チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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アンケートがマジ接戦で最早これ自体がネタに思える不思議!
という事で今回はさくっと書けたのでちょっと早めにお届けだ!


第三十八話 主人公のチートをそろそろもう一度強調していこうという話。

 さてNHKマイルカップのウイニングライブも無事終了し、チームレグルスが何をしているかといえば。

 

「おあー………」

「ぅおぅー……」

「二人とも脚酷使したんだからもー」

 

 ワールドレコードを大幅に更新したディープインパクト、ラインクラフトに対するコンディション調整である。

何せ普段のレースとは消耗度合いが違った。

ラインクラフトは最後の600m、特に最終100mでは自己ベストを更新していたし、ディープインパクトも想定より1秒以上の大幅なペースアップをした。

その為、幾らあきの手により故障知らずの肉体が作られているとはいえ、完走後に残った肉体ダメージは今までの比ではない。

並のトレーナーなら回復に三ヶ月、一流のトレーナーでも一ヶ月は休ませるくらいには、ワールドレコードの走りとは消耗する。

故に、ウマ娘の身体の事を考えるなら、ただ速く走らせるだけではトレーナー失格である。

レコードを出さずに勝てるなら、出さずに勝たせて負担を軽くすべきなのだ。

 

「まぁ今回はちょっと様子見て5日で調子戻そうか!はいじゃあ二人とも、鍼うつよー」

「あいー…」

「んぅ~…」

 

 だがしかしこのチームだけは例外だった。

何故持っているかは分らないが使えるものは存分に使うとあきはチートを使い倒し、何をどうすれば能力を落とさず回復するか手に取るように理解する。

何処にどんな栄養素が必要で、消化効率とその負担はこうで、今の内臓の動きはこうなっていて、筋肉や骨の消耗はこれだけだからこれをこうして…と、いうのが解る。

だから鍼やマッサージや灸、時には電気刺激や超音波機器も使って適切な刺激を加え。

其処に今二人に必要な栄養素を、丹精込めた手料理として過不足無く摂取させる。

傍から見ると上げ膳据え膳、実に心地良いマッサージなども合わせ、ウマ娘をダメにする環境そのものだった。

無論、レグルスのチームメンバーにしてみれば、これくらいの役得くらいいいだろう、と言ってもいいくらいの地獄みたいなトレーニングはしているわけだが。

それはそれとして。

 

「うにぁ~……」

「んむぅー……」

「ほら二人とも涎垂れちゃってるから拭こうねー」

 

 ディープインパクトとラインクラフト。

激闘を繰り広げた二人が、今この場では、ちょっとファンには見せられない程とろけてたれているのは事実であった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

 アフリートアレックス。

この年のアメリカにて、クラシックの大本命として見られていたウマ娘。

三冠ですら夢ではないと目されていた素質があり、それは決して世辞でも、偽りでも、間違いでもなかった。

無論、レースに絶対は無い。レース運びなどによっては一つは落としてしまっていたかもしれないが、それでも揺るぎない今年のクラシックの主役である筈だった。

しかし、とある日本から来たウマ娘が全てを引っ繰り返した。

 

 彼女の通り名は多い。

インベーダー、日本から来たヤベーのの片割れ、サムライ、モンスター、雷神、伝説を塗り替える者。

その名は、カネヒキリ。

もう一人、ダート後進国である筈の日本から来ているヴァーミリアンと並び、本場たるアメリカで未だ無敗。

アメリカが誇る二つの『偉大なる赤』、その一人であるセクレタリアトのレコードを塗り替えたウマ娘。

そして、カネヒキリはセクレタリアトが持つ最も偉大なもの、ベルモントSでの記録も更新すると宣言した。

その事実と、言葉が持つ意味は、重い。

なにせ、その記録は彼女が残してから五十年以上、誰も更新した事が無いからだ。

勿論、レースとはレコードを更新すれば良いというものではない。

ウマ娘の身体を考えるならば、レコードばかりを狙うというのは、選手寿命を削る行為だからだ。

故にこそ其処に駆け引きが生まれ、ただ速いだけでは勝利できない、レースというものの妙がある。

だけれども、それを理解していても、理解しているからこそ、ウマ娘を含めた人々は求めるのだ。

そいつが、今までの誰よりも速い(ワールドレコード)という称号を。

 

「スゥー…フゥー…」

 

 練習場にて、アフリートアレックスは深く呼吸をする。

幾つシューズを駄目にしただろうか。どれ程汗を滝の様に流しただろうか。

だが、遠い。カネヒキリどころか、セクレタリアトの影もまだ踏めない。

普通に考えれば、頭のおかしい事を言っているのだろう。

アメリカレース史上、燦然と輝く『二代目偉大なる赤』を踏み越えるなど、大抵は無謀と笑われるような事だ。

だが、カネヒキリはやるだろう。

過去の記録に何の意味があると言わんばかりに、たとえ当人が再びこの世に現れ出でても、当たり前のように自分が勝つと傲岸不遜に。

実際に、彼女のチームメイトは、速度の出やすい日本の芝とはいえ、ワールドレコードを当たり前のように更新していくのだから。

それと同じ事をカネヒキリが出来ないなどと、アフリートアレックスは思わない。

だからこそ、勝ちたい。だからこそ、負けたくない。

あぁ、そうだ。『偉大なる赤』はアメリカの誇りだ。アメリカの象徴と言ってもいい。

それを、ぽっと出の、しかもダートが主流というわけでもない、外国のウマ娘に破られる?

