チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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当作品の超外伝を公開してますが、中の人以外リンクしている所はほぼ無い
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内容的にはウマ娘じゃなくて馬の方に転生した場合のあれこれっすね。

さて宝塚記念で先輩方を思いっきりブチ抜いたからくりが今回明かされるのですが…まぁアタマおかしい事してるよ!


第四十九話 推しを活躍させるという点において、奴は自重というものをとっくに投げ捨てている件

「負けたぁー!」

 

 リギルのチーム部屋の中でキングカメハメハの声が響いた。

トレーニングを積み、対策をし、勝負ができる筈であった。

間違いなく、日本ダービーまでのディープインパクト相手になら、1バ身までに差を縮め、そこからの勝負になっていた筈だ。

宝塚記念に出てくるかどうかは半々であったが、それでも準備だけはしてきた。

しかし、結果は5バ身も離された。

間違いなく『何か』をしている。それが何かは解らないが、およそ誰にも思いつかないようなとんでもない事を。

 

「その何かを見切れなければ、手も足も出ない、か。もうとんでもなく強いってのに研鑽と進化を怠らない相手って厄介だわ」

 

 行儀は悪いが、シュガーレスキャンディーをがりがり齧りながら、東条ハスミが眉間を揉む。

本当に相手に油断も隙も無いのだから、相手をする側としてはたまらない。

 

「ねぇはすみーん、何をやったと思うー?」

「そう、ね。もし、もしよ?もし、可能なのだとしたら―――」

 

 

――――――――――――――――

 

 

「適性の特化ぁ?」

 

 スピカのチーム部屋。オルフェーヴルがトレーナーの予測した答えに対し、頓狂な声をあげた。

 

「そもそもディープインパクトに適性特化という文字自体が似合わねぇだろ。あれは全距離全適性オールSとかいうそういう類のヤベーのだろ?」

 

 それは彼女の記録が物語っている。長距離こそまだ走っていないが、和芝だろうが洋芝だろうが短距離だろうが中距離だろうが、全部レコードである。

しかし、スピカのトレーナーは宝塚記念の結果から、そこから一歩踏み出した筈だと予想した。

 

「あぁ。ディープインパクトの適性についちゃその通りだ。だが、もし可能だっていうのなら、これが一番可能性が高い」

「いやこれ以上上がらねぇってヤツをどうやって弄るんだよ」

 

 たしかにそうかもしれない。しかし、スピカのトレーナーには根拠があった。

 

「イギリスでお手本を間近に見た筈だろ?」

「あ?……おい、もしかして」

 

 

――――――――――――――――

 

 

「1週間あれば合わせられるね、ヨシッ」

「あきちゃん、凄い」

「ししょーのはアタマおかしいって言うべきかなー」

「言葉は酷いが、まぁ同感だ」

 

 そしてレグルスのチーム部屋では、あきがむふんと胸を張り、ディープインパクトがあきを賞賛し、ラインクラフトとシーザリオがあきの所業にドン引いていた。

あきが宝塚記念までにやった事、それはリギル、スピカの両トレーナーが予想した通り、『適性の調整』だ。

エプソムダービーにて、あきがラムタラを見た時に、勝率が4割と算定したのは全くの事実である。

才能の有るウマ娘が全てを擲ってたった一つにつぎ込めば、ディープインパクトに並び、越えうるというのは証明された。

では、こちらはどうするか?そう、『ある程度同じ事』をすればいい。

現状、ディープインパクトは全地形、全距離に万能に対応している。全てにおいて隙が無い、完全な円。勿論それはあきの教えと本人の努力によるものだ。

しかも、それはただの円ではない。途轍もなく広く、大きい円だ。一流のウマ娘だろうが、適性を比べれば、その円の外側に振れられはしなかった。

今まではそれで良かった。しかしこれからは駄目だ。超一流が全てを費やした極点が、その円を突き破れると証明された。

 

 だから、それをあえて崩す。

 

 全ての距離、地形ではなく。『次に走るレース』の距離、地形に適した筋肉、走法、体幹。

普通ならば、そこまでの調整は不可能だ。ある程度の調整は可能だとしても、そんなある程度だけでも数ヶ月の時間を要する。

だが、鍛えに鍛え抜いたディープインパクトの肉体が、その細部まで知り尽くしているあきが、そしてどんな僅かな変化も見逃さないあきの眼が。

たった一週間という僅かな期間でそれを可能とした。

 

