チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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待たせたな!
まぁ、あれだよ!あれあれ!いろいろあったんだ!
うん、モチベって一回切れると復調まで大分時間がかかる病という突発性の不治の病がね…
そうこうしてる間にトプロさん実装ですよ。いや今まで何で実装してなかったんだってウマ娘でしたがまぁそれでもね。
こうなるとボリクリとかスターオーさんとかも危険域…?
カブちゃんとかキズナとかはまだセーフラインとは思うが…これもうわかんねぇな!
あ、最後にアンケートあります。


第三十七話 背中

 

『さぁ600mを過ぎました未だ先頭はディープインパクト二番手サクラスターオーにサッカーボーイが続きます』

『おっとジャスタウェイとテイタニヤダンスパートナーがじわじわ差を詰めて来ました中団には塊が出来てきたこれは後方集団の前に壁ができるか』

『マンボステップギターリズム抜け出しましてポロポロエアメサイアまだ後方で足を溜めます二番人気ラインクラフト未だ最後尾動きません今先頭が800mを通過!』

 

 レースも半分が過ぎ、未だ先頭を走るのは本命、一番人気のディープインパクト。彼女の速度は400mを越えてからずっと、1Fを11秒を切り、10秒後半で駆け抜けている。

それはG1に出るようなウマ娘ならば最後の直線のラストスパート並であり、それを1000m以上続けようとしているディープインパクトの能力は図抜けている。

ラインクラフトの、レースの事前予想は実に正しかった。

間違いなくディープインパクトは1分30秒を切り、1分29秒台でこのレースを走破する。

サクラスターオーもサッカーボーイも、必死で喰らいつこうとするが、その差は縮まるどころか、少しずつ、確実に広がっていく。

如何に才能が有り、どれ程努力を積み上げてきたウマ娘といえど、11秒を切るスパートを1000m以上続けられる者は余りにも少ない。

それを続けられる能力が有れば、圧倒的な大差をつけてゴールするのはディープインパクト自身が何度も証明している。

そうだというのに、ディープインパクトには油断は無い。慢心も無い。

一切の手加減も無く、一切の手抜かりも無く、このレースで一着を獲る。

そうするつもりだし、それができると心からディープインパクトは思っていた。

サクラスターオーとサッカーボーイは良く付いてきているが、このペースでは1200mまでが限界。

まだこの二人は1Fを10秒台で走り、それを1000メートル続けられるには能力が足りていない。

後続テイタニヤやダンスパートナーなどのティアラ路線組も、最終直線入ってからのスパートでは遅すぎる。

ラインクラフトも現時点で凡そ3秒ほどの差が有り、これを埋めるのは桜花賞で見たスパートでも難しい筈だ。

手加減は無く。手抜かりも無く。ディープインパクトは勝つつもりだった。

800mを過ぎた時も。

900mを駆け抜けた時も。

1000mを踏み越えようとした時も。

 

  ぞ く り 。

 

 果たして、それは何だったのか。

1000mの標識を越えた瞬間に、ディープインパクトの全身に走ったそれは。

ディープインパクトに油断は無かった。全てのレースにおいて、どのようなウマ娘相手にでも。

ディープインパクトに慢心も無かった。どのような勝負において、全ての相手に対してでも。

しかし。トゥインクルシリーズを走るようになった彼女が、今まで勝負において感じる事が無かったものがある。

ディープインパクトは今まで大差をつけてゴールしてきたか、彼女が追いかける絶対に大差をつけられてゴールされたことしかない。

前者では感じる事ができず。後者ではそもそも解り切った結果だった故に。

だからこそ、今まで感じ取る事ができなかった『それ』。

 

 

自分が、負けるかもしれないという、『危機感』だ。

 

 

――――――――――――――――

 

 

 幼い時から、ずっとその背中を見続けてきた。

名門の、本家のお嬢様に、一族の中でも近い年のウマ娘を幼友達としてつけようなんて珍しくもない話で。

ちょっと言葉を飾ったくらいの親戚付き合いと思えば、それはだいたい合っていた。

変わったのは、小学校に入ったか入らないくらいかの時に、彼女が一人のウマ娘を連れてきた事。

その人は、ディープインパクトのみならず、ラインクラフト達4人も巻き込んで多くの変化を齎した。

精魂尽き果てるまで鍛えて、走って。

子供の頃では想像もできなかったような速さになった今でも。

まだ、ラインクラフトは、その背中を見ていた。

 

