乾いたターフを湿らせる   作:やわらかスマホ

3 / 28
第三話

「あっ、トレーナーさん。探しましたよ、宜しければ少々お時間を頂けませんか?」

 

 トウカイテイオーと話をしてから一週間近くが過ぎたある日。

 

 トレセン学園の校舎を歩いていると、理事長秘書である駿川たづなさんに声を掛けられた。緑色のレディーススーツに身を包み、同色の帽子を被った若い女性だ。いつも礼儀正しく穏やかで、とても話しやすい人物。

 

「あー……もちろん大丈夫ですよ。何でしょうか、駿川さん」

 

 この時期での要件なんて心当たりが一つしかないので気まずそうに返事をする。おそらく、というかほぼ間違いなく担当ウマ娘をまだスカウトできていないことが原因だろう。

 

 あれから気合を入れてスカウトにまた励み始めたのだが、それだけでなんとかなるほど現実は甘くなく、結局未だに担当ウマ娘を手に入れることは出来ずにいた。

 

 しかもあの日から妙にトウカイテイオーに懐かれてしまったため、あいつが一通り自主練を終えると延々と長話に付き合わされてしまうので、そう時間も長く取ることが出来ない。なら追い払えよ、という話なのだが。ウマ尻尾を振りながら嬉しそうに近付いてくるあいつを見ると、どうにも無碍にすることは出来なかった。

  

 ペットとして犬でも飼っていたらあんな感じなのだろうか……。まあ、あいつがいようがいまいがどうせスカウトは成功していないだろうし、もう仕方がないと今では割り切っている。

 

「もうっ、駿川さんなんて他人行儀な呼び方はやめてください。私とトレーナーさんの仲じゃないですか、遠慮せずに名前で呼んでくださって構いませんよ」

「いや、駿川さん、それは……」

「……たづな」

「ええっと……たづなさん」

「はいっ! よく出来ました!」 

 

 駿川……いや、たづなさんは嬉しそうに両手を合わせて微笑んだ。俺とこの人は単なる職場の先輩と後輩だし、特別な関係でも何でもない。なんなら知り合って一か月にも満たず、無関係の他人から知人にクラスチェンジした程度の間柄でしかないのだが、そんなことを突っ込める雰囲気ではなかった。

 

 この学園にトレーナーとして就任したとき、右も左もわからない状態だった俺に優しく様々なことを教えてくれたのがこの女性だったため、この人に頼まれると弱い。今でもある意味迷子のようなものだが、当時は本当に何もわからなかったし。

 

「ところでたづなさん、俺に何の用でしょうか? ――いや、しらばっくれるのはナシか。担当ウマ娘の件ですよね」

「……ええ、そうです。トレーナーさん、スカウトの方はまだ上手くいっていらっしゃらないのでしょうか?」

 

 たづなさんは憂いを含んだ表情で俺に尋ねてくる。案の定、スカウトの件か。この時期で担当を持っていないトレーナーは今では珍しいので当然のことではあるが、気が重くなる話だ。地方に飛ばされる前の最後通告か何かだろうか。

 

「正直に言えば、全然ですね……。どうすれば上手くいくのかまるでわかりません。そろそろサブトレーナーとして働く道も検討し始めてる程ですよ」

「そうなんですか……。トウカイテイオーさんと最近親しくされているようですが、彼女とは契約を結ばないのですか?」

「いえ、あいつには一度断られているし、話してるのだってただ世間話をしてるだけですよ。あいつも俺のことは暇つぶしの相手程度にしか思ってないでしょう」

 

 スカウトを保留にしているために、現在トウカイテイオーには担当トレーナーはついていない。かと言って俺があいつのトレーナーになれるかと言えばそれは無理な話だろう。初めて選抜レースで声を掛けたとき、俺は奴の眼中にも入っていなかった。今更同じことをまた繰り返しても結果は変わらないだろう。

 

 無駄なことをして関係を険悪なものにすることはない。というか、仮に担当出来たとしてもあいつの世話をすることなど、今となっては御免被りたい。下手に親しくなってしまったから理解したが、あの夢を背負うことはなかなか重そうだ。

