チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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お気に入り1万人突破記念!もしチートオリ主がウマ娘を知っていた場合どうなったのか!
本編はもうちょっと待っててね!
あと感想返信ですが全部目を通してるけど返信は無理な状況になってるから作品で以ってお返しします、すまんの!


お気に入り一万人突破記念特別編 もし原作知識を持った状態で原作時期に転生してた場合

 津上あきはチート転生者である。バ名はまだ無い。

どんな家で生まれたかとんと見当がつかぬ。病院で両親に祝福されながらワンワン泣いていた事だけは記憶している。

あきはここで初めて己の尻尾というものを見た。しかもあとで解るがこれはウマ娘の尻尾で、あきの前世が知る中で最もハマったゲームの種族であったそうだ。

このウマ娘というのはレースを走って夢を駆けて煌めく尊いものという話である。

しかしその当時は転生したばかりで何という考えもなかったから、ただ『生レース生ライブ見れる!嬉しい!』としか思わなかった。

ただ両親の腕の中でフワッと持ち上げられた時何だかポカポカした感じがあったばかりである。

 

 それから数年。

 

 あきは激怒した。必ず、かの邪知暴虐な運命を除かなければならぬと決意した。

 

 あきには転生の理屈などわからぬ。あきは、ただのチート転生者である。

テレビでレースを見て、ライブにきゃっきゃと遊んで暮らしてきた。けれどもウマ娘の不幸に対しては、人一倍敏感であった。

きょうの午後あきはテレビの前で準備をし、ライトが無いので適当な大きさに切った新聞紙サーベルで、日経新春杯の開始を待っていた。

あきには会場までの足も、お金も無い。まだ幼児なのでレース場にも入れない。優しい父と母の三人暮らしだ。

この日経新春杯ではあきの推しウマ娘が走る予定であった。ライバルと見せた有記念がとても凄かったのである。

あきは、それゆえ、海外遠征を行う前に、日本で走るというこのレースを見たかった。

 

 あきには竹バの友があった。アイネスフウジンである。今頃きっと自分の家で妹たちの相手をしている。

その友に、レースの結果を語り合うつもりなのだ。きっとあきの推しが勝つから、今から楽しみである。

 

 レースを見ている内に、あきの推しが転んだ。画面の中のレース場の空気もひっそりしている。

心配なのは当りまえだが、けれども、なんだか、やけに不安だ。

のんきなあきも、だんだん不安になって来た。

 

 父をつかまえて、何があったのか、推しは大丈夫なのか、と質問した。父は、首を振って答えなかった。

母の袖を掴み、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。母は答えなかった。あきは両手で母のからだをゆすぶって質問を重ねた。

母は、哀しげな低声で、わずか答えた。

 

「彼女は、もう走れないわ」

「なんで走れないの」

「皮膚を突き出した開放骨折。怪我が酷すぎるの」

「怪我をするウマ娘ってたくさんいるの」

「えぇ。たくさんいるわ。ああやって転んでしまった人、走りすぎて潰れてしまった人、限界を超えて壊れてしまった人。どうしても無くならないの」

 

 聞いて、あきは何行か台詞をすっ飛ばして激怒した。

あきは単純なチート転生者であった。しかしウマ娘に対する愛があった。

アニメではスペのダービーで涙し、スズカの天皇賞で悲鳴をあげ、ジャパンカップで熱狂し、ドリームトロフィーリーグで号泣し、2期テイオーの怪我に心をやられ、ライスの激走にお兄さまに目覚め、ツインターボ師匠のオールカマーで涙腺が破壊され、マックイーンのボロ泣きに脳味噌が壊れ、有記念の復活にトドメを刺された。

ウマ娘にハマッたので競馬の事も少し調べ、故障の多さにもびっくりしていたが、ウマ娘世界に来れた嬉しさですっぽり頭から抜けていた。

確かに、確かにアプリでもアニメでも怪我は治っていた。怪我をしても生きていた。

1期と2期の最終話で皆走っていた事からリハビリ技術が革新的に進むのは間違いない。

だが違うのだ。そもそもの話怪我で彼女達の笑顔を曇らせたくないのだ!!!!!

 

 あきはケツイを持って立ち上がった。己はチート転生者である。きっとチートはこの為に。

ウマ娘の脚から『故障』という二文字を消す為に生まれ出でたとケツイしたのだ。

 

 

~さらに時は過ぎて~

 

 

 かつん、かつんとトレセン学園の廊下を歩むウマ娘、津上あきは生徒ではなく、先生兼研究者兼超有能スタッフとしてトレセン学園に入っていた。

あきが送り出した故障回避トレーニング法、転倒衝撃吸収勝負服、その他諸々で、ウマ娘から故障の二文字は加速度的に姿を消して行った。

そのあまりにも鬼気迫り全てを擲つかのような熱意が、世界を動かしたのだ。

今ではその功績が認められ、このトレセン学園にて存分に推し活を満喫している。

 

「あ、センセー!」

「おやテイオー君。君、今年クラシック出走だってね。頑張るといい」

「へへーん!無敵のテイオー様の走り、是非とも見てよね!ってそうだけどそうじゃなくて!」

 

 声をかけてきたのはトウカイテイオー。前世からの推しの一人であり、万が一にでも怪我をしないよう、一時期とても心を砕いて面倒を見た生徒である。

むしろウマ娘は全員推しであるが、やはり前世で見たアニメの影響は強い。

菊花賞で走れなくて泣くテイオーや宝塚記念を諦めて泣きながら笑うテイオーとかもう見たくない。

たしかにターボ師匠のオールカマーと復活の有記念は神回であるが、神回であるが!