 彼女が。ディープインパクトが強いのは他の誰より自分達が知っている。

いつも間近で見てきた。

いつも間近で走って来た。

一緒に歩み、共に成長してきた。

師匠、あきが彼女に向けた期待と親愛も。

決してレースに出ようとしない師匠に向けた、彼女の狂おしいほどの熱も。

その為にどれだけ修練を積んだかも、どれ程の貪欲さで強さを求めているのかも。

それを一番近くで見てきたのは自分達だ。

だからこそ。だからこそ。

その純粋さが何よりも腹が立つ。

『たった一人』に向けられたその視線が、その心が。

何より、己の魂が叫ぶのだ。

 

『何処を見ている、お前の敵は此処に居る』、と。

 

 息を吸う。深く、深く、息を吸う。

1000mを過ぎた瞬間、ディープインパクトの気配が変わった。いや、おそらく漸く気づいた。

それでいい、そうでなければ勝つ甲斐が無い。

そもそも1F毎のアベレージではディープインパクトに勝てるウマ娘などそうそう居ない。

己の武器はそこではない。求めたのは、たった600mで彼女を凌駕する事。

その為に、最後尾で深く、長く、強く溜めてきた力。

それを、残り600mで爆発させるのだ。

 

 

――――――――――――――――

 

 

56.6Second

 

(ぞわりとした感覚、このままじゃ不味い?)

(スパートをかける、残りのスタミナ、後続へのコース制限――)

 

(気づかれた。だけど問題無い)

(勝負は残り600m)

 

57.9Second

 

(考えてる暇は無い――余裕は無い)

(思考に回す分も全て走りに回す)

 

(考える必要は無い――前だけを見ろ)

(思考に回す分も全て走りに回せ)

 

59.1Second

 

(負けたくない。勝ちたい)

 

 

60.0Second

 

(誰が相手でも!)

 

 

――――――――――――――――

 

 

『ここで先頭ディープインパクト56秒台で1000mを過ぎましたハイペースで飛ばしているおっとここでさらにペースを上げtなんと!?』

『さ、最後尾ラインクラフト!最後尾ラインクラフトとんでもないスパートをかけたどんどんどんどん上がっていくこぉれは速い!?』

 

「翔ちゃん!ラフィちゃん!」

 

 ラインクラフトが1000mを踏み越えた瞬間、今まで不気味なまでに動きを見せなかった彼女が急激に加速する。

それを見ながら、観客席で二人分の応援団扇を振りつつ、あきは感極まっていた。

二人に負けて欲しくない。二人に勝って欲しい。相互に矛盾する感情に脳味噌を破壊されながら、応援するのだけはやめない。

脳味噌の45%ずつで二人を『がんばえー!』と神経直結で応援し、7%で本格的な脳破壊から精神を守りつつ、残りの3%がトレーナーとしての部分が冷静に分析していた。

 

 ラインクラフトが残り600mになってみせたその速度は、即ちあきが言っていた、ディープインパクトに対する『1割の勝機』だ。

それは、何故か。極々単純に。純然たる事実として。

ただ、距離を600mと限定した時、あきの教え子達5人の中で、タイムが一番速いのはラインクラフトだからだ。

勿論、それだけではレースは勝てない。幾ら600mならば上回ると言っても、レースはそれよりも長いし他にも様々な要因がある。

600mの全力疾走をする為のスタミナをどう温存するか、残り600mで全てを抜き去れるまでの射程圏内に捉えられる速度で走れるか、スパートをしたとしてきちんと走れるコースを探せるか否か。

そして、それらの条件をクリアしても勝利が確定するわけではない。そこまでやってやっと勝負の土俵に上がれるのだ。

あきが見切った、ラインクラフトの猶予タイムは、コースの状態にもよるが、1000m時点でディープインパクトとの差が最小3秒から最大4秒以内。

ディープインパクトの1000mタイムが56.6、ラインクラフトが60秒ジャスト。

枠内に収まっているがギリギリの勝負となるだろう。

肉体を詳細に見抜くあきの眼には、ラインクラフトに勝機が1割あるかないかという見立ては変わっていない。

しかし、往々にして精神は肉体を超越するのも知っている。

たとえ勝機が薄くとも、それを覚悟して走るラインクラフトと。

それを真っ向から受け止めて、勝つ為に走るディープインパクト。

今はただ、トレーナーとして、ただの1ファンとして、二人を見守るしかないのだ。

 

 

――――――――――――――――

 

 

 走る、走る、走る、走る。

600m、30秒足らずでこのコースを走り抜ける。

さぁ、此処まで来た。あの背中を追い抜く為に。

加速する、加速する、加速する。

今日こそ、あの背中に勝つ為に。

足を踏み出す度に、確かに近づいている。

心を燃やせ、魂を燃やせ、身体中の細胞を燃焼させろ。

全力を振り絞った程度ではあの背中を追い越せないのは、ラインクラフトが一番良く知っている。

だから、全力の壁を蹴倒せ。

 

『ラインクラフト猛追!今一人抜き二人抜き先頭を追い上げる後ろで控えていたエアメサイアポロポロスパートをかけるがこれは間に合うかテイタニヤダンスパートナーもペースを上げた!』

 

 ラインクラフトを警戒していたティアラ路線のウマ娘達はかならず何処かで彼女が動くと信じていたし、それを覚悟もしていた。

しかし、それでもなおラインクラフトの猛追に追い縋る事ができないと、理解してしまった。

競技者としての能力の高さがあるからこそ、理解できてしまった。

だがそれが何だというのか。今、自分が走っているのはG1レース。

多くのウマ娘が望んでも走れない、一流の中の一流のみが揃って走るレースで、勝てそうにないから諦める?

