チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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活動報告でも書いてますがこちらにも。
ファンティアの方で超外伝第3回目投稿してます。

トレーナーとして、勝負師としてのチートオリ主がどういう手を打ってるかって考えるとこうなる。できるならやるって解るがこいつエゲつないな?


第五十一話 KG6&QEステークス編/『勝利』

『先頭は変わらずガリレオとなっておりますこれは速いペース!コーナーを曲がり切れるでしょうか、他のウマ娘もこれについていっています!』

 

 これまでのKG6&QEステークスでは類を見ない、前半戦でのハイペース。

それはもし、第一コーナーを上手く曲がれるというのなら大きな武器となる事は間違いない。

そう、間違いが無い故に。

 

『先頭集団と後方集団、差が…開かない!最後方ディープインパクトとラムタラ!ペースを落とさず食らいつきます!』

 

 勿論、この二人だってそれを使わない道理が無い。

他のウマ娘にとっては、このスピードでのコーナー突入は間違いなく賭けだ。だが、このレースでは例外が二人だけ居る。

ラムタラとディープインパクト、この二人だけは自分が、相手が『間違いなくコーナーを上手く曲がれる』と確信している。

第一コーナーは、あくまで前哨戦に過ぎない。

 

『第一コーナーに入るぞやはり膨らみました!ガリレオ、バゴ、ハーツクライ上手く曲がりましたが膨らみをついて二人が上がってきた!』

 

 そしてついに第一コーナー、勢いがつきすぎたウマ娘の中にはどうしてもコーナーで膨らんだ者もいる。

ガリレオ、バゴ、ハーツクライはそれでもかなり上手く曲がれていたが、常のコーナリングに比べればかなりの差がある。

無論、その隙を逃すような二人ではない。

 

 確かに、最大の敵は今、横を走る互いである。しかし、だからといって他のウマ娘達を軽視していいわけではない。

事実、彼女達の目は死んでいない。

シンガリから一気に追い抜いた今になっても、虎視眈々とチャンスを狙う熱を感じる。

油断はしない。隙など与えない。

 

「(くっそ、あれだけ完璧なコーナリングやったっていうのに油断も隙も気の緩みも無しか!)」

「(一体どんな視野だっていうんだ、君達は!)」

 

 それを敏感に感じ取ったバゴとガリレオが舌打ちを溢しそうになる。

勝ち目が1%なんてものじゃない程、薄くなったのを自覚したからだ。

 

 此処からはラスト200メートルまで、容赦なくスタミナを奪っていく登り坂が延々と続く。

そして、他の誰がバテようと、あの二人のスタミナが切れる事はないだろう。

 

「(不利は、解っていた事…!)」

 

 しかし、泣き言も弱音も全て飲み込んで、ハーツクライは走る。

そんな事は百も承知だった筈だ。それでも諦められない、勝ちたいからこそ走るのだと。

それがどんな無謀な挑戦だとしても。挑まなければ、可能性はいつだってゼロなのだから。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「(互角っていうのは嘘じゃない)」

 

 あきは脳味噌の9割をディープインパクトの応援に回して声援を飛ばしながら、残りの1割で思考を高速で回す。

スタミナ、スピード、パワー、その他適性において、総合的に見る限り今回も同着の可能性が一番高い。

何らかの要因でどちらかが先着しても、差はハナ差よりは開かない。

そう、『イギリスにおいて』、ラムタラとディープインパクトは互角だ。

イギリスに限るならば、ラムタラとディープインパクトは並ぶ可能性がある。

勿論あきはディープインパクトの勝利を信じているし、勝って欲しいが、たとえもし、このレースで負けたとしても、次でとり返す自信があった。

 

 凱旋門賞、フランス、パリ、ロンシャンレース場。それはディープインパクトが『パリ大賞典を勝った場所』だ。

そう、彼女達は既にロンシャンを知っている。

知っているからには、あきはディープインパクトをより深く、より強く、より速く走らせる事ができる。

これは、どうやってもラムタラ陣営にはできない事だった。

 

 ラムタラ達がいくら欧州の芝、距離2400メートルだけに特化させているといっても、レース場の形状はどうやっても異なる。

それを月単位で慣れさせ、適応させている手腕は確かに素晴らしいのだが、逆に言ってしまえば彼女達は常にぶっつけ本番だ。

一度調整を始めればそう簡単に変えられないからこそ、それなりの期間をかけてレース場毎に調整しなければならない。

 

 勿論、ディープインパクトもあきによる調整を受けてなお、同じくぶっつけ本番だからこそ互角に戦えている。

同じレース場で複数回戦うのなら条件も同じだろう。

しかし、凱旋門賞だけは違うのだ。

 

