あれですね。『子供の頃、ウルトラマンに憧れた人へ』送る映画として凄いクる映画だと思います。
活動報告の方でちょっと堪えきれないあれそれを垂れ流すくらいにはな!
サクラスターオーは悩んでいた。
驀進をしても勝てていないのだ。正確には、G1レースに勝てていない。
傲慢に見えるかもしれないが、サクラスターオーは才能も努力もG1ウマ娘に相応しいウマ娘である。
これが普通のクラシックであったなら、サクラスターオーはホープフルステークスや皐月賞などG1をぶっちぎりで勝っているようなウマ娘である事は、紛う事なき事実。
しかし、そうはならなかった。何故ならば、彼女の世代にはG1ウマ娘に相応しいウマ娘が他にも大勢いるのだ。
もし、競『馬』に詳しい者がいたのなら、なんでこの面子が同じクラシックを走ってるんだと驚愕するような面々である。
相手が強い事は仕方ない事だ。そこにサクラスターオーは干渉できない。だが、驀進をしても勝てなかったのは事実としてあるのだ。
その特に強いウマ娘達と走ったレースの結果は、ホープフルステークスで5着、弥生賞で5着、皐月賞で2着、NHKマイルカップで4着。
掲示板を外した事こそないが、勝利はしていない。
では驀進を止め、普通に走るべきなのだろうか?
そもそも、何故、中長距離のステイヤーとしての才能があるサクラスターオーが『驀進』を志すようになったのか。
過去の話だ。彼女には、共に産まれてくる筈の妹が居た。
しかし、ウマ娘の出産にとって、双子というのは決して慶事ではない。
ウマ娘の多胎妊娠は、最低でも一人が、最悪は全員が流産してしまう。それだけでなく、母体にも危険が及ぶ。
極々稀に、無事出産できる場合もあるが、その確率はおおよそ1000分の1以下。
また、もしその確率を潜り抜けて産まれたとしても、虚弱であったり、ハンデを背負う事が多い。
この事は医学がどれだけ進んだとしても、未だ解決できていない。
サクラスターオーの妹も、この世に産まれる事はなかった。
サクラスターオーがそれを知ったのは、小学生になって暫く経ってからである。
サクラスターオーは才能に溢れる反面、お世辞にも身体が強いとは言えないウマ娘であった。
家族はそんなサクラスターオーを心配し、常に過保護だったのだ。
幼少の頃は特に顕著で、低学年の頃は、登下校は常に車で送迎されていた。
いろいろと身体面で制限されていた事もあり、特に、全力で走る事は強く禁じられていたのだ。
不満に思っても、母親が『ごめんなさい』とぼろぼろと泣くものだから、悲しく辛くとも我慢するしかなかった。
そんな折、自分には妹が『いた』と知ったのだ。
ふとお手洗いに起きた夜中、仏壇の前で手を合わせる両親の背中を見て。
走るどころか産まれてすらこれなかった妹が居たというのに、身体と足が弱く、ろくに走れなかった子供の頃の自分。
才能が有るからこそ、全力で走る事などできようはずが無かった。本気で走れば容易くこの足は砕け散ってしまう。
そんな中、親戚の大分年上のお姉さんが、トゥインクルシリーズで活躍し、ドリームシリーズで走っている事を知った。
流石に今はもう引退してしまったが、現役最後のそのレースを今でも覚えている。
緑のターフの上を、全力で、力いっぱい、楽しそうに走るあの姿。
名前の通りに正に驀進という走りで、スプリントの絶対王者を体現したあの走り。
彼女も決して、頑健な足を持っていたわけではないという。
羨んだ。自分は力いっぱい走れないのに、と。
嫉妬した。自分とそんなに条件は違わない筈なのに、と。
だけど、何より、そんな事よりも。
憧れたのだ。力いっぱい、全速力で走るあの親戚のウマ娘、サクラバクシンオーに。
だが。憧れだけでは、駄目なのか。
そうありたいと願っても、それでも勝利できなければ、意味は無いのか。
サクラスターオーの悩みは、未だ晴れない。
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東条ハスミは誰もが認める超一流のトレーナーである。
僅か十四歳で、世界屈指の難関である中央トレーナー試験を合格した天才少女として、トレセン学園に就職。
