チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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なお、チートオリ主は競馬知識が全く無いので名前聞いても『へーそうなんだ、よろしくねー』という反応しかないです。
年代のズレとか全く分からないからね。知らないって事は罪なんだなぁ!


第十二話 競馬をある程度でも知る人間だったら名前聞いた瞬間思わず二度見するのは間違いない

 キングカメハメハがNHKマイルカップを勝利した夜、トレセン学園、チームリギル部室にて。

チームレグルスの面々は全員でリギルにお呼ばれしていた。

勿論あきがキングカメハメハのケアをする為でもあるが、東条ハスミには手ずからチームの食事を作るというあきの方法も聞いて、何かヒントになるかもしれないという打算もあった。

 

 レース場でのケアはちょっと理解できなかった。

何せ見ただけで何処をマッサージしてツボを押して針打ってはい今此処で調合したサプリこれ飲んで、と。

直に触るか、機器を使って調査しながらでないと解らないような事柄をその場で調整して施していくのを見て、これをやれと言われるのは流石に人間の限界を超えていたと言わざるを得ない。

『いやぁ、凄いですね、良く鍛えられてるしケアもできてる、これはこのままでもダービーまで確実に全力で走れますよ』とか言われても素直に受け止められなくなるからやめて頂きたい。

アグネスタキオン女史が研究開発しているというウマ娘の脚を詳細検査する為の機材をテストでもいいから導入すべきか、ハスミは本気で悩んだ。

 

 ともあれ夕食である。

レグルスの面々が全員『美味しい』と太鼓判を押す彼女の料理には、ケアのヒントを得る以外にも単純に興味もあった。

 

「いやぁ楽しみだねぇキズナ。トレセン学園の食事より美味しいらしいじゃないか」

 

 ぴょこんと跳ねた前髪を上機嫌に揺らしている栗毛のウマ娘はディープスカイ。

キングカメハメハの先輩として今はドリームシリーズことドリームトロフィーリーグに所属しているが、彼女こそリギル所属で初めてマツクニローテを走ったウマ娘である。

ただし彼女が走ったのは完全版、NHKマイルカップと日本ダービーを走る通常マツクニローテに天皇賞秋を加えたもの。

デビュー戦から掲示板に入るものの勝ち切れず、初めて着外に敗れた未勝利戦から彼女は覚醒。

その後のレースは全て3着以内、ウイニングライブではセンターを取れない時はあってもメインを外す事はなかった。

しかしNHKマイルカップと日本ダービーでは見事勝利した(この時点で偉業であるが)ものの天皇賞秋では姉とそのライバルに敗れ三着。

その後もトゥインクルシリーズでは一着は逃し、姉が全てのレースで一着か二着しか獲ってないミスパーフェクトということもあり良く比較されるものの、結果を見れば重賞レースで三着に入れなかったレースは無いというとても優秀なウマ娘である。

世間一般的にはキングカメハメハがマツクニローテ(究極版)を走るのはこのウマ娘の影響と思われており、同じチームとしての雪辱戦だのなんだのと言われている。

 

「そうは聞きますけど、いつもより作る量多い筈ですし、本当に手伝わなくていいんでしょうか?」

 

 ディープスカイに応える青鹿毛のウマ娘の名前はキズナ。

今年からリギルに入った新人であり、おそらく『ディープインパクトと同じクラシックレースを走る事となる』ウマ娘である。

ハスミは一年ずらす事を考えたが、現最強のチームリギルとして逃げは許されない事、何よりキズナ自身が意欲を見せた事で同じ世代を走らせる事を決めた。

レグルスというよりはディープインパクトを強く気にしているようであり、今もディープインパクト以外がテーブルの上でぐたりと突っ伏しているレグルスの面々がいる方をちらちらと見ている。

 

「はい、皆ご飯だよー」

「ワーオ!すっごいすっごい待ってたネー!」

 

 そして、配膳ワゴンを持ってきた津上あきに反応したのはリギルの最後の一人、キングカメハメハと良く似ている褐色鹿毛の左耳にリボンをつけたウマ娘、名はアパパネ。

彼女もディープスカイと同じく今はドリームトロフィーリーグに所属しているが、トゥインクルシリーズ時代はトリプルティアラを達成した名ウマ娘である。

しかしそれよりもこのチームで目立つのは『ディープインパクトが好きすぎる』事であろうか。

今もさらりとディープインパクトの隣の席を確保している。

 

 彼女もキングカメハメハと同じく、レグルスの面々とは幼少時から面識があると聞いたが、主に話題に出すのはディープインパクトの事しかない。

ハスミがディープインパクトの事を知っていたのはだいたいがアパパネが語ったものであり、そこにキングカメハメハが訂正したり補足したものである。

年齢的にはアパパネが上の筈ではあるが、何故かキングカメハメハに対して甘えているような部分があり、カメハメハもそんなアパパネの世話を焼くのは満更でもないらしい。

 

 規定が改定され、一人のトレーナーにつき担当ウマ娘は五人まで(六人以上のチームを作る場合、サブトレーナー必須)と定められている為、サブトレーナーが居ないリギルではキングカメハメハを加えたこの四人が全員となる。

加入したばかりでまだデビューしてないキズナは別として、G1レースで勝ったことがあるウマ娘しかいないリギルは間違いなく最強チームの一角である。

もう一つ、実績では負けていないチームがあるのだが、そちらは最強というより『クセウマ娘達が集まるイロモノチーム』というイメージが先行しているのが幸いなのか不幸なのか。

 

「ごはん~…ご~は~ん~……」

「あぁ…夕食の時間か……」

「もう…疲れて…お腹減って死にそうなのよね……」

「……(突っ伏したまま無言でスプーンを握り締める)」

 

 ディープインパクトとの並走に付き合わされ、へとへとに疲れてテーブルの上で伸びていたレグルス幼馴染四人組がのろのろと動き出す。

見させてもらったが坂路を軽快に飛ばすディープインパクトに津上トレーナーがストップをかける六本目まで付き合わされていた。

坂路を六本走ってまだぴんぴんしてるディープインパクトが本当に怪物だが六本走りきってまだ何とか動けている四人組も十分おかしい。

やはりあの頭おかしい走った直後のケアとこの食事が秘訣なのだろうか。

 

「あきちゃんのご飯、今日も楽しみ」

「フフフ、翔ちゃん達の為にも今日も腕によりをかけたからね!どうぞ召し上がれ!」

 

 機嫌良さそうに耳を動かし、尻尾をぱたぱたしているディープインパクトに、あきも実にご機嫌そうに応える。

傍から見ているとただの仲の良さそうな友達同士にしか見えないが、一皮剥けば片方は修羅でもう片方は最早ウマ娘かどうかすら疑わしい奇跡の存在である。

あきがクロッシュを取り手際良く配膳を始め、料理の香りがハスミの鼻に届いた、その瞬間。

口の中に涎がどばっと溢れ始めた。

 

「(これは…!?)」

 

 メインはパスタの上に大きく分厚いハンバーグを乗せデミグラスソースをかけたハンバーグパスタ、食べやすいサイズに切り分けた人参とほうれん草のソテーが添えられている。

様々な根菜と魚肉のつみれがごろごろ入ったコンソメベースのポトフがスープとしても付き、米かパンかはお好みで。

シャキシャキとした大根、人参、レタスにシラスを多めに塗したサラダは粉チーズと各種のドレッシングが用意されており、好きな味で楽しめる。

 

「…頂きます」

 

 思わず湧き出た口中の唾液をごくりと飲み下し、まずはスープをと飲んでみれば野菜の旨味と魚介の旨味が溶け出した実に美味なスープ。

根菜にもじっくりと味が染み込み中までホクホクだ、魚肉つみれを口にしてみれば僅かに香る生姜の味。

思わずほう、と腹の底から暖まった息を吐き出す。

 

 スープを堪能したら次はメインとハンバーグを割ってみれば、溢れ出る肉汁と共にとろりとチーズが顔を出した。

『これは絶対に美味い』と視覚から暴力的に訴えてくる事に我慢はせず、切り取った肉をチーズと絡めて口に頬張る。

 

「(!?)」

 

 切り取った時に肉汁が溢れ出したなんてとんでもない、噛みしめたらさらに出てきた肉汁が、まろやかなチーズに受け止められて口の中一杯に広がる。

爆発的に口の中を支配する肉と油に素直に白旗をあげ、今度はパスタに絡めてこれも一口、これは幾らでも頂ける。

 

 これではいけない、サラダと米で口直しだとまずはサラダをシャクリと口にすれば大根と人参が口の油をさっぱり流しながら、シラスが丁度いいアクセント。

ホカホカの白米を頬張れば今度はまたおかずが欲しくなる。

これはやばい。

幾らでも食べれてしまう。

 

 レグルスの面々が手料理を欲しがるのが理解できてしまうが、東条ハスミはいざ自分がこれをやれとか言われてもできる気がしなかった。

いや年頃の女として料理が出来ないとは言わないが、此処までは無理だ。

チームのモチベーションを高める為に専属料理人でも雇おうか、いやでもそれならトレセンの食堂の方が…などと悩みながら、ハスミはチームの皆と一緒に箸を進めた。

 

 後日、体重計の前で悩めるヒトの女性が一人増えた。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「うーん、やっぱ凄いわね、あきちゃん」

「凄いで済ませて良いものかって思うところもあるけどね…」

 

 一週間後、キングカメハメハの脚は完全以上に復調していた。

この一週間、トレーニングは筋肉を落とさない最低限のもののみ、逐一状態を把握し、ツボ押しに針まで使用したマッサージ、必要によっては御灸すら使い、トレーニング直後にサプリを調合、そして脚の状態に合わせた食事の内容。

何が必要で何処までやれば回復するか、事前に立てたプランですらその場で合わせて変更、全ての土台は其処なのだと言わんばかりに骨の強度を上げる事に腐心する。

こんな偏執的な管理とトレーニングを幼少期から受けていれば、坂路を六本走って平気な顔できるウマ娘が作れるのかと、思わず納得してしまった。

正直に言って、これらを一人でやるのは無理だと匙を投げた。

これと同じ内容をやるならそれぞれ専門分野に精通したスタッフでチームを組まなければ無理だ。

アグネスタキオン女史に機材の打診をしようとハスミは割と本気で決意した。

 

「それで、カメ。ダービーまであと二週間。行けるわね?」

「勿論。はすみんの為にも絶対に獲るわ」

 

 津上あきの実力は確かに認める。

己が劣っている事を認めない者に進歩は無いからだ。

しかし、東条ハスミはキングカメハメハのトレーナーで。

キングカメハメハのトレーナーは、東条ハスミただ一人だ。

わざわざ言葉に出さずとも通じ合える程には、二人は互いを信じていた。

だからこそ、次のレースは絶対に獲る。

 

 将来は解らずとも、今の主役は私達。

いずれ近い内に記録は越えられるとしても、『あの大王を超えた』のだとは言わせてみせる。

そして、直接の決着を付けるならば、あの舞台。

暮れの中山こそが、相応しい。

あのチームは必ず其処まで昇り詰めてくるだろう。

勿論、キズナを負けさせるつもりも毛頭無い。

来年からは追う立場として、我武者羅に向かっていくのだ。

二人は未来に聳える壁を見据えて、静かに心を燃やした。




何?世代が全然違うって?良く考えるんだ。そんなものはアプリで散々見ているだろう?(目玉グルグル)
あともう一つのチームについてはいずれ出てくるから予想は君達の胸の中に秘めておくんだぞ!
予想とかそういうのになっちゃうからネ!
いずれわかるさ、いずれな…
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