この落ちこぼれの紅魔族に爆焔を!   作:gurenn

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いよいよ、カズマがめぐみん達と出会います
同じ里に暮らしてましたが、ほぼ関わりがなかったので、お互いに名前は聞いた事があるなってレベルです


この新たな出会いに喝采を!

我が名はぷっちん! アークウィザードにして上級魔法を操る者! 紅魔族随一の担任教師にして、やがて校長の椅子に座る者!

 

「……やっぱりあれやるのかよ」

 

 俺にとってはもう2回も聞いた名乗りだった。あの先生が担任になるのはこれで3回目だからな。今日から新しく魔法を学ぶ生徒達を前にして、ぷっちん先生はノリノリで名乗りを上げる。

 

 そして俺は、それを教室の外から眺めていた。何故中にいないのかというと、俺は特例として女子のクラスに混ざる事になるからだった。先生からの説明もなしに教室に入ってしまうと、奇異の視線を向けられるのは避けられないだろう。だから、これから先生の紹介で皆の前に出ていく事になる。

 

「さて、12歳になったお前達は、これから俺の指導の下に魔法の習得を目指す事になる訳だが……その前に一人、お前達に紹介しなければならない奴がいる! カズマ! 入ってきて自己紹介(名乗り)を上げろ!」

 

 うげっ、また俺にもあれをやれってか!? 去年もやったけど、今回はそれとは比べ物にならんぞ。何を『場を暖めてやったぞ』みたいなドヤ顔してんだ! 親指まで立ててんじゃねえよ、その指へし折るぞ!

 

「……」

 

 とはいえ、出て行くしかない。俺は顔を盛大に引きつらせながら、年下の女子しかいない教室に入った。うわ、マジで女子しかいねえ……この子達の前で、あの名乗りを上げろと? ……地獄じゃねえか……

 

「どうしたカズマ、早くやれ」

 

「くっ!」

 

 ええい、こうなったらやけくそだ! 俺はローブをバサリとはためかせ、右手を前に突き出して……

 

我が名はカズマ! 最弱職の冒険者にして、数多のスキルを極めし者。紅魔族随一の落ちこぼれにして、やがて真の力に目覚める者!

 

「うんうん、やはり俺が2年間教えただけはあるな。見事な名乗りだ。という訳でお前ら、魔法習得の授業で男子がカズマ一人だけになってしまったので、特例としてこのカズマがお前達と共に魔法の習得を目指す事になった。よろしくしてやってくれ」

 

 死にてえ……もし羞恥心で死ねるなら、俺はとっくに死んでいるだろう。あーあ、世界、滅びねえかなぁ。

 

 俺の名乗りに二人ほど目を輝かせているが、何の慰めにもならない。とその時、一人だけ俺に同情するような視線を向けてくる女の子を見つけた。一番小さい子の隣に座っている女子で、セミロングの髪をリボンで束ねている、優等生といった感じの子だ。

 

 あれ、天使かな? 心が弱っていた俺は、理解者がいると思うだけで少しだけ救われた。だが、ぷっちん先生はせっかく救われた俺の心を再び殺しにきた。

 

「カズマはお前達よりも2年早く魔法の習得を始めているからな。何か授業で分からない事があれば、このカズマを頼ると良い」

 

「ちょっ!?」

 

 このクソッタレがああああーっ! 何でわざわざ、俺が2年も留年してる事を強調すんだよ! そのせいで女子達の好奇の視線が、『うわぁ……』って感じの、呆れたものに変わっちまったじゃねえか!

 

 しかもあんた、俺の成績が並みだっていう事知ってるだろ! 聞かれたって教えられねえよ!

 

「紅魔族随一の落ちこぼれって、そういう事ね」

 

「普通なら1年で上級魔法覚えて卒業できるもんね」

 

 ですよねー……そういう反応になりますよねー……

 

「冒険者とも言ってたね、そういえば」

 

「ああ、それね。私も変だと思ってた。『アークウィザードじゃないの?』って」

 

 そうなんすよ……冒険者なんですよ、俺。ステータスが足りなくて、アークウィザードになれなくてね(泣)

 

 もう死のうかな。うん、もう今すぐあの窓から飛び降りよう。予想通りの女子達の反応に、半ば以上本気でそう思った時だった。

 

「でも、その目は格好良いです。何かの魔道具で色を変えてるのですか?」

 

「えっ?」

 

