ちょっと早めのクリスマスプレゼントと、生存報告も兼ねて投下じゃよ!
まぁ、なんだ、仕事やスランプもあったけど巨大戦艦に乗っておっぱい艦長と世界征服に乗り出したりナホビノになったり人類最後の司令官になったりいろいろあってね…
そんな時に限って他のネタもムクムク湧いたりするんだ…
誰かウマ娘が人間に近い事を利用して、トゥインクルシリーズの時にガチつよつよでレースで無双してライブでキラキラしてた娘が、アラサー(30オーバー)になってもドリームシリーズで現役で若い時のイメージで未だフリッフリの衣装着せられてドリームシリーズに上がって来たばかりのカイチョーとかに若い時の走りはできないけど年季の違いを見せつけながらギリッギリ勝利してライブでセンター獲って『流石○○さん…』とか言われるんだけど本人は『いやこのトシになってこの衣装キッツ…』とか『トレーナァ!そこの!そこの湿布取って!腰が!』とか『なぁトレーナー同期から出産しましたってハガキ来たんだけどさーなートレーナー(圧力)』とかやってる小説誰か書いてくーださい!(早口)
どうか気長に待ってておくれ(脱兎)
周囲の騒めき。他のウマ娘の息遣い。
それらを感じ取りながら、ラインクラフトは深く、深く集中していた。
自分が世界レコードを出した桜花賞、そのタイムは1分30秒3。
対し、ほぼ同距離、ディープインパクトがイギリス2000ギニーで出したタイムは1分31秒1。
これはラインクラフトの方が速いという証明になるか?
否である。
イギリス2000ギニーの距離は約1609m。桜花賞の1600mと比べて9m、そう、約三バ身半、つまりほぼ0.6秒分長い。
これを差し引いて、1分30秒5。
まだラインクラフトのタイムの方が早い、これなら勝てるか。
そんなわけがない。
此処からさらに見るべきは芝の違いだ。日本の芝ではない、重い洋芝でこのタイム。
たしかに彼女はトレーナーからどんな地形でも走れるようにとトレーニングを受けている。
だが芝による速度の出しやすさというのは確かにあるのだ。
最低でも此処から0.5秒。最速で1秒縮めるものと想定する。
するとほら、1分29秒5~1分30秒ジャスト、桜花賞のタイムを凌駕してくる。
ディープインパクトと走る場合、レコードタイムで走った事があるなんてことは勝利を保証しないのだ。
ぴりぴりとしたプレッシャーがゲートイン前から周囲を包んでいる。
きっと楽しみで仕方がないのだろう。
あの天然お嬢様系修羅は、強いウマ娘が多ければ多い程、強ければ強い程、プレッシャーを叩きつけてくるようになる。
調子はレースに出る以上絶好調以外無いので、これ以上に上がる事が無いのだけは救いなのだろうか。
練習ではない、併走ではない、本番での、勝利を狙う走り。
それを見せてくるのが、楽しみで仕方ないのだろうと手に取るように解る。
あぁ、けれど、だけども、それでも。
誰よりも、何よりも、彼女と戦いたかったのは、こちらの方だ。
ディープインパクトが強い事なんてこのレースに出ている誰よりも知っている。
ずっと見てきた。ずっと見上げてきた。ずっと見つめてきた。
勝算が薄い事だって何よりも解っている。
共に歩んできた。共に走ってきた。共に鍛えてきた。
だからこそ挑むのだ。全身全霊をかけて。
だからこそ勝つのだ。全速前進に駆けて。
ラインクラフトは深く、深く息を吸い込んだ。
――――――――――――――――
『ここで人気を見てみましょう、三番人気は――』
実況の声がレース場に響く。観客の騒めきが選手を包む。
しかし、ディープインパクトの耳には入ってこなかった。
彼女はただ、これから始まるレースに集中している。
耳に入るのは、これから走るウマ娘達の息遣い、鼓動、芝を踏む音。
全て、走る為に、勝つ為にこのG1レースの舞台に上がってきたウマ娘達。
そして、何より彼女達の闘志を集めているのは、己なのだと。
出しているタイムではラインクラフトの方が速いにも関わらず、しかし誰よりも闘争心を向けられているのはディープインパクトだ。