 あきとディープインパクトは知っている。ラムタラ達は知らない。

0.1秒ですら数十cmの開きがつくレースというものにおいて、この差は、ほんの僅かに見えて、とても大きい。

 

 この場で負けても1勝1敗1分で引き分け。

引き分けたなら1勝2分で勝ち。

勝てたのならば、2勝1分で完勝だ。

 

 あきはディープインパクトを限りなく無敗でトゥインクルシリーズを駆け抜けられるよう鍛えたが、絶対に無敗でいられるだなんて甘く考えてはいない。

むしろ何回かは負ける可能性の方が高いと見ていた。何せ、レグルスのメンバーは同じチームだろうと、本命のレースをずらすなんて事はしないからだ。

高松宮記念で、大阪杯で、安田記念で、宝塚で、秋の天皇賞で、マイルチャンピオンシップで、ブリーダーズカップで、有記念で。

もし、ディープインパクトが目に付くG1レースに全て出るつもりならば、必ずレグルスのメンバーとぶつかり、そこで負ける可能性は十分にあるだろう、と。

春の天皇賞においてはディープインパクトが元々長距離が得意過ぎるくらいな為、そこでの負けはまず考慮していないが、それでもだ。

ディープインパクトには勝って欲しいが、他の教え子達だって負けて欲しくない、勝って欲しい。だが勝負である以上、必ずどこかで勝敗がつくわけで。

だからあきは誰にも勝って欲しくて、誰にも負けて欲しくない、心が複数個ある状態にしばしば陥りそうになる。

 

 そんなセルフ脳破壊が進むチーム内での対決より、ラムタラ陣営との勝負は余程心が楽だった。

相手側が全力でこっちに対抗してくるから、こっちも相手に全力で対抗するだけで済むのだ。

相手の事情とかそこら辺はあるかもしれないが、それはこちらも同じなので、構図が実に単純。

勿論完勝を狙うが、たとえ途中で負けようが絶対に最終的な勝利だけは貰っていくぞと考える余裕すらある。

 

 そう、ラムタラはあまりにも専用に特化し過ぎて、たとえこのレースで勝ったとしても、最終的な結果でディープインパクトに勝る事は無いと言い切れる。

伊達に全距離、全地形適応で育ててはいないのだ。

ラムタラが出れないレースならばディープインパクトが勝っているし、ラムタラが出ていても互角。

比べるには、あまりにも実績が違いすぎる、と断言できる。

 

「(既に英国三冠は獲ったも同然。此処で負けてもカルティエ賞、引き分け以上なら欧州三冠が追加。『勝ち』だけは譲らないよ、ボク達は)」

 

 脳味噌の1割、トレーナーとしての、勝負師としてのあきが、冷徹なまでに『勝利』の道筋をたて続ける。

あきはその能力を存分に使って、愛バの『勝利』の為に、何処までも思考を回し続けるのだ。

 

「翔ちゃーん!がんばえー!」

 

 たとえ脳味噌の9割が『推し!尊い!』で埋まり、口から出るのがその感情の発露だけだとしても。

 

 

――――――――――――――――

 

 

『いよいよレースも最終局面、登り坂ももうすぐ終わり、先頭は変わらずディープインパクトとラムタラ、続いてガリレオ、バゴ、ハーツクライ!』

『今度こそ決着がつくのかどちらが上か最後の200メートル!』

 

 内にラムタラ、外にディープインパクト。二人は完全に並んでいた。

お互いの息遣いすら聞こえるような近さで並び、走る。

既に『領域』には入っている。互いに干渉するように、二人の景色が混ざり合っている。

あまりにも似ていたからか。あまりにも互いの走りを理解してしまったからか。星を追いかけ、手を伸ばす互いが見える。

思う事は同じだ。負けたくない。勝ちたい。

互いに多くを知ったからこそ、横の相手に、絶対に。

走る、走る、走る。魂を振り絞るように、全ての力を使い切るように。

欧州の天才達も届かない。心の底からの叫びも追い抜かせない。

横に居るこいつに勝つのは、自分だけなのだと。

お互いに、どこまでも意地を張り合って、まるで幼い子供の様に。

そして、エプソムダービーの時と同じように、全く同じタイミングでゴールして。

表示された掲示板もまた、同じ。

 

1着 3番ラムタラ 2分22秒9

同着 5番ディープインパクト 同タイム

3着 10番ハーツクライ 8バ身差 2分24秒2

4着 9番バゴ ハナ差 2分24秒2

5着 1番ガリレオ アタマ差 2分24秒3

 

 2度の勝負、2度の引き分け。決着は、凱旋門。




チートオリ主『負けだけは無くなった、ヨシ!』(パリ大賞典時)
石油王トレーナー『お前こっちがどうにもならない所で手を打つとかホントお前…!』(不利なのは解ってもどうしようもない勢)
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