勇者は従者を追放したい   作:ちぇんそー娘

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回想/花嫁亡き 中

 

 

 

 

 

 

 大好きだった。

 貴方の髪の毛も、瞳も、指も、血液も、何もかも。目に入れても痛くないくらい、私は貴方を愛していた。

 

 私が魔物であることも、貴方が人間であることも些細な問題。私達はそういうことを乗り越えて、この愛という感情を噛み締めることが出来るのだと私は本気で信じていた。

 生まれて初めて人間に対する愛情が食欲を勝った。本能が彼を殺して得られるエネルギーよりも、彼と共に過ごすことで得られる心の安らぎを選んだ。

 なんて偶然、なんて奇跡。神様がこの世界にいるのだとしたら感謝しなければならない。

 

 

 それが私の春だった。

 それが私の最後の黄昏。その先にあるのは、夜の暗闇。

 

 

 どんなに眩しい太陽もいつかは沈んでしまうのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瓦礫の雨。いや、この質量と速度はもう雨と言うよりは砲弾か。人間の投擲能力の限界に挑むかのようなそれをエウレアは真正面から雑に腕を振るって受け止める。

 

「あのクソアマ……もう少し周囲への被害とか……ッ」

 

 エウレアはギロンという女をよく知らない。人間でありながら魔王軍に協力しているクソ野郎であり、魔王様に気に入られて幹部になった気に入らない奴であり、あろうことか魔王様を裏切ってもう一度人間側についた尻軽女だということしか知らない。

 

 だが、ここに来て質量による攻撃を繰り出してきた理由は何となく察した。

 あの女、どうしようも無くなるまで息を潜めていた。エウレアの異能によって融かされた物質は元には戻らない。氷とかくらいなら固めれば戻るかもしれないが、生き物はどうにもならない。

 

 だからこそ、もうどうにもなくなって見捨てるしかないと、無意識にでも邪魔になる要素が完全に無くなるまでタイミングを図ってやがった。

 

「さすがは裏切り者。最低なご考えですね!」

 

 瓦礫を目視して異能を発動する。瓦礫の雨は本物の雨に切り替わり、エウレアの体を傷つけることなく湿り気と光の反射がその美しさを際立たせるだけ。

 

 

 その光景を見ながらリスカ・カットバーンはさらに戦術を組み立てる。

 なんだか分からないが、この状況で知らない誰かの攻撃はこちらにプラスしかない。エウレアの能力は『視覚』に頼る以上、最も情報量の多い視覚は意識に引っ張られる。自分へ向いていた意識が少しでも他に向けば、その能力の脅威度は下がる。

 

 加えて、『切断』を有する自分にとって瓦礫の雨は意識を向ける必要すらない。ただの石の破片なぞ、勇者を傷つける要素にすらならない。

 

 

『だとか思って、突撃したらダメですわよ? 相手は格上。一手ミスればスライム確定、ですからね』

 

 

 踏み出そうとした足が背後からの声で止まる。振り返るとそこには、先程撒き散らされた瓦礫に紛れて一つの綺麗な水晶玉が転がり込んでいた。恐らく声の主は瓦礫の投擲者。壊れていないところを見るに魔術を用いた頑丈な通信機の類だろうと判断できる。

 

『はじめまして知らない人。時間もありませんから端的に言いますが妾、あのエウレアという女を倒したいんですわ。利害が一致してそうなので貴方に声をかけました。……協力してくれます?』

 

「わかった。何をすればいい」

 

『……もうちょっと疑いとかあると思いましたけれど、話が早いのは助かりますわ。エウレアの異能はこちらも大体把握済み。距離、と言うよりは視認対象の像の鮮明さが発動のキーになっているのでしょう。近接戦は不利ですわ』

 

「だからと言って、近接戦以外で勝ち目はない」

 