 もし、今の『宝塚記念に焦点を合わせたディープインパクト』と、ラムタラがエプソムダービーで競った場合、勝率は二割を切るだろう。

そう、そこまで全てを変えたのだ。

前提として全ての地形を、全ての距離を走れる事。あきの指示を寸分違わずやり抜ける事。トレーニングどころか、日常生活におけるほんの僅かな変化ですらあきが見抜く事。

世界のどんな個人でも、組織でも真似できない、しようがない、圧倒的な個人的才覚による質の暴力。

今まで誰もなし得なかった、考えつく事すらしなかった、出るレース毎の適性の再分配。

 

「しょーじきひくの。まじでー」

「これ私達もやるのか?やるんだろうなぁ…」

 

 そんな狂気の沙汰を自分達もやる事になるんだろうなぁ、と、若干死んだ目でラインクラフトとシーザリオは遠くを見ていた。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 宝塚記念が終わり、7月。

一時帰国したカネヒキリが『また先生が。頭おかしい事してる』とドン引きしながら鍛え上げられ、ジャパンダートダービーを8バ身差で圧勝。

ディープインパクトもフランスに飛び、パリ大賞典を10バ身の差をつけて圧勝。

ヴァーミリアンもアメリカでCCAオークスを勝利し、アメリカトリプルティアラ二冠目を戴冠。

 

 ちなみに、この間もあきは超音速旅客機で日本、アメリカ、ヨーロッパを行ったり来たりを繰り返している。

時差もお構いなしに、というより完全に適応し、精力的に幼馴染達5人を存分に鍛え、桜を指導し、時にアグネスタキオン達の研究に協力し、チート能力を存分に使い倒して活躍していた。

ディープインパクトは目を輝かせ、他の幼馴染四人は加速度的に目が死んでいき、桜は進化し続けるあき達に脳がさらに破壊され、アグネスタキオンは『また助手君との時間が減るじゃないか!』と憤慨した。

地味にシンボリルドルフ理事長達も巻き込んでいるので、今頃大量の書類が彼女達に舞い込んでいるだろう。

世界を飛び回るあき達の手続きであったりとか、新トレーニングに対する認可書類であったりとか、アグネスタキオンによる新薬、新型機械の報告だとか。

勿論それは必要な事であったり、未来のウマ娘達の為であったりするので面倒だなどと口が裂けても言えない事ではあるのだが、あきが来てから、来る前より二割は仕事が増えているのが事実である。

しかもあき自身はトレーナーであり、未成年であり、見て解るくらいには明らかに多忙(本人は元気一杯だが)なので何も言えない。

誰も彼も、発展は望む所であるが、度合いが大きすぎて、今の所ついていけるのが幼馴染達しか居ないのが現状であった。

 

「さて。いよいよだね、翔ちゃん」

「うん。今度こそ勝つ」

 

 そして、日付としてCCAオークスの二日後。イギリスのアスコットレース場にて。

いよいよディープインパクトとラムタラ、二度目の対決である。

注目ウマ娘はディープインパクトに唯一並んだラムタラの他に、前年度のパリ大賞典と凱旋門を勝利したバゴ、エプソムダービーでも対決したガリレオ、日本からはハーツクライが来ている。

いずれも強敵ばかりであり、欠片の油断もできない。

それでもあきはディープインパクトを信じている。今日、この日に備えて完璧に仕上げてみせた。あとは勝ってきてもらうだけなのだ、と。

 

「多くは言わない。行って。走って。そして、勝ってくるんだ」

「うん」

 

 ディープインパクトの全身に闘志が漲る。強敵達が待っている。自分は強くなった。相手も強くなっているだろう。

それでも、勝つ。今回も勝利を積み上げる。遥か先で輝く星に届かせる為に、今日も勝利を重ねるのだと。

 




他のトレーナー『早く技術追いつかねぇかなぁ!個人でこれをしろって無理だろ!!(半ギレ)』
それでも挑む事をやめられない辺り、この世界の一流トレーナーって大分キマっているね!
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