チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

24 / 61
もうすぐ始まるクラシック、どんなレースに出るかレグルスの皆はとっても楽しみにしています!
トレーナーさんが上手く調整して素敵な一年を送れるよう計画を建ててみましょう!
(ゲーム的紹介)


第二十三話 ミッション:来年からが本番だ!レースの計画を建てよう!

 世界レコードや相変わらずの熱烈な応援ですっかり有名になった『レグルスのトレーナー』の盛り上げもあって、ホープフルステークスのウイニングライブは大盛況に終わった。

新設チームとしていきなりG1三つも取得、さらにディープインパクトが年末に発表されるURAのジュニア年度代表ウマ娘に選ばれた事もあり、レグルスの知名度は一気に上昇。

最近強豪チームや強豪ウマ娘の間で実行され出した『津上あき式トレーニング』も来年一月中旬には機材が大量配布される予定――アグネスタキオンが本当に頑張った――であり、ウマ娘達の故障しない身体作りが近い内に一般化される予定だ。

これはシンボリルドルフ理事長を筆頭にURA全体で強力に推し進めており、『怪我で【泣く】ウマ娘を【無く】そう』と理事長自ら声明を発表している。

世間的にももしあのウマ娘があのレースに出られていたら、もしあのウマ娘が怪我で引退しなかったら、などの話は出過ぎるほど出ており、あと何年早かったら、いやむしろレースが始まった時にありさえすればなど極めて好意的に受け入れられている。

またチームとしてもクラシック王道路線に『最強』ディープインパクト、ティアラ路線にラインクラフトとシーザリオ、ダートにもカネヒキリとヴァーミリアンと有力と見做されるウマ娘が所属している事もあり、とうとう『双璧』リギルとスピカを打ち倒す新星チーム出現か、と評価が上がっていた。

 

 そんな中、いざ新年を迎えようというチームレグルスの部室にて。

 

「じゃあ皆、来年のレースローテーションを組もうか!」

 

 加速度的に有名になりすぎて、マスコミやファンの山に埋もれる事を厭って実家に帰らず、全員トレセン学園に残る事を選んだチームメンバーがこたつに入りながら日程表を広げていた。

音頭を取るのは無論、トレーナーであるあきである。

二年目のクラシックはいよいよG1やG2レースが本格化、タイトルも多い時期に入るとあって、推し達を自分の手で輝かせる為にも生き生きとしている。

 

 チームメンバーの中で、最も手早く決まったのはシーザリオとラインクラフトだ。

二人ともクラシックティアラ路線を走る予定であり、その内ラインクラフトがNHKマイルカップとマイルチャンピオンシップのマイルレースを二つ、シーザリオはエリザベス女王杯に出る予定だ。

 

「まぁ奇を衒う必要は無いからな」

「トリプルティアラは被るけどー、それはもともとの予定だもんねー。あとは有記念くらいー?」

「うんうん、何個かG2やトライアルレース入れるかもしれないけど、二人は路線決まってるもんね!」

 

 二人してトリプルティアラを獲りに行くつもりではあるが、マイルから中距離辺りが主な範囲のラインクラフトと、中距離が得意で長距離もいけるようになったシーザリオで差別化もできている。

来年のトリプルティアラクラシックの二大本命であり、心配はまるでいらないだろう。

 

 次にダート路線の二人であるが此処は国内でもダート重賞は少ない。

さてどうしたものか、芝でもG3やG2クラスなら二人も充分いけるかな?と思ったあきであったが。

 

「じゃあアメリカクラシック三冠」

「キリちゃん??ちょっとキリちゃん???」

 

 まず最初に唐突にブッ込んできたのはカネヒキリである。

新設チームにしていきなり海外遠征とか普通なら書類仕事も調整も何もかもトレーナーを過労で殺す気でしかない提案だ。普通なら。

 

「日本を出る喜び。正直日本はダートレース少ない。クラシックの中央G1ダートとか。出れるのが片手で数えられるくらいしかない」

「それを言われるとキッツイけどさぁー!」

 

 そう、上述通り、日本ではやっぱり主流が芝なのだ。

カネヒキリだってヴァーミリアンだって芝を走れなくもないが、今ではすっかりダート専門である。

つい先日のホープフルステークスでも、カネヒキリやヴァーミリアンがもし出場したら、きっと2分0秒で最下位争いだ。

それだとしても普通なら勝てる、というよりそれまでのホープフルステークスの一着タイムと比べても、余裕で一着が獲れるタイムだが、時代が悪すぎた。

 

「私は向こうのダートレースを六月まで走って。七月に帰国でジャパンダートダービー。その路線で良いと思う」

「あら、じゃあ私はアメリカトリプルティアラよね?日程的にちょっと被るくらいだけどそうするとジャパンダートダービーはちょっときついのよね」

「正直。ジャパンダートダービーよりチャンピオンズカップや東京大賞典でやった方がいい。国内G1より国際G1でケリをつける」

「待って??待って???なんで二人とも渡米するのが前提になってんの????」

 

 どんどん話を進めていくダート路線の二人に、あきが身体全体からハテナマークを飛ばして問うが、その答えは決まっていた。

 

「「だって走るG1レース少ないし」」

「渡米されるとボクが応援簡単に行けないじゃん!?」

「「先生、教え子を信じて送り出す事も必要(なのよね)」」

「ヤダー!キリちゃんリアンちゃんの応援行けないのヤダー!ボクは二人のトレーナーなんだぞぅ!ライブ見に行けないのヤダー!」

 