当時、チーム規定の関係で規模を縮小しながらも、変わらずに最強のチームとして存在したリギルに母のサブトレーナーとして下積みを二年。
十六歳になって、母のチームであるリギルを受け継ぎ、トレーナーとして着任。
彼女がトレーナーとして活動したのはまだ五年でしかない。
しかし、その五年間の中で、チームリギルがG1レースを一度も獲れなかった年など無い、と言えばその優秀さは誰でも解る。
だが、そんなチームリギルがその年のクラシックに出走するウマ娘を出しながら、未だジュニア、クラシックG1を獲っていないのは異例と言えた。
普通ならばさぞや噂も流れたろうが、実際には全くと言っていい程、外部からの口出しは無い。
勿論、キングカメハメハがきっちりG1大阪杯に勝ち、ハーツクライに有馬の借りを返したのもあるのだろう。
それでも一番の理由は、中央トレセンの『双璧』をあっという間に抜き去った超新星、レグルスの存在だ。
彼女達はあまりに圧倒的すぎた。
本来ならば挑まれる側である強豪の自分達が、絶対を覆すべく挑む挑戦者たちである。
まぁ、それはいいのだ、とハスミは考えている。むしろ、どのように勝つか考えるのは望む所。
トレーナーとしても、勝負師としても、実に熱くなる環境である。
だから、それはいいのだ。
今もデータを纏め、少しでもどうすれば勝率が上がるのか机に向かいキーボードを弾いている所だ。
だが、問題が一つ。
「……キズナ」
「はい」
その声はハスミのすぐ後ろの下の方から聞こえた。
そう、問題は、午後からずっと背中に張り付いてるこのウマ娘の方である。
何があったかは知らないが、腕を前に回し、こちらが苦しくならない程度にずーっと背中に抱き着き、顔を埋めている。
何でこんな事をしてるのかを聞いたら、かなり真剣な顔で『こう、何か掴める気がするんです!』と答えられた。
これでもかなりの数の超一流ウマ娘を見てきたハスミである。
そんなウマ娘達が、極限の集中力で発揮する『何か』を、特別な『領域』を持っているのは知っている。
キズナはそんなウマ娘達がその『何か』を掴む時と同じような顔をしていた。何故か。いや、本当に何故か。
たしかにそんな超一流のウマ娘達はどこか突飛な所があるものである。
変わり者が多いのは別にいいのだ。
だが、トレーナーに抱き着いて得られる領域って、一体何だ。
流石に前例が無さ過ぎて、ハスミとしては困惑するしかない。
「……何か掴めたの?」
「う~ん…もう少しこのままで」
「……そう」
己の愛バの為ならなんだってやる覚悟はある。身を粉にもしよう、心だってどれだけでも砕こう。
そんなトレーナーだって困惑する事はある。
取り敢えず頭でも撫でればいいのだろうか?
「………」
尻尾の動きが機嫌良くなっている。どうやら正解のようだ。
子供の頃からトレーナーを志し、物心ついてからずっとウマ娘と関わり続けているハスミであるが。
やはりウマ娘は神秘である。解らない事など山ほどあるのだなぁ、と。
自然に耳の裏を掻いてやったり背中を優しく撫でてやったりしながら思うのであった。
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ダービー。生涯一度、そのレースは走る事を許される。
ダービー。あらゆるウマ娘にとって、最高の栄誉を約束する。
ダービー。勝負と誇りの世界。
ダービー。夢の頂。
1枠1番 キズナ。
1枠2番 ローゼンクロイツ。
2枠3番 ダンスインザダーク。
2枠4番 ジャスタウェイ。
3枠5番 ディープインパクト。
3枠6番 アドマイヤフジ。
4枠7番 サクラスターオー。
4枠8番 ジュエルジェダイト。
5枠9番 リボンファンク。
5枠10番 シンボリクリスエス。
6枠11番 ナリタトップロード。
6枠12番 カブラヤオー。
7枠13番 マイネルレコルト。
7枠14番 アドマイヤジャパン。
7枠15番 シックスセンス。
8枠16番 ドラムリズム。
8枠17番 ポコポコ。
8枠18番 サッカーボーイ。
以上18名。栄光を掴むのは、誰か。