ラインクラフトが舐められているわけではない。ラインクラフトが劣ると思われているわけでもない。
ただ、レースを走るウマ娘がディープインパクトと相対する時。どうあっても、引き込まれるのだ。
走りたいと、闘いたいと、勝ちたいと。
その身に宿る全力で、このウマ娘に勝ちたいと。
あるいはそれは、ウマ娘の完成形を見たからこその闘争心かもしれない。
あるいはそれは、どこまでもストイックに強さを求める、その姿に目を捕らわれたのかもしれない。
理由は十人十色、千差万別だろう。
今までそうならなかった例外は、ただ一人だけである。
己に向けられる闘争心に、ディープインパクトは笑みを零す。
何度負けていようと、それでも勝ちを諦めない意志も。
単純に身体性能や技量が劣っていても、それでも諦めるかは別だという思いも。
近くに居たからこそ解っている壁を、砕いて乗り越えようとする決意も。
嬉しくなってしまうし、親近感も抱いてしまう。
それは、いつだって己が持っているそれと同じだからだ。
そして、『魂』が求めている。
妥協を求めない、最後まで勝ちを貪欲に狙う相手と走る事を。
そんな相手と全力で競い合って、その上で勝利する事を。
強い相手と競い合いたい負けず嫌い。
大なり小なりウマ娘はそんな面があるが、ディープインパクトは己が特にそうなのだと自覚していた。
それでいいと思っているし、それを変えようとは思っていない。
むしろ、もっと研ぎ澄まさなければならない。
目指す頂きは、まだ遠いのだから。
――――――――――――――――
『さぁいよいよ始まります、世代のマイル王者決定戦、果たしてマイルチャンピオンの栄冠を戴くのは誰なのか』
ガタン!
『今!スタートしました!一番人気ディープインパクト抜群のスタートでハナを取りました後に続くはサッカーボーイサクラスターオーテイエムオーシャンこの3人』
『間はそんなに離れていないペールギュントデアリングハートリボンメタルジャスタウェイが位置取りを争っていますその後方テイタニヤダンスパートナーリボンロックが前方集団を伺います』
『二バ身離れて外側マンボステップ内ポロポロさらに内ギターリズムエアメサイア後方で足を溜めるか二番人気ラインクラフトは最後方から!』
レースを走る、ティアラ路線のウマ娘達の心は僅かに揺らめいた。
ラインクラフトがこのレースで選んだ位置は最後方、今まで彼女は追込みの走りなど見せた事は無い。無論、走れないなどとは思っていない。
ラインクラフト、というよりチームレグルスに所属する全てのウマ娘に当て嵌まるが、彼女達に『好みの走り方』は存在しても『不得意な走り方』など存在しない。
だが、このレースで、ディープインパクトと走る今此処で、今まで見せた事が無い走り方をするからには、何か意味が有る筈だ。
少なくとも、ラインクラフトにはその走りでディープインパクトに勝つ算段がある。
――何処だ、何処で仕掛ける。
無論、前のディープインパクトを追い抜く事を忘れるわけではない。
しかし、最後方のラインクラフトがどのような仕掛けで勝ちを狙うのか。
ディープインパクトとラインクラフトに挟まれたウマ娘達は、じりじりとしたプレッシャーを感じていた。
ただ、一人を除いて。
『今ディープインパクト先頭で200mを通過ここでなんとサクラスターオーペースを上げてディープインパクトに喰らいつく!』
後ろを走るラインクラフトも他のウマ娘も知った事かと駆け出したのはサクラスターオー、彼女の脳内はただ一つの事柄に埋め尽くされていた。
それ即ち――
「(バクシン!驀進!ばくしん!Bakusin!)」
ただひたすらに進む事。
眼はコースの状態を捉えるだけでいい。耳は相手との距離を測るだけでいい。肌は風を切り速度を感じるだけでいい。
他、全て不要である。
スプリントにおいて無類の強さを誇った一族の先達に比べれば、恐らくトップスピードにおいては敵わないかもしれない。
しかし、己には中距離を問題無く走れるスタミナが備わっている。アベレージで競り勝つ自信がある。
即ち、マイルは射程圏内!