 書類は確かに大変だ。渡りをつけるのも難しいだろう。二人の調整だって難しいかもしれない。

だがジタバタ駄々っ子のように暴れるあきが一番嫌なのがこれだった。

あきは教え子達が大好きである。

レースで勝たせてライブでセンター取らせて誰よりも前で応援するのが既に生き甲斐となっている。

確かに、確かに二人が渡米しても勝たせる事は可能だろう。

直接二人についていかなくとも映像だけで『視』れば解るほど、あきの眼は進化している。

リモート映像で指導できる技術の進歩に万々歳だ。

でもライブを現地で応援できないのは別なのだ!

 

「でも。私達二人は所詮前座。ほら。本番が来た」

「そうなのよね。覚悟するならそっちなのよね」

「へ?」

 

 だが、悟ったような表情で二人が言う。

視線の先には出走レース希望を書いた紙を持ったディープインパクト。

それを持った彼女の目と顔はとてもキラキラしていた。

もう一度言う、とてもとてもキラキラしていた。

 

「はい、あきちゃん」

「うん、翔ちゃん……ん?……んんん?????

 

 覚悟も何も多分国内クラシックG1全部でしょ、そのくらい解るよ、と思ってあきが渡された用紙を確認する。

目を擦ってその後もう一度確認し、書いてあるのが間違いじゃないか、実は疲れ目(なる訳が無いが)になって目が霞んでいて文字が違ってるんじゃないかと三度見する。

 

ねぇ、翔ちゃん、これ本気?

「うん、沢山走りたいから、沢山考えたの」

 

 むふー、とまるで褒めて褒めてと言わんばかりにディープインパクトが胸を張る。

あきはいっそ『翔ちゃんは可愛いなぁ』と現実逃避をしたかったが、目の前にある紙は無くならない。

ご丁寧にそれにはレースの日付まで書かれて、いつどこで走るよ!というのがとても解りやすかった。

では、その肝心の内容とは。

 

『ディープインパクト出走希望レース表』

 

3/6 G2 弥生賞(日本)

4/17 G1 皐月賞(日本三冠一つ目)

4/30 G1 2000ギニーステークス(イギリス三冠一つ目)

5/8 G1 NHKマイルカップ(日本)

5/29 G1 東京優駿(日本三冠二つ目)

6/4 G1 英国ダービーステークス(イギリス三冠二つ目)

7/14 G1 パリ大賞典(フランス)

7/23 G1 キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(イギリス)

8/14 G1 ジャック・ル・マロワ(フランス)

9/10 G1 セントレジャーステークス(イギリス三冠三つ目)

10/2 G1 凱旋門賞(フランス)

10/23 G1 菊花賞(日本三冠三つ目)

10/30 G1 天皇賞秋(日本)

11/20 G1 マイルチャンピオンシップ(日本)

11/27 G1 ジャパンカップ(日本)

12/25 G1 有記念(日本)

 

 以上である。

いっそ三月の弥生賞が浮いてるまである、欲張りも欲張ったG1レース十五戦。

むしろ何で弥生賞を入れているんだろうか?

 

ねぇ、翔ちゃん、G1ばっかりだけどなんで弥生賞も?

「んー、なんとなく、出なきゃって思ったから」

そっかぁ、そうなんだぁ

 

 出なきゃいけないって思ったならしょうがないなぁ、とあきは現実逃避気味に思った。

 

 さて、実際問題であるが。

勝てるかどうか?可能だ。どんなレースに出ても勝てるように最速の脚を作り、最巧の技を磨いてきた。

走れるかどうか?可能だ。中一週間がいくつもあるという、普通のウマ娘ならば故障必至の地獄ローテであるが、どんな激しいレースであろうと三日で完全回復させる最強の肉体を作り上げてきた。

できるかどうか?しょうじきわかんない。

 

 何故ならあきには伝手が無い。

日本国内なら大丈夫だろう、何せあきもディープインパクトも日本の中央所属だ。

だがダート路線の二人もそうだが、外国に伝手がある訳が無いし、そもそも向こうのG1だっていきなり飛び入り参加できる筈も無い。

 

「(いや日本のG1勝って賞金額満たしてれば行けるのか…?向こうの国の出走登録は必須だと思うけど…)」

 

 むむむ、と悩むあきだが、そんなあきにちょこんと首を傾げ、ディープインパクトが一言。

 

「だめ…かな?」

できらぁっ!!!!!!

 

 幼馴染四人は『まーた安請け合いしたよこいつ…』と呆れた眼であきを見つめ、あきはあきで心の中が『やばい』と『どうしよう』で埋まり、ディープインパクトは『流石あきちゃん!』と無邪気に喜んだ。

勿論であるが渡米してダートG1を走ろうとしてる二人の問題も解決していない。

 

 津上あき、トレーナー二年目にして地獄のデスマーチ決定である。




ここのレグルスの面子が大人しく国内レースだけ走ってくれるわけねぇなって思い直しました(小並感)
日程はモデルのお馬さんが実際走ってた年度の日に合わせてるってだけです。
暦から計算して今が何年とかそういうのは無いので計算したりツッコミ入れるのはしないようにな!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。