 さっきのセミロングの優等生風の女の子の隣に座っていた、クラスで一番小さい女子がそんな事を言ってきた。あ、この子、俺の名乗りに目を輝かせてた二人の内の一人だ。実に紅魔族らしい感性でこの場に漂っていた微妙な空気を吹き飛ばしてしまったその子は、一番小さいのに強烈な存在感を放っていた。

 

「あ……いや、生まれつきだ」

 

 正直、俺もその存在感に少し飲まれてしまった。

 

「ほう、それはますます格好良いですね。私達紅魔族は、誰もが紅い目を持って生まれてくるというのに、生まれつき片方の目の色が違うとは。まさしく選ばれし者という感じです。『やがて真の力に目覚める』とも言ってましたし、将来性がありそうです」

 

 その子がそう言った瞬間、また空気が変わった。

 

「そうだね。きっと彼は、まだ生まれ持った力を半分しか発揮できていないのだろう」

 

 俺の名乗りに目を輝かせてたもう一人、何故か眼帯をしてる一番発育が良い子が追随する。ああ、きっとこの二人は、人一倍紅魔族の感性が強いんだな。

 

「「「そう言われてみれば、そうかも」」」

 

 あれ、いつもならこんな風に言われるとげんなりするのに、少しだけ気持ちが楽になったな。いよいよ俺も紅魔族の感性に染まったか? いや、きっとさっきの空気よりはまだマシになったからだな。

 

 人間、最底辺の落ちこぼれと思われるよりは、こう思われる方がまだマシと思えるから不思議だよな。

 

 それにしても、さっきの小さい子と眼帯をしてる子は同い年なんだよな。魔法の習得を始めるこのクラスにいるという事は、どっちも12歳の筈だ。なのに、とても同い年には見えない。……発育って残酷だな。

 

「おい、私とあるえを見比べて、私に同情するような視線を向けるのはやめてもらおうか」

 

「な、何の事だ?」

 

 やべえ、勘が鋭いぞこの子。何気なく見比べたつもりだったのに、一瞬で見抜かれた。

 

 それにしても、『あるえ』か。今さら紅魔族の名付けのセンスにどうこう言うつもりはないが、俺の名前もこうならなくて良かったと心底思うな。

 

 産まれたばかりの俺が『カズマ』と名乗って、それを親父とお袋が聞いて感動したとかでこの名前になったらしいが、ナイスだ、産まれたばかりの俺。

 

 まあ、きっと親父達の聞き間違いとかだろうが。

 

「ところであなた、『数多のスキルを極めた』と言ってましたが、どんなスキルを使えるんですか?」

 

「えーっと、それはだな……」

 

 あまり言いたくないんだがな。何せ今朝、俺の覚えたスキルは地味だと両親に言われたばかりだし。

 

「……その、な。それは後のお楽しみというかな」

 

「勿体ぶりますね」

 

「ま、まあな」

 

 単に、この子達にまで地味だとか言われたくないだけなんだけどな。それに、もし『実演して』とか言われたら、また面倒な事になりそうだし。

 

「さて、あまりカズマにばかりお前達が質問するのもあれだろう。お前達の自己紹介(名乗り)もまだだしな」

 

 おいぷっちん先生よ。切り上げてくれるのはありがたいんだが、余計なイベント(紅魔族特有の名乗り)を開催するのはできればやめて欲しい。けれど、その言葉を聞いた女子達は、セミロングの子を除いてやる気満々の顔になった。

 

 もうやだ、この一族。

 

「では、あるえから始めろ」

 

「はい」

 

 げんなりする俺を置き去りにして、さっきのやたらと発育が良い眼帯の女子が立ち上がり、眼帯の前に手をかざすようなポーズを決めて……

 

我が名はあるえ。紅魔族随一の発育にして、やがて作家を目指す者!

 

 あ、発育の良さは自覚してるのな。つーか、作家を目指してるのに魔法を習いに来てるのかよ。必要ないじゃん。まあ、そんな所も紅魔族って感じだが。

 

「うん、さすがはあるえだ。では次、かいかい!」

 

「はい」

 

 それから数人の名乗りが続いた。だが、聞くほどにげんなりしていく俺は半ば以上聞き流していた。

 

 だけど、ある女子の番になった時、自然と俺の意識は集中してしまっていた。何故ならそれは、あの小柄ながら人一倍存在感がある女子の番だったからだ。

 

「では、めぐみん! 次はお前だ」

 

「はい」

 

 めぐみん、だと? じゃあ、あいつがあの……

 

 その名前を聞いた俺は、一層その子に集中した。俺の注目の視線を受けて気分を良くしたのか、めぐみんはやたら気合いのこもったポーズを決め……

 

我が名はめぐみん! 紅魔族随一の天才にして、爆裂魔法を愛する者!