 

「では、差し出がましいかもしれませんが、私が何人かウマ娘たちを選んで紹介しましょうか? 実を言うと、貴方のことが気になっているというウマ娘たちは結構いるんですよ? ――今期のトレーナーライセンス試験、トップ合格者の貴方を」

「ああ、そんなこともありましたね……。試験での成績なんて大して意味はないですけど」

 

 遠い目をして俺は呟いた。そういえばあの試験をトップで合格してたな……。あまりにもスカウトが成功しないため、そんな事実はすっかり記憶から消し去られていた。むしろ現状を鑑みるに、あの結果は何かの間違いだったのではないだろうか。スカウトの出来から考えると、俺以外の同期の方がよっぽど優秀に思えるんだが。

 

 合格した当初も試験の順位なんて別に意味はなく、合格してライセンスを得ること自体が重要だと考えていた。肝心なのはトレーナーになって担当ウマ娘を勝たせるという結果であり、一位で合格したという過程に大きな価値はないと。とにかく、トップ合格というなかなかに輝かしい経歴を持っている俺が今まさに落ちこぼれかけている、それだけが事実だ。

 

「このようなことを言うのは失礼であることはわかっていますが、それでも言わせてください。どうかもう少しだけ、スカウトする娘たちの幅を広げてみてはくれないでしょうか? 理事長も含め、私たちは貴方のことを評価しています。貴方ならば、立派なウマ娘を育て上げることが出来ると」

「……過大評価ですよ、それは。俺はスカウト一つ上手くできないトレーナー未満の男だし、そんな評価は相応しくない」

「いえ、ご自分を卑下なさらないでください。あの成績は並大抵の努力で成し遂げられるものではありません。担当のウマ娘さえ決まれば、きっと貴方は羽ばたいて行ける。私はそう信じています」

 

 たづなさんの、誠実で曇りのない瞳から向けられた信頼に俺は耐えきれず視線を逸らした。出会って一か月もない貴女に俺の何がわかる。思わずそう言いたくなってしまうが、そのようなくだらない言葉をこの人に投げかけたくはなかった。

 

 スカウトするウマ娘の幅を広げろ、か……。つまりいつまでも高望みはしないで自分に合ったランクのウマ娘を選べ、そういうことだろう。なぜこんなにもスカウトが難航しているのか、その理由の一つが俺の相手に求める基準の高さにあることは薄々感じていた。

 

 けれど、もしそこまで才能に恵まれていないウマ娘を選んで、そいつを勝たせてやれなかったら。そいつの夢を叶えさせてやることが出来なかったのなら、俺は……。

  

 ――いや、違う。弱いウマ娘など選んでは負けるだけだし、俺の評価が下がるのが嫌なだけだ。勝負の世界は、トレーナーは、結果を出すことが出来なければ無意味なんだ。

 

「貴女の忠告は本当にありがたいし、もっともなことだと思います。ですが俺は、どうしても自分の基準を曲げることは出来ません。それで駄目なようだったらサブトレーナーになることも、地方に飛ばされることも覚悟のうえです。……期待に沿うことが出来ず、申し訳ありません」

「そうですか、残念です……。ですが、あまり思い詰めないでくださいね? この娘となら一緒に頑張っていける、この娘を勝たせてあげたい。そのような気持ちを抱ければそれで充分スカウトする理由になると思いますよ。もちろん勝つことも大事ですけど、そんな娘と一緒に駆け抜けた経験は貴方の財産になりますから」

「……はい、とても参考になりました。お気遣い、感謝致します」

 

 心配そうに見つめてくるたづなさんに礼を言って、俺はその場を後にする。こんな俺のために気配りをさせてしまって申し訳なく感じたが、あの見透かすような視線からはもう逃げ出したかった。

 

(この娘となら一緒に頑張っていける。そう思えるのならスカウトする理由としては充分、か……)

 

 俺は今までウマ娘の現在の能力、有する才能でしか彼女たちを見ていなかった。内面など二の次、まずはレースを勝ち抜ける才覚がなければ何も始まらないのだと。

 