 瓦礫の雨を徒手空拳と視線だけでくぐり抜けながら、確実にどこかに潜むこちらを警戒しているその様子に隙というものは存在しない。一歩でも姿を見せて踏み込めば、その瞬間に地面の染みに変えられる可能性だってある。

 

『ええ。だから隙を作らなきゃ届かない。隙を作るだけじゃ一手足りない』

 

「隙を作り、接近する手段か相手の『異能』をやり過ごす手段を考える」

 

『そういうこと。なので、その手段を貴方に依頼しますわ』

 

「はぁ!? アンタが持ってるんじゃないの!?」

 

『思いつくなら一人でやってますわよ。色々あって、妾は夫を惚れさせる為に魔王軍を倒さなければならないので手段は選んでられませんわ』

 

 一体どこの世界に魔王軍幹部なんて言う災害を倒さないと惚れてくれない最低な男が存在するのか気になるが、今はそれどころではない。

 そもそも、彼女が遠方から投擲で注意を引いてくれているからこそこうして考える時間があるのだ。ならば、彼女の言う通り作戦立案は自分が行うべきだろう。だからと言ってポンっと解決策が出てくるほど便利な頭をリスカは持っていない。

 

『早めにお願いしますわよ。全身を黒布で覆い、魔術で輪郭をぼやかして距離を取っても恐らく妾がまともにエウレアに攻撃を出来る時間は長くて3分。それ以上はこちらの肉体が保たないと判断して撤退させていただきますわ』

 

 急かされることに苛立ちを覚えながらも、あのエウレア相手にそれだけの時間を稼いでくれる時点で頭が上がらない。逆に言えばそれだけ対策をしても3分だけしかその前に立つことが出来ないなんて、本当にアレは自然現象とかそういうのに近い敵だ。

 

 

「……ギロン。近づいてこないの? こんな適当な攻撃で私を殺せるとでも? それとも……勇者ちゃんと結託して何か策でも練ってるのかな?」

 

『アイツ勘が良いですわね! 急いでくださる!?』

 

「わかったから! 黙って岩投げてろバリスタ人間……ッ!」

 

 

 何か、今の会話の中でリスカ・カットバーンの脳に何かが降りてきた。

 

 

「アンタ、祝福の詳細は!?」

 

『ちょ、流石にいきなり言えるほど安い情報じゃ……』

 

「私の祝福は『切断』。私が斬れると認識した物質を硬度や状態に関係なく切断する。概念や形のないモノでも私が斬れると思えば斬れる。応用として、自身の肉体を斬れないと仮定した防御があるけどそれはエウレアに無効化された!」

 

『……ああもう! 妾の祝福は物質の『移動』を触れて吸収する祝福。今投擲に使ってるのは応用の吸収した『移動』を他の物質に与える加速ですわ! これは自分にも使えます!』

 

 予想通り過ぎて口角が吊り上がる。パーツは揃っている。あとは一か八か、こちらの知恵が勝つか災害の脅威が勝つかのどちらかだ。

 

「作戦、出来た!」

 

『嘘ォ!? え、マジで!? クッソ早いですわね!』

 

「どうせ失敗したら私は死ぬ。だから、やるなら今しかない」

 

『妾が言うのもあれかもですけど、死んだら終わりですわよ? 命はもっと大切にした方がいいかと』

 

 大切にするべき命ならばあの日故郷と共に燃え尽きた。

 ここに在るのは勇者である自分だけ。ならばここで負けても死んでもどのみち残るのは死した体。選択肢なんて初めから残されていない。

 

『…………はっきり言いますけど、妾は命を粗末にするやつは嫌いですわ。でも、根性のあるやつは好きですわ!』

 

「アンタに好かれても嬉しくないけどね。参考までに私はどっちかな?」

 

『結果で語ってもらいますわよ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 降り注ぐ瓦礫に対処しながら、遥か遠方の敵を睨みつける。

 自身の足場である壁を蹴り崩しながら、その瓦礫をぶん投げてくるその影はこちらの異能を知っていたのか、予測をつけたのか。非常に視認性が悪いしついでに恐らく『裏切り者』だ。