 

 と名乗った。『決まりましたね』という風なドヤ顔がイラッとしたが、その名乗りで確信した。やはりこいつが、あの噂の天才児か。生まれつき知力と魔力が高い紅魔族の中でも、一際高い数値だって話だ。

 

 「ん?」

 

 あれ? でもこいつ今、爆裂魔法とか言ったか? 爆裂魔法ってあれだろ。とんでもない魔力を消費するっていうネタ魔法。確かに威力は最強らしいが、あまりにも強すぎて大抵のモンスターにはオーバーキル。

 

 しかも、とんでもない魔力を誇る悪魔やリッチーですら、一日一発しか撃てないとかいう。習得する為のスキルポイントも膨大で、とても実用的な魔法じゃないってやつだろ? まあ、さすがにそんなネタ魔法を覚えようとしてるとかはないだろうが。

 

 そんな魔法を愛してるとか、天才と何とかは紙一重ってやつかね。この瞬間、俺の中でめぐみんは、特に変な奴という印象になったのだった。

 

「よし、これで全員だな」

 

 そんな事を考えていると、先生がそう言った。だが俺は、『あれ?』と思った。何故なら……

 

「あ、あの! ……私が、まだ……」

 

 顔を真っ赤にしながら手を挙げる、あの優等生風の女子の名乗りがまだ終わっていなかったからだった。

 

「ん? おおっ、すまん! では、ゆんゆん!」

 

「は、はいっ!」

 

 忘れられていたのが堪えたらしく、涙目になりながらも立ち上がる女の子、ゆんゆん。その名前にも聞き覚えがあった。確か、変わり者って噂だが……

 

わ、我が名はゆんゆん……やがては紅魔族の長となる者……

 

 ああ、成る程ね。変わり者ってそういう事か。顔を真っ赤にして恥ずかしそうに名乗るゆんゆんを見て、俺は噂に納得した。これは確かに、紅魔族からしたら変わり者と言われるだろうな。だけど俺は、ゆんゆんの気持ちが痛い程に理解できた。

 

 これはつまり、あれだ。変わり者の紅魔族の中ではかなり珍しい、まともな感性の持ち主なんだな。俺もそうだから、良く分かる。だけどまともじゃない感性の持ち主である里の人間からすると、ゆんゆんの方が変に見えるんだろう。気の毒に……

 

 そういえばさっきゆんゆんは、俺のやけくそ気味な名乗りに唯一同情の視線を向けてくれてたっけ。

 

「ほらほらゆんゆん、そんなに小さな声で名乗っても好印象を持たれませんし、友達もできませんよ」

 

 ちょっ、おまっ!? 俺がゆんゆんに対して密かに親近感を抱いていた時、めぐみんが空気を読まずにそんな事を言い出した。お前、鬼なの!? こういう時はそっとしておくのが一番だというのに……

 

 だが、ゆんゆんはそんな俺の考えとはまったく違う反応を見せた。慌ててめぐみんの方を振り向いて、

 

「えっ、そ、そうなの!?」

 

 信じるのかよ! というか、友達ができないと言われた瞬間、ゆんゆんの雰囲気が変わった。オロオロと狼狽え始め、何かを堪えるような顔をしてうつむき、バッと決意の表情でクラスを見渡す。

 

 あ、あれ? 何だこれ。何でそんなに深刻そうな顔をしてるんだ? 一体何が彼女の琴線に触れたんだ。

 

「ほら、勇気を出すのです、ゆんゆん。この名乗りを成功させたら、きっと友達100人できますよ」

 

 おいおい、このクラスには10人弱しかいないのにそんなのあり得ないだろ。誰が信じるんだよ。

 

「わ、分かったわ!」

 

 えー……? 信じちゃったよこの子。あれ? これはもしかして、ゆんゆんも違う意味でまともじゃない?

