッ!!」
そう言って霜田は持っていた竹刀を俺の脳天目掛けて振り下ろしてきたが、俺は別に驚かなかった。
どーせこんな事だろうと思ったんだ。
別に避けても良いが、持田に対するコイツらの態度にイライラしていたからむしろ丁度いい。
俺は手に持っていた銀のフォークの腹で竹刀を受け止める。リーチの短いフォークだが、
俺が痛みに悶える姿を想像していたんだろう。霜川は、竹刀をフォークで受け止められた事に気づくまで少しかかったが、それに気づいた後はさっきまで笑ってやがったその顔には怒りが浮かんでいた。
「ダメナオの癖に、抵抗すんじゃねぇよ!」
そう言って今度は竹刀を横に振り払うが、再度フォークを使って受け止める。
副将とか呼ばれていたが、明らかに剣が遅い。素人の俺でも見切れるレベルだ。
その瞬間、俺の頭にある計画が浮かんだ。
これならコイツらを黙らせられるし、持田のことも何とかできるかも知れない。
その計画を実行すべく、俺は霜川を煽り始めた。
「すみませ〜ん、二回も受けちゃって。これって、俺みたいなダメナオにも見えるレベルで打ちこんでくれてるんですよねぇ?」
「テメェっ!」
「アレ? ひょっとしてマジでやってコレすか? 霜川先輩もダサいっすねぇ!」
「ふざけてんじゃねぇぞ!」
そう言って乱暴に竹刀を振り下ろしてくるが、それもフォークで受ける。
俺に煽られたことと自分の竹刀を、しかもフォークで受け止められたことですっかり冷静さを失っていた。仕掛けるなら今だ。
「霜川センパ〜イ、どうせならもっとギャラリー集めてから一対一でやりません? 俺、なんか勝てるような気がするんすよねー、なんて」
「お前が俺に勝つなんて十年早ぇんだよ!」
「負けるのが怖いんすか? じゃあこうしましょう。霜川先輩は防具と竹刀で、俺は防具無しで武器はコレしか使わない、どうです?」
そう言って霜川に持っているフォークを見せつけてやる。
「ここじゃ誰に見られるか分かんないっすよ? 教師に見つかったらマズくないです?」
流石にコイツも教師に見られたくはないんだろう。さっきまでの勢いは鳴りを潜め、こちらを睨むだけになった。
「もし俺が負けたら、土下座でもなんでもやってやります。靴舐めたって良いっすよ?」
ここまで押せば乗ってくるだろう。というか乗ってこい、頼む!
「チッ……明日の放課後、剣道場に来い。言っとくが逃げたら承知しねぇぞ!!」
よしよし、乗ってきやがった。すかさず追撃を仕掛けに行く。
「分かりました〜。あっ、そうだ。あり得ないと思いますけどぉ、万が一俺が勝ったらどうします?」
「絶対そんなことは起きねーから安心しな! もしそうなったら俺も土下座でもなんでもしてやるよ!」
そう吐き捨てて霜川とその取り巻きは帰って行った。
上手く乗って来てくれて助かったぜ。
計画の成功にほくそ笑む俺に、持田が心配そうに声をかけてくる。
「オイ……大丈夫なのか?」
「 大丈夫っす。靴舐めるくらい余裕っす」
「ダメじゃねーか!」
「冗談っすよ、大丈夫ですって。安心してください!」
実際は大丈夫なんかじゃないが。
なんかイラついていた勢いのまま吹っ掛けてしまったが、よくよく考えたら無理ゲーじゃね? 竹刀だけならまだしも防具もあるんだぞ? こっちには無いけど。
考えれば考えるほど、頭を抱えたくなってくるが言ってしまったものは仕方ない。
「持田、先輩も見に来てもらって良いっすか? 負けないんで」
そう言って俺は、人生で初めて不敵な笑みってヤツを作ってみせた。
「ハァ……分かったよ。だが助けは期待するなよ? お前が言い出したんだからな?」
そう言って、持田は左手を額に当てた。
「そんなの期待して無いっすよ」
嘘だよ、ちょっと期待してたよ。まぁ仕方ないな……。
リボーンに死ぬ気弾撃って貰えるようお願いするか……。