 いくら惚れっぽいエウレアでも裏切り者まで好きにはなれない。効果がほんの少しだけ効きづらくなるが、それも時間の問題。

 

 

「……うるさいなぁ。わかってるよ」

 

 

 頭の中でうるさい声に文句を漏らす。

 エウレアは昼と夜で人格の切り替わる二重人格。昼の彼女は肉体的にもほぼ人間に近く、思考回路も善よりの存在。夜の彼女は魔族の中でも指折りの戦闘能力と、昼の彼女が好むものこそを優先的に捕食する大食らい。

 

 つまりそれは彼女の戦闘のタイムリミットを示している。

 夜が開ける前に全てを終わらせなければならない。そんなこと、昼の臆病な女に言われなくたってわかっている。

 

「だからアンタはいつも通り、そこで大好きなものが融けるのを見ていればいいの」

 

 それっきり、頭の中の声は何も言わなくなる。どうせ何も出来ないからと諦めたのだろう。飛んできた一際大きな瓦礫を蹴り砕きながら、周囲の状況を整理する。

 まず、はっきりとした位置は分からないが物陰に隠れているのが近接戦を得意とする勇者、そして遠方から投石で攻撃してくるのが魔王軍幹部の裏切り者ギロン。ギロンの祝福は触れた相手の動きを止めるモノだと聞いていたので、この投石は本人の膂力によるものだろうか。だとしたらこんな速度で巨大な瓦礫を投げてくるとかちょっと人間をやめている気がしなくもない。いや、だいぶやめてるな。魔力による強化を踏まえても質量と速度がなにかおかしい。

 

「で、いつまで続けるのギロン? いい加減音がうるさいからやめて欲しいんだけど」

 

 聞こえてはいないだろうが、そう呟きつつ周辺への警戒にほぼ全力を注ぎ込む。遠方からの投擲では自分の体は傷もつかない。直撃してもせいぜい骨にヒビが入る程度で済むだろう。

 相手もそれをわかっているからこそ、本命はリスカだ。あの子が持つ祝福は恐らく無条件に物質を切断する。改めて接近された時のことを思い返すと吐き出しそうになる。

 

 アレはダメだ。運良く一撃を逸らすことが出来たが、次はない。踏み込まれれば防御ごと首を落とされる。切る瞬間に限ればあの女はこの世界のどんなものよりも()()()()

 

 

 そんなことを考えていると、遠方からの投擲が止んだ。ギロンの姿も見えないが、こちらに接近している気配はない。

 

 

「なるほど。それじゃあ……愛し合いましょう、勇者様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 物陰から飛び出すと同時にエウレアに向けてガラス片を投げつける。

 十分に尖ったこれくらいの物質ならば何とか『刃』としての認識を乗せられる。当たれば無条件に皮膚を食い破り骨を穿つ凶弾。だがそれはあまりに軌道が単純。エウレアの反射神経ならば来るとわかっていれば避けるのは容易いどころか『反撃』まで来る。

 

「……まさか、こんなつまらない賭けで死ぬなんて。貴方のこと、少しだけ嫌いになっちゃいました」

 

 ガラス片は空を切った。反撃に待ち構えるのは致死の瞳。その両目がこちらを睨みつけた瞬間に手足にジリジリと焼かれるような痛みが走る。

 

 

 

 

 なるほど。

 お前の瞳は私の手足を見ているのか。

 カチリ、と脳が切り替わる。現実から虚空を見るためのチャンネルへ。勇者はこの世のありとあらゆるモノを『切断』する。

 

 勇者リスカ・カットバーンは傲慢にも世界の法則をその目に映す。

 たとえ災害であろうともそれがこの世に生まれたものならばそれには法則がある。あらゆるものを融かそうとも、それを無条件に行うことは許されない。

 

