社会人2年目。私は東京の大学を卒業し、『雪ノ下』と関係のある東京の会社に就職した。ここで、実績を積み重ねいずれは『雪ノ下』へ戻るのだ。
「雪ちゃん、合コン参加してよ~」
「八武崎さん、私には心に決めた人がいるのだから…」
同僚の八武崎さんに合コンに誘われているのだが…。
「それは何度も聞いたよ。でも、高校卒業してから6年も連絡してないんでしょ?その人だって、彼女ぐらい作ってるよ」
「私がこの目で確認するまでは、諦めるのは無理ね」
高校の卒業まで、想いを告げることは出来なかった。彼も誰かに想いを告げることはなかった。
「雪ノ下、諦めな。八武崎がこうなったら、手がつけられないのは知ってるだろ?」
「東山さんまで…。はぁ、仕方ないわね」
同じく同僚の東山さんに諭されて合コンに参加することにした。
「やったぁ♪じゃあ、サクラちゃんとはやみんも連絡しておかないと」
賑やかないつものメンバーになるようだ。
「雪ちゃん、今日の相手はね、大手ゼネコンの社員だって。サクラちゃんの話だと、一人は凄いイケメンらしいよ」
「そう。では、八武崎さんが頑張りなさい。私はお酒と食事が出来ればいいわ」
「そんなこと言わないでよ~」
「はいはい、東山さんと私でアシストするわよ」
洒落た居酒屋の一室。先に来ていた二人と合流した。
しかし、男性陣が三人しかいない。女性を待たせるとは、どういう了見なのかしら。
「ごめんね、一人がどうしても…」
歯切れ悪く一人が謝る。
「まったく、アイツも諦めればいいのに…」
どうやら、一人がゴネているようだ。恋人が居るひとを参加させようとしているのかしら?
そんなことを考えていると部屋の外から話し声が聞こえた。入り口側に座っていたので、話し声が丸々聞こえた。
「おい、合コンだなんて聞いてねぇぞ」
「言ってないからな」
「騙してやがったな、近藤…」
「お前もいい加減、彼女作れよな」
「お前には関係ないだろ。俺に彼女が居なかろうが魔法使いになろうが」
「魔法使いになるのは、さすがに…。だがな、関係あるんだよ。お前、あちこちから『あの人彼女居ないんですか?』とか聞かれる俺の身にもなってくれ」
「んなもん、適当に流しておけ」
「お前さ、学生時代の心残りなんていい加減忘れろ」
「それこそ、お前には関係ないだろ」
「兎に角!!ここまで来て、女の子達を待たせる訳にはいかない!」
「はぁ…わかったよ…。お前らのアシストすればいいんだろ?」
「わかればいいんだよ」
「費用はお前らモチな」
「わかってる」
話が終わったようで、彼らが入って来た。
「お待たせしました♪」
「…うっす」
明るい男性の後ろから入ってきたのは…。
「雪ちゃん、あの人かな?イケメンて」
「さ、さあ、どうかしらね」
「なんかクールで格好いいよね。メガネもなんか知的だし」
髪がセットされて眼鏡をかけていたとしても、間違うはずがない。私が恋焦がれた比企谷君だった。
彼は女性達の顔も見ようともせず座り、隣の男性にも文句を言っていた。
「堀井、お前もグルだろ?覚えとけよ」
「八幡ちゃん、勘弁してよ~」
相変わらず、こちらを見ようともしない。
自己紹介のタイミングとなり、彼が話はじめた。
「比企谷八幡です。趣味は読書とゲーム、それにアニメ観賞。以上です」
もっと喋れとか言われているが、まったく気にしていない。
女性達の自己紹介となり、私の順番になった。
「みなさん、はじめまして。雪ノ下雪乃です」
私が名前を言った瞬間、彼は目を見開きこちらを向いた。
「あら?一人『はじめまして』じゃない目が腐ったゾンビが混じっているようだけれど」
「おい、誰がゾンビだ。目が腐っていることは認めるが、ちゃんと人間だ」
あの頃の部室でのやり取り…。あぁ、やっと会えた。
「お久しぶりね、比企谷君。もう冬眠は終わったのかしら?」
「カエルの類いでもないからな。罵倒も衰えてないな、雪ノ下」
周りが唖然としている。
「メガネなんかかけて、イメージチェンジのつもりかしら?その腐った目は隠せてないわよ」
「違ぇよ、只の近眼だ。コンタクトが面倒くさいだけだ」
「雪ちゃん、知り合いなの?」
八武崎さんが食い付いてきた。
「えぇ、私が会いたかった人よ」
女性陣が『えぇ!!』と驚き、男性陣は比企谷君に詰め寄る。
「どういうことだ比企谷!俺を裏切ったのか!」
「うるせぇ檜山。騙したのはお前らだろうが。雪ノ下がここに来てるなんて知らなかったんだよ」
しばらく騒ぎになり、落ち着くと何故か隅の席に二人にされた。私としては願ってもないチャンスだ。
「6年ぶりだな」
「そうね」
「貴方がゼネコンに就職してるとは思わなかったわ」
「それは、あれだ、ずっと片思いしてる相手の実家が建設会社なんで、上手く交際まで行って実家に挨拶行ってもゼネコン勤めなら文句言われないだろうからな」
「そ、そう…」
わ、私のことよね?
「髪、切ったんだな」
「えぇ」
高校を卒業して髪をバッサリと切った。比企谷君に会うまでは伸ばさないと心に決めていたのだ。
「その、なんだ、に、似合ってるぞ、ショートも」
「そうね。私、美人だから」
「自分で言っちゃうのかよ」
「ねぇ、比企谷君」
「なんだよ」
「ずっと片思いしてる相手と会って、想いが通じたら髪を伸ばそうと思っていたの」
「…そうか」
「ねぇ、比企谷君」
「ん?」
「私の髪…、長いのと短いの、どちらが好き?」
「雪ノ下」
「何?」
「髪、伸ばしてくれないか?」
八雪不足解消の為に書きました。