 それが全て間違っているとは思わない。夢を追ったはいいものの全く勝てずに終わりました、では話にならないからだ。俺たちトレーナーにも、担当するウマ娘たちにもそれぞれの生活がある。勝てなければ路頭に迷うだけだ。

 

 けれど、たづなさんの言うように、もう少しだけそれらの――ウマ娘たち個人の人格にも目を向けるべきではなかっただろうか。彼女たちと実際に触れ合って、共に長い道のりを歩めそうかどうかも確かめるべきではなかっただろうか。

 

 ……まったく。トレーナーとは、本当に奥が深い職業だな。

 

 

 

 

「ねぇねぇ、ちょっと聞いてよーっ! 今日カイチョ―に会いにお昼に生徒会室に行ったらさ、いなかったからがっかりしてご飯食べたあとソファでお昼寝しちゃったんだ。そしたらエアグルーヴがすっごく怒ってさー、酷いと思わない?」

「いや、酷いのはお前だよ。なんで用事もないし生徒会役員でもないのに生徒会室に平然と行くんだよ。しかも昼寝までするとか傍若無人すぎるだろ」

「えぇーっ? だって、生徒会室のソファってすっごくフカフカで気持ち良いんだよ? お昼寝するならあそこに限るのに」

 

 悩みを抱えたまま。それでもいつものように惰性でスカウトに乗り出した俺を待っていたのは、またしてもトウカイテイオーだった。陽気に話しながら、ポニーテールとウマ尻尾がまるで生き物のようにそれぞれ飛び跳ねている。こいつほんといつも元気だな。

 

 エアグルーヴとやらの苦労が偲ばれる。確か生徒会の副会長だったと記憶しているが、こいつがお目当ての会長に会いに行くたび、顔を合わせて相手をしてやってるのだろうから大変なことだろう。というか先輩なのに呼び捨てにしてるのかよ、先達にはちゃんと敬意を払え。

 

「……あれ、キミ、なんかちょっと元気ない? いつもとちょっと違うような――」

「別に、いつもこんな感じだろ。……何も変わらないから気にするな」

 

 トウカイテイオーがふと気付いたように眉を寄せる。前から思っていたが、こいつは人のことなど見ていないはずなのに案外と目ざとい所がある。勘が鋭いというか、本質を見抜く能力が備わっているように感じる。

 

「ふーん、そっか……。でももし本当に元気がなかったとしても、ボクとお喋りしてたらそのうち良くなるよね。だってボク、話だってちょー盛り上がる、最強無敵のテイオー様だもんね!」

「いや、それはどうだろうな。お前の話は大抵つまらないからなあ……」

 

 こいつの話は大体自分の自慢か、あるいは尊敬するシンボリルドルフの話だ。しかも殆どのパターンでオチも山もない。まるで事実だけをただ羅列する日記帳のような平坦さ。まあなんとも微笑ましいのは確かだが、外見と同じく子供の会話だ。

 

「少しは面白い話が出来ないのか? そんなんじゃそのうちシンボリルドルフも呆れちまうぞ」

「ああっ、言ったなあ! ボクだって面白い話の一つや二つ出来るやいっ!」

 

 その後。ムキになって、わいわいと騒ぎ立てるトウカイテイオーに振り回されながらも、俺はわずかに気持ちが軽くなるのを実感していた。担当ではないものの教え子であり、こんな年下の少女にすら心配を掛けてしまっている自身が情けなくて苛立って、俺はつい憎まれ口を叩いてしまうが。

 

 このようなくだらないやりとりでも、精神の安定には効果的なのだと学ばせてもらった。むしろこいつ犬みたいだし、動物と触れ合うことで心を癒すアニマルセラピーとかいう奴だろうか。いつか犬を飼ってみるのも悪くないかもしれない。

 

「……ところで、お前はまだトレーナーを決めてないのか? あれから心を入れ替えたみたいだし、今のお前が選んだ奴ならシンボリルドルフも文句は言わないだろ。リギルの東条さんからも誘われてるみたいだし」