 だからほら、見えてくるのはエウレアの『視線』。黄金の光糸のように表されたそれは手足に絡みついてその形を解こうとしてくる。

 ならばと、一か八かの賭けに踏みでた勇者は手刀を振るう。まずは左手に絡みついた視線、続いて両足。最後に右手の順番で黄金の糸を断ち切る。そうしてるうちに体は再び物陰に転がり込んだ。

 

「──────ッァ! ハァッ、ァッ」

 

 正しく生きた心地のしない瞬間。黄金の糸に絡みつかれることは死を意味している中で、融けずに感覚のある左手と両足に、間に合わずにまた融かされていよいよ感覚のなくなってきた右手を見て、荒い呼吸は一度安堵の溜息に切り替わる。

 

「なんだ……アンタの愛ってのは案外脆いのね! まぁ所詮魔族の尻軽女の愛情なんてこんなものか!」

 

「……ごちゃごちゃうるせぇんですよ。土竜みてぇに出ては隠れて繰り返してる身分で偉そうなこと言いてぇならツラ見せて言ってくださいよ説得力がねぇ」

 

 エウレアからしても手応えがなかったのはわかったらしく声には明らかな苛立ちが籠っている。適当に吐いた挑発のセリフも案外聞いたらしく、1秒前まで隠れていた物陰が湖にされている。

 

「じゃあ、お望み通り出てきてやるからその直ぐに目移りしちゃうお目目で捉えてみろよ」

 

「上等。せいぜい面白く踊ってくださいね勇者様?」

 

 飛び出すと同時に今度は全身に黄金の糸は絡みつく。間違いなく待ち伏せしていたこのタイミングだが、既に目線を『斬る』ことが出来るものと認識したリスカは怯まない。否、怯めば死ぬ以上怯むことは勇者には許されない。

 決して犯せぬ鋼の刃がその肉体。捻り、折り曲げ、関節と筋肉を最大限に活かして()()()()()()()()()()()。斬られた視線は霧散し、リスカの周囲を融かしながらもその肉体を融かしきることは叶わない。

 

「ちょこまかちょこまか、それで事態が好転すると思ってるんですか?」

 

 だが、糸が視線である以上は一瞬斬ろうがすぐに向け直されれば絡み付いてくる。エウレアの言う通りこれを続けても事態は好転しない。それどころか悪化していくだろう。

 ガラス片だって投げても投げてもエウレアに当たる気配はない。どれだけ希望的な見方をしてもこれで力尽きるのは確実にリスカが先であろう。

 

「あとどれくらいかかる?」

 

『ああもう焦らせないでくださいます!? あんな無茶苦茶を言っておいて。出来たらこちらから言いますから気にしないでどうにか注意を引きつつ生き延びてくださいよ!』

 

 エウレアもリスカも、これが勝負を決めることになるなんて思ってはいない。

 本命はもう一人。裏で何かをこそこそと行っているギロン。エウレアの目標はこちらに切り替わり、リスカの目標はエウレアを1秒でも長くこの場に留めること。当たらないとはいえ、もし当たればどれだけの防御も無視される以上リスカの攻撃には常に一定の注意力が削がれる。

 

 

 一つ、問題があるとすればだ。

 

 

 エウレアの異能は多少のタイムラグが存在するとはいえ基本的に『視る』だけで発動する。

 対するリスカはそれを防ぐ為には視線を確認し、斬るという後手に回る2つの作業を強いられる。しかもそれは全身に纏わり付く蜘蛛の巣をはらうかのような作業。

 脳が焼けるように熱い。緊張で首が絞められたかのように苦しい。汗が際限なく溢れてくる。一手でも誤れば身体が融け落ちる。溶岩よりも恐ろしい死の糸が際限なく絡み付いてくるその光景は見ているだけで気が狂ってしまいそうだった。

 

