チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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ファンティアの方でもいろいろ書いてます。
ちょっと…フロム脳が暴走して…

あと題名通り今回お初の子達の活躍を書く事は無い!
無いと思う。…し、史実を調べると良いと思うよ!


第五十四話 彼女達の活躍は多分書かれる事は無いんじゃないかな、多分無いと思う。……無いよ?

 カネヒキリとヴァーミリアン、激走のトラヴァーズステークスより2週間。

イギリス、ドンカスターレース場では史上初、世界初の偉業が達成された。

黒鹿毛の、日本から来たウマ娘が、レース場の真ん中で指を三本立てた手を掲げた。

 

 ディープインパクト、セントレジャーステークスを勝利。

日本のウマ娘による、初の英国無敗三冠。

 

 今まで、三冠も、無敗三冠も、イギリスには数多生まれてきた。何せ、歴史が違う。

三冠で言うのならば15人。無敗に限定するのならば4人。

数百年の歴史の中で、イギリスのレースはそれだけの人数を送り出してきた。

 

 ただし。ディープインインパクト以前にイギリス三冠を獲ったウマ娘は、もう何十年も前の事となる。

レースの形式が変容したという事もあるだろう。

三冠を狙うのではなく、適性にあった距離を重視する欧州のレース事情もあるだろう。

ただ、そうだとしても。

評価が上がってきたとはいえ、パート1に昇格してまだ30年も経っていない国のウマ娘が、『レースの本場』と言われる欧州、しかもイギリスの三冠を獲った。

カネヒキリ、ヴァーミリアンの米国三冠、トリプルティアラも鑑みれば、歴史的な特異点と見做されてもおかしくはない。

だが、たった一人のトレーナーが全てを変えた。

 

 レグルスのトレーナー、津上あき。最年少トレーナー資格取得者にして、常識の破壊者。

弱冠14歳にも拘わらず、彼女の築き上げた実績、功績はとてつもない。

正しく、世界を変えたトレーナー。

関係者達の間では、実際に走っているレグルスのメンバー達よりも、あきの名前の方が畏怖されている。

彼女の研究一つで、彼女の発表一つで、今までの常識、定石、当然が容易く引っ繰り返される。

先人たちが連綿と受け継いできた、あるいは長年研究されてきた技術をあっという間に追い越される恐怖。

公開された技術によって、あらゆるものが加速度的に進歩していくという興奮。

 

 レースという世界において。

その中心はディープインパクト達ではなく、間違いなく津上あきだ。

レグルスのメンバー達も言ってしまえば、実績もあるが、『あの津上あきが育て上げたウマ娘』であるからこそ注目されている。

今のレグルスのメンバーは幼少の頃よりあきに育て上げられたメンバーだが、ではそうでない場合、どういう事になるかも。

 

 何度も記されている事であるが、この世界はレースを中心として発展した世界である。

速いウマ娘と同等に、そのウマ娘を育て上げるトレーナーは大変注目度が高い。

実は英国や米国から引き抜きの話は何度も来ているが、あきは頑として日本に所属し続ける事を通し続けた。

だからこそ、それはある意味で当然であるかもしれない。

セントレジャーステークスのライブ後、二人のウマ娘があきを訪ねてきたのだ。

どちらも来年からトレセン学園に通い始める年齢のウマ娘であるが、あきの手腕を見込んで、日本に留学してでもトレーナーになって欲しいと売り込んできた。

一人はアイルランドから、もう一人はイギリスから。

あきから見ても、両者共に素質が高く、故郷を離れ日本に来るほど熱意があるならば、と了承を出した。

実際に日本に来るのならば、来年以降となるだろう。

 

「感謝するわ!あきトレーナー!」

「はい、来年からになりますが、どうぞよろしくお願いします」

「うん、よろしくね!」

 

 まだ小さいながらも、王者のようなカリスマを放つアイルランドのお嬢様と、礼儀正しく優雅なイギリスのご令嬢。

実際にレースに出るのは数年後になるだろうが、その数年後が実に楽しみな二人だ。

前者の名前はシーザスターズ。後者の名前はフランケル。

後に欧州を存分に荒らしまわり、あきの育成手腕を存分に世界に見せつけた二人である。

 

 

――――――――――――――――

 

 

