チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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ちょっといろいろ始めようかと思ってます。
詳しくは活動報告まで!


第四十八話 たしかに偉業だけど良く考えろ、距離と地形の適正もバグってるぞ

 ディープインパクトが初めて同着を許した。

これは世界を震撼させたと言っていいニュースとなった。

これまで彼女は、同じトレーナーに鍛えられたチームメイト相手にすらさえ、ほんの僅かな差とはいえ、勝利してきた。

レコードを量産し、最早相手になるのはレグルスのチームメイトだけなのか、と思われていた所にこれである。

世界はそれはもう沸いた。ディープインパクトは現役のトゥインクルシリーズの選手だというのに、半ば伝説と同じように見られていた。

あれはもうしょうがない、あれに負けても恥じゃあない、と。

無論、実際にレースに出場している選手達や関係者達は全くそんな事は考えても思ってもいないが、そうでない一般の人々からは既にそう思われていたのだ。

だが、そんな認識にこのニュースは風穴をあけたのである。

確かに速い。確かに強い。それでも、決して手が届かないものではないのだ、と。

 

 さて、ではついに手が届いたと思われているディープインパクトやあきがショックを受けているかといえば。

 

「いやー、強かったねーラムタラさん」

「うん。次は勝つ」

 

 まるで全然堪えていなかった。

たしかに並ばれた事はびっくりしたが、それでショックを受けるほど柔なメンタルをしていなかったともいう。

むしろディープインパクトなどはやる気に漲っていたし、あきも早々にどんなトレーニングと対策をして次は勝つかを無駄に高性能な頭脳で超高速シミュレートしていた。

そもそもとして、あきはディープインパクトが並ばれるという状況は想定していたのだ。

何せ、担当している他の4人の幼馴染をそう鍛えていたのだから。意外だったのは『カネヒキリ達以外でそれができた』事だが、それもタネは見て理解した。

このままではこちらが不利なのは本当だ。

何せ、向こうは欧州芝2400mだけに絞っているのだが、こちらは全地形、全距離対応である。

どちらもやる方もおかしいが、やらせる方も十分に狂っていると言われかねないものだ。

それでも勝つ。勝たせる。不利を受け入れ、その上で相手より上回らせる。それは『いつも』やっている事だ。

そして、ディープインパクト相手に走らせるなら、ディープインパクト相手に勝たせるなら、やってくる事、やりたい事は手に取るように解る。

あきはディープインパクトを鍛え上げたトレーナー、それは正しい。

しかし、世間は彼女に対して忘れている、認識できていない事がある。

それは、あきがレースで勝負すればディープインパクトに並び、超えかねないウマ娘を4人も育て上げた事。

 

 そう、あきは世界中の誰よりも、『対ディープインパクト』の専門家である。

 

「でもそうすると…ふぅむ。ねぇ、翔ちゃん」

「なぁに?」

 

 ディープインパクトがどう走るべきか、どう走らせるべきか。あきは考えに考えて。

本来の予定である次走、パリ大賞典の前に一つのあるレースを挟むべきかと結論を出した。

このレースには出れる。ほぼ確実に出場は可能だろう。

あとは本人がそれを了承するかどうかであったが。

 

「パリ大賞典の前に、もう一つレース走らない?」

「走る」

 

 即答だった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

 所変わって、アメリカ。ヴァーミリアンが当然の様にアメリカトリプルティアラ一冠目、エイコーンSを勝利し、その三日後。

ベルモントパークレース場では、熾烈な競走が繰り広げられていた。

アメリカクラシック三冠目、その最後の一つ、ベルモントステークス。

日本から来たサムライが、伝説を塗り替え、三つの冠を戴いた王者として君臨するのか。

ついに伝説を受け継いだアメリカの意地が、それを阻止し、ついに勝利の冠を戴くのか。

 