 時間を稼ぐ為に死の領域に飛び出して、死に搦め取られかけながらまた隠れて、飛び出してを繰り返す。既に融けかけていた右手はいつの間にかほとんど力が入らなくなり、胴体は内臓に届いてないことを除けばほとんど死に体のようなもの。下手に動けば融けかけの肉が剥がれて骨が見えてしまいそうだった。

 それでもあと1秒、もう1秒。その1秒後に協力者が準備完了の合図をしてくれることを祈りながら死出の旅を繰り返す。

 

 

 

「…………あ」

 

 

 

 失敗した。

 いや、失敗ではなく相手が上手だった。かくんと、踏み込んだはずの足が取られて膝から力が抜ける。先程まで硬い石畳だったはずの地面は、エウレアの目線を受けて沼のようにリスカの足を飲み込んだ。

 

「ジャックポット。私の勝ちよ」

 

 さすがに地面全体を融かせば気が付く。だからエウレアはほんの少し、リスカの足の大きさ程度の部分だけを融かして、そこにリスカが足を運ぶように予測し、上手く誘導し、そして運に賭けて勝負に勝った。ただそれだけ。

 勇者である彼女に落ち度はなく、敵は彼女の予想より強かった。その結果として勇者が命を落とすのは仕方の無いことだ。向けられる視線を避けるべく足に力を込めるも、ほんの少しのぬかるみ、ほんの少しの遅れがあまりに致命的。どうしようもなく注がれるエウレアの愛を受け、融ける以外の選択は残されていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、この場に『彼』が駆けつけるのは必然だった。

 

 だって、『彼』はずっと勇者の背中を追っていた。勇者と呼ばれている女の子が、本当は臆病で少し抜けているところがあって、それでも頑張れる普通の強い女の子であることを知っていた。知っていたからこそ、『彼』は彼女に嫉妬していた。知っていたからこそ、追いかけた。

 

 言葉にしない気持ちは一言も伝わらないまま、運命は収束する。

 

 

 

「──────リスカッ!」

 

 

 

 祝福も異能もない『彼』がここまで来れたのは偶然だった。

 たまたま誰かからの忠告を思い出して街を避けて通ろうとしたこと。それでも何か異常を察知して駆け出して、結果的にエウレアの街全体への攻撃が終わってから街に入ったこと。エウレアから見れば取るに足らない、警戒に値しない程度の強さでしか無かったこと。

 

 その程度の人間が何人いようが大局は変わらない。そんな木っ端程度のはずの存在が『勇者』である彼女の名前を叫んだ。その事実にほんの少しだけ、エウレアは驚いた。

 

 この弱そうな人間がリスカの策なのか? 

 いや、どう見てもただの弱い人間だ。

 でも、もしかしたら。

 

 有利な立場であってもエウレアとて余裕がある訳では無い。気を抜けば首を断たれていてもおかしくない。だからこそ素早く的確に判断をした。

 

 

 一瞬だけリスカから意識を外して、こちらに飛び込んできた人間の男の頭部を裏拳で殴り抜いた。

 拳には頭と首の骨を折った感触が伝わり、人間の青年はそれで壁に叩きつけられて頭から血を流し、数度痙攣したあと動かなくなった。

 

 そんな一瞬の隙に、リスカの方には逃げられてしまったけれどエウレアは不確定要素を消せた安心感からそれを仕方ないと割り切って、再び索敵に全神経を集中させ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんで、あいつなんで、うそ、やだやだやだやだやだやだ。だって、わたし、なんで」

 

 物陰に息を潜めながら、リスカは己の右手にガラス片を突き立てた。何かの見間違い。こんなところに彼が居るはずない、これはなにかの夢だとどうにかしてほんの少し前に目に映った光景を否定しようとして、そうすればするほどそれが現実であると。

 

 

『勇者のくせに誰も守れないと』

 

 

 声が煩いくらいに頭に響いて

 

 

『お前なんか勇者に相応しくないと』

 

 

 

 大切な何かが、断ち切られていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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