途轍もない才能を持っているウマ娘が居るとして、走る毎にタイムを縮める才能の塊が居るとして、主人公がどう見えるかという話。
チートオリ主が翔子ちゃんを順調に鍛え上げるしかやる事ないので年齢は一気にジャンプだ!
早来翔子には凄い幼馴染がいる。
幼稚園で静かに絵本を読んでいた自分を連れ出してくれた人。
とても楽しくて、とても速くて、とても熱い――そんな、凄いレースを教えてくれた。
『君も一緒に走ろう?きっと楽しいよ!』と、笑顔で差し出された手を、早来翔子は今でも鮮明に覚えている。
早来翔子には凄い幼馴染がいる。
皆の走り方を見て、どんな走り方をすればいいのか一目で見出した人。
彼女に走り方を見てもらった子で、タイムを縮められなかったウマ娘なんて一人としていない。
『こうすれば良いなって見ればわかるから』とどこまでも自然に言ったその顔を、早来翔子は今でも鮮明に覚えている。
早来翔子には凄い幼馴染がいる。
とても頭が良くて、レースのルールやどんな戦法を取ればいいかを明瞭に教えてくれる人。
そんなに足が速くなかった子に、どう仕掛ければいいか教えて、かけっこで2着を――あの時は本当に危なかった――取らせた。
『足の速さや強さも大事だけど、ちゃんと頭も鍛えなきゃね』と悪戯っぽく笑った顔を、早来翔子は今でも鮮明に覚えている。
早来翔子には凄い幼馴染がいる。
誰よりもウマ娘の身体を知っていて、どう鍛えればいいのか鮮明に見えている人。
どうしても走りたくて内緒で余分に走ったなんてウマ娘が居た時は、容赦なくこめかみをぐりぐり――あの時は本当に痛かった――してくる。
『ウマ娘の脚は!消耗品なんだから!いくら!多少!回復すると!いっても!無理に!使わない!』と怒った声を、早来翔子は今でも鮮明に覚えている。
早来翔子には凄い幼馴染がいる。
ウイニングライブで踊るダンスや歌う歌を、誰よりも綺麗に踊り、歌う人。
今まで見た誰よりも綺麗な歌と踊りで、思わず拍手をしたら、手を取られた。
『今度は君が踊って歌うんだよ。センター以外獲らせる気ないから!』と唐突に始まった初めてのダンスレッスンを、早来翔子は今でも鮮明に覚えている。
早来翔子には凄い幼馴染がいる。
逃げ、先行、差し、追込み、ウマ娘の走り方を全部教えられて、芝もダートも良も重も和も洋も、どんな地形だろうと問題無く走らせる事ができる人。
実演しながら叩き込まれるので、他の人から『どんな変態的な脚をしてるんだ』と――私も教えられて全てできるよう叩き込まれたからこの脚は変態さんなんだろうか――言われていた。
『好きに言わせておけばいいよ、ダートだろうと雨降ってようと海外だろうと、翔子ちゃんが獲れないタイトルは何一つないと言わせてやる』と言った時のどや顔を、早来翔子は今でも鮮明に覚えている。
早来翔子には凄い幼馴染がいる。
日本でも最難関と言われる中央トレセン学園のトレーナー資格を、子供の内から取ってしまった人。
いつの間にそんなことしてたの、と聞いたら、何でもない事のように彼女は口を開いて。
『いや、意外と簡単そうだったし、これなら入学した当初から君を見れるかなぁって』とまるで当然のように答えられた事を、早来翔子は忘れることができない。
早来翔子には凄い幼馴染がいる。
幼い時より格段に速くなったのに。
4年生の時から、小学校で彼女以外の誰よりも速くなったのに。
彼女が教える全てを染み込ませ、全てを昇華し、トレセン学園に通う年上の人より速くなったのに。
【一度も全力を出さないで】、自分に勝っている人がいる。
本当はもっと速く走れる筈なのに、誰よりも速く走れる筈なのに、全てを引き千切ってどこまでも走れる筈なのに――
レースに出ないのか、三冠を目指さないのか、芝もダートも重賞も全てのレースで歴史(レコード)を塗り替えないのか。
貴女は、何でもできる筈なのに。
何故、貴女が私を鍛えているのか、解らなくなって、胸が一杯になって。
何故、自分で走らないのか聞いて。
『そういうのは、ボクはいいかな』と。
どこか、どこか、とても遠くを見ながらへらりと笑った顔を。
早来翔子は、何があろうと、忘れることができない。
――早来翔子には。
彼女と一番、長く、近くに居たウマ娘には。
彼女に一度も勝てなかった私には。
競争ウマ娘『ディープインパクト』には。
誰よりも、何よりも、全てを賭けてでも。
振り向かせたい人がいる―――
何よりも、誰よりも『奇跡に最も近いウマ娘』は、どうしようもない『奇跡』に手を伸ばす。
例え、それが身を焼き焦がし、灰も残さぬだけの星光と理解していても。
それに向かって走らないなんてことは、できなかったのだ。
友達の筈なのに、誰よりも近くで育った筈なのに。
暖かな家族と、多くの友達に恵まれている筈なのに。
遠くを見つめて、何故か孤独で、何処か必死な彼女に。
『走る事が好き』なのに。
『ただの一度も全力の本気で走った事なんてない』彼女に。
私がいると、言いたいのだ。
最後の第四コーナーを曲がったその直線で、全力で走る彼女に。
こんなに速いのかと、振り向かせたいのだ。
ゴール板を駆け抜けたその先で、彼女に振り返って。
独りじゃないと、抱きしめたいのだ。
三冠も、盾の栄誉も。
最速の称号も、最強の証明も。
そんなものは、どうだっていい。
貴女は何処までも速いから。
貴女は何処までも強いから。
私はきっと、貴女のようにまでは速くなれないのだろう。
私はきっと、貴女のようにまでは強くなれないのだろう。
それでもいい。
他の誰より遅くたって、他の誰より弱くたって、他の誰に負けたって。
私は、貴女よりも『ほんの少しだけ』、速くなれれば、強くなれれば、それでいい。
それが、私の『夢(決意)』だ。
途轍もない才能の塊のウマ娘に全く本気を出さず勝っておいて『もしクロスオーバー世界だったら目立つのはマジ死活問題だし人生楽しみたいけど可能な限り裏方でいたい』とかぬかしてるチート転生者がいるらしいっすよ。
なお才能の塊ウマ娘は普段は大人しいタイプでレース以外おっとりお嬢様なうえ、転生者本人もクロスオーバーじゃないか情報集めにかなり必死で心の余裕がさほど無い為全然気づかない模様。
しかも才能の塊な上、チートオリ主に完璧なトレーニングを施されたので一般ウマ娘からは『オメーもバケモノだよ何言ってんだ』くらい格差があるっていう。
隣の芝生は青いな!(白眼)