どうしようもないから流して走る?

 

ふざけるな!

 

負けたくない、負けられない、その思いは誰しもが抱くもの。

今まで多くのそれを追い抜いた、抜き去ってきた、ならば『今』が『自分の番』であろうと、みっともなくとも、『勝負』だけは捨ててはならない。

 

『先頭ディープインパクト400mを通過ペースはまるで落ちないいや上がっていくサクラスターオーサッカーボーイ徐々に引き離されるかラインクラフトラインクラフトだけがぐんぐんと迫っていく!』

 

ごうごうと風が唸る。

この背中を、瞳が差す/この瞳に、背中が映る。

 

あれだ。

この視線だ。/あの背中だ。

 

ぞくぞくとする。

楽しい。全力で競う事が。/怖い。あの背中を追い抜けない事が。

 

だけど。それの何倍も―――

―怖い―/―楽しい―

 

その感情が、この脚を前に進める。

 

「(捉える。捕まえる。並ぶ。追いつく。追い抜く――!)」

「(走る、負けたくない、負けない、勝ちたい、勝つ――!)」

 

『残り200mをきった未だ先頭はディープインパクトだが凄い勢いでラインクラフトが迫るサクラスターオーサッカーボーイを今追い抜いてさぁ追いかける!』

『同チーム無敗同士の一騎打ちだ並ぶか!?並ぶか!?並ぶか!?

 

風の音すら、もう聞こえない。

自分と相手、二人だけしか世界に居ないような、そんな錯覚の中。

身体中の細胞を燃やし尽くし、僅かな酸素さえ使い切るような、そんな一瞬。

 

ゴールはすぐ目の前だ二人並んだ今ゴォール!!!!!

『ディープインパクト!ラインクラフト!ほぼ、ほぼ同時!並んでゴールしました!これはどちらが勝ったのか私では解りません!』

 

 ゴールした後、いつもは余裕の表情を崩さないディープインパクトは減速すると膝に手をつき、肩で息をしていた。

桜花賞でシーザリオとデッドヒートを繰り広げても、それでも動けていたラインクラフトは、立ち止まった瞬間にターフに身を投げて、もう一歩も動けないと主張するようにぜいぜいと息を吐いていた。

今までチームレグルスのレースを見てきた観客が初めて目にする、精根尽き果てたような姿だ。

それでもゆっくりと、何とか呼吸を整えて、ディープインパクトはラインクラフトの元に歩いていく。

 

「おじょー…」

「うん」

 

 ラインクラフトは、確かにあの背中に追いついていた。

彼女は、確かにあの背中を追い抜いていた。

 

「どうだったー…?私とのレース…」

「凄く、楽しかった」

 

 ゴール板の、僅か2m先で。

 

「それ以上に、とても、とても、怖かった」

「そっかー…ちぇー…あー、もう…」

 

 ハナ差、8cm。タイム、1分28秒7。平地芝、1600mワールドレコード。

1着と2着、タイム差無し。

 

「くやしいなぁっ…!」

「…待ってる。また、走ろう」

 

NHKマイルカップ、1着ディープインパクト。2着ラインクラフト。

 

「つぎはっ…!つぎは、かつからっ…!」

「次も、負けない」

 

 空を仰ぎながら、右腕で、零れ落ちる涙を抑えるライバルに背中を向けて、未だ無敗の王者は歩む。

負ける恐怖すらも力に変える術すら身につけて。

勝利を胸に抱きしめて、背筋を伸ばし凛とターフの上に立つ。

そして、これからも勝ち続けると誓うのだ。

今まで競ってきた者の為に、何より自分自身の夢の為に。

ディープインパクトは、夢を追い続ける(勝利を積み重ねる)




一つ一つ、丹念に丹念に。
空の果てのその先にあるそれに届かないとは知っていても。

トプロさん実装しましたが、口調とかをどうしましょう?直すのはそれ程手間ではないです。

  • 原作の丁寧な育ち良さそうなのにしようぜ!
  • 今の気のいいヤンキー下っ端ちゃんいいぜ!
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