 凱旋門賞がおよそ半月後に迫る中。イギリストレセンの一室では次々と書類が運び込まれていた。

それはウマ娘の身体について詳細に記されているデータだ。

どのように走り、どのように筋肉が疲労し、骨への影響、走ったバ場による変化、等々…

それらの書類を読むトレーナーの目には、焦燥が浮かぶ。

 

 予測される成長曲線、算出されるべきタイム、想定すべき相手の走り。

足りない。ほんの少し、僅かに、届かないかもしれない。

僅か数十センチ。否、数センチかもしれない。今までは全く並んでいたそれが、ほんの僅かに、差がついてしまう。

何が足りないかは解っている。彼女は、ラムタラはあのディープインパクトに並んだとはいえ、その走ったレースの数はたった三戦。

内、走ったG1の数は二だ。レースを競った数も、G1を戦った回数も、レース場を走った数も、ディープインパクトと比べるべくもない。

 

 経験が、圧倒的に足りない。

ラムタラはたった三回のレースで、その身を伝説と同じ領域まで押し上げた。

その密度がそうそう負けているとは思わない。しかし、幾ら密度を上げても、走ったレースの数は精々、ジュニア級のウマ娘と同じくらいでしかない。

あらゆるレース場で、数多のウマ娘と競ったディープインパクトの錬磨された経験。

それはラムタラには確実にできない、作り上げられない武器だ。

 

 レースの数を増やす事はできない。ラムタラの身体は、足はレース場に特化したものにする為に一ヶ月以上の時間を要する。

特に凱旋門は今まで走ってきた国内イギリスのレース場ではなく、国外フランスのまた違うレース場だ。

複数の国に跨りレースを征してきたディープインパクトの方が、勿論経験値が多い。

想定されていなかった初回と、貯金で凌ぎ切った二回目。

三度目の奇跡は、無い。

それでも。それでも、何か方策を見つけねばならない。

 

「代理人さん。随分、悩んでいるようね」

「君か。心配されるような事ではない」

 

 思考の海に潜っていたからか、トレーナー室に入ってきたラムタラに彼は気づかなかった。

そして、声をかけられてからでも書類を捲る手を止めはしない。

彼は何より、誠実でありたかった。己の職責に対しても、亡くなった友に対しても、そして彼女に対しても。

 

「勝てないのね?」

「そうとは決まっていない」

 

 だからこそ考え続ける。探し続ける。友が、彼女が、己が抱いた夢を実現させる方法を。

財産など幾らでも捧げよう。時間も。己も。自己に関するものなら、彼は幾らでも代価にして勝利を引き寄せる。

そういう風に考えていたし、事実そういう風にしてきた。

 

「本当は解ってるんでしょう。埋める方法」

「………」

 

 ぺらり、と。書類を捲った所で手を止める。

 

「本当に。全てを捧げるなら。其処から先、二度と――」

「断じて。そんな事は認めない」

 

 認めない。既に、彼女からは多くのものを捧げてもらった。

バ場の適性、距離の適性、本来ならば対応できる多くの可能性を捧げ、研磨し、そうしてあの最強と並び立った。

削って、削って、削って、しかし、それでも。その決定的な未来まで捧げてしまうなど。

『もう二度と走れなくなってもいいから』などと。

 

「職責として。代理人として。友として。そんな事は、断じて認めない」

 

 ウマ娘を潰してでも勝利を願う。認めよう。それも一つの方策だ。しかし、己は断じてそんな事は認めない。

ウマ娘とは、素晴らしいものなのだ。輝かしいレースを、祝福されるべき花道を、彼女達は走るべきなのだ。

確かに、多くを捧げた。多くを捧げさせた。

だが、それでも彼女は、彼女ならば『欧州芝2400メートルの王者』として君臨『し続けられる』よう、死に物狂いで調整した。

彼女は、たった四戦で喰い潰されるようなものではない。

より長く走り、そして永く語り継がれるべきウマ娘なのだと、心の底から信じているからだ。

 

「……そう。バカな人」

「愚かだと言われようと、私は私の為すべき事を為すだけだ」

 

 また、ぺらりと書類を捲る。たとえ未だ勝ちの目は見えずとも。

それでも、諦める事だけはしないと誓ったのだから。

 

 凱旋門賞まで、あと三週間。三週間後には、全てが決まるレースが待っている。




某偉人と同じ名前のお馬さん『この小説だと本人はメッタクソにやられてんのになんで弟と子は勝ち組になんの?なんで??』
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