「(驀進こそが勝利への道!驀進こそが私の走る道!しかし!それでも!)」
ペースを上げた。じわりじわりと後続への差は広がっている。それでも、それでも。
「(あなたとの差が、縮まらない!それでこそ!私が認めた驀進です!)」
前方で風になびく、黒鹿毛の髪との差は、思う程に縮まらない。
近づいてるかもしれないが、それはひどくゆっくりだ。
下手をすれば、近づくどころか離されそうだ。
つまり、彼女もペースを上げているという事。そして、ディープインパクトであるならばかかっているという事は有り得ない。
皐月賞で見せた大逃げの走り、それはまだ誰しもの脳裏に焼き付いている。
「(クソが!基礎力の差で真っ当に圧し潰しに来てやがる!ならもうちょっと雑に走りやがれ!)」
サッカーボーイが内心で舌打ちする、基礎能力でディープインパクトが極めて高いのは周知の事実だ。
その上で駆け引きの能力も、レースの組み立て方も抜群に高い。
雑に走るだけでもG1を獲れるような肉体に、緻密に走ればG1を征するような頭脳を載せた悪夢みたいなウマ娘だ。
証拠にサクラスターオーに追われてるというのに、後続のサッカーボーイにとって絶妙に追い抜きにくいコースで走っている。
要するに、ディープインパクトは『後続が無理にスパートをかけて来て追い抜こうとしても、よりスタミナを浪費させる』位置取りを把握している。
どんな手段か解らないが、後続が『視えて』いるか『聞こえて』いる。
まるで己を抜きたいなら、限界まで全力を尽くして、その上でその限界を打破してみろと言わんばかりに。
ウマ娘として、相手の全力を出させながら、その上で勝つそのスタイル。
「気に入らねぇなあぁぁぁぁ!!」
轟々と心に炎が燃え盛る。上から見下ろしてるんじゃないと腹の奥底から感情が湧いてくる。
だというのに傲慢に見下すのではなく、押し付けられる溢れんばかりの期待に心底腹が立つ。
その真っ直ぐすぎる瞳から眼を逸らす事を、己自身が許さない。
ペースを上げる、展開組み立てなどもう投げ捨てる。
大体にして今回のレースでクレバーに走るというのは土台無理だ。
あのディープインパクトが大逃げを決めた時点で、あのラインクラフトが追込みを選んだ時点で、己が考えた作戦や戦略なんてものは消し飛んだ。
そんなものに費やす余力があれば、全てただ走る事に消費しろと己の『勘』が叫ぶ。
仕掛け所など、おそらくこのレース、1600mには関係が無い。
何故ならば―――
――――――――――――――――
「! あの走り方…」
観客席にて、二人の教え子を応援していたあきは先頭を走るディープインパクトを見て目を見張る。
スタートの仕方、走るスピード、加速の仕方、走るフォーム。
比べるべくも無く、全く違うものだが、確かにそれは。
「凄いよ、翔ちゃん!やっぱり君は、『最高』だぁー!」
200mまでで一般のウマ娘のトップスピードまで持っていき。
400mには最後の最後、200mをスパートする力を残してフルスピードで走る。
走り方やフォームなんて実際に見る事なんてできなかった筈なのに。
それでも確かに、その走り方は――
――――――――――――――――
「(あの時の、ししょーの走り方)」
最後尾。ラインクラフトは静かに力を溜めながら、先頭で風を切るディープインパクトを見る。
無論、あきほどの――それでも十分以上に速いが――速度は出ていない。
だが彼女は今できる『一番速い走り方』をぶつけてきたのだ。
本気で。全力で。私と、私達と競い合う為に。
それだけは、解る。
だからこそ、勝ちたい。だからこそ、勝つ。
静かに、静かに、力を溜める。
解放の時は、未だ先だと。