 挑戦するのは、血反吐を吐くような鍛錬の末に、ついにあの伝説の二代目ビッグレッドの走法、等速ストライドを会得したアフリートアレックス。

対するは此処まで無敗、圧倒的な差で以って本場アメリカのダートを蹂躙してきた日本の雷神、カネヒキリ。

最早、レースはこの二人の戦場だった。

アフリートアレックスが並ぶ。今まで届かなかった背中を今日、此処でこそ追い抜かす為に。

 

『アフリートアレックスが並んだ!今日こそあのサムライに勝つのか!?あの伝説を塗り替えるのか!?』

『しかしカネヒキリ抜かせない!王者の意地か!?』

 

 だが、だが一つだけ、此処まで何処までも自分を厳しく鍛え上げたアフリートアレックスも、等速ストライドを教え込んだセクレタリアトも、教え込めなかったものがある。

それは『自分と同格かそれ以上のウマ娘に対する勝ち方』だ。

同格までは持ってこれた。勝負の土俵には上がってこれた。しかし、其処から先の経験が不足していた。

 

『アフリートアレックスはどうだ!?カネヒキリは抜かせない!いやカネヒキリ僅かに先に出た!カネヒキリだ!アフリートアレックス追い縋るがこれはどうだ!?』

『縮まない!あとほんの少しが縮まらない!カネヒキリ一着でゴール!半バ身差で二着はアフリートアレックス!』

『タイムは2分23秒5!レコード!レコードです!あの二代目ビッグレッド、セクレタリアトのレコードがついに、ついに更新されました!』

 

 そのやり方をあきに徹底的に仕込まれたレグルスのウマ娘にとって、この経験の差は大きかった。

差は僅か半バ身。しかし、その半バ身に届かない。

 

「あ~~~!クッソ!!負けたわ!!!」

 

 アフリートアレックスが大の字でダートの上に寝転んだ。土がつくのもお構いなしにだ。

必死で努力して、ようやく並んだと思ったら、『ようやく来たか、じゃあ此処からだな』と宣言された。

確かに、確かに勝ち目はあったのだ。だが、勝ち目だけでは足りなかった。

 

「強かった。でも。私の勝ち」

 

 そして、彼女に打ち勝ったカネヒキリがアフリートアレックスに手を差し伸べる。

無表情ながらどこか得意そうに、誇らしげに。

あぁ、そうか。こいつは自分に勝ったのを誇ってくれるのか。嬉しく思ってくれるのか。

 

「――次こそ勝ってやる」

「次も。私が勝つ」

 

 レースが終わった直後だからか、握った手はとても熱かった。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 カネヒキリが無敗でアメリカ三冠を達成、しかもあのセクレタリアトのレコードを塗り替えての勝利を飾ったのは無論大ニュースであったが、その僅か二週間後。

それにも負けない程の衝撃が日本に走った。

 

『コスモバルク粘れるか!?しかしキングカメハメハ走る!キングカメハメハ走る!ハーツクライが追い上げてきた!ダイワメジャーも迫る!』

 

 そのレースで、今までクラシックで勝利したウマ娘は居なかった。

 

『だぁがこのウマ娘だ!後方から並みいる強豪撫で切って!ディープインパクトが!ディープインパクトが今先頭に躍り出たぁ!』

 

 確かに出場条件はファン投票で規定順位に達している事。しかし、この春シニア戦線に乗り込んできたクラシックウマ娘は、今まで皆無の筈だった。

 

『追いつけない!追いつけない!!今!私達の目の前で!とんでもない偉業が!伝説がうちたてられようとしています!』

 

 その前例が、今、覆る。彼女達に、タブーなど無い。シニアのレースであろうと、クラシックのウマ娘は勝てるのだと。

 

『今!ディープインパクトが1着でゴールイン!!!これで!これで彼女はG1七勝目!いったい何処まで行くのか!!!』

 

 ディープインパクト、クラシックで宝塚記念を勝利。前人未到の領域に、また一歩踏み出した。

 




チートオリ主『KG6&QESってシニア混合だよね。せや!日本に丁度良いレースあったやん!とりあえず慣れさせておこ』
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