推しの笑顔の為ならその神回も断腸の思いでフラグ圧し折るのがファンの心意気というものである。

 

「カイチョーが放課後に生徒会に来てくれって言ってたよ!新薬の認可がどーとか言ってた!」

「おや、そうかい?うん、解ったよ。ありがとう、テイオー」

「どういたしまして!…ねぇセンセー…ううん。やっぱなんでもない!ボクのレース見に来てねー!」

 

 テイオーは今日も元気印である。やはり彼女は快活な笑顔が似合う。シットリテイオーやジメジメテイオーなんてなかったんや!

レースは絶対見逃せないけど、ナイスネイチャをはじめ、応援したいウマ娘ばかりなのが困りものだなぁとあきはのんきに考えていた。

 

 

――――――――――――――――

 

「……やっぱり聞けないや。どうしてセンセーが今でも無理し続けてるのかなんて……」

 

――――――――――――――――

 

 

 かつん、かつんと音を響かせ、あきはトレセン学園食堂で空きテーブルを探していた。

燃費は良いとはいえ、あきもウマ娘である。オグリキャップ並とは言わないが、トレーニングの分も合わせてかなりの量を食べるのだ。

 

「あっ、お姉さま、こっち、空いてるよ」

「津上教諭、こんにちは」

「ライス、ブルボン。ありがとう、お邪魔するよ」

 

 そこで出会ったのはライスシャワーとミホノブルボンである。

あきはライスシャワーのトレーナーではないが、ライスシャワーが不幸を呼び込むだのなんだのというジンクスの打破に一役買った為、彼女に慕われている。

その過程でライスシャワーとミホノブルボンが友人同士となり、原作より早くお互いライバルとして切磋琢磨しているのを見ていつも尊さで胸が一杯になっている。

願わくば此処にマチカネタンホイザを混ぜたい、混ぜたくない…?と密かに企んでいるが、それを知るのは本人ばかりである。

 

「ねぇねぇお姉さま、今度はどんなお薬を作っているの?」

「んー、骨を強くする薬かな。タキオン達と協力したんだけど、まだちょっと副作用が残っていてねぇ」

「あのトレーナーさんがゲーミングに発光していたのは、その為だったのですね」

 

 アグネスタキオンとあきは、この世界線では、共同開発者として論文などに名を連ねる事となる。

両者共にウマ娘の脚に関する薬を開発しているわけだが、あきは被験者にするにはチートな肉体が邪魔をし、タキオンではまだ副作用が不明という事で、主に被験者となっているのはタキオンのトレーナーだ。

顔色がレインボーになったりゲーミングに発光したり、およそ人類には無理な副作用を併発しながらも何故か今日も元気一杯にタキオン達に従う健気なトレーナーである。

 

「それじゃあ午後の授業も頑張るんだよ、二人とも」

「うん、またね、お姉さま」

「はい。オーダーを承りました」

 

 二人と雑談しながら食事をとってあきはご機嫌である。

やはりウマ娘とのコミュニケーションは元気になるなぁ!などと思いながら、次の仕事へと向かうのであった。

 

 

――――――――――――――――

 

「骨のお薬…お姉さま、やっぱり……」

「津上教諭は、背負いすぎではないのでしょうか」

 

――――――――――――――――

 

 

 かつん、かつんと生徒会室まで足を運んだあきは扉をノックした。

授業も終わり、良い塩梅だろうとトウカイテイオーから聞いていた用事をこなそうという事だ。

 

「どうぞ」

「うん、ルドルフ会長、失礼するよ」

 

 室内には書類を捌いているシンボリルドルフ生徒会長のみが居た。

エアグルーヴとナリタブライアンの机には書類が無い事から、別件で今日は居ないのであろう。

 

「新薬の事で話って聞いたけど、炎症治療薬の許可は下りたかな?」

「あぁ、そちらは問題無く下りたよ。懸念されていた副作用も確認されず、増強効果も認められなかったからスムーズだったな」

 

 タキオンとの共同研究で発表された幾つかの新薬の中で、一番最近に発表されたのがそれである。

ウマ娘というのはレースに全力を傾ける分、怪我や故障が大変多い。

それを一つずつ潰していこうとしているのがタキオンとあきだ。

実はタキオン一人でも怪我や故障の軽減という意味ではかなりの所まで行けるのだが、もしあきが共同で研究しなければかかる時間は今の比ではなかっただろう。

しかし新薬や各種トレーニングの改良で大変少なくなってはいるが、まだ根絶とはいかないのが現実である。

 

「…次は、骨の強化薬を研究していると聞いたが」

「あぁ、ウマ娘の怪我としてやっぱり多いのは、各部の炎症と骨折だからね。ただ骨を強化すると一口に言っても、匙加減は難しいんだ」

 

 あきとタキオンの新薬開発では、徹底的なまでにドーピング効果を排除している。

薬を使って足を速くしレースに勝つのは論外である、というのは共通した認識だ。

ただし、これが骨の強化となると途端にその匙加減が難しい。

集中力の強化だとか、筋肉の強化だとか、そういう増強効果を徹底して廃して骨の強靭化だけを目指すが、それは何処までがドーピングに当たるのか、というのを手探りしている最中だ。

 

「そうか。上手く、行くといいな」

「ふふっ、ルドルフ会長の目標も達成が近くなるからね。頑張らせてもらうよ」

 

 ルドルフ会長の掲げる『全てのウマ娘の幸福』。

あきがウマ娘の不幸と言える故障や怪我に対し、その撲滅を目指す事は確かにその大きな手助けになっている。

会長のお手伝いできるとかもうそれだけでご褒美でしょ!と、あきは喜びながらも使命に燃えていた。

 

「ルドルフ会長もまだ仕事残ってるみたいだからね、あんまり邪魔はしないようお暇するよ。でも、あまり根を詰めすぎないようにね?」

「…あぁ。感謝するよ、津上先生」

 

 認可などの書類を手早く纏め、仕事の邪魔をしてはいけないと、あきは退出する事にする。

全てのウマ娘の幸福の為にもやはり怪我や故障は撲滅せねばなるまい!と決意を新たにしたのだった。

 

 

――――――――――――――――

 

「走る事のできないウマ娘を居なくさせたい、か。だが、それでも君は――」

 

――――――――――――――――

 

 

 がしょん、がしょんとトレーニング器具が動く音がする。

あきの家に備え付けられた私的なトレーニングルームでは、特製で特注な器具が目白押しだ。

今も行っているレッグプレスの重りなど、1トンを超えている。

それを『()()()』、あきは涼しい顔でこなしていく。

身体を鍛えているのは、いざという時にウマ娘達を戦いに巻き込まない為だ。

あきは知っている。名前は出ていなかったが、スペシャルウィークが同じ会社のお空のゲームとコラボしていた事を。

無論戦闘モーションとかそういうのは無かった事は知っているし、権利関係でまず他のゲームとかとコラボするのは難しいんじゃないかと思ってはいるが、此処がどんな世界かはまだはっきりしていないのだ。

クロスオーバーで変な世界とかち合ってても不思議ではない。

チート転生者の自分はともかく、ウマ娘の身体能力とはレースで走りライブで踊る為にあるのだ。

VRゲームとかアクションとかはともかくとして、決して戦闘に使ってよいものではないと、あきは硬く信じている。

だが世界はそうは言ってはくれないかもしれない。だとしたら、その業を背負うのは自分だけであるべきだ。

だからこそ、『()()()()()()()()()()()()()()()()』、身体を鍛える事はやめない。

全てはウマ娘の不幸という不幸を打破する為に。

 

 ただ、片足を失っていても身体を鍛え続け、怪我や故障を撲滅しようとするその姿が、他の人にどう見えるかなど、あきは露ほども気づいていなかった。

 




津上あき(原作知識有バージョン・年齢は高等部相当)
原作知識が有り、見事にウマ娘にハマって限界オタク化。知識は2021年7月までのものなのでそれ以降の事は知らない。
ウマ娘にハマった事で実在馬の事も調べており、アプリ実装済みの馬達に対しては幾らかの知識はあった。
最初はウマ娘ワールドヒャッホー!と喜んでいたが、アプリやアニメが始まる遥か前のトゥインクルシリーズで活躍するウマ娘、テンポイントのファンになる。
前世の魂の知識は実装されている馬だけであった為、テンポイントの故障引退に酷くショックを受け、覚醒。
ウマ娘の怪我や故障をこの世から根絶させようとガンギマる事になる。
また世界コラボやクロスオーバーが有り得る事にも気づき、形振り構ってられねぇと幼少から無茶なトレーニングを積む事となる。
結果、精神が進化するチート肉体すらを超越し、右足を切断する事になる大怪我を負った。
だがそんな事で止まるガンギマリではないので、変わらず鍛錬を積み、世界の理不尽(ウマ娘の怪我)を無くす為に活動し続ける。
ちなみに身長は高く、女性として理想的なプロポーションを持っている。これは本編あきも成長すれば共通となる。
右脚欠損しているが努力し続け怪我や故障の根絶に動いているという、あまりにも解りやすい曇らせポイントが有る為、曇らせ度では本編あきを超える。
というか本編あきが勝っている所は速度くらいしかない。

身長:170㎝
スリーサイズ:B90・W60・H89
体重:筋肉の塊なので見た目に反して実はかなり重い。
走力:100mを5秒(義足の関係)
ジャンプ力:一跳び30m
パンチ力:60t
キック力:40t

勿論両親や幼馴染のアイネスフウジン他、生徒のウマ娘も鍛え続けるあきに何も言えないよ!言う事ができないよ!
なんでだろうね!!

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