 

「で、でも私、こういうの得意じゃないし。どうやればいいのか……」

 

「大丈夫です。私の言う通りにするのです」

 

「めぐみん……ありがとう!」

 

「いえいえ」

 

 あ、こいつゆんゆんで遊ぶ気だ。だって、さっきから笑いを堪えてるもん。めぐみんはゆんゆんの後ろに移動して、耳元に何かを囁き出した。というか、誰も止めないんだな。クラスの皆(先生まで)も、めぐみんが何をするのかを楽しみにしているようだ。まあ、実は俺もちょっと興味があるんだが。

 

 ゆんゆんはめぐみんにアドバイス(?)してもらったのだろうポーズを決めた。片足を上げて、両腕を左右に高々と掲げ、手の先を外側に開いている。そして……

 

我が名はゆんゆん! 紅魔族随一のぼっちにして、永遠のコミュ障! ちょっと優しくされただけで誰にでもなびくチョロさで……ってちょっと待ちなさいよ! 何を言わせてるのよ!

 

「おっと。まさかこんな手にこんな簡単に引っ掛かるとは思ってませんでした。さすがのチョロさですね」

 

「チョロくないもん! めぐみんのバカ!」

 

 いや、正直かなりチョロいと思う。この子は将来、とんでもないクズ男に良いように利用されそうだ。

 

 自分をからかっためぐみんにゆんゆんが真っ赤な顔をして襲い掛かり、めぐみんはそれを嬉々として受けて立っている。それは日常の光景なのか、クラスの皆は誰も止めずに面白そうに眺めていた。

 

 これはスルーするのが良いみたいだ。そう思った俺はぷっちん先生に自分の席はどこかと聞くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、これから大変そうだな……」

 

 波乱の新学期初日だった今日を思い返してため息をつく。何と俺の席は、あのめぐみんの隣だったのだ。聞いたところによると、やはりめぐみんとゆんゆんのあれは日常的に起こるらしく、あの席はそれに高確率で巻き込まれるだろう。嫌だなぁ……

 

「まあ、退屈だけはしなさそうだけど」

 

 紅魔族随一の天才(馬鹿?)であるめぐみんと、そんなめぐみんに毎日のように勝負を挑んでは、返り討ちにあっているらしいゆんゆん。女子のクラスではそれが名物になってるって話だしな。

 

 とりあえず、俺も頑張って卒業を目指しつつ、そんな二人のやり取りを楽しんでみる事にしよう。魔法を覚えるまでは、どうせあのクラスでやっていかなきゃならないんだし。だったら、楽しんだ方が得だ。

 

「……上級魔法習得までのポイントは……」

 

 懐から冒険者カードを取り出して、現在のスキルポイントを確認してみる。俺の今のレベルは19、そしてスキルポイントは10か。ぷっちん先生の授業の傾向は知ってるので、今までの経験でスキルアップポーションは数個くらい入手できるかもしれない。それでも上級魔法にはほど遠いな……

 

「となると、やっぱり中級魔法か」

 

 中級魔法なら、ちょっとレベルを上げれば覚えられるだろう。とはいえ、俺のレベルはすでに結構高い。幾らレベルが上がりやすい冒険者でも、養殖の授業を数回は受ける必要があるだろう。となると……

 

「卒業できるのは、最短でも数ヶ月はかかるかな」

 

 まあ、色んな意味で美味しいモンスターのカモネギを運良く見つける事ができれば、もっと早いけど。

 

 けれど、カモネギはレアモンスター。授業の備品として何匹かは学校で飼われてたと思うけど、あの愛らしいモンスターを女子達の目の前で絞めるのはさすがにちょっと気が引けるしな。それに、薬の材料になるのはカモネギが背負ってる最高級のネギだし、わざわざカモネギを殺る必要性はない。止められるよな。

 

「やっぱり地道にやるしかないか……」

 

 そんな事を考えている内に、気が付けば自宅である雑貨屋、『デッドスクリーム・ブラッディマリー』に着いていた。両親に何度も言ったが、この名前は変えて欲しい。帰る度にげんなりしてしまうから。

 

「……ただまー」

 

 今日も今日とてこの店名にげんなりしながら、俺は店のドアを開けて中に入るのだった……




カズマの実家の店名は、言うまでもなくあれですw
アクアが安楽少女に名付けたやつですね
紅魔族っぽいセンスだったので、それを拝借しました

さて、カズマは色々とスキルを覚えてる訳ですが、それを覚えてなくても上級魔法習得にはポイントが足りません
中級は覚えられてますが、カズマも最初は上級魔法を覚えようと頑張っていて、それと共に生活に役立つスキルをまず幾つか覚えていたので2年も留年していたって感じです
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