あぁ、あぁ。

 

「私が、勝つ」

 

 確かにこの国はチャンスの国だ。どんな者にもチャンスが与えられる。そうだ、こうして、アフリートアレックスにもチャンスが与えられた。

遥か過去、とても競える筈が無い『偉大なる赤』と。

否、もしかしたらそれより強いウマ娘と競えるチャンスが!

 

「私が、勝つ――!」

 

 ただ、あの後少しだけ話した彼女は僅かに気になる事を言っていた。

『踏み越えられる記録は本当の絶望じゃない』と、まるで零れるように。

本当の『絶望』をあたかも知っているからこそ、つい口から出てしまったかのように。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「んー、さーて」

 

 日本、トレセン学園。夜の誰も居ない練習場にて。

津上あきが軽く体をほぐしながら、走る準備をしていた。

ウマ娘のトレーナーはやる事が多い。そのウマ娘に最も適したフォーム、負担の少ない走り方の見極め、その他沢山。

担当のウマ娘や、それ以外のウマ娘、さらに過去のウマ娘からもフォームを真似て、こうすれば此処に負担がかかる、こうすれば減らせる、その他諸々。

それを自分の身体で試し、『見た』データと繋ぎ合わせ、フィードバックしていく。

ウマ娘個人個人で走り方は千差万別。細かい修正は常に必要なのだ。

あきは誰も居ない、見ていない夜にいつもこの作業をしていた。

ちなみに、この作業をやる時は耐えられるシューズが無い為いつも裸足だ。

走る事は好きなのでこの事自体は苦ではないが、いつも足が汚れる事が不満点だ。

シューズと裸足の相違点によるズレくらいはチートで補正できるので問題無いが、そろそろ本気でシューズの事を考えるべきかなぁとは思っては、まぁいいやと後回しにしている。

翔ちゃんはこう、ラフィちゃんはこう、リオちゃんはこう、後で内側ダートコースでも走らないと、と50m毎に走り方を変えるといういっそ変態的な技量でそれぞれの補正をしていく。

見る者が見れば、なんで其処まで忠実に再現できるのか、そんなころころ走り方を変えられるのか、目を剝いた事だろう。

しかも、その『走り』が本人よりも『巧い』。

蹴り方、負担のかけ方、力の伝え方、何もかもが遥かに上なのだ。

たとえ同じ身体能力に揃えて走らせたとしても、本人よりもあきの方が速く、消耗が軽く、長く走れるだろう。

さらに、現時点の本人の能力だけでなく、どのように成長させ、鍛錬させればいいかを常に思考し、それに合わせて走り方を微妙に変えている。

最早、何と言っていいかわからない曲芸だ。

 

「んー、こんなもんかな」

 

 ある程度補正に満足いったのか、構えを変える。

それは誰かのフォームの真似というわけではない。

ただ一人、津上あき自身の走り方。

そう、レースに興味は無いあきであるが、本人も言っている通り、走る事は好きなのだ。

だから、彼女は誰も居ない、誰も見ていない夜、趣味と実益を兼ねてコースを走っている。

 

「(じゃ、ここからは趣味の時間っと)」

 

 それは、どんなウマ娘の走り方よりも綺麗だった。

有り余る身体能力を、無駄無く、負担無く、絶妙に推進力に変えている。

腕の振りによる体重移動、重心の傾けによる方向移動、地面を蹴る反発。

あらゆるウマ娘の理想にして、絶対に不可能な走り方だった。

ウマ娘に限らず、人体には歪みがある。

例えば、左足が右足より僅かに長いだとか。

例えば、右足の方が僅かに左足より力が強いだとか。

そんな歪みを無くす事はできないし、それらを全て完全に把握しながら走る事は不可能だ。

しかし、津上あきはそれを可能にする。

その身体に、そもそも歪みは無い。あまりにも、完璧すぎる肉体故に。

彼女の知覚に、不備が有り得ない。あまりにも小さな差異すら完璧に把握できる故に。

この世界で彼女だけができる、完璧故の完全な走り。

それは、あまりにも完成されすぎていた。

 

「(ひゅうー!たーのしー!)」

 

 尤も、当人はそんな事など関係無いと、風を切る感触を思いきり楽しんでいたのだが。

しかし、もし、レグルス以外の誰かがこの走りを見て、もしタイムを計測していた場合、此処が現実ではなく、ベッドの中で夢を見ていると判断していた事だろう。

あきは既に、自分の走りで2000mを走っていた。

そのタイムは、1分05秒4。

時速に換算し、おおよそ110km。

秒速にして、おおよそ30m。

ウマ娘の最高時速を余裕でぶっちぎった、異次元の速度で走りながら、あき自身はまるで消耗が無い。

もし、カネヒキリがこの場にいれば言っただろう。

『これこそが。踏み越えようのない記録(マジモンの絶望)ってやつ。』と。




なおこれで裸足です。つまり専用シューズという装備で一段階、スキル全開でもう一段階、領域発動でさらに一段階の引き出しがあるな!
さらにチームレグルスの面々は今更だがまだ中学2年生、伸びしろは山ほどあるぞ!こいつ自身もな!
なんぞこいつ(白目)

トプロさん実装しましたが、口調とかをどうしましょう?直すのはそれ程手間ではないです。

  • 原作の丁寧な育ち良さそうなのにしようぜ!
  • 今の気のいいヤンキー下っ端ちゃんいいぜ!
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