「えっと、あの女の人ボクちょっと苦手なんだよね……。練習とか見てると怖そうだし、なんかエアグルーヴみたいでさあ。ボク、どうせなら楽しんでやりたいんだよ」

「なるほどな。まあ、ウマ娘がトレーナーに求めることはそれぞれ違うし、お前が肌に合わないと感じるのなら仕方ないか」

 

 チームリギル。それは、トレセン学園にいくつも存在する中で最高峰に位置するチームだ。トレセン学園で最高クラスということは、つまり日本最強格と言い換えていい。所属するウマ娘はそれぞれがGⅠをいくつも獲った選りすぐりの中の選りすぐり。こいつが憧れているシンボリルドルフもそこに属している、トップエリートのみが揃えられた天才たちの集い。

 

 チーフトレーナーを務めるのは東条ハナという女性。何度か目にしたことがあるが、眼鏡を掛けタイトスーツを着こなして怜悧な雰囲気を醸し出した、いかにもなキャリアウーマンという人だった。間違いなく日本有数のトレーナーなのだろうが、気軽に声を掛けることは出来そうもないので、トウカイテイオーの言いたいこともわからんでもなかった。

 

 この時期でもまだトレーナーを見つけていないのは些か問題ではあるが、こいつの場合、その気になればすぐにでも見つかるだろうしそう大したことでもないだろう。俺とは違って、既にパートナーが埋まっている以外のケースで選んだ相手に断られるということはまずあるまい。

 

「もうボクのことはその辺でいいじゃん。それよりさあ、そんなことを言ってるキミの方が大変なんじゃないの~っ? まだ担当ウマ娘決まってないんでしょ?」

「……しょうがないだろ。スカウトってのは難しいんだよ、特に実績もない新人にとってはな。お前だってやれば……いや、案外上手く出来そうだけど俺は苦手なんだ、そういうの」

「あはは、キミちょっと愛想悪いもんねーっ、ボクじゃなかったらこんなにキミに付き合ってあげてないよ? でもボクは優しいから、スカウトが上手くいかないキミをこうやって慰めてあげてるんだ」

 

 にっしっし、とまるで悪戯好きなチェシャ猫のようにトウカイテイオーは笑う。まったく、好き勝手言いやがる。しかし、からかい半分だろうがこいつの言うことも的を射ている。

 

 他人と比べて愛想がないのは自分が一番理解している。そんなものはこれまでの人生で重要視されていなかったし、なくても実力でどうとでも出来ていたが、今となっては軽視すべきではなかったかもしれない。いや、いつかは必要になることはわかっていたが。向いていないと適当に理由をつけて、回避していたツケが回ってきただけか。

 

「あっ落ち込んじゃった? ごめんね、そんなに気にしないでいいよ。キミが良い人なのはボクがよく知ってる。絶対、いつか皆キミの良さに気が付くはずだから」

「別に。ただ本当のことを言われただけだ、落ち込むも何もない。だけど、そうだな……これからは、もっと言葉を尽くして自分をアピールしていくよ」

 

 考え込んだ俺にトウカイテイオーは少し慌てて声を掛けるが、むしろ逆に感謝してるくらいだ。お前と話して気分は軽くなったし、お前と話して気持ちが固まった。早速、宣言通りアピールを始めるとしよう。

 

「……トウカイテイオー」

「う、うん」

 

 意を決して呼び掛けると、なぜか固い返事が返ってくる。何をそんなに緊張しているんだ、らしくない。お前はそういうキャラじゃないだろ。いつもみたいに偉そうに、天真爛漫に、快活にしていればいい。そんなお前だからこそ――

 

「――俺の担当ウマ娘になってくれ。お前と一緒に歩いていきたいんだ」

「ぴ、ぴぇ……ぴえぇっ! ぼ、ボクと!? あ、あの、キミ、本気なの……?」

 

 俺の渾身のスカウトを聞いたトウカイテイオーは耳と尻尾をピーンと逆立て、謎の鳴き声を上げた。いや、どういうリアクションだよ。ただスカウトしただけだろ。覚えてないみたいだが、最初に俺が同じようなことを言ったときはそんな反応じゃなかっただろ。

 

 あのときは、その他大勢に囲まれて何もすることが出来ず、相手にもされずただ埋没して終わった。だが今はもう、ここには俺とお前の二人しかいない。邪魔する者は誰もいない、お前は俺を見るしかない。

 

 ……もう逃がさない。今度こそ俺は、俺が欲しいと思っているものを手に入れる。

 

「本気だ、本気に決まってる。こんなことを冗談で言うほど俺は愉快な男じゃない」

「で、でも……。今までずっとそんな素振り見せなかったよね? ボクが毎日アピール……ごほん! 話してても、からかってきたりするだけだったし……」

「気が変わったんだ。どうしてもお前が欲しくなった。お前の夢を叶えてみたくなった――ダメか?」

「だ、ダメってわけじゃ……ないけど……」

 

 トウカイテイオーは頬を薄く染めて、もじもじしながら上目遣いで見つめてくる。別に愛の告白をしてるとかじゃないんだから、その恥じらう乙女のような反応はやめろ、やりにくいだろ。

 

 だが、このリアクション――脈はあるな。もう一押しすればなんとかなるか? 少なくとも、今までスカウトした中でこんな手応えを感じたことは一度もなかった。一気に畳み掛けよう。

 

「俺は所詮、実績も経験もない未熟な新人トレーナーだ。ベテランと比較して頼りなく思う気持ちはあるだろう。だが、お前の夢を叶えるために、どんな努力も惜しむつもりはない。後悔はさせない、必ずお前を無敗の三冠ウマ娘にしてやる。だから俺を選んでくれ、俺にはお前が必要なんだ――他の誰でもない、トウカイテイオーというウマ娘が」

「そ、そんなに……? そんなにボクのことが必要なの……?」

「ああ、短い時間ではあったが一緒に過ごして。俺には、お前が必要だったんだとわかった」

「ボクが、必要……。えへへ、そうなんだ……」

 

 トウカイテイオーは頬を緩めてだらしなく笑っている。感情が高ぶっているのか、彼女の尻尾も扇風機のようにぐるんぐるん旋回していた。

 

「そこまで言われたらしょうがないなあ……このボクが、キミの愛バになってしんぜよう! そんなに言うならボクのこと、これからずーっと目を離さないでよねっ! 絶対だよ! 絶対の、ぜーったいに、絶対っ!!」

 

 照りつける太陽のように眩しい笑顔。満面の笑みとはこのことだろう、見てるだけで気分が明るくなってくる。そんな少女を担当することが出来るというのだから、なんという僥倖なのだろうか。

 

 彼女は、無敗の三冠という夢を現実にすることが出来るほどの才を持つウマ娘だ。そんな力のあるウマ娘と契約できたことよりも、この太陽のような少女と、これからともに歩んでいけることの方が嬉しかった。

 

「もちろんだ、ようやく口説き落としたってのによそ見なんてするわけないだろ。これからよろしくな――テイオー」

「うんうん、これからよろしくね――トレーナー!!」

 

 ……こうしてやっとのことでテイオーと専属契約を結んだその後。

 

 またしても、寮の門限近くまで、やけに興奮して距離の近くなった彼女の話にずっと付き合わされることとなった。その後は手を繋いで帰りたいと言われ、渋々と言う通りにして寮までともに帰る。

 

 初めての担当だから勝手がわからないのだが、トレーナーと担当ウマ娘はこんなこともするのか? 手を繋ぐ必要なんて何処にもないだろ。そう思ったが、断ろうとするとテイオーが悲しそうにするから仕方がなかった。フジキセキの微笑ましいような、呆れたような表情がなんとも印象に残っている。

 

 しかし、まあ、良い気分だ。雨は降っていないはずなのに、なぜか妙に芝が重く感じるのは不思議だったが、それさえどうでもいいと感じるほどの爽快感。俺は、トレーナーとしての第一歩をようやく踏み出すことが出来たんだ。

 

 これから俺の選んだ愛バ、テイオーと二人三脚で歩んでいける。トレーナーとしての喜びを、やっと理解することが出来たような気がした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。