チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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タイムとかは変えてますが展開変えてるかどうかはね、実際のレースを見てもろて。
見るんだよ(迫真)
あと今回チートオリ主最後くらいにしか出てこないのでスマンナスマンデス!


第十三話 キングカメハメハのマツクニローテ(究極版)第三走:誰もが夢見る灼熱の大舞台

『今年のクラシックは皐月賞を勝利したウマ娘が言った衝撃の一言から始まった。

 皐月賞ウマ娘の彼女が狙う、そのレースの名はNHKマイルカップ、日本ダービー、そして秋の天皇賞。

 【大王】キングカメハメハ、チームリギル所属、期待の駿メ。

 宣言通り、NHKマイルカップを圧巻のレコード勝利、次に狙うは世代の頂点、日本ダービー。

 彼女の前にNHKマイルカップ、日本ダービーを両方を勝利したのは、同じリギルの先達、ディープスカイただ一人。

 既にキングカメハメハは皐月賞とNHKマイルカップを勝利し変則二冠を達成している。

 果たして彼女はディープスカイを超え、三冠目を手に入れる事ができるのか。

 そして、秋のシニアを走るウマ娘を超え、現役最強を手に入れる事ができるのか。

 無謀な挑戦となるか、大王の覇道となるか。

 今、注目のウマ娘である』

 

  ――週刊ウマ娘 特別コラム『波乱を呼ぶクラシック』より――

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 東京レース場、芝2400m。

世代全てのウマ娘が、トレーナーが、観客が熱狂する大レース。

勝利を狙わない者はいない、負けを前提とした者などいない、誰もが本気、誰もが真剣、一生に一度の大レース。

集った十八人に夢を見る、集った十八人が夢を駆ける。

スタートをしてから二分半で全てが決まる。

灼熱の大舞台、日本ダービー。

 

1枠1番マイネルマクロス。10番人気。

1枠2番ヴンダー。18番人気。

2枠3番マイネルブルック。12番人気。

2枠4番ダイワメジャー。4番人気。

3枠5番ハーツクライ。5番人気。

3枠6番アドマイヤビッグ。6番人気。

4枠7番マイネルデュプレ。16番人気。

4枠8番メイショウムネノリ。17番人気。

5枠9番コスモバルク。2番人気。

5枠10番フォーカルポイント。11番人気。

6枠11番グレイトジャーニー。14番人気。

6枠12番キングカメハメハ。1番人気。

7枠13番スズカマンボ。15番人気。

7枠14番キョウワスプレンダ。13番人気。

7枠15番コスモサンビーム。7番人気。

8枠16番ホオキバウェーブ。9番人気。

8枠17番ハイアーゲーム。3番人気。

8枠18番ビサノクウカイ。8番人気。

 

 夢を追い求めるウマ娘は、以上、十八人。

 

『やはり一番人気はこのウマ娘、キングカメハメハです。皐月賞を勝利し、前走NHKマイルカップにてレコード勝利を記録、このダービーではどんな走りを見せるのか』

『同じチームの先輩を超える事ができるかですねぇ、あとは彼女は強い走りができますので、この短期間でのG1レース三連戦がどう影響してくるかです』

『陣営からは完璧以上に仕上げてきたとコメントがありますが、これはどうでしょう』

『たしかに調子は良さそうですが、それだけに不安ですね。前走はレコードタイムを叩き出しましたので、他のウマ娘も警戒してくる筈です―――』

 

 ハスミの言葉に間違いは無く、キングカメハメハは今日、最高の仕上がりで来ていた。

脚は軽く、気合は十分。

この場に居る誰にも負ける気は無い。

ゲートの中で静かにスタートを待つ。

 

『いよいよ始まります、全国同世代一万人以上の頂点は、2400mの彼方に栄光はただ一つ!』

 

          ガタン!

 

『さぁ日本ダービースタートが切られました!まずはメイショウムネノリ良い出だし!しかし内から逃げウマ娘マイネルマクロスもハナを狙ってかわします先頭です』

『そしてその後ろコスモバルクは三番手、ダイワメジャーがその後ろ、ヴンダーが前を走って一コーナーをカーブ!』

『注目キングカメハメハは中団前めやや外側、集団がコーナーを周りマイネルマクロス先頭を走り後続との差は広がりかなり縦長の展開です!』

 

 

――――――――――――――――

 

 

「あんたの好きにはさせないわよ」

 

 キングカメハメハの外に付いたのはハイアーゲーム、今年のダービートライアル青葉賞を勝った有力ウマ娘。

彼女はキングカメハメハの内枠有利など知った事かと直線で外を突っ切る走りを警戒していた。

直線で誰も居ない場所を走って速いのなら、外側を走らせない。

自分が外に付いて膨らまさせず、内を走る他のウマ娘を壁にする。

ダービーは速いだけでは勝てはしない、位置取りすらも強さの内と、全力の駆け引き。

 

「あら、付いてこれるかしら?」

「後で吠え面かかせてやるわ」

 

 内側には複数のウマ娘、最後の四コーナーでどれだけ彼女の横に付けれるか。

負ける気で走るウマ娘など、この場に一人も居はしない。

 

 

――――――――――――――――

 

 

『マイネルマクロス逃げる逃げるおそらくこれは1000m58秒を切った!大きく開いてコスモバルクとメイショウムネノリ付いていきます!』

 

 マイネルマクロスはとにかく必死だった。

自分には逃げしかない、自分にはおそらく中距離の適性は無い、自分に2400mをこのペースで走り切るスタミナは無い。

だが、それがどうした。

走るのが辛い?距離が長い?適性が無い?そんな言い訳を並べ立てて最初から諦めるくらいなら、今この場で走っていない!

 

 コスモバルクとメイショウムネノリは静かに焦っていた。

ペースが速い、このままでは最後の直線で伸び切れないかもしれない。

しかし前を行くマイネルマクロスの必死の走りは全体のペースを確実に上げている。

ならば他のウマ娘も…?

仕掛け所を間違えれば一気に後続に飲み込まれる緊張。

じりじりと不安が胸中を焼いた。

 

『その後ろにまた離れてヴンダーが続いているダイワメジャーはその後ろ!インコースにはマイネルデュプレ外にマイネルブルック!後ろ外にアドマイヤビッグその後ろにキングカメハメハでありますどっしり構えている!』

 

 キングカメハメハの前を走る五人は後ろから威圧感を感じながらも自分を抑え、ペースを守ろうとしていた。

G1レースを走るウマ娘として、仮にプレッシャーをかけられても常ならば跳ねのけていただろう。

しかし、今のこの状況がそれを覆す。

マイネルマクロス必死の大逃げ、それに付いていく前の二人に、仕掛けるタイミングを誤ればそのまま逃げ切られる。

まだ早い、そのタイミングではない、見極めろ!

じっと前を見据え、タイミングを計る。

 

『後ろ内側グレートジャーニー外にハイアーゲーム、バ群を引き連れコスモサンビームは只今最後方!』

 

 後ろを走るウマ娘達も黙ってはいない、脚を溜め、風除けに使い、今か今かと動く瞬間を待っている。

ペースは間違い無く速い、だが最も警戒すべきウマ娘がそのペースをほぼ落としていない。

否、むしろ少しずつでも速めているようにすら見える。

 

『さぁ残り800を切る三コーナーから四コーナーへマイネルマクロス差が詰まってきた四コーナー手前コスモバルク先頭に立つ!』

 

 マイネルマクロスの息が上がってきたと見た瞬間、コスモバルクが外を周って先頭に立ち、後続が一気に動いた。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「(――っ此処!)」

 

 四コーナーに差し掛かろうかという時に、ハイアーゲームは減速せずに加速する。

狙うはキングカメハメハのさらに外、此処からやつに好きに走らせれば毎度の如く、誰も居ないド真ん中を貫いて走るだろう。

そうはさせない、貴様に好きにやらせるものか!

 

「――っこいつ!」

「言ったでしょ。付いてこれるかって!」

 

 だが、そんな事はキングカメハメハも解っている。

故に彼女もコーナーで加速、インコースを付かれても関係無い、直線で纏めて千切ると大きく膨らむ!

 

「ん舐ぁめるなぁぁ!」

 

 しかしハイアーゲームにも意地がある、切り返し、僅かにキングカメハメハに遅れるも己も誰も邪魔する者が居ないバ場のど真ん中に躍り出る!

 

「直線走んのが速いのはあんただけじゃないのよ!」

「こっちだって皐月の借り返さないでいらんないのよ!」

 

 そしてインコースを周ってコスモバルクを差したのは皐月賞で半バ身の差をつけられて負けたダイワメジャー、しかし残り400mの時点でキングカメハメハが先頭に立つ!

 

『コーナー周ったキングカメハメハ完全にバ場の真ん中!バ場の真ん中外にハイアーゲーム内にコスモバルクしかしさらに内ダイワメジャー差を詰める!』

『だがキングカメハメハ伸びる三バ身四バ身後続を引き離す!』

 

「いいわ!熱いわね!燃え滾る!」

 

 トップスピードに乗り直線を走る火山弾、そのままの高温で駆け抜けるのか、否。

 

「ずぅっとチャンスを伺ってたわね!いいわ熱いわ燃えるわぁ!」

 

 

――――――――――――――――

 

 

 そのウマ娘はレース中、ずっと我慢をしていた。

目立たぬよう、気づかれぬよう、順番も後方二番に付けて誰からも忘れられるよう。

キングカメハメハの走りは映像でもずっと見ていた。

コーナーで外で抜け出しコースの真ん中を突っ切って、誰より速くゴール。

あれを破るには何が必要だ、どうすればいい、考えて考えて考えて。

――最後方、ロングスパート、彼女を上回る最大外から。

インコースは、捨てる。

それよりも、加速を取る。

途中のラップなど捨てていい。

ゴール板を最初に駆け抜ければいいだけだ。

コーナーを最大限加速に使い、彼女も意識してないさらに大外から、勝負をかける。

我慢して我慢して耐えて耐えて、逸る心をじっと底に沈めて。

最後のコーナー、響く『心の底からの雄叫び』。

 

 

――――――――――――――――

 

『いや大外から!大外から!ハーツクライ上がってきたぁ!ハイアーゲームを抜いて迫る!』

 

「おおおおぉあああぁぁぁあああぁ!!!!!」

 

 気づかれていた、関係無い、此処までくればあとは全力で走るだけだ、絶対に抜く!

 

「いいわね!大好きよ!でも勝つのは私!!!」

 

 しかし雄叫びに呼応し火山弾がさらに熱を帯びる。

もっと速く、もっと熱く、己こそが最強なのだとこの満天下に示す為に!

 

『大外からハーツクライ!ハーツクライ!しかし!先頭はキングカメハメハ!キングカメハメハ!今!最強の大王が降臨した!!!』

 

 その差、一バ身半。

 

『キングカメハメハ強し!今、最強の大王が!三つの冠を携えた大王が!府中のターフに舞い降りました!』

 

 レコードタイム、2分22秒9。

この日本ダービーはウオッカが記録したそれまでのレコードタイム2分24秒5を九着までが上回り、十着もレコードタイ記録と、『別々の年に出ていれば十人のダービーウマ娘が存在したレース』と記録が打ち立てられた。

そして、『大王』キングカメハメハ。

前人未到の大記録、変則三冠、達成。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「いいね、これがダービーかぁ」

 

 やはり重賞レースは熱がある。

チーム・レグルスはできるだけG1レースを走らせようと決めていたが、一年目は流石に数が少ない。

メイクデビュー後は軽くオープン戦を走らせた後、年末のG1に直行しようと思っていたが。

 

「んー。そうだね。ダートは無いからしょうがないけど、G2もG3も出なきゃ勿体無いか」

 

 津上あきは予定を変更する。

横できらきらした眼をレース場に向けている幼馴染をあまり我慢させたくないなぁと思いながら。

 

「一番早いのは7月。函館かぁ」

 

 チーム・レグルス。

いずれ『双璧』を打ち破り、ただ一つの『最強』の座につくチームが、始動する。




熱いレースがあれば別にあんま主人公が出てこなくても十分じゃない、十分でしょ